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【マッチレビュー】21/22 FAカップ ノッティンガム・フォレスト vs アーセナル(9/Jan/2022)ひどいひどい敗戦

試合の論点

ノッティンガム・フォレスト vs アーセナルのトーキングポインツ。

好調なチームの勢いに冷水を浴びせかける低パフォーマンス。アルテタの責任は?

アルテタのチームはこういう試合をたまにやるなあと。若さとか経験不足からくる不安定さなのか。

前回シティに敗けたとはいえ、トップオブトップ相手に競争力のあるパフォーマンスでポジティヴな余韻を残していた。それも含めた最近のチームをめぐるいい雰囲気や勢いがありつつの、今回のあまりに唐突なひどいパフォーマンス。相手の組織だった守備に手も足も出ないみたいな。とにかくプレイが遅く感じた。ファンとしても、ちょっと受け入れるのが難しい内容だった。

まあ、とはいえこれはベストな11人だったらまただいぶ違った可能性もあるにはある。

でも、これはアルテタを評価するときには何度も何度も繰り返してしまうけれど、彼は持てるものから最良の結果を引き出さねばならないのだよね。それは、レギュラーチームにはやや劣るチームになったときも同じ。だから、同情できる部分もあるし、できない部分もある。

アルテタは試合後にチームの渇望について苦言を呈していて、それはたしかにそう思う。あのチームはこの試合に対するメンタリティに問題があったように見えた。しかし、それでも(あるいはだからこそ)アルテタには試合中にももっとやれることがあったんじゃないかという気がする。

今回観ていて歯がゆく思ったのは、4-1-4-1が最初からずっとうまくいっていなかったのに、アルテタがそこになかなか対処しようとはしなかったこと。

フォーメイションとしては、4-2-3-1でパティーノとサンビ・ロコンガのダブルピヴォットのようでいて、実際に試合を観ていた感じではロコンガのアンカーに、左のハーフスペイスにパティーノ、右のハーフスペイスにオーデガードという3MFの並びだったろうと思う。4-1-4-1シェイプそのものになっていた時間もあった。

これはパーティのシングルピヴォットがうまくいかなかったときも起きていた現象で、そこが相手にマークされていると中央のルートを経由した展開がほぼ閉ざされてしまうという。今回はシングルピヴォットのロコンガがずっとマークされていて、ビルドアップでCBがボールを持ったときに彼はほとんどパスを受けることができず、オーデガードやパティーノが降りてきたりもするが、多くの時間で、ホールディングとホワイトのCBがロングボール1本か、あるいは自らボールを運んで打開を狙うみたいなCBが下手にゲイムメイキングする「悪いモダンフットボール」になってしまっていた。

パスの出し先がないときのロブホの「迷子ドリブル」は久々に観てなんだか懐かしくなった。

そういうプレイのやりかたをずっと現場で観ていたアルテタは、あれをどうにかしなきゃいけないと思わなかったのか、HTでも特別めだった動きはなく。パティーノに変えてラカゼットがNo.10に入り、オーデガードをロコンガのとなりまで下げたのはなんと69分のこと。アルテタはウナイ・エメリとちがって試合中の調整にかなり消極的な印象がある。

こういうことは今後も起きるはずで、チームがうまくいかないときに、試合のなかでヘッドコーチがどうやってそれをマネジするかというのは、まさに腕の見せ所なはず。今回は、アルテタのそういう柔軟性のなさが露呈した試合でもあったように思える。

選手が足りない。深刻なMF。恐れていたことが起きた

パーティとエルネニーがいないのに、AMNをローンで出してしまって1月のCMのデプスは大丈夫かと誰もが心配していた。

結局今回はジャカがアウトで、シニアチームで初スタートというパティーノを使わざるを得ないという、そのギリギリのやりくりが必要なパターンにいきなり陥ってしまった。しかも、パートナーはすっかりご無沙汰のサンビ・ロコンガ。彼もまたアーセナルのファーストチームスクワッドのなかでは経験不足のひとり。

そして案の定、不安定なミドフィールドに。あそこでジャカがプレイしていたらと思うと、今回の敗因のひとつだったと思える。

そしてパティーノには気の毒ながら、彼はまだこのレヴェルのフットボールには準備できていないように観えた。

彼は、もちろん、セスク・ファブレガス以来とか、ジャック・ウィルシャー以来とか云われるほどアーセナルアカデミーが誇るプロスペクトであり、将来をかなり期待されてはいる。しかし、今回は屈強な相手だったこともあって、よけいに彼の華奢な部分が目立ってしまったし、また本人も気後れしていたんじゃないかと思うほどミドフィールドでの存在感がなかった。

