hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Emery, Wenger

アーセナルを退団後、休暇を満喫するウナイ・エメリ。競争の世界に戻るエナジー

元気そうでよかった

ぼくはこのブログでも、アーセナルがいつまでたってもうまくいかないイライラからついヒートアップして、彼をさんざん役立たずだとか無能とかこき下ろしてきた。また、彼がアーセナルから去った時点ではそうとうイルな気分&ネガティヴに消耗していたので、アルテタの興奮もあって、その後の彼の動きについては横目で見ながらフォロウする気がまったく起きなかった。このブログに書かなかっただけではなく、彼に関する記事や話題そのものにほとんど目を通していなかった。

だから、ウーナイのことばをまともに読んだのはこれが久しぶりのことで、正直ほっとしている。元気そうでよかったと。アーセナルFCのヘッドコーチとしてはたいそう憎んだものだが、もちろん彼という人間を恨んでるわけじゃあない。

それとPSGでもアーセナルでもあまりファンともいい別れ方はしていないはずの彼が、古巣を悪く云うことは決してないという徳の高い人間性にも感心している。ネイマール、エンバッペ、エジルについて訊かれても、ちゃんとことばを選んでいる印象がある。ほんとうにナイスなひとだ。

発言内容について

しゃべっている内容については、いろいろおもしろいけど、なにかとくに珍しいことを云っているわけでもない。

チームマネジメントなどについて語っている部分では彼の変わらぬ考え方が見られるし、結局さいごはPSGでもアーセナルでも、ビッグプレイヤーズたちとのコミュニケイションに焦点が当たってしまうことになってしまったけれど、これからどこへ行っても変わらぬやり方をするのだろう。

つぎはキャパシティに合ったより小さな規模のチームを選べば、きっととても強い、ビッグチームが対戦するのが嫌になるようなチームをつくるに違いない。ウーナイに幸あらんことを。

それとアーセナルのファンにとっては、もっとも気になる発言「ファンがわたしを追い出した(they threw me out)」のくだりについて。

スペイン語→英語訳の“They threw me out”は、英語メディアがみんなそのフレイズで報じていたので翻訳に間違いはないのだろうが、そこからのぼくの日本語訳「彼らがわたしを追い出した」については、いい訳かどうか自信がない。まあとにかくなんか「投げた」ってイメイジで。

長い休暇から戻るためのエナジー

さて、エメリも話しているようにAFCを退団した直後は、実際にいくつかオファーが来ていたということ。エメリはすぐに新しいクラブを見つけるのではないかとも思われていたし、受ける可能性もあったのかもしれない。(※どこのイタリアンクラブかは教えないってミランでしょ?笑)

しかし、そういったオファーがありながら、いまこの16年で最長という休暇を取っており、このインタヴューの口ぶりからするととてもリラックスした様子。厳しい競争の世界から離れて、こころから落ち着いた休暇を満喫しているふうにも感じる。

おそらくは、彼がアーセナルを辞めてから先月くらいまでがヘッドコーチを引き受けるにはふさわしいタイミングで、それが過ぎたいま今シーズンはもうフットボールの仕事をする気はないということなのではないだろうか。電話もなるべく取らないようにしているというし。夏までの長期休暇と割り切れば、それはリラックスもできようというものだ。

ぼくが興味深く思っているのは、ああいった身を削るようなインテンスな環境から一転して、長期休暇というぬるま湯にひたってから、もう一度もといた場所に戻っていくのがいかに大変かということ。

たとえば、アーセン・ヴェンゲルさんを思い出す。

彼はアーセナルを退団してから、高齢にも関わらず、フットボールマネージャーの仕事への意欲をことあるごとに語っていた。

引き合いもそれなりにあるとも云われていたが、しかし一向に競争の世界に戻りそうな気配はなく。たしか、クラブフットボールではなく、どこかのナショナルチームへ行くかもみたいなトーンダウンした談話もあったはず。

そうしたなかで、結局ヴェンゲルさんが選んだのはFIFAの職(Chief of Global Football Development)だったことはご存知のとおり。

Who We Are – News – Wenger announces launch of FIFA’s groundbreaking talent development programme – FIFA.com

このようなフットボール世界のより高位の場所での仕事は、こういってはなんだがヴェンゲルさんのイメイジにとても似合っている。

この仕事がFIFAという組織のなかでどれくらいの重要度があるかはわからないが、ヴェンゲルさんの世界的な知名度を考えれば軽い職でもないだろう。そんなポジションについたこのあとで、彼がたとえばCLでプレイするようなトップレヴェルのクラブのマネージャーをもう一度やるような未来はちょっと想像しにくい。

思うのは、ヴェンゲルさんもAFC退団当初は長く落ち着くつもりはなかった。すぐに別のリーグ、別のクラブで、また身を焦がすようなヒリヒリするようなインテンスな環境でフットボールを続けるつもりだった。football addictを自認する元ボスなら当然の考えだ。

しかし、大きな決断をせずリラックスして過ごす時間が長くなるにつれ、どんどんと日常に埋没していき、ついには最高に厳しい場所に戻るエナジーあるいはモチヴェイションを失ってしまった。そんなところではなかろうか(まあ日常といっても世界中を飛び回ってありとあらゆるイヴェントに顔を出すヴェンゲルさんの日常は、一般人にとっては目の回るような忙しさだろうが)。そんなふうに想像してみる。

卑近な例ですまないが、たとえばわれらだって夏休みとか冬休みみたいなレヴェルのお休みのあと学校や仕事に行くのに苦労するのだから、それがヨーロッパのトップリーグで、四六時中、世界中から批評の目にさらされるようないわば「戦場」への復帰となれば、その難しさはもう想像もできない。一度安全地帯に身をおいてからならなおさらである。

エメリはヴェンゲルさんよりはまだだいぶ若いので、半年かそこら落ち着いた程度で仕事へのモチヴェイションを失ったりはしないだろうが、PSGとアーセナルという世界でも有数のビッグクラブであれだけの厳しい批判にさらされてきたのだから、またその戦場世界に戻るというのはそうとうな覚悟とエナジーが必要なんだろうなと。そう思わずにいられない。

フットボールのマネージャーってすごい仕事ですね。

 

おわる



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

2 Comments on “アーセナルを退団後、休暇を満喫するウナイ・エメリ。競争の世界に戻るエナジー

  1. 一般人からすると、正直スポーツを職業とする、というのはどんなことなのかいまいち想像がつきません。その監督、というのもまた想像つきません。
    ただ、アーセナルという全世界的に名の知れ渡っているクラブの監督のプレッシャーは計り知れないものだろう、という事は分かります。どのくらいかは想像できませんが。
    エメリはアーセナルでは上手くいきませんでしたが、アーセナルを指揮してくれたこと、本当にお疲れさまでしたと思っています。次はどのクラブに行くかは分かりませんが、心から成功してほしいです。
    ヴェンゲルの退任後の例え、とても分かりやすかったです。

  2. インタビューを見ても知的な監督ではあると思うけども
    結局、戦術なんて選手が踊るか踊らないかだと思うんだよなあ
    ボロボロだったレアルがジダンで立ち直る度により思う

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *