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セヴィーヤに6-0大勝で22-23プリシーズンを終了。アーセナルの新シーズンを占う

プリシーズンを終えて:新シーズンのアーセナルはどうなる

とくに、今回の11人が揃ってプレイしたチェルシーとセヴィーヤのこの2試合は、今年のアーセナルのプレイを占うにはかっこうのショウケイスだったように思える。

アーセナルはこの2試合で、アグリゲイトスコアが10 v 0と相手を圧倒。もちろん、オフサイドの疑いのあるゴールもあるし、守備のほろこびがまったくなかったとは云えないので、結果については諸手を挙げて喜んでばかりもいられないが、それでもアルテタがずっとやりたがっていた、このチームの目指す方向はチームのパフォーマンスにかなりあらわれていたと感じる。

クリアなアルテタの攻撃プレイ原則:ハイプレス+カウンタープレス+ポゼッション

ボールを持ったら相手ハーフに押し込んで、根気強くポゼッションをキープ、ボールを支配してチャンスをうかがう。

ファイナルサードでボールを奪われたら、即座にハードなカウンタープレス。相手に息継ぎする時間を与えず、できるだけ高い位置でボールを奪い返し、攻撃を続行……。

アルテタの求める攻撃プレイの原理のひとつひとつが、よりはっきり観えてきたのは、選手たちがそれを忠実に実行できるようになってきたおかげでもある。

フロント5(2-3-5)の攻撃システムも含めて、これらは基本的に、ここ数年間は実質的にリーグを支配してきたシティやリヴァプールが行っているチームプレイと原則は同じもの。われわれは、ようやくそこに追いつこうとしているのだろうか。

アルテタが云うように、これまではそれができる選手が足りなかったのだろうし、既存の選手は、場合によってはチームプレイの足かせになってさえいた。そんなとき、このチームが、アルテタがいったい何をやりたいのか、よくわからないこともあった。だから、このチームの攻撃での流れるような連動したチームプレイを目の当たりにして初めて、アルテタの理想の姿が理解できるようになったように感じている。

これまでのチームとのもっとも大きな違いは、やはりストライカーかもしれない。

今回のセヴィーヤ戦後のプレス会見でも「去年まではアプフロントに動きが足りなかった?」のような質問が出ているのは、まさにその点であり。オバメヤンとラカゼットは、ボックスでフィニッシュするという面ではふたりとも優秀なストライカーには違いなかったにせよ、アルテタがやりたいプレイのなかでは、理想的なストライカーではなかった。ジェズースを観ても、ジェズースが入っていきいきと動き始めたフロントの選手たちを観ても、そう思う。

彼らとジェズースが入れ替わったことで、サカやマルティネリ、オーデガードのようなフロントの選手たちが活性化している。そのケミストリを起こしているのがジェズースなのだろう。

さらなるタレンツの加入でチームクオリティ向上:ジェズース・ジンチェンコ・サリバ

この夏に加わった選手たちのクオリティは、去年の夏に加わった選手たちと同等かそれ以上のインパクトをここまで見せている。

ジェズースは、ヴァーサティリティ、エンドプロダクト(彼がほんとに決定力に欠けていたとはにわかに信じがたし)、チャンスメイキング、ハードワーク、あらゆるエリアでレヴェルの違いを見せているし、まだたった2試合とはいえ、ジンチェンコのクオリティと安定っぷりは想像以上だった。

ジンチェンコは、LBとしての能力に加え、中央寄りのMFとしてもプレイできることで、KTにはない別次元をチームに与えているだろう。アルテタはジンチェンコで、左サイドの守備と攻撃にさらなる戦術的厚みを得た。

彼がチームに加わる効果については、2-3-5の3CM、ジンチェンコ、パーティ、ホワイトが、3人とも後方からゲイムメイキングできることもかなり大きい。

パーティの積極的なパスは云うまでもなく、ジンチェンコもホワイトも正確なダイアゴナルのロングボールで密集したブロックを打開したシーンは、この2試合の両方で観られたもの。密集したサイドから、パス1本で空いたサイドへ。そのたびに、逆サイドのタッチライン際でウィンガーが相手と1 v 1状況に。このプレイそのものが、チームの戦術的プレイの一環であり、武器になる。

こうした彼らの気の利いたプレイが、KTやトミヤスがフィットネスを取り戻したときに、アルテタがチームセレクションに頭を悩ませるだろうと思える理由だ。

そしてウィリー・サリバ。ホワイトが当面RBに定着するとしたら、それはじつはサリバが理由であるように思える。彼はフランスでのうわさに違わない優秀なDFで、もうアルテタにとってもチームから外すには惜しい存在になっていそうだ。

まるで新しいサインみたいである。サリバが3年前からアーセナルの選手だったなんて信じられない。英国でのプレイ経験もほとんどない外国人なのに、今年からHGでもある。

ジェズースとジンチェンコのPL provenのふたりはともかく、サリバまでここまで早くチームへの適応を見せているのは、まったくポジティヴな兆候でしかない。

そのほかの新加入選手たちはまだあまり活躍を見せる機会がないが、ファビオ・ヴィエラなどは今後フィットしたときに、驚きのパフォーマンスを観せてくれることを期待している。

