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Arsenal, Arteta

ミケル・アルテタの淀みないメッセージ

アルテタの仕事への集中、断固たる姿勢

それにしても、動画でみるとよくわかるが、質問に対して、アルテタはほとんどよどみなく立て板に水という感じにしゃべっている。

ライティも本人に伝えているように、彼のことばは簡潔で知的でやる気に満ちている。試合ごとのプレスカンファレンスやほかのインタヴューでもそうだが、彼の話は毎回そんな感じだ。

それは彼がもともと賢いだとか優秀だということもあるだろうが、彼のトークがいつもインプレッシヴなのは、ぼくは彼がいかに自分の仕事に集中しているかの証拠じゃないかと思った。

彼は自分の仕事に200%集中していて、毎日ずっとそのことを考えている。だから、質問されればどのような質問にも答えられるし、話す内容には整然としており、誰よりもそれについて長く考えていることが伺える深みがある。

ここでこんなことを書くとひんしゅくを買いそうですまない。ぼくはこのアルテタのインタヴューを見ていて、最近の日本の首相の会見での受け答えを想起してしまった。事前に準備された質問にしか満足に答えられず、いざ想定外の質問が来るとしどろもどろ。国会でも会見でも、原稿がないと何かを語ることができない。自分のことばがないのでメッセイジが伝わらない。伝える熱意と云えばいいのか。そういったものは必ず聞き手に伝わってくるものだ。

先日はあろうことか、いま総理大臣がもっとも注力せねばならない新型コロナウィルスについて、直近の感染者数を即答できないという失態。国民の生命がかかっている問題の対策本部の長がそれを把握していないということは、大スキャンダルになってもおかしくはないほどの失態に思えるが、この政権ではあまりにもひどいことが続いていて大きな問題にもなっていない。ぼくらは相次ぐ非常識にどこか感覚が麻痺してしまっている。悲しいことだ。

ここで生来の素質や資質みたいなことを問いたくはない。その違いは、やっぱり仕事に対する集中度だと思うのだ。姿勢と云ってもいい。その課題や問題についてどれだけ熱心に、深く、真剣に考えているか。どう自分ごととして取り組んでいるか。

ミケル・アルテタの語り口には、普段からのそうした姿勢がよく見える。

規模も複雑さも難しさも、何もかもがまったく違う政治とスポーツを同列に語ることは正しいとは思わない。しかし、そこで求められている「リーダーシップ」は近いものがあるのではなかろうか。

自分たちが住んでいるこの国が今後どうなるのか心配しているし、アーセナルFCがこれからどうなるのかも心配。不安定な状況のなか、とにかくこれからの行末を案じていて、そうしたときこそ期待されるのが事態を打開できるリーダーシップであり。そこに大きな違いはないように思う。

課題があれば改善し、未来への道筋を示すこと。自分たちにふさわしいやり方で、責任を持って決断する。

おれたちのボスがミケル・アルテタでほんとうによかったと、思わずにいられない。

クラブへの愛情

もうひとつ、ボスを称賛したいのはやはりクラブへの愛情だ。

今回興味深いのは、選手の慰留(引き止め)や勧誘で、彼らを説得する必要すらないと話していること。なぜならわれわれはアーセナルだから。

これまでにも似たような話はしている。でもあらためて、こんなにファンがうれしいことばもあるだろうかと実感した。理由なんかなくたってファン全体が共有できる価値観。

まあ理想論ではある。現実ではいろいろな状況があって(オバメヤンを引き止めるために何でもするとアルテタは云ったこともある)、いつもアーセナルだからと何もしないわけにはいかないだろうが、でも基本的な考え方はいつもそうでなければならないはず。

いと尊きクラブの価値を誰よりも理解しているし、自分たちがそれをレペゼンしなければならないと。守り発展させ伝えていくのだと。そこにいるだけでもう特権であり、幸福なのだと。選手やスタッフはむしろそのことを理解しなきゃならない。

ヴェンゲルさんが辞めて以降、新マネージャーの選定において「クラブのカルチャーをよく知るもの」というのが選考上の要件のひとつになっていたと伝えられていたが、ぼくはあらためてそれが理解できたように感じている。クラブのカルチャーの根底にあるのは、アイデンティティ。そしてラヴとユニティ。とくにアイデンティティについては、本質的なことを理解するにはやはり時間がかかるのだろう。ウナイ・エメリ氏がいい例だ。

自分たちが誰であるか、何者であるかの理解。お互いを愛し、リスペクトし、結束する。断固たる決意。

アルテタのアーセナルはそこで一本筋が通っているので、進むべく道に迷いがないし、強い。

ぼくらは愛で結ばれていたんだ。やったー。最後に愛は勝つ(なんだっけこれ?)。



ではここで一曲お聴きいただきましょう。ラヴとユニティといえばBob Marley。『One Love』。

学生時代に「やっと“ワンラブ”の意味がわかった」と話していた先輩を思い出す。なにかキメていたのかもしれない。

あれから長いときがたち、ぼくはいまやっとわかった。ありがとう先輩。ありがとうボス。

ありがとついでにもう一曲。コーラスが美しいBloodstoneのオリジナル(1973)も捨てがたいですが。

2018年に亡くなってしまっていたClaudia Fontaineで『Natural High』。

 

おわり

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

4 Comments on “ミケル・アルテタの淀みないメッセージ

  1. 一言。
    各国首脳、法王の公的な会見や演説にはプロンプターというカンペみたいなものが使用されますので、全く別物ですよ。公に決定された事を伝える場ですから私見や感情は基本必要とされません。もしご存知でしたらすみません。

  2. オススメ曲で締めるの良いですね。文章に加えて主さんの気分も伝わります。高まった時はまた是非!

  3. 正直言うとペップの英語の語学力がそこまでなので彼のインタビューや会見をそこまで追ってないけど、アルテタはもっとclearなコメントするし、よりtutorチックな感がある。
    (現役時代からだけど)そこまでジョーク好きでもないかな 笑

    今後財務状況がどうなるにしろ、若手をより一層起用していくのは間違いなさそうで、そこに関してサッカー選手として戦術的にも育成的にも、そして何よりアーセナルManとしても成熟させれそうなアルテタを監督にしたのは本当に大きいとしみじみ感じます。

    メルテザッカーも今後指導者として長くアーセナルに貢献してくれそうだし、
    パニックバイと呼ばれたあの補強でもアルテタ、メルテを迎えれた。。
    今夏移籍市場でどうなろうが、パニックとは騒ぎたくないですねえー

  4. サカの契約の件でアルテタが「それはクラブの仕事」って言ってたのが理解できたような気がする。スタートラインを下げたくないって話なのかな。
    政治的な存在であることの多い監督業に対して、アルテタはもっと純粋にサッカー本位なのかも。それがアルテタの魅力なのかなって思った。

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