hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Data, Emery

アーセナルがアウェイで勝てない5つの理由

悲願のCL出場のためには超重要だったアウェイマッチのひとつ、グディソン・パークでエヴァートンにやぶれ、トップ4フィニッシュに黄色信号が灯ったアーセナル。

この試合のあとには、いくつものメディアやブログ、SNS等でアーセナルのアウェイフォームが議論になっていた。

ぼくが個人的に考えていることは先日のエヴァートンのレビューエントリでも触れたが、興味深い考察もいくつか見かけたのでこれを機にまとめておきたい。

ホームでは強いアーセナルが、アウェイで自信のないパフォーマンスに終始してしまうのはなぜなんだろう。



アウェイで勝てなくなったのはいつからか?

理由について考える前に、まず現状の分析として、現在のこの極端なアウェイフォームはいつから始まったのかを知りたい。

ぼくの記憶のなかでもここ10年のあいだでアウェイのフォームがかなりいい時期もあったはず。確認してみよう。

調べてみると、いまのアーセナルがアウェイで勝てなくなる傾向が強まり始めたのは2017年(16/17シーズン)から。

16/17シーズンといえば、まだ記憶に新しいアーセナルが21年ぶりにリーグ4位以内でフィニッシュできなかったシーズンでもある。FAカップを取ったものの、CLではバイエルンにアグリゲート10 v 2と記録的大敗を喫したりとチームマネジメントに疑問が持たれるなかで、ヴェンゲルさんが2年契約更新したことにも驚かされた。

アーセナルを考察するうえでいつもいい視点を与えてくれるブログ7amkickoffによれば、2017年の1月以降、アーセナルはこれまでにPLアウェイで44試合を戦って13勝(ポッシボー132ポインツで48ポインツ)、64得点(xGが56.7)&78失点(xGAが71)ということで、アウェイでは実際のスコアも予想のスコアも失点のほうが得点を上回ってしまっている。

この直前となる16/17シーズン前半のアーセナルはリーグのなかでもアウェイ成績が4位だったというので、そこまではけして悪くない成績だったのだ。

以下のデータは、Alexej Behnisch氏(@behnisch)のツイートから拝借。

この図を見ると2006年の数字にはやや開きはあるものの、多くの期間でホーム・アウェイのポイントは拮抗しており、16/17くらいまではアウェイでの成績もホームと比較して悪すぎるということはなかった。

下図がアーセナルのホームとアウェイでの平均ポイント差を示したもので、2009年、2013年などはホームとアウェイでポイントにほとんど差がないことがわかる。いまとは違い、ホームでもアウェイでも同じようなパフォーマンスを出していたということ。アーセナルが伝統的にアウェイで弱いわけではないのだ。

2017年くらいからホームとアウェイでの差が顕著に出始め、2016年以降ホームでのポイントが徐々に上がっていることもあり、2018年にはホーム・アウェイでかなり大きなギャップが見られる。

2019年に入ってアウェイでのポイントがやや上向いているが、それは単に2018年とのコントラストであって、2006年以降ではほぼ最低水準となっている。

こちらの図はその年に優勝したチームとのホーム・アウェイでのポイント差を示したもの。

ホームでは概ねチャンピオンチームよりポイントが少ないが、アウェイでは逆にチャンピオンよりも多くポイントを取っているシーズンもいくつかある。アーセナルにとっていつもアウェイが苦手だったわけではないいいエヴィデンスとなっている。

2018年は、ホームでの差はわずか3ポインツながらアウェイでは34ポインツという大差がついている。これはシティが記録的なポイントで勝った影響もあるだろう。

いずれにせよ2016、2017、2018の優勝チームとのアウェイでの大きなポイント差を見れば、アーセナルがPLでトップチームに伍していくうえで目下の課題はアウェイフォームの改善であることは一目瞭然だ。

それにしても、2017年1月からアーセナルにいったい何が起きているというのだろうか?

アーセナルの低調なアウェイフォーム、5つの原因

5つの原因。ブログっぽい。

さて、ここからはもはやミステリーの域に入りつつある、アーセナルの直近のアウェイフォームについて、各所でぼくが見かけている諸説をまとめていきたい。

1、タマなし説(マインドセット問題)

アーセナルの問題を語る際に定番的に指摘されるのが、リーダーシップや闘争心の欠如。英語だと「キャラクターの欠如」みたいにも云う。普段と違う状況になっても戦えるメンタリティと、それがダメになりそうなときでもチームを引っ張ることができる精神的支柱の不在。

ぼくが知るかぎり、これはもうインヴィンシブル以降ずーっと云われている。

アウェイのような360度を敵に囲まれた逆境のなかでも変わらぬパフォーマンスを出すこと。それができていないのは、リーダーがいないことを含めてメンタリティやマインドセットこそが問題であるという意見。

有名なワトフォードFW、トロイ・ディーニーの「lack of cojones(タマなし)」発言がある。

“cojones”はスペイン語で”balls”の意味だそうで、要するに男性の股にぶら下がっているアレのことを云っている。日本でも「肝っ玉」とかいうし、アレが闘争心や決意、根性なんかのたとえになるのは世界共通なんだね。

この発言はいまだにいろいろなところで引き合いに出されているのを見るに、アーセナルの選手たちのメンタリティについて一面の真理を突いていたのだろうと思う。われらにとって不都合な真実というわけだ。

ディーニー:(アーセナルに勝利した試合)おれは試合後にヴェンゲルがあれはペナルティだったって騒いでいるのを聞いて、それこそが奴らが敗けた原因だと思ったよ。いや、ミスター・ヴェンゲルがどうだとか云いたいというわけじゃないんだ。でもそここそに彼らが敗けた理由がある。ひとつのペナルティのせいじゃないんだよ。

こう云うのは少しはばかられるんだけどさ、ちょっとしたタマ(cojones)の問題なんだ。おれがアーセナルと戦うときはいつだってこう思うんだ。「さあやったるぜ、最初におれの餌食になりたがってんのはどいつだ」ってね。(中略)

おれは奴らほどテクニックも恵まれてないしクイックでもないってことなんて百も承知さ。でもあいつらがおれとファイトしたいってんなら容赦はしない。いつだってぶちのめすよ。もしおれの世界に来るってんなら、それもいいだろう。でもボール扱いのうまさ、スピード、ポジション取りなんかは全部フィフティ・フィフティになる。だっておれはでかくて強いんだ。

おれはあいつらが誰もやりたがらないような汚れ役を全部やる。そういったことがおれを相手にするのが恐ろしい敵にするんだ。

あらためて思うけど、こんなタイプの選手アーセナルにいないよな。ファイトって意味ではソクラティスが唯一このディーニーと似たようなメンタリティを持っているようだけれど、残念ながら彼はワトフォード(A)でプレイしない。もう!パパのバカ!

閑話休題。

リーダーについてはこれまでの10年ほどでのチームを思い返すに、たしかにクラブにはたとえばミケル・アルテタやペア・メルテザッカーといったチームの「パパ役・兄役」がいた。彼らの時代だってリーダーシップのなさは変わらず指摘されていたと思うが、いまに比べればアウェイでもうまくいっていたのだから、ずっとマシなリーダーシップだったということになるのか?

現在だとその役はチェフやコシエルニだが、やはり少しリーダーシップが足りないのだろうか。どうだろう。

ぼくはただ、先日も書いたように、このメンタリティとかマインドセット、リーダー不在については、NTなど別のチームではそれぞれが素晴らしいリーダーシップを発揮していたり、厳しい逆境を切り抜けてきた百戦錬磨の猛者もチームのなかに何人もいるはずなのに、集団になると途端に脆弱になってしまう理由の説明にはなっていないような気がしている。

スポーツサイコロジー(スポーツ心理学)ってちょっと調べてしまったんだけど、アーセナルではどんな対策をやってんだろうね。え?まさかそういうスタッフがいないってこたないよね??

2、選手クオリティ説

身も蓋もねえ。それを云っちゃあおしめえよ。

でも、サラーとマネとフィルミーノとVVDとアリソンがアーセナルにいたら、いまごろタイトル争ってるってのもたぶん事実で。

エヴァートン戦だって、ジャカ、トレイラ、ベレリンにホールディングがいたら結果はまた違っていたかもしれない。ベストメンバーではなかった。

身も蓋もないんだけど、たしかに選手アップグレードがもっとも即効性があって効果が高いってことを考えると、メンタリティ論は後付けの感はある。

「強いチームが勝つんじゃない。勝ったチームが強いんだ」ってやつ。メンタルが弱いから負けるのではなく、弱いからメンタルのことまで責められる。

タマなんかなくたってメッシがいりゃあほとんどの試合に勝てる。ロマンねえな。。

3、アウェイにふさわしい戦い方をとってない説(戦術・システム・チームセレクション)

これはぼくがエヴァートンのレビューでも触れた、「プランB」のこと。

まあ守備的かどうかはともかく、どんなチームでもアウェイにふさわしい戦い方というものはあるだろうと。

どこでも同じやり方で通用すると思うのは、シティやリヴァプールのようなよほど自信があるチームならともかく、アーセナルでそれをやるのは現状ではちょっと傲慢だと思う。

エメリがそれを全然やってないとは思わない。

エメリの場合は、むしろキツそうな試合で逆に攻撃に積極的なシステムで臨むという、いかにも勝負師っぽいことを何度かやったのが印象的で、それもまたアリだとは思う。おもしろいし。

でも、エメリがアーセナルにやってきて、はっきりと「守ってカウンター」という戦い方をしたことはまだ一度もない。ボールを相手に預けることを厭わず、守備に集中し、蜂の一刺しで葬る。

エメリはそれをできないわけじゃない。採用していないだけだ。これはクラブにとってはカルチャーの問題でもあるからアーセナルでそれをやることは簡単じゃないのは確かだが、オプションのひとつではあるべきだと思う。

アーセナルの問題はいつだって攻撃より守備なのだ。今シーズンが始まる前、エメリの最大のタスクはヴェンゲル時代の守備の改善だと誰もが云ったが、いまだに大きく改善されておらずそこは課題でありつづけている。降格が決まっているハダースフィールドやフラムですらやっている、アウェイでのクリンシートを唯一キープできていないPLチームがわれわれなのだ。

ヴェンゲルさんも守備の問題を放置して「得点できないことが問題」と云っていたので、ある意味エメリはアーセンの意志を正統に引き継いでいるとも云えるが、それはぼくは負の遺産だと思う。バランスを欠いている。

失点以上に得点すればいいというクライフイズム?もいい。攻撃こそがアーセナルの哲学だというのなら、それも美しいと思う。でもそれでいつまでも勝てないアーセナルを見るのはほんとにツラい。

4、そもそも並のチーム説

これちょっと笑えるんだけど(笑えない)。

今季のアーセナルってホームのフォームが特別にいいってだけで、そもそも並のチームなんじゃね?って説がある。

下の図はTMより。ホームテーブル。今季ここまでアーセナルのホームでの成績はシティ、リヴァプールに次ぐ3位。ポイントは2位と並んでいる(アーセナルが1試合多い)。ホームだけならタイトルを争っているレベル。

18/19PLホームテーブル(Week32)

一方こちらがアウェイテーブル。

18/19PLアウェイテーブル(Week32)

レスター、ワトフォード、ウォルヴズといったPLの第三集団よりも下の10位。すっかりPLの中位クラブである。

これもまた7amkickoffが云っていたことだけれど、とくに今季の前半、アーセナルはさんざん云われていたようにxG(予想されたゴール)に対して実際の得点が多すぎた。想定されるポイントを大きく上回るポイントを稼いでいたので、シーズン序盤の22戦無敗は実力に見合わないラッキーなものであり「まぐれ」の可能性が高いこと。

もちろん運も実力の内のうちだし、それがエメリ効果じゃなかったなんてことは誰にも云えない。けど、そういったことを疑われてしまうようなデータが存在しているということだ。

先日話題になっていた、今季アーセナルの異様に高いコンヴァージョンレート。「23.1%」はOptaがデータを取り始めて以来で史上最高という。昨シーズン100ポインツ取って優勝した2位のマンシティが20.7%なのだから、これがいかに突出した数字かということ。

