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セットプレイのスペシャリストがアーセナルを変える

Nicolas Joverって誰?

アーセナルに来る前も、シティでだいぶ活躍をしたようなので、シティサポーターならみんな名前を知っているのかもしれない。

シティでの仕事もわりとすごい。

多くのアーセナルのファンが彼を意識するようになったのは、おそらくは、8月のリーグカップ、リーズ戦で、サブのチェンバースがいきなりゴールし、「おまえはファーストタッチでゴールする」という予言もあり、チェンバースがゴールセレブレイションでまっさきにJoverの元へ駆けていったというアレからではないか。

あれから現在まで、アーセナルはずっとセットピースに自信を持っている。

ここで、Joverのプロファイルをかんたんに。

フランス人。40才。

フランス語では、Joverはホヴェールのように発音するようだ。ニコラ・ホヴェール? 先日のアーセナルの試合で英語コメンタリは「ジョヴァ」と云っていたけど。どっちで書こうか迷ってカタカナはやめた。

モンペリエでアナリストとしてキャリアを始め、11/12シーズンにリーグアンのタイトルに貢献(※クラブは初タイトル。メインストライカーのオリヴィエ・ジルーが翌年にアーセナル移籍)。その後、クロアチアNT、ブレントフォード、マンシティ。そしてアーセナル。

前述の『Sky Sports』の記事中で、ブレントフォードでの同僚だった、同じくセットピースコーチのMads Buttgereit(現在はドイツNT)が彼について語っている。それを引用しよう。

Buttgereit:わたしたちは、ふだんはお互いのルーティーンを観ていたが、夜になると、膝を交えてゆっくりセットピースについて語り合ったものだ。

わたしはつねにセットピースについては情熱を持っていたが、当時はまだふつうにコーチをしていたんだ。彼と会ってから、わたしは自分のことをよりセットピースの専門家だと考えるようになったと思う。

ニコラスは彼の考え方、計画の練り方は天才的だ。彼と一緒にいろいろなセットプレイについて議論をしていると、すべてにおいて確固とした考えがあると感じる。どんなルーティーンでも、偶然の入り込む余地がないんだよ。

セットピースについて議論をしているときはいつでもそうだが、けっしてシンプルにはならなかった。あるコーナーのルーティーンだけで1時間以上語り合うことすらできた。何の問題もない。わたしたちは、どの側面についても考えを巡らせたし、相手がなにをやってくるか、そのときなにをやるか。それはもうとてもとても細い。

わたしが個人的に知っているセットピースコーチでも、そんなコーチはわずかしかいない。しかし、これはわたしの考えだが、ニコラスがベストだと思う。彼はファンタスティック。

(アーセナルのセットピースにもJoverのディーテイルが反映されている)彼らのセットピースには、彼の指紋がくっきり見えるよ。

(セットピースコーチが全体の戦術にも関与)そのふたつは結びついているから。

(リーズ戦のチェンバースのセレブレイション)完璧な計画を持つことはできる。だが、結局は選手たちにその計画を買ってもらわねばならない。だから、彼らがそれを信じられるようなやりかたで、トレイニングピッチにそれをもたらさねばならないんだ。わたしは、アーセナルを観ると、ニコラスがそれをちゃんとやっていると確信する。

セットピースは彼の情熱だ。彼はそれを選手に伝達する。でも、彼はとてもオープンマインドなひとでもある。彼は選手たちの云うことを聞くし、わたしは、それはどのコーチにとってもキーポイントだと思う。コーチは選手たちにやることを伝えるだけじゃない、共同作業なんだ。ニコラスは、いつも疑問を投げかけるし、彼はけして満足しない。

(セットピースコーチの存在はまだ地味)たくさんの若いコーチがわたしに云う。「でも、あなたはただのセットピースコーチですよね……」。わたしはこう云う。「いや、ただのではないけど……」。

一般的に35%のゴールがセットピースからもたらされる。そして、もしわたしが自分の仕事をうまくやっているのなら、それよりももっとゴールを取れるだろう。セットピースコーチの役割は表舞台にはない。だが、わたしが確信しているのは、この3-4年のあいだには、どのクラブにもセットピースコーチがいるだろうということ。

興味深い話。

PLを観ていれば、どんな強いチームとの対戦でもセットピースの瞬間だけは、少しだけお互いの格差が縮まることがわかる。トップチームはもちろん、それ以外のほとんどのチームは、セットピースを改善させたいに違いないのだから、このひとの云うとおり、ほとんどのチームがそういった専門家を抱えるのは疑いがないように思える。

Joverがめっさ細かいという件。先日のアストン・ヴィラ戦の最後のコウチーニョのフリーキックの場面で、彼はひとりタッチライン際を現場まで寄っていき、大きな声で選手たちに指示を送っていたのだという。アルテタが「コーチは何でも自由にやっていい」と云っていたのはこれのことか。というか、これはアリなの?