今回の彼は、左サイドでオーデガード役をやっていたという人がいて、なるほどと思ったが、つねにボールを要求するオーデガードの暑苦しいほどの存在感とくらべると、パティーノの大人しさが際立ってしまった。彼は69分までのプレイではあるが、最後の93分までプレイしたオーデガードのタッチ数のちょうど半分ほど。ボールをなかなか預けてもらえず、自分から要求もできず、チームメイツとの信頼関係もまだ築けていないのは明白だった。彼のポジションならライン間のような狭いエリアで、ある程度マークがついていてもボールをキープしてくれると信じてもらわねばパスは来ない。

そういうわけで、AMNのローンは強い本人希望もあり不可避だったとはいえ、このタイミングで移籍を許した判断は正しかったのか、問われている。移籍ウィンドウはまだしばらく開いているのだから、せめてAFCON組の不在をカヴァできるように月末ぎりぎりまで待つほうが無難ではあった。可能ならそうすべきだったかもしれない。

もちろんAMNがいたところで、この試合の結果が変わったかどうかはわからない。しかし、少なくとも18才のパティーノよりは信頼度は高かったろう。

前半途中で屈辱的交代のヌーノ・タヴァーレス。アルテタとの関係?

34分みたいな時間に下げられる屈辱はなかなかない。NTは、それほど悪かったということか。

@Orbinho(Opta)によれば、交代するまでタヴァーレスは9回ボールを相手に渡していた。SofaScoreではポゼッションロストは10回とカウントされている。34分で。パス成功率は61%(11/18)。攻撃の選手ならまだしも、フルバックがこれでは。

たしかに、開始1分にはミスをやり、しょっぱなからなんと不安定なんだとは思った。

極めつけは10分のレノへの八つ当たりみたいなパスか。とてもGKへのバックパスと思えないほどの威力で(笑い)アルテタもびっくりしたに違いない。

ぼくはプリシーズンで彼のプレイを初めて観たときも、なんて雑なプレイをするやつなんだと思って、それからPLでプレイするようになってクオリティにまた驚いて。一時はKTのポジションを奪うんじゃないかと思われていた時期があったことを思い出してほしい。

彼はほんとうに不思議な漢だ。ほんとにマンガのキャラクターみたいである。天才的というか、奇人というか。フィクションならおもしろかった。

だが現実のプロフットボーラーとしては、このムラっけは命取りになりかねない。こんなプレイをされたのでは、アルテタもつぎは彼を起用していいのかどうか悩んでしまうだろう。結局、この世界はつねにベストパフォーマンスを発揮できる選手がいい選手なのだから。こんな不安定では使い物にならない。

それと、今回は彼が交代に不満を隠さず、ピッチを出たあとにグローヴを投げ捨てたことについてアルテタがどう対処するかも注目されている。

以前アルテタは、途中交代に不満なのは選手として当然だというような旨の発言もしているので、問題視しないかもしれない。あるいは、不満をそのまま吐き出した子どもじみた行為には何らかの罰を与えるか。

イアン・ライトのコメント。

ライト:彼はかなりプアなスタートだった。あのリアクションはどうだ。彼は出ていくときにグローヴを投げ捨てた。こういうことをやらせるのは悪いマネジャーだと思うね。こういうアティチュードは。

彼が見せた非礼は、ミケル・アルテタが好まないものだろう。自分のあのパフォーマンスのあとなら、彼はもっといい振る舞いをすべきだった。

タヴァーレスが腹を立てていたのが、自分のパフォーマンスについてなら、まだいいかもしれない。そういうことならコーチだって許容できそうではある。しかし、もしアルテタの決断に腹を立てていたら。責任転嫁のようにしか観えないが、そういう思考回路の人間というのは実際にいる。

個人的には、NTのことがかなり好きなので(理由:おもしろいから)今後のアーセナルでの雲行きがあやしくなるみたいなことだけはやめてもらいたい。ゲンドゥージみたいなタイプの人間でないことを祈るよりない。

