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Arsenal, UEFA EL

17/18 UEFAヨーロッパリーグ、アーセナル優勝の現実味

今日(日本時間明日9/15早朝)から始まるアーセナルのヨーロッパリーグ。UCLを目指していたアーセナルにとっては不本意ながらの出場ということで、彼らがどのようにこのコンペティションを戦うのか初戦のFCケルン戦に注目が集まっている。

ところでメディアを眺めていると、当初目立っていたアーセナルは思い切ってUELの優先順位を落としリーグ戦に集中するべき(アウェイはスティーブ・ボールドに任せてしまえとか……)といった意見よりも、最近はUELを真剣に戦ってタイトルの獲得を目指すべきという意見が目立ってきたように感じる。

後者の主張は、リーグ戦で思うようにいかなかった昨季終盤、UCLの出場権を取るためにあえてEPLよりもUELに注力するというやり方を見事に完遂したマンチェスター・ユナイテッドの足跡を、今季アーセナルも同じように辿れるといったものだ。あるいは、単に今季もアーセナルがEPLで4位以内に入るのは難しいという前提でそう主張しているのかもしれない。

しかしいずれにせよ、仮にEPLと同じくらいかそれ以上の情熱をUELに傾けたとして、そもそもいまのアーセナルにUELのタイトルを勝ち取れるだけの力はあるといえるのだろうか?



UEFAクラブランキング2017におけるアーセナルの位置

Card
「The UEFA Club Ranking(UEFAランキング)」は過去5年間のUCL、UELの結果をポイントで表したランキング。つまりヨーロッパ大会での実績ランキングだ。

2017年版によると、上位からレアル・マドリッドバイルエンバルセロナアトレティコ・マドリッドユーヴェPSGと強豪クラブがひしめくなか、アーセナルはイングランドでは2番めに高い11位。イングランドのクラブは総じて低く、トップは10位のチェルシーである。この位置はセビーリャベンフィカなどよりも下位ということを考えると、これだけでいかにイングランドのクラブが近年ヨーロッパで苦戦しているかがわかる。

1位から30位まで。31位以降はECAのサイトで確認しよう。456位までランクされているぞ。

こうして見ると、当然だがトップ10までにUEL出場クラブはなく(今後UCLから落ちてくるクラブが入る可能性はある)、トップ20にすら、11位のアーセナル、19位のゼニトの2クラブしかない。つまりいまUELのグループステージを戦うクラブのクラブランクだけを見れば、アーセナルはダントツの優勝候補だといわれてもおかしくはない。

ところがである。UELの出場クラブはいま出場が決まっているクラブだけではない。UELの決勝トーナメントにはUCLのグループステージを3位で敗退した8クラブが入ってくるのだ。仮に順当に終わったとして各グループの抽選ポット3のクラブを挙げてみよう。()内はUEFAランク。

  • バーゼル(22位)
  • アンデルレヒト(32位)
  • ローマ(37位)
  • オリンピアコス(28位)
  • リヴァプール(34位)
  • ナポリ(17位)
  • ベジクタシュ(43位)
  • ToT(20位)

嫌な感じの名前が並ぶじゃないか。

UEFAランキングこそアーセナルの11位に比べられるクラブはないが、それはあくまでも5年間の実績ということで現在の力関係を的確に表しているわけではない。はっきりいって現在のリヴァプールToTはアーセナルよりも強い。もう認めざるをえないだろう。

そしてもちろんUCLのグループステージが下馬評通りに終わるわけではない。たとえば今シーズンの「死のグループ」といわれるグループHではポット3のToTが初戦でBVBに完勝しており、UEFAランキング7位のドルトムントというアーセナルにとっていやなクラブがUELに落ちてくることも大いにありうる。近年スコットランドで躍進しているセルティックあたりもグループBの3位になる可能性は高い。

ということで、こういったクラブがUELの決勝トーナメント32クラブのなかに入ってくることを考慮すると、決してアーセナルが本命だともいえなくなってくるのである。

アーセナルはUELタイトルを獲れるのか?

