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【マッチレビュー】19/20EPL トッナム・ホットスパー vs アーセナル(12/Jul/2020)見慣れた光景

試合の論点

ToT vs アーセナルのトーキングポインツ。

見慣れたアーセナル1 ディフェンダーの個人エラー

コラシナツのミスパスと、ルイスのカヴァリングのスピード不足。アーセナルにとって失点は不幸にもふたつのエラーが重なった結果だが、モウリーニョはこれを期待していたかもしれない。

この試合のなかでルイスはこのシーン以外でも何度か危ないプレイを見せていたし、コラシナツのパスはいつもどおりで安定せず。ムスタフィは終盤にはアルテタ前に戻ってしまったみたいな笑える(※笑えない)プレイを何度も披露。「out of contextなんちゃら」みたいなアカウントにミームネタをたくさん提供していた。まったくのお笑いCB3人であった。

ここしばらくは安定した守備を見せていた選手たちだけに、今回のプレイにはほんとうにがっかりさせられた。

今回は彼らの個人エラーが高くついたというのは確かだろうが、一方でジョゼのゲイムプランを褒めることもできる。

彼らは基本的に2アップトップ(ケインとソン)で、アーセナルのバックの数に対して数的不利は自明なためインテンスなプレッシングは行ってこなかったが、それでも彼らがミスするところを虎視眈々と狙っていたように見えた。

ふたりがCBの3人のまわりをつねにうろうろし、後ろはおそらく8人でブロックをつくり、ヴァーチカルパスを入れるスペイスを与えず。後ろで回す機会を増やし、ミスをすれば一気に突く。

逆にハイプレッシングが中途半端だったため、ルイスやムスティがボールを持って少し余裕ができたことで、前にボールを出すのか、あるいはスクエアパスに逃げるのか判断に迷う場面が何度もあり、そこで少しでも時間をかければすぐに詰められていた。あれがモウリーニョの意図的な戦略だったとしたら、けっこうすごいことだと思う。

CBを狙うというのは、アーセナルのCBが試合のうちに何度かやらかすことを想定していれば妥当なプランである。そして実際にそれは起きた。

ルイス、ムスタフィ、コラシナツの現在の3人のCBのうち、もっとも大きな問題はコラシナツだろうと思われるが、試合後にアルテタは「どうしてホールディングを使わないのか」とプレスからツッコまれていた。3人の守備はここしばらく安定していたからだと答えたが、ほんとうの答えは彼が左足じゃないからだろう。

左サイドにはどうしても左足を置きたいのがミケル流で、アーセナルに来た当初ジャカをLCBに置いた理由もそれに違いなく。やはりパブロ・マリーの離脱がかなり痛かった。彼がいれば彼がLCBでプレイしていたはずだ。

そういう意味では、コラシナツのようなウィングバック専の選手をCBで起用せざるを得ない、いまの状況に同情の余地はある。

ただ、ムスタフィがいい例だが、今回のパフォーマンスを見ていて、アルテタが既存の選手をやや買いかぶり過ぎていることも否めないように感じた。

ルイスやムスタフィはここ数試合でもレデンプションしているように見えたが、今回のムスタフィの終盤のパフォーマンス(ケインの対応)はアルテタを失望させるには十分すぎるものだったろう。PLのトップレヴェルであんなプレイを見せてくれるCBがほかに何人いるか? Sky Sportsのコメンタリは「shocking defending…」とことばをなくしていた(笑い)。

リヴァプールがVVD(とアリソン)を入れて劇的に守備パフォーマンスを改善させたように、あるいはマンUがブルーノ・フェルナンデスが入っただけで、あんなにも好調になったように、一部選手が変わっただけでチームは劇的に変化しうることも事実。

アルテタとクラブには、夏には正しい補強だけでなく、正しい既存戦力の見極めをしてもらいたいと願わずにはいられない。

アルテタが来てからのムスタフィやルイスのストーリーはたしかに美談には違いないが、彼らのような選手を信じすぎるとこんなふうに痛い目に会うといういい教訓かもしれない。ファンの多くは「やっぱりやらかした」と思ったに違いない。