その他試合について

  • No More Redで白キット。非売品。ぼくは入場時だけかと思ったら試合もずっと白でプレイ。“No More Red”のスローガンでアーセナルが敗けてたら世話なしである
  • セドリックのパフォーマンスでトミヤスの貴重さを実感するファン多数
  • セドリックのアトレチコ行きが消えるのではと心配するファン多数(※いちおうまだ4人のRB候補リストに入っているそうな)
  • エンケティアはまた決定的なチャンスをミス
  • 72分に観客席のイドリス・エルバがカメラに抜かれるもDAZNコメンタリは無言。ちょっと長めの尺だったので放送事故かと思った
  • イドリス・エルバはNo More Redの動画にも出演していて、この試合中継にも出演していた
  • FAカップのサードラウンド全体でアーセナルアカデミー出身者が41人もスクワッドに入っていたそう
  • アーセナルは今回フォレストに敗れたことで、£4.5Mのチケット収入を失う見込み
  • マルティネリとのバトルでフォレストのRB、Djed Spence(21)が注目。ミドルスブラからのローン。フラムから放出された経歴の持ち主。以前、ボロではトッナム相手にやはりFAカップで輝いたという。MVは€2.5M。この試合のパフォーマンスで多くのひとの目にとまったかも。トミヤスのバックアップは彼でよさそうな……

試合については以上。

 

さてこれでFAカップという重要なコンペティションもなくなってしまった。

アーセナルとして特別な思い入れのあるFAカップだから、という失望もあるが、今シーズンのヨーロッパのないアーセナルにとっては、スクワッドのモラルを保つためにも必要なコンペティションだったというのが痛い。ふだんなかなかプレイできない選手たちのプレイする場所がなくなり、ますますレギュラーチームが固定化されてしまいそう。こういう試合を観ると、その弊害はかなりあると感じる。

 

つぎは木曜のカラバオカップ、セミファイナルのリヴァプール(A)。

もろもろの報道によると、リヴァプールはファーストレグの延期の理由とされたクラブ内でのCovidパンデミックについて、クロップが「偽陽性だった」と認めたことで、EFLの調査が入るらしい。

なんでも複数の選手が偽陽性として検出される率というのが、ほとんどありえないくらい低確率らしく。当然クラブには医師もいるわけで、ふつうは不正はできないはず。だから、そこになんらかの意図があったのではないかと思われているわけだ。彼らがファーストレグを延期して得た利益は何だったのかよくわからんけども。

場合によっては、リヴァプールがバンされてアーセナルの不戦勝みたいなことがあるんだろうか。それはそれで。

 

今回アーセナルがFAカップを敗退したことで、そのご褒美についてすこし注目が集まっていた。FAカップ勝者のリウォードは翌年のEL参加があり、カラバオカップ(EFLカップ)の勝者は翌年の、あれなんだっけELの下のやつ、それの参加。

興味深いのはプライズマニーで、FAカップの勝者が£1.8Mに対し、カラバオカップの勝者は£100k。つまり£0.1M。これはもうないみたいなもの。リーグカップ不要論はこういう理由もある。

ちなみにCL(21/22)のプライズマニーは、グループステイジは勝利ごとに€2.8M。グループステイジは6試合あるので、全勝すればその6倍とゆう。。

 

ではまたつぎの試合のプレヴューエントリでお会いしましょう。

COYG



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

9 Comments on “【マッチレビュー】21/22 FAカップ ノッティンガム・フォレスト vs アーセナル(9/Jan/2022)ひどいひどい敗戦

  1. CM、とくにアンカーは動かないほうがいいと言われるけど、正確には大きく動きすぎてはいけないだけで、ブスケツもジョルジーニョもファビーニョもロドリも細かく動きなおしてる。パーティもそう。ロコンガは本当に動かなすぎるし、自分が動いたらそれに連動してその後全体がどう動いていくのかが見えてなさすぎる。守備も軽い。ヴラボヴィッチとか言ってないで、もっと本気度のあるCMの名前が上がってきて欲しい。55mもあるならデ・ヨング狙えよ。

    トップに関しては、ンケティアよりも、あれだけアケを背負えだのだからサカとかもありだと思う。ナイルズよりもコラシナツのほうがCMあってそう。

  2. 苦行、お疲れ様です。。
    その苦行に慰めてもらっているファンもおりますので、今後とも是非励んでいただければ幸いです。。笑

    試合の準備に関しては、もうアルテタを信用しているのですが、CHANさんも仰る通りゲーム中の采配については大いに疑問は感じています。。今回もタバレスとパティーノの交代については順序が逆というか、両者HTでの交代がベターだったような。ゲームを観る目が無いのか、打つ手を思いつけないのか。。前者の訳はないと思うけれども。

    勝手な想像ですが、アルテタは選手の気持ちを察するというかモチベーションを上手くコントロールするのが凄く下手くそに思えます。俺のやり方に付いてこられない奴なんか知らん!といった鬼上官的な思想でないか心配になります。

    今回のゲームも、スカッドの状況に同情の余地はあるとしても、アルテタが選手のパフォーマンスを最大限に引き出す最善手が打てていたかといえば全くそうは見えず、寧ろ悪手だったように思います。

    この点はまだ若い新人監督だから、、という見方もできますが、失敗しないと学べない気もするし失敗はして欲しくないし。とにかく、ゲーム采配とマンマネジメントの手腕については大いに改善して欲しいですね。

    ともあれ、まずは今季の結果が一番なので、結果的に背水の陣でリーグ戦に臨むことが良い方に転ぶことを願うばかりです!COYG!