もちろん可能性はある。絶対にアーセナルの優勝はないと断言できるチャンピオンズリーグに比べれば、何だかんだ出場クラブの面子からいってもヨーロッパリーグで優勝するというのはアーセナルにとっては非現実的なこととはいえない。うまくいけば優勝できるだろうと思う。

アーセナルはマンUではない

ただ、マンU=モウリーニョのやり方が成功したからといって、そのままアーセナルにもチャンスがあると考えるのはいささか短絡的すぎる気がしている。モウリーニョはヨーロッパの戦い方を知っているし、負けない試合運びができる監督だ。ヨーロッパで何度もタイトルを獲ってきたいわば経験者である。マンUにはUELのタイトルを獲れるだけの裏付けがちゃんとあった。

一方で、アーセナルを率いるのはヨーロッパのタイトルを勝ち取ったことがないヴェンゲル監督で、ヴェンゲルはモウリーニョではない。とかくビッグゲームに弱いといわれるヴェンゲル監督でこの長いコンペティションを勝ちきれるだろうか? クラブのマイナス要因が監督だというのも悲しいがそれが現実だ。

UELの対戦相手はいつも格下

アーセナルが成功できない原因のひとつは負けるはずがないという格下相手にも苦戦してしまうところだ。ヨーロッパでの戦いも例外ではない。過去UCLのグループステージでも何度も伏兵にやられている。モナコ、ディナモ・ザグレブ、オリンピアコス……。グループ2位通過でベスト16で早々に優勝候補と対戦、そして敗退。デジャブ? それが勝者のメンタリティに欠けるといわれる所以であろう。そういった格下相手の試合が続くのがUELだ。勝って当然の空気は、逆にアーセナルのほうのプレッシャーになるかもしれない。

選手層の薄さ

また、ただでさえ怪我がちなスコッドに加えて選手層の薄さも心配な点だ。当然週末のリーグ戦と合わせて週2回の試合となれば選手のローテーションが鍵となるが、夏の補強に失敗したアーセナルがローテーションで戦力を落とさずUELを戦うことができるのかは疑問が残る。

たとえばベレリンを休ませたいときに右WBやRBの代わりに誰を使えばいいのか? 即答できる人はいないはずだ。バックアッパーがいないのだから。彼が怪我をしようものなら、たちまちアカデミーの選手かチェンバース、ドビュッシーあたりを使わざるを得ないという窮地に陥ってしまう。そんな状況に今現在われわれはいるのである。そして毎シーズンそうであるように、これから試合数が増えていくに連れて怪我の選手も増えていくだろう。本当に毎シーズン毎シーズン同じなのだから今季だけ違うとは思えない。これでは悲観的にならざるをえない。

選手のUELに対してのモチベーション

エヴァートン時代とマンシティ時代にUEFAカップ/ヨーロッパリーグ両方で戦った経験のあるジョレオン・レスコットがUELとUCLの戦いの違いについてコメントしていて興味深かった。

Europa League: How will Arsenal cope with the shift to Thursday night football?

UCLに慣れたアーセナルにとって魅力に乏しいUELの戦いに適応するのは難しい。エヴァートン時代には試合前に練習に使えるピッチがなく「学校のホール」やコンクリートの床で練習したことさえある。相手はYouTubeでも見つけられないようなとにかくよくわからんクラブ。快適とはいえないプレイ環境。云々。

選手たちはファン以上に都落ち感を感じるのかもしれない。世界中のフットボールファンが固唾を呑んで見つめている華やかなチャンピオンズリーグの舞台とは違いヨーロッパリーグの注目度は低い。とくにUELの試合はUCLが終わった翌日に行われるため、メディアの熱量の落差も選手たちは目の当たりにすることになるだろう。アーセナルのスタープレイヤーやSNSでウェーイないまどきの選手たちにとってはUELでのプレイは屈辱的ですらあるのかもしれない。

そして、試合をする環境。昨シーズンにカップ戦で下部リーグのクラブとアウェイで対戦したときに、観客席やドレッシングルームなどその劣悪なクラブ環境が面白おかしく伝えられたが、UELのアウェイマッチではUCLでは決して訪れることのなかった国々で似たような体験を幾度もすることになるのかもしれない。以前コーエン・ブラモールが自分が育ってきた環境に比べてアーセナルのトレーニング環境がいかに素晴らしいか(特殊か)を語っていたが、そんな環境に子どもの頃から慣れ親しんでいる温室育ちのユース選手たちには余計にキツいだろう。

マンガみたいだけど、マンガだったらやられ役なのはアーセナルだ。

アーセナルはUELのタイトルを穫れるか?

ということで、ぼくの予想はベスト4あたりで惜しくも敗退である。ベスト4となかなかいいところまで行くというのがミソ。期待をさせてから落とす。それがおれたちのアーセナル。

もちろんやるからにはすべての試合に勝ってほしいが、いまのアーセナルは問題を抱えすぎている。残念ながらヨーロッパリーグを勝ち取る運も勝負強さもいまのアーセナルにはないと思う。

SKY BETのUEL優勝オッズ

さいごにSKY BETのオッズを載せておこう。

アーセナルはACミランとともに本命扱い。もっとも現時点でのオッズなので、UCL脱落組が入ってくればまた状況も変わるだろう。



 

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