選手には絶対的なクオリティというものがあり、誰もが平等ではないというのは非常に悲しい現実で、そしてチームにはそれこそが決定的だ。

このチームはいま前に向かって進歩していると信じていたのだから、この個人エラーはよけいに痛かった。

ムスタフィのサイドが狙われていたという指摘。まっとうな戦略。

今シーズンのアーセナルの失点のうち45%はセットピースから。PLでワースト。

セットピース守備についてはそれを個人エラーと捉えていいかどうかは微妙なところか。

見慣れたアーセナル2 終盤の失点

90分のパフォーマンスの一貫性/継続性については、ここしばらくはアーセナルの毎試合のテーマだと思って観ている。

そして今回はまた残り10分を切ってから失点。逆転の一撃で、アウェイチームが意気消沈するには十分。またしても課題が浮き彫りになる結果となってしまった。

アーセナルは今シーズンのPLで、ウィニングポジションから21ポインツを落としている。ウェスト・ハムについでワースト2位。

なんとそのうち15ポインツはアルテタ以降。もちろんPLでワースト。

「15ポインツ」というのは5試合分の勝ちポインツである。5試合で逆転敗けと同じ。すごいデータである。90分の一貫性のなさが尋常じゃない。

今回アルテタは疲労による集中力についても示唆しているが、ぼくが観ていた感じでは、ある時間帯ではむしろToTのほうが疲れているように見えた。疲労はいい訳にはならないだろう。

先行したら最後までそのリードを守りきらねばならないし、それができずどうしても失点するというのなら、そこまでにそれだけの得点差をつけていなければならない。

見慣れたアーセナル3 MFのクリエイション不足「ラムジー問題」

アルテタはエラーさえなければ、いまのチームでもたくさんの試合に勝てているはずと云っているが、果たしてそうだろうか。

たしかにこれまでそういう試合もあったし(もしかしたら今回も)、ある部分では賛成できる。が、ある部分では賛成できない。なぜならアーセナルは十分な得点チャンスをつくれていないからだ。全般的に競争力の高まっているPLで勝つには、もはや1得点では十分ではないことは、アルテタ自身がこれまでに何度も指摘していることだ。

今回も63%とポゼッションでは優位にたちながら、試合の総xG(チャンスのクオリティ)でも、4割もボールを持てなかったホームチームに倍以上の差をつけられている。

得点はともかく、今シーズンのアーセナルは全般的にチャンスをつくれないチームになっている(この試合のBCはなんとゼロである)。

DFのクオリティ不足などアーセナルの問題は山積しているが、試合後にはその最大の問題はチャンス不足ではないかと「クリエイトできるMFがいない問題」、別名「ラムジー問題」がまたまたクロースアップされている。

今シーズンのPLでのBCをひとつ以上クリエイトしたMFは、アーセナルにひとりとていない。1月からローンでハダースフィールド・タウンでプレイしているESRが4つもクリエイトしているのに。

以下、アーセナルのチャンスクリエイションの少なさとMFの攻撃貢献の低さデータ。Arseblogより要約。

  • 今回アーセナルが69%ものポゼッションを維持しながら得点チャンスにまったく結び付けられず。前半7本のシュートでプライムロケイション(10メーター以内)からはゼロ。7本の合計xGは0.6。
  • 今シーズン、アーセナルのMF(AM以外)は、試合ごとのキーパスがたったの「0.86」しかない。これは選手ごとでなく選手全体で。PLで14位の少なさ。試合ごとのxAでは、なんと「0.06」。これはリーグ19位でこれより悪いのはノリッチしかいない。
  • MFによるオープンプレイからの(※セットピースを含まない)試合ごとシュートは「0.48」。リーグ19位。
  • ボックスでのタッチも極端に少ない。試合ごとのタッチは「1.3」。リーグ17位。

このあたりの数字はリーグでもほとんどワーストである。トップ6のなかではなく、リーグ全体で。

ボックスでのタッチが少ないというのは、要するにボックスに侵入すらしていないということ。MFの得点に対する積極性自体に問題があるということだろう。

アーセナルの、とくにMFの攻撃への貢献のなさはあまりにも深刻に思える。ダブルピヴォ+No.10でプレイするときはともかく、3MFでプレイすることもあるなかで、そのなかにひとりもクリエイティヴな選手がいない。われわれはこれまで長いことクリエイティヴなMFがいるクラブだと思われてきたのだから、なおさらだ。

誰かが云っていたが、かつてはウィルシャー、ロシッキー、ナスリ、ファブレガス、アーシャヴィン、ラムジー、ディアビが同じスクワッドにいたクラブだ。クリエイティヴィティのかたまりだった(当時はそれとはまた別の問題は指摘されていたが)。その当時を思えば、いまの状況はまるで悪夢のようだ。フットボールがつまらないわけである。