既存の選手たちのさらなる成長

もちろん、われらファンは新加入選手だけでなく既存のチームの成長にも期待すべきだろう。それはプリシーズンにも大いに発見できたし、新加入の選手たちに刺激を受けている側面もあるに違いない。それもまたケミストリ。

今回の1点めとなったサカのペナルティは、チームのなかですでに攻撃のゴールデンコンビになりつつある、オーデガードのOTTのスルーボールからサカというコンビネイションから生まれたもの。このオーデガードのプレイには、セスク・ファブレガスの魂が乗り移っていた。

この8 v 2の状況から、たったふたりでゴールを脅かすなんてことは、ここしばらくのアーセナルなら考えられなかっただろう。ますます成長著しいサカはもちろん、オーデガードはキャプテンに指名されて、選手としてさらなる成熟が期待される。

どんな状況でも、もうこのふたりならなにかやってくれそうな気になってしまう。

また、今年のプリシーズンではマルティネリの成長に目を細めているファンも多いと思う。今後もあのようなパフォーマンスを継続できるなら、新シーズンは、あらためて彼の飛躍の年になるかもしれない。

<ジャカの成長?>

このプリシーズンにおける、既存の選手たちの進歩という意味で特筆すべきなのは、意外にもジャカかもしれない。このプリシーズンに観せた成熟したパフォーマンスで、ファンのあいだでも納得の声が多かったと思える。彼はプリシーズン中はずっとよかったし、この試合でも、終了間際のカウンターアタックのプリアシストで観せた個人スキル(ナツメグ)には、拍手喝采だったろう。

アンチジャカだと思われているぼくですらも、最近の彼のパフォーマンスにはとても満足している。ここでいい訳をするわけではないが、そもそも彼はクオリティのある支配的なチームでプレイすれば、ドジでのろまなアーセナルでプレイするよりも、ずっといいプレイをするはずだとつねづね思っていたし、そうこのブログに書いたこともある。バイエルンとかユーヴェとかPSGとかシティとかどこでもいいが。

そして、いまアーセナルがチームとしてのクオリティが上がり、相対的にMFにおけるジャカの重要度が下がって、彼はこれまでよりもずっといい選手に観えるようになった。

ぼくはここ数年は、毎年シーズンはじめにはジャカがMFのメインマンとしてプレイすることに落胆を隠してこなかったが、たぶん彼がアーセナルに来てから、まだ彼のことを知らなかった最初のシーズン以外で、初めてMFのひとりは彼でいいかもと思い始めている。

アルテタは、まだ夏のウィンドウで補強をする気があると述べているので、ティーレマンスかほかのMFがジャカの代替として来る可能性は消えていないが、アルテタが結局ジャカに3MFのひとりを託すことになっても驚かない。アルテタはいつだってジャカをリスペクトしてきたし。

ジャカはアーセナルにとってのジェイムズ・ミルナーになりそうと、誰かが云っていた。これは、なかなか言い得て妙かもしれない。ケガをしない。チームのためならどこでもプレイする。チームのリーダー。ファイター。

戦術的柔軟性の獲得

トピックの順番が前後したような気もするが、もちろんこれはかなり重要なキーポイント。

アルテタの望む補強は、選手のクオリティもさることながら、そのヴァーサティリティ。複数ポジションズでプレイできる戦術的柔軟性のある選手を優先していたことは明白。去年も今年も、アーセナルに来た選手たちのほとんどがこれを備えているのは、アルテタがそれをどれだけ重視しているかを示している。

現在のアーセナルでは4-3-3を基本にして、4-2-3-1、また3-5-2のようなバック3もオプションになっているようだ。

そして、ポゼッションでは2-3-5のフロント5。いまのチームだと、マルティネリとサカがワイドをキープして、5人がフロントに並び、そのうしろでジンチェンコとホワイトがパーティと3MFを形成。

今回の試合で顕著だったのが、フロントのポジション入れ替わりか。

ジェズースは、中央、左(マルティネリと入れ替わり)、右(サカと入れ替わり)があったし、ハイプレスをうまくハメた4点めは、左のマルティネリのポジションにいたサカのショット&ゴールだった。

残り15分では、442の守備シェイプでフロント2はオーデガードとサカ。ジェズースはRWで守備ブロックに入ってすらいた。まさにどこでもプレイできる。

アーセナルのチームは、ヴァーサティリティのある選手ばかりになったおかげで、試合中のシステム/フォーメイション変更が頻繁に、自然に行われ、相手がこちらのアタッカーたちを捕まえるのを難しくしている。

フロントの選手のなかでも、その最たるものがジェズースだろう。相手DFがもっとも警戒を要する選手が前後左右いろいろな場所に顔を出し、決まったポジションがないため、ほとんど神出鬼没になっている。

