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ガブリエル・ジェズースの「カットバック」スキルで進歩するアーセナルの攻撃

雑感

この記事は、ぼくにはなかなか興味深い内容だった。

アルテタがどうしてもジェズースをほしかった理由というのは、いくつかあるようだが、これはその大きなひとつなんだろう。カットバックとジェズース。

数ある攻撃のやりかたのなかでも、カットバックは非常に有効な攻撃手段であり、それを最大限利用してゴールを多く取りたい。このチームのカットバック(クロス)のクオリティ自体は悪くない。だがフィニッシュに難あり。だから、それが得意なストライカーが必要だった。

考えてみれば、クロスに対しゴール前で点で合わせることが得意な、いわゆるPoacherタイプ(※密猟者)と云われるエンケティアもこの系譜だろう。彼も、カットバックからワンタッチでの印象的なゴールがいくつも思い出せる。このふたりは似ている。

逆にいえば、アルテタがジェズースやエンケティアをメインストライカーに据えるということは、つまりカットバックをひきつづき、このチームの有力な攻撃オプションとして考えているということでもある。

アーセナルの新シーズンの課題は、もちろん攻撃/ゴール。

この手の話題で、よく引用されるアルテタの今年3月のコメントをもう一度。

アルテタ:今シーズン、トップチームのなかにいたいのなら、少なくとも90から100ゴールズが必要だ。チームにはそうしたゴールズがどうにかして必要。どうやってと訊かないでほしい。でも必要なんだ。取らねばならない。どうその貢献をやるか。どう可能にするか。それをやる正しいピースを見つけなければならない。問答無用でだ。

そしていま、正しいピースとしてジェズースが来たと。

アーセナルのこの3シーズンのPLゴールは、56、55、61。同年のPL優勝チームのゴールは85(リヴァプール ※2位のシティは102)、83(シティ)、99(シティ)。

21-22シーズンを例にすれば、シティとアーセナルのゴール数の差はちょうど38。つまり、アーセナルはリーグの毎試合でもう1点多く取らねば彼らのレヴェルに追いつけない。

ゴールで劇的な進歩が必要。フィニッシュで劇的な進歩が必要。

ジェズースが加わる新シーズンは、その目標にどれだけ近づけるか。

ジェズースはクリニカルフィニッシャー?

なお、この記事のツッコミどころとしては、ジェズースのゴール前におけるフィニッシングの部分で、彼のシティでの非効率な側面に触れられていないこと。

アーセナルとジェズースのリンクが話題になり始めたころにはよく指摘されていたことで、トップストライカーと云われながらも、シティでの彼はじつはPLでシーズンG15以上取ったことがないとか、xGと実際のゴールに大きな差があったりする。

以下は、いまから一ヶ月ほど前のr/Soccerからグラフィックを拝借(デザイン的におそらくSky Sportsのもの)。ジェズースがシティに加入してからのカウントで、PL過去5年間でのベスト/ワーストのxGディファレンス。緑がxGより実際のゴールが多いもの。赤がxGより実際のゴールが少ないもの。ジェズースはワーストの選手たちに分類されている。

ベスト2であるToTのアタッカーふたりは、xGより実際のゴールが極端に多いので、単年のスタッツだけから判断するなら、一時期のオーバ&ラカのような、あきらかにオーヴァパフォーミング(あるいはまぐれ)の傾向を示しているが、彼らはそれをしばらく継続しているので、もうラッキーとかまぐれというよりはストライカーとして性能が桁外れに高いと判断せざるを得なくなっている。

このグラフィックにはないが、選手個人のxGDでは、たしかリヴァプールのサラーやマネは、xGと実際のゴール数がわりと均衡していたはず。それでも十分タイトルは争える。xGというスタットはゴールの確からしさを計測するのだから、そもそもそういうものである。

いっぽうのジェズースは、xGに対して結果が大幅に悪い。要するに入れるべきシュートが決まっていない。これはいけません。入れるべきゴールよりも20以上多くゴールしている選手がいるいっぽうで、10以上はずしているようなもの。

シティという特殊なチームで並のチームよりチャンスが量産されているからという考え方もあるが、だったらそれだけ多くゴールせねばならない。同じチームのKDBやマーレズはベストのほうに入っている。いずれにせよ、このような結果のストライカーをクリニカルフィニッシャーと呼ぶには抵抗があるのはたしか。

ただ、彼のことを熟知して、信頼を寄せるアルテタにしてみれば、それをアーセナルでどうにかする考えも計画もすでにあるのだろう。もちろん起用法でも結果は変わる。

今回の記事を読んで思ったのは、彼のワンタッチによるシュートというのが、すくなからずこのスタットに影響しているかもしれないということ。

当然のことながら、ボールをコントロールして自分の好きな体勢からシュートを打つのと、自分がどんな体勢でも来たボールをそのまま打つのとでは、技術的な難易度が違う。ワンタッチでのゴールがかなり多いとなれば、それだけジェズースはタイミングを優先して、難易度の高いシュートにチャレンジしていることになる。まあ、よくわからないが。

とにかく、ゴールはジェズースがアーセナルで成功するための最大の課題だろう。シーズン中、もしこれまでのようにチームがゴール不足なんてことになれば、やっぱりもっと違うタイプのFWを取るべきだったなんてことを云われかねない。

ジェズースは、シティでもできなかったことをアーセナルで見せる必要がある。

 

おわり



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