選手が変わるだけでチームが豹変する例として、先にブルーノ・フェルナンデスを挙げたが、アーセナルにとってクリエイティヴなMFの補強プライオリティは、われわれが思っているよりもよほど高いのかもしれない。

逆に、いまのマンUを見れば、ひとり優秀な選手が入るだけでも大きな効果が見込める可能性がある。

来シーズンのチームの浮沈は、夏の補強にかかっているといっても過言ではない。金がないのに。

CB、DMにクリエイティヴなAM。あまりにも重要で、考えたら胃が痛くなってきた(笑い)。

 

そういえば、KSEがアーセナルの負債を肩代わりして利子分(けっこうでかい)が浮くとかなんとかで、夏の資金が増えるのではないかという話題になっている件があるが、その件は落ち着いたらあらためて書こう。

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12 Comments on “【マッチレビュー】19/20EPL トッナム・ホットスパー vs アーセナル(12/Jul/2020)見慣れた光景

  1. やっぱりやらかした!と思いましたね。
    ただ失点直後に大崩れした訳でも無く「おめーらのヘマは計算ずくで、税金みてーなもんだ」とトドメの一撃を期待したんですがね。。
    オバ・ラカ・ぺぺの夢のフロント3は今んとこ、あんまりハマって無いような。
    限られた手駒でのベストだったんだとは思いますが。
    それぞれに一発を持ってるんで(ラカのゴラッソは目が覚めた!)なんとかなる日もあるけど、ここまで圧倒したという試合も無く。
    ぺぺはここまでPL5G/5A
    ジェルビーニョの一年目がPL4G/6A
    単純に数字で判断するのは愚かかも知れないけど、やはり高いジェルビーニョで終わってしまうんじゃという、一抹の不安。。
    ※圧倒的な可愛さはぺぺなのは言わずもがな

    たられば、は何の意味もないけれど1vs0で勝っていたなら賞賛された選手は何人も居ただろうなぁ。
    COYG

  2. 既に言及していたら申し訳ないんだけど、サリバは使えないの?

  3. やはり得点力が低すぎるのが一番の問題ですね。オーバ、ラカという高コンバージョンの選手に隠れてましたけど、ボックス内にワンツーで侵入するようなシーンとか一試合で一回あるか?ってくらいですもんね。

    セバージョスとベジェリンはわりかし斜めに動いたりして可能性感じるんですけど、もう一人絡めたら崩せると思うんですけどねぇ。

    セットプレーについては、シティも同じゾーンでの守備なのにうちほどひどくないのは、やはり個人の能力ですかねえ。反射神経とか身体能力とか、危険なポジションを察知する勘というかセンスみたいなものがもろに出ますもんね。

    昨年末の暗黒時代に比べたらかなり改善してるだけ希望が持てるので、アルテタには辛抱強くがんばってもらいたい。

  4. もうこうなると、エメリが悪かったというよりは、昨夏の移籍市場での方針がまるっきりおかしくて、今シーズンのスカッド構成が根本問題だったようですね。キャプテンシーを無視した選手の入れ替え等々。
    監督の交替でなんとかなる部分でないところで劣っている気がします。

    アルテタになってもエジルは干されますし、U字のビルドアップは相変わらず多いですし、アルテタの不可思議なこだわりみたいものも見えてきましたが、結局は選手・ファンが納得して浮上を待てるかどうかなんでしょう。

  5. ユナイテッドはマグワイアとリンデロフが安定して、著しく失点が改善(1試合1点未満)されたので悪い時期があっても持ちこたえられたんだけどね
    ブルーノフェルナンデスが加入しようと去年のザル守備ならこの状況はなかったよ

    今までのDF擁護で言えば、「あれだけ攻められればDF(DMF)もミスする、ルイスやジャカが悪いと言うより、ポゼッションできなかったせい」らしいけど
    鳥は守りきったし、むしろこれが普通で、あんなに個人ミスから失点するのはアーセナルくらいだから

  6. 丸一年後にこれだったら絶望ですね。
    選手一人一人の質の低さをアルテタは戦術でカバーしてると思います。
    ビッグマッチでは隠しきれない個の能力の低さは見ててツラいですね。
    だからと言ってエメリが悪いのは揺るがない事実です。
    アルテタが今急に解任されたとしてエメリのようにアーセナルの悪口言うことはないでしょう。
    アルテタの懸命な姿勢を見ててあと2年は信じたいと思います。

