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ウィリアム・サリバが東京オリンピックへ。アーセナルでの将来に暗雲

問われているのはクラブの一貫したポリシー

ところでアーセナルはこの5年で、Serge Gnabry、Donyell Malen、Ismael Bennacer、Yunus Musahを合計£8M以下で手放していて、その後彼らのMV総額は£200Mほどにもなったそうである(※いまは下がっている)。

マンUがポグバやピケ、チェルシーがサラーやKDB、シティがサンチョを放出するなど、どんなクラブだって選手の見極めで判断を誤ることはある。

だが、自律経営を標榜するアーセナルのようなクラブほど賢い選手マネジメントが求められているクラブもない。金がない金がないといいながら、買うときはいつも高い買い物をさせられ、売るときはいいように買い叩かれ、自分のクラブにいるプロスペクトを正しく評価できず、放出してしまう。その結果、もうしばらくチームは思ったように強化できていない。5シーズン連続CLなしがそれを物語っている。

総額200M分のヤングプロスペクツをつぎつぎと手放し、総額100M以上のストライカーズのうちひとりはベンチで、クラブレコードで買った72Mのウィンガーはレギュラーポジションすら確保していない。

このままだとサリバは、そのような悪い選手マネジメントの最たる例のひとつになりかねないんじゃないか。

彼の場合、ぺぺのような選手と違うのは、プレイするチャンス自体がまったく与えられていないということ。去年半年チームにいたときですら、U-23に送られた。

ファンにとってもクラブにとっても悪夢は、サリバが退団してからトップDFとしてブレイクすることだろう。ほんとうに将来ヴァランのようになって、レアルやユーヴェのようなクラブが争奪戦。そのときアーセナルのファンはあたまをかきむしりたくなっているだろうが、そのときはもうエドゥもアルテタもクラブにいなくなっているとか。ペップ・グアルディオラが彼を欲しがるような未来が訪れたらそれこそほんとうに皮肉なことだ。

彼のこのような状況をクラブの過渡期ゆえの「アンラッキー」で片付けていいのかどうかは疑問に思う。

サリバを獲得したのはサンレヒとエメリで、いまはふたりともいなくなってしまった。クラブをめぐる状況はどんどん変わっているので、サリバがその犠牲になった側面は否めないし、彼のプロファイルがすでにいまのアーセナルに欲しいものではなくなっているというのなら、サンクコストとして諦めるしかないのかもしれない。随分と高い代償であるが。

だが、そういう大金で買った選手がすぐにいらなくなるみたいな行き当たりばったりがないように、クラブはアーセナルFCとして補強戦略にも確固たるポリシーやフィロソフィを持っていなきゃいけない。状況や文脈で揺るがないもの。

そのときのコーチに左右されるのではなく、従うのはあくまでクラブとしてのポリシー。コーチの人選だってクラブのポリシーありきでなきゃいけない。ヴェンゲルさんが去って以降、エメリもアルテタもマネジャーでなくヘッドコーチだったのはそういうことだ。少なくとも当初はそうしようという狙いはあった。ところが、現実は……

アルテタはエドゥらとともに、このクラブにとって利益になること、正しいことをやろうとしているといつも主張しているが、サリバのハンドリングを観ていると、彼らの云うことをそのまま鵜呑みにしていいのかどうか自信がなくなる。「アーセナルウェイ」はほんとうに同じヴィジョンとして全体で共有されているのか。

 

そういえば、ベンフィカがサリバに興味を持っているというニュースはちょっと笑ってしまった。だって、ベンフィカというのはワールズベストの「商売上手クラブ」であり、そんなクラブがいま彼を狙っているというのは、ガセネタにしてもなんだかおもしろい。

 

アーセナルについてのネガティヴ論調のエントリでは、いつも結論は似たようなものになってしまうが、要するに彼らがつねに求められているのは「クラブとしてのポリシーの一貫性」なのだよね。そうしたものがあれば、サリバのような例は今後は生まれにくいはずだし、そうしたものがなければ、サリバのようなことはいずれまた繰り返される。

誰でもが「アーセナルといったらアレ」とわかるような、フィロソフィとアイデンティティを確立したクラブにアーセナルはならねば(戻らねば)ならない。いまはほんとうに、なにがなんだかわからなくなった。

 

おわり



PS

ずいぶんとサリバに肩入れしているみたいに書いているけれど、ぼくが云いたいのは、サリバが大好きってことではなくて、このクラブで現在進行系で起きている矛盾みたいなことがサリバの件に凝縮されているように思えるというだけである。ふつうにおかしいだろっていう。

なんならべつに彼はここで売ったって文句はない。ホワイトを買う資金になればいい。ただ、いま売って損を出すのはほんとうに馬鹿げていると思う。まる2年もかけて、選手としてまともに扱わず、あれほど高評価のプロスペクトを自分たちでちょっとづつ価値を落としてきたことを認めるみたいなものだ。

現実的なところでは21-22はPLクラブへローン。そこで価値を高めてよりいい価格で売るかどうか。アーセナルでプレイするサリバを観たかったが、このままではそれはかないそうもない。

それとRCBの件で、最大の矛盾と思えるのはなぜそこだけすごくこだわるのかということ。

バックからのプレイとか、ボールプログレッションとか、アルテタがホワイトに期待している部分はよくわかる。たしかに彼が来るとかなり改善されそうだ。

でもだったらなぜ配球に難ありのGKを真っ先に問わないのかという疑問がある。オナナの件はそれ以降あまり伝えられていないし(まだオファーもしてないとか)、RCBの性能にそこまでこだわって、来シーズンGKがレノのままだったら、さすがに矛盾してるだろう。CBに50Mかけるようなシティ流をやるなら、エデルソンみたいなスーパーGKを熱烈に求めてなきゃおかしい。しかしGKをアップグレイドすることがアルテタのプライオリティとか、そういう話はとんと聞かない。

なんで?

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9 Comments on “ウィリアム・サリバが東京オリンピックへ。アーセナルでの将来に暗雲

  1. サリバにチャンスを与えるには、ほんの少しだけ守備的なサッカーをやる必要があると思う。それはサッカーが変化してきたからであり、サリバが急に守備的になったわけではないけれど。

    現状ではハイプレスが全盛で、ボールを保持して真っ正直にフットボールを組み立てようとするチームはことごとくUシェイプを強いられてる。スペイン代表ですらこの例外ではなく、これはハイプレスに対するポゼッションの敗北とも言えると思う。

    ではポゼッションサッカーがハイプレスに勝利する状況とはどんなものか?
    僕は2月のシティ戦が(反面教師として)そうじゃないかと思う。

    あの時アーセナルのハイプレスはシティに対してまったく通用しなかった。
    それはシティのCB・GKが「ボールを大きく動かしてるのに、まったく失わない」という矛盾した命題をクリアしてたからで、あれをやられるとハイプレスは全くと言っていいほど効果がない。

    もしアーセナルがあれを目指すなら、サリバを切ってベンホワイトが(+たぶんオナーナも)必要だろう。サリバも大きくボールを動かすことは稀にあるが、高確率で失わないとは言えない。

    ではサリバを活用する方法は?と言えば、たぶんシメオネがやってるサッカーだと思う。失点を減らせば得点を増やす必要はなく、そもそもポゼッションで相手を圧倒する必要そのものがない。

    僕は守備的なサッカーが好きなので、正直それでもいい。
    極論3バック併用で失点を減らす選択をするなら、レノ・ホールディング・サリバは世界中探してもめったにいない逸材だ。
    正味な話、僕はこれで世界の頂点を目指す方法だってないことはないと思ってる。

    でもだからこそ、なのだ。
    1人のOBがチームに戻ってきて、1つの原則を持ち込む。それだけで全てを変えていいのか?一貫性とは何か?それが問題だ。
    願わくは、アルテタがどうこうではなく「アーセナルがどうあるべきか?」しかも「今この戦術的なトレンドの中でどうあるべきか?」がフラットに論じられるアーセナルであってほしい。

  2. マネージャーの仕事は、今ある戦力を最大限に活かすことも含まれているはず。
    前任者が獲ったから、は理由になるのか?
    自分が好きな選手を揃えてくれなきゃ勝てませんはサッカーゲームの世界でしか許されないと思う。
    自分じゃ扱いきれないのなら、それは前述したマネジメント能力が欠けていることの表れだし、そもそも試すこともしないのは真っ当な仕事ぶりと言えるのだろうか。

    1. 共感します。本来のプライオリティはクラブであって。アルテタの期待に応えるべきだとは思うけど、彼のわがまま全部応えててはなあ、と。
      また現実的な視点として、アルテタは来季の成績次第で首が飛ぶわけで、とかね。後半は論点がずれてしまってすまない。

  3. サリバってそもそもRCBなんですっけ?フランスではLCBだったような。

    とすれば、サリバはLCBとしてカウントされていて人員過多だからローンってこと?これならまだ分かる。もやもや感は当然あるが。

    まだ若いし、ホールディングも磐石とは言えないからRCBとして試す価値は十二分にあるとは思うが。

    とにかくサリバ使わないなら、損をせずに放出してほしい。その上で来シーズンはCL権確保できるなら及第点でしょう。

  4. サリバを見てもいないし、現場でアルテタが判断してるならそうしたら良い

    ぶっちゃけクソ素人がテレビで見たって分からん
    90分ずっとその選手だけをフォーカスして撮しているわけでもなし、ボールが来た画角の画面だけで選手を判断できるならタッチ集見て評価するのと変わらん
    ベンホワイトだってビエルサが見出だすまで無名の若手だったろう
    結局、チームに加入して使われないことには評価できない
    ネットの世界では未来の予言者(的中率3パーセントくらいの)が多いけども
    しかしマブロパノス含め、想定外となるや見きりが早い
    欲しいものを全て与えられるペップとは違うのに
    ビエルサは欲しい選手を与えられず、いつもフロントと喧嘩してるけど、在任中は一流半の選手でも鍛え上げて戦力に仕上げるし
    ブレンダンロジャースも、期待の選手を仕上げ、チームを自分の理想のスタイルにあわせて強くした
    「間違いなく伸びる選手」等という保証はない(ムバッペ等の規格外を除く)、フロントがスカウトした選手を伸ばすのも「育成力」だろう
    ベンゲル末期のアカデミーからここ数年でトップにはいった選手がどれも全部伸び代のない選手だったろうか?
    アルテタの「育成力」(笑)はどうなのか