  3. ヌーノはベンフィカでアティチュード問題あった気がしたよーな…

  4. おれたちのFA カップ、おわる。あっけなく。
    やる前から白旗あげてたら世話ないっすね、何がノーモアレッドだよ。そうゆうイベントするなら勝たないとカッコ悪いっつーの。
    ロコンガもタバレスもパティーノもこの大会はじめてなんですよね。
    初戦でアウェイ、そして相手は事実上の格下、こうなるとアウェイサポは俄然盛り上る。ジャイアントキリングのために。それがFAカップ。
    流してるだけで勝てると思ってたのかな、それじゃダメなんですよこの大会は。よくわかってたはずなんですけど。
    アルテタは確かに腕の見せ所のはずでしたが。
    まぁこんな結果でしたが、スペンスと出会うきっかけになったと思えば少しはうかばれます。
    ぜひ来てほしい。
    プレミアではこんな塩試合は見せないで。
    COYG

  5. うーん、フォメ云々よりビルドアップはサンビとパティーノが準備不足過ぎたというか。
    サンビは貰いにいきすぎで、パティーノは貰う準備不足で。。
    いつものやり方を踏襲できなすぎましたね。
    ただでさえエンケティア、ソアレスがクオリティ不足なのも加味してですが。
    まあ要は駒不足ですな 苦笑

    あとタヴァレス=花道 説を支持したくなりましたね 笑
    雑だけどポテンシャルに溢れてたタヴァレスが試合毎に成長していった。
    だが試合間隔が空いたら、ある意味元に戻ってしまった。。
    彩子さんが山王戦の時危惧してたように。。
    if 山王戦後 腰のリハビリを終えた花道みたいな。。

    まあ今季はリーグでヨーロッパ行きでしょ!
    そっち集中!
    いっそのことリーグカップ不戦勝になんねぇかなぁー

  6. NTはここで不貞腐れなければカラバオのどちらかでは使ってくる、アルテタはそういうマン・マネジメントの人だと信じてます。地味に気になっているのはサカとマルティネッリが出続けになってること。休ませたいタイミングで両WGが出ずっ張りになってしまうという。

  7. アルテタはプランBが本当に無いなぁと
    まぁようやくベスメンが固まったくらいですからなぁ
    カップ戦挟んだだけでこれではもし来季ヨーロッパに帰ってもやりくりできませんわ

  8. お疲れ様です。

    サブとベストメンバーの差がデカすぎましたね。
    個人能力だけでなく、戦術的にも。
    周りとか次のプレイとか見えてなくて、目の前のボールに四苦八苦してたらそりゃダメよと。

    熱を持った選手もマルティネッリくらいだったし、これならサカ休ませても良かったよなあと。

    CBが持ち運んだけど、スペース見つけられずに苦し紛れの横パス出してカットされるみたいなのも散見されて、戦術面でも術中にハマってた感ありましたし。

    皆さんおっしゃってますが、やはり最大の補強ポイントはCMだと思います。ルヴェンネヴェスが左利きだったら欲しかったなあ笑

  9. ひどかったですネ。むしろ感心するくらい何もできてなかった。

    まだしもホールディングは行けるかなと。今シーズンの一時期はLBにしょーもないパスばかり出してたけど、このゲームは少なくとも良いパスを出そうとしてたと思う。一本だけ敵陣でものすごく良いパスもあったし。この選手なりに前より良くなってると思う。

    ロコンガは守備に関してはパティーノのところでプレスがかかってなかったから、ズルズル下がってしまうのは仕方ないと思う。パーティやジャカでもチームが機能してないときはズルズル下がってたわけだし。

    しかし攻撃に関しては、僕のロコンガ評は0点。周囲にあれだけ使えるスペースがあるのにまるで使おうとしてない。80分すぎて急場になってから慌ててリスクを冒してミスして負けてる。ミスを責めようとは思わないけど、そこまでの80分間を恥じるべきだと思う。

    うんと深い位置からでもスペースを攻略し続けるのが、今やろうとしてるサッカーだと思う。それはビハインドだからやる・リードしたからやめるという性質のもんではないって事を、ロコンガは目の前で見てきたはず。パーティだってギリギリのリスクの上であれをやってる。ましてまだ何者でもない新人がミスを恐れて縮こまるなんて馬鹿げてる。もっと強気にやるべきだ。

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