  7. 昨シーズンのショー、リンデロフ、スモーリング、ヤングの最終ラインだったら今でも50失点位してるだろうし

    オーバやペペ、サカ、エンケティア、ラカゼットが出てくる攻撃陣のメンツはユナイテッドより強いと思う
    ポグバ、マティッチの調子の浮き沈み激しい(欠場も多い)中盤はイマイチだった昨年と変わらないし

  8. アルテタが来て、選手は間違いなく気持ちもプレイもいい方に変わったと思います。それに乗れない選手もいますが。
    クリーンシート中にはあの3CB ですら生まれ変わったと錯覚してましたし。
    アーセナルの試合しか見てませんが、これだけ個人エラーで失点するチームってほかにあるんですかね。セットプレイの度に失点を繰り返すチームも。
    マリがいたら使われてたんだろうな。
    レノが復帰したらどちらかをストッパーで使ったほうがいいかもですね。
    CB を三枚使うと中盤の選手が一人減るわけで、いろいろ問題が出てますよね。
    くすぶってるラムジーのローンバックかな。
    ベジェはだんだんよくなってきてると思いました。

  9. サリバとかラムジーのローンバック(?)
    とかもう皆さんの失意の混乱が透けて見えて辛い。。

    いや、わかってたわな。DFでもクオリティ不足なの。
    だからマリな訳だし、来季からのサリバな訳だし。
    MFだってトレイラをうまく活用できないなか、セバージョスがやってくれてるが、得点面ではそこまで。。
    中盤が点とれないなら、得点で貢献するのはペペでもあって、そこまでな今季。、
    少しずつは良くなってる感じあるけどね。。

    まだまだ我慢できるから、アルテタにはちょっと早いけどスカッド整理を見据えた布陣見せて欲しい。

  10. ボールを保持しているという点に関して、
    ボールを保持していても得点もできず、さらにエネルギーを相手より使わされていては意味がないように思います。
    相手がボールを奪いにくるのに1のエネルギーを使っていたとして、それを躱すのに2や3のエネルギーを使っているという場面がある。この試合では多かっただろう。持たされているというかそれで体力を消費させられている場面というのは。
    それによって後半になるにつれ体力的に苦しくなっていくという傾向はあるように思います。元々走ってなかったのを走るようにしたのもあるし。

    最近試合を通しての支配、押し込まれる時間帯などにも言及されている件で、
    自分は相手にボールを持たれる時間や(見た目に)押し込まれるような時間帯はあって良いと思います。そこで失点しなければ。ただまぁ相手に持たれると失点してしまうのが今のDFのアレなのかもしれないが…
    ボールを保持してる状態で相手にエネルギーを使わせることが出来るようになればここに対する意見も変わるかもしれないけど、今のところそれは全く見られない。
    ボールを保持することが割と出来ているというのは一時期に比べるといい事なのだろう。1つのステップだと思います。
    ボール支配の主導権の奪い合いでエネルギーが必要なのも必然ではあるし、そこで勝てるようになったこと自体も進歩なのだろう。

    相手に持たせてエネルギーを使わせる、自分達の消費を抑える、ボールを保持して相手にエネルギーを使わせる、消費を抑える、相手のミスを誘ってエネルギーを使わせる、もっと色々やり方はあるんだろうけど、今のところどれも少なくとも意図的には出来ていないように思います。
    それも次のステップなのかもしれないですね。

  11. アルテタが既存の選手を買いかぶり過ぎかもという点は同じく懸念しますね。
    ムスタフィは前の試合でも60分過ぎくらいからこの試合の最後の方と割と同じ感じでしたし、それでも他に使える選手がいないんだろうけど…あれが見逃されていないことを願う。
    コラシナツのとこにホールディング議論は勿論だけど、なんならマリでも正直不足だと思います。この試合のような失点の仕方(セットプレー含め)はしなかったかもしれないけど、ケガした時の場面とかはもう完全に抜かれてたし。といってもいないのだから仕方ないんですが。

    あと、選手交代のタイミングはずっと遅い傾向にあると思ってます。ある選手のパフォーマンスが落ちてきてもその試合のある時間帯までは良かったという意味合いで余分に引っ張ることがある。それで後手になることはもうすでに多々あった気がする。
    試合中の選手のパフォーマンスの見極めもしてもらいたい。この試合の選手交代にも個人的には疑問を感じました。

    まぁ色々批判的なこと書いてますが戦術やプレイの仕方、姿勢としては前に進んでいると思います。そういう意味ではよくやっていると。
    選手起用(ポジション含め)及び見極めの懸念、補強、この辺りが今後どうなるのか。といっても望んでも望む通りの補強が出来ないかもしれないしなぁ。

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