    サカやスミスロウ(他が怪我で台頭)の使われ方を見ると、基本的に序列を守る感じだし、若手が勝手に能力を発揮しているだけ(そして対策されると経験不足を露呈する)で、監督としての育成する力はまだ感じない

    まだまだチームの整理が続いているという事実はあるとしても、監督の力量ですぐにチームを掌握したベンゲルのようなマジックを感じたことは就任して数ヵ月のハネムーン期間以外にはまだない

  5. サリバ売るなら売るで別に良いですけど、取り敢えず保留ってアルテタorエドゥ?の姿勢は疑問ですね
    AMNやネルソン、ウィロックなんかもこーいうクラブの曖昧な態度の犠牲者かなと
    意味もなく選手の資産価値をクラブから減らしていっては資金繰りに苦しむだけでは?

  6. チェンさんの言う事はもっともだと思います。

    で、その上で過去はともかく今回の移籍市場の動きについて今後どうなるかで考え方変わるかもですが、アルテタのサリバの扱いとか含めてちょっと違う見方も出来る可能性もあるかとふと思ったので。的外れかもしれないですが。

    今回の移籍の噂の動きでベンホワイトやマディソンやラムズデイルがあって、良い選手だと思うけどこのタイミングでのマディソンや、オナナがあそこまで話題に挙がってからのラムズデイルとかあって、どうもイングランド人というかホームグロウン選手も入れたい気持ちも強いんじゃないかと感じたり(ホームグロウンかつプレミアレベルの即戦力。)。

    ホームグロウンのルールがホームグロウン外の登録が17人とかまでなのか7~8人ホームグロウン選手を登録しないといけないのか知らないのですが、もし7~8人を登録しないといけないというのであれば今のアーセナルって結構ぎりぎりなのでは?と思い。

    ホームグロウンを考えるとCBをアップグレードするにしてもチェンバースやホールディングを外しにくい。ネルソンやンケティアをローンや移籍で出そうにも出しにくいのではないかと。(ネルソンとかもその登録に関わってるとしたらですが。)
    その為にセカンドGKにホームグロウンというのは割と望ましいのかもしれない。(ラムズデイルをセカンドと決めつけているのはあれかもしれないですが。でも将来はともかく現時点でレノやオナナの上かというと…?)

    ベンホワイト取れたらその分のホームグロウン枠でネルソンやンケティアをローンとかで出して、RCBに選手多いのでサリバもローンに出す。
    ベンホワイト取れずラムズデイル取れたらその分のホームグロウン枠でネルソンやンケティアをローンとかで出して、RCBの選手多いとはならないのでサリバはローンに出さず。
    とかそんな考え方になってるんじゃないかと思ったり。
    上に挙げた3人ってちょうど前のシーズンからいなくなるルイスのCBとライアンのGKとセバオデ辺りで誰かを入れないといけない場所だし。ウィロックやAMNもこの辺りに考えに関わっているかもしれない。マディソンが取れたらどうするとか。

    サリバのところに話戻すと、昨シーズンは昨シーズンでCB多すぎ+プレミアは年齢的に登録枠関係ないけどヨーロッパリーグは年齢若くても多分在籍年数とかの関連あるとかで枠的に登録出来なくてということでチャンスを与えられない状況だったとか。

    つまりサリバの能力だとか関係なくそういうスクワッドの状況的な事情で入れるのが難しい、入れると誰かしらが登録できなくなったり特定のポジションで層が薄くなったりとかさせないといけないので…という被害にあってるんじゃないかという考え方も出来るような気がしたりしなかったり。

    まぁホームグロウンじゃない選手も色々挙がってるので違うか(笑)

    1. チェンでございます。

      > 今回の移籍の噂の動きでベンホワイトやマディソンやラムズデイルがあって

      鋭いです。

      これについてはおっしゃるとおり、アーセナルで補強ポリシーに「文化シフト」があるんじゃないかという最近の話題があったので、ちょうどブログで書こうと思っていたところです。

    2. 昨シーズン後半ネルソンのローンにも試合にも出なかった状況というのもこのホームグロウンの登録が関係していたのではと思ったり。ローンに出したいけど出せなかったという。

      今市場のラムジーの噂もそういうところからアーセナル側として興味が全くないという訳ではないのかもしれない。むしろ選択肢として少しあるから問い合わせたからの噂だったり。知らんけど。

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