相手の予測不能なかたちに姿を変えるチームのさまは、まさに「カメレオン」。おっと、悪い時代を思い出してしまいそうなちょっと不適切なたとえが出てしまった(笑い)。

カメレオンかどうかはともかく、新シーズンのアーセナルは、そういうフロントが流動的にポジションを自由に変えていく変幻自在なチームになるのかもしれない。

セットピースがひきつづき武器に

この試合でも、マルティネリとサカがたびたびボールを持ちワイドで1 v 1状況になっていて、それをチームの戦術として意図的にやっているなら、今後も彼らへのファウルによって、いい場所でのフリーキックが多くなることが予想される。

そうなれば、当然攻撃のセットピースが重要になる。

去年セットピースがアーセナルの武器として注目されていたことを思い出すに、今年はよりいっそうそれに力を入れてくるに違いない。

今回も80分、82分とフリーキックで2回連続して、フリーキックでセットピースルーティーンをやっていた。

 

ということで、今年のアーセナルのプリシーズンは非常に有意義なものになっただろう。チームが試合に勝って自信をつけたことがいちばんよかった。自分たちがやっていること/やろうとしていることで結果を出して、ちゃんと手応えがあったということだから、それが信念になるし、団結できる。すばらしい。

守備など、新シーズンの課題についても書こうと思ったが、それはまた別の機会にしよう。

 

つぎの試合は、8月5日(金)のPLクリスタル・パレス(A)。日本時間では土曜の早朝。ついに新シーズンが始まる。

アルテタが試合後インタヴューで触れていた「コルニーでやる水曜の試合」というのは、なんだろう? 明日月曜には、ナショナル・リーグ(英何部?)のSt Albans City FCとフレンドリーをやるという告知はあったが、U-21とU-18の選手が主だということ。アーセナルカレンダーにも反映されていないので、わからない。無観客か、いずれにせよそんなに重要な試合ではなさげ。そんなタイミングでケガされてもたまらんし。

そういえば、新シーズンはアーセナルの試合はどこで観ればいいんじゃいの件。前回のエントリは、ほんとにグダグダになってしまってごめんね。

結局、ABEMA TVでアーセナルのPL試合はすべて生中継するそうなので、それがありつつ同時にSPOTV NOW(年額9900円)を契約するかどうかだけが問題と思われる。

あるいは、ABEMA TVは有料のプレミアムだと、ライヴの追っかけ再生もできるようなので、ABEMAプレミアムを契約して、ABEMA一本という選択肢もあるのかもしれない。その場合、年額はSPOTVより少し高いが、ほかのコンテンツもついてくる。悩みますな。

 

まだ出揃っていないようだが、今週には揃うだろう主要メディアのPL22-23シーズン予測のまとめもやっておきたいので、新シーズンが始まるまでに、またブログは書くつもり。

ではまたこのブログでお会いしましょう。

 

COYG



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

3 Comments on “セヴィーヤに6-0大勝で22-23プリシーズンを終了。アーセナルの新シーズンを占う

  1. もうホントかなりやばいっすね。
    シティもリバプールもてにおえなかったころ比べてちょっと落ち目に見えるし(勝手な解釈)、我々、遂にプレミア制覇も夢じゃない強力なスカッドを手に入れましたね。
    どのポジションにもグレイトな選手しかいない。
    このメンバーシップだからこそジャカが輝くのもうなずけますね。これでジャカのカードがなくなったら、きっとそうゆうことだったのでしょうね。
    あとは放出をきっちりしてもらって、中盤かBのバックアップをとって、レアルがフンミンソンをとれば完璧。
    開幕が待ち遠しいです。COYG

  2. トーマス、ジャカのどちかが欠けると中盤のクオリティがかなり下がる気がします。ティーレマンスはいいと思うけどなぁ。相手の強さ次第では多分アンカーもできるし、ジャカのやっている役割も次第にできるようになる気がします。ギュンドアン的な。スミス郎をどう使うのか。
     サカの控えは誰がいいんですかね。マルティネッリはカットインするタイプではなくて、縦にいくようにドンドンなっているのでサカいないときに右でもいいと思うけれど、もう一枚両サイドできる選手が欲しいですね。ポゼンスとかいいと思うけど。
     あとジンチェンコ、ジャカの左サイドだと若干カウンター時に怖いなと思いました。守備の敏捷性がある二人じゃないし、流動的に位置を入れ替えるので、速い右wgとかにやられそう。ティアニーの方がいい意味で役割がはっきりするのかなと。とにかく新シーズン楽しみです!

  3. 地味に、マルティネッリが良かったです。アシストしまくり、ジェズースと相性ばっちり。あとは2ndの底上げですね。リースネルソン、マルキーニョスが先発WGをおびやかす、AMNがアンカーとして覚醒してパーテイとポジション争いするようになる、ファビオがオーデガードからポジションを奪ってオーデガードが一列下がる、うーん、このうち1つは当たってほしい。クリスタルパレスは前回の0-3のリベンジですが、また試合前分析を楽しみにしています!COYG

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