 

さて、フットボールブログとしては、本来ここからJoverのセットピースルーティーンについて詳しく考察していくべきなのだろうが、残念ながら元ネタなしでそういったことを書けるほど、ブログ主の戦術リテラシーはない。もしもピアノが弾けたなら。悲しい

というか、Joverは、たぶん相手によって、状況によって、毎回かなりやり方を変えているのだよね。リヴァプールのときは、けっこう特殊なやりかたに見えたけど、それをそのままヴィラに踏襲してはいなかったと思う。

リヴァプールのときのボックス内守備1-3-5

ESRにコーナーを蹴らせるようになったとか、ゾーンとマンマーキングの折衷だとか、ヴィラでもやったようにボックスへの単純な放り込みじゃない変化球的なやつとか。毎回違うし、すごくたくさんのルーティーンがある。

それを、独力でエントリにまとめるのはけっこうな労力になりそうだ。

ということで、そこはばっさり割愛しよう。なにか元ネタを見つけたらそれを紹介するので、今回はお許しあれ。

今後も、アーセナルのセットピースには注目しよう。少なくとも、アーセナルがそこに力をかなり入れているのは明白なのだから。

ジャカも、じつは毎日のようにセットピースの練習をしているのだぜと云っていた。

攻撃も守備も。みどころが増えて楽しい。

 

おわる



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4 Comments on “セットプレイのスペシャリストがアーセナルを変える

  1. 私もニワカなので語れないのが悔しいですが、
    久々にじっくり観る機会を得たヴィラ戦では、CKでFKのようにボールのところに
    2人立つことを繰り返していたのは新鮮でした。

  2. このコーチ、たいへん熱い方ですよね。
    得点したらアルテタと抱き合ったり、ガッツポーズしたり。
    大きな声で選手に指示している姿がカメラに抜かれるときもあります。
    いつも選手と一緒に戦っているかんじがしてます。
    今回、彼の人となりや彼のディテールがわかりました。
    ありがとうございます。

  3. ちょいちょい話題になってるセットプレーについてまとめてみると効果がはっきりと数字でわかりますね。素晴らしい!
    攻撃はちょいちょい変化ありながらだけど、特に前任者とそこまでガッツリ変化はわからないですね。 まあ知識の蓄積があったのかな?
    守備は自分も相手に合わせてやり方かえてんなーと、まあ今のメンツ、特にガブリエル、パーティ、ゆうてジャカも空中戦穴ではないし、ベンジャミン、富安もスーパーじゃないけど空中戦勝てる人だしなーと。
    ただ毎年の如くあったなんだかゴチャゴチャっと混戦でヤラれる、GK狙われるケースで失点がないのはコーチとラムズデールのスーパーな働きだと思います
    ラムズデール、ほんとタフで正にイングランドなGKで素晴らしいなーと

    以前、若手の分析担当についても触れた記事をどっかで読みましたし、チームアルテタは期待しかないですねー
    amazon が楽しみです

  4. 「偶然の入り込む余地がないんだよ」すごいな。セットプレーの話だよね!?選手との共同作業ってことは「これが正解!」みたいな話ではないんだろうけど、すごい時代になったもんだ。だいたいセットプレーの専門コーチなんてオッサンの僕の時代には聞いたこともなかった。

    そういや最近マルティネリが左のコーナーキック蹴ってるのは見てて楽しい。先日のパーティのヘッドとか、強いボールでニアのCBの頭上を越えてるのに、すぐ後ろのスペースに巻いて落としてる。あれはすごい。昔からあるプレーだからから素人でも分かるのもいいw。そのスペースに走りこんだり阻止したりがコーチの専門領域なんだろうけど、僕がそれを理解する日はたぶん来ないだろうなあ。。w

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