これはわれわれにとっては効率の良さを喜ぶべきスタッツでもあるが、同時に継続性には疑問が残るスタッツでもある。ダントツで史上最高ということは、奇跡的に突出していて、いわばちょっとおかしな数字なのだ。

つまり、アーセナルの実力は元からPL中位レベルしかなかったのではないかということ。アウェイテーブルのほうがほんとうの実力を反映しているんじゃないかということ。少なくともこの異様に高いCVがなければいまの位置にはいない。

いま、レスターやワトフォード、ウォルヴズといったチームにアウェイで勝てるかどうか戦々恐々としているという事実が、われわれのクオリティを物語ってもいる。PL全体のレベルが上がっているとも云われれるが、たしかに以前なら勝てるかどうかここまで憂えるような相手ではなかった。

データが示唆していることは、アーセナルのほんとうの実力はせいぜいPLで「中の上」レベルであること。トップ4フィニッシュできないなんて当たり前なのである。

アーセナルがCLで戦うべきクラブだなんて、一体いつから錯覚していた?

5、全部入り

1~4すべてがアウェイマッチで低迷している理由だ!

タマがなくて、しょぼい選手しかおらず、とるべき戦術も不適切で、じつはELを目指すくらいのクラブ。

なんか雑だな。うん、原因4つじゃ半端だから5つにしたかっただけなんだ。ごめんね。

でも自分で書いていて落ち込んできたよ。もう終わろう。

以上。



今シーズン、アウェイは残り4試合

最後まで数ポイント差の戦いになりそうな今季のトップ4争い。ここからはまさに血の1ポイントだ。

アーセナルにはあとアウェイが4試合があって、来シーズンにCLに出られるかどうかはその結果次第という厳しい状況だ。

エメリがこの喫緊の課題にどのような対処をするか注目が集まるが、実際のところ上に挙げたもののなかでエメリが使えるのは、3の「システム・フォーメーション・タクティクス」しかない。

ぼくはエメリのアウェイでの工夫が見たい。

4 Comments on “アーセナルがアウェイで勝てない5つの理由

  1. 確かに今季のアーセナルは並のチームである。ただエメリにはもう何度かの移籍市場が与えられるべきだろう。

    彼が就任して最初の移籍市場でレノ、パパ、グエンドゥジ、トレイラらを加え、少なくとも昨年よりも勝ち点を増やすことに成功しそうであり、。我々には彼らのような優れた選手を見出せるスカウトがいるのだから。

    ……え?もういないの?

  2. いつも以上に納得してしまぃました。
    ベストメンバーで戦えないとゆうのは確かにあると思います。ジャカをフルバックで使ったりしてたし。
    ただケガしない選手への憧れはずっとありますよね。グーナーってロシツキ、ロビン、ジャック、やディアビなどフルシーズン戦うことがほぼ奇跡みたいな選手ばかり見てきてるのでマヒしちゃってるのかも、ラムジーもそう。とにかくケガしない頼りなる選手がほしい。フレイザーなんかかなりいいと思います。タマもありそうだし。
    選手のクオリティとか言うなら確かにプレミアは難しいリーグですよ、だって現状降格決定のフラムだって開幕前にはかなりの額(たぶんうちより多かったような)を投資できるんですもの。ウルブスなんかかなりのメンバーですよ。ビッグクラブとしての違いを見せるのは、もう本物のワールドクラス以外は監督の采配だと思います。エメリはかなりいいと思います。とにかく結果を出してほしいし、ディーニに負けたくない。

  3. 私は断然、タマ無し説に1票です。
    ロイキーンとは言わずとも、パーラーやヴィエラがいた時代と比べると圧倒的にリーダーシップが足らない。
    逆境を跳ね返す、むしろアウェーのブーイングも力に変えるくらいの根性がこの15年無いんです。
    それこそ催眠術にでもかけて歓声と錯覚するくらいの感じでアウェーに乗り込んで欲しいですね。

  4. そもそもなんでホームだと有利なんでしょう?
    360度ファンに囲まれてるからでしょうか?だったらアウェイで勝てないのは(不利なのは)ファンが少ないからってことになりますが...

Leave a Reply

Your email address will not be published.