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【マッチレビュー】22/23EPL マンチェスター・ユナイテッド vs アーセナル(4/Sep/2022)6連勝ならず。悔しすぎる敗け

試合の論点

マンU vs アーセナルのトーキングポインツ。

マンUが強かったのは事実

まずこれは認めようか。

ぼくが個人的に彼らのことを過小評価していただけかもしれない。ハイライトでなんとなく知ってたというだけで、べつにたいして彼らの試合も観てないし。マンUのファンは、強いほうのチームが勝つべくして勝ったと思っていそう。いやしらんけど。そう思う気持ちも理解できるというか。

彼らは思っていたよりずっとオーガナイズされていて、ずっと危険なチームだった。それとも、やっぱり彼らもこの試合はこれまでよりだいぶよかったんだろうか。アントニーが「欠けていたピース」みたいに云われているようだし。

アーセナルのスタートからの5試合の相手とくらべても、さすがにいちばん強かったんじゃないかと感じた。

彼らもっとも脅威な武器はカウンターで、ハイライン&ボールを持ちたがるアーセナルとの相性もよかった。彼らには自由にパスを出させてはいけない極めて上等なパッサーがいて、DFラインの裏へのランが大好きなFWがいる。劣勢でも一発でひっくり返せる。今回のアーセナルは、まんまと策にハマった感じ。

また、アーセナルのバックからのプレイについても、積極的にハイプレスをやるというよりは、パスが出たらすぐに殺到できそうな、いやらしい位置に選手を配置するというプランがあった。あれはいやらしかった。ラムズデイルがパスの出しどころに窮して何度もFBにOTTのパスを出していて、アレはいかにも強いられたプレイだった。今回は比較的うまくいっていたが、ビルドアップのフェイズであのように難易度の高いプレイを強いられれば、それだけオウンハーフでボールを奪われる危険度は上がる。

だから、この試合がこういう結果になってしまったことについては、100%理不尽とは思わない。強いチームが結果を得るものだ。

今年のマンUは、2連敗スタートで最悪のムードだったのだから、3連勝かつOTでのプレイに加え、大きな資金を投じた選手がデビュー(そのうえゴール)と、ポジティヴな勢いのあった彼らとこのタイミングで当たったのは、アーセナルには不運だった。われらのスタート5試合のフィクスチャーズのラッキーは、ここまでだった。

カウンターに未熟なチームの代償。だがアーセナルはやりかたを変えない

とはいえ、アーセナルがここで勝ってもおかしくないくらい多くの時間帯で、試合を優勢に進めていたのも事実。

その意味では、アーセナルが勝ってもおかしくなかったという気持ちはある。

下のグラフィックは、Scott Willis(via Arseblog)の“Goal Probability Added (GPA)”という独自の指標。この試合の彼のxG評価は、2.00 v 1.30というものだが、GPAでは1.6 v 2.6となり、アウェイチームがかなり優勢となる。※GPAとはオンボールアクションごとに、得点と失点の可能性がどう変化するかを比較したものだとか。詳細は、リンク先参照。

だから、マンUが優秀だったことは認めつつ、やはり今回はアーセナルが未熟な守備で相手にスキを与えてしまったことが、勝負の分かれ目になったと感じる。攻撃だけでなく、守備でも抜け目なくプレイできるチームなら、あんなふうにイージーに失点を許さなかった。

アーセナルの失点では、1点めは多くのひとがジンチェンコのギルティだと思っているようだ。彼のフィットネスは怪しかったのかもしれない。ジンチェンコは全体的にすごくよく感じたけれど。彼がいるといないではチームプレイがだいぶ違う。

そして、そのあとの失点ではサンビ・ロコンガのポジショニングも批判されている。彼はNo.6としての守備をまだ身につけていないとも。

※今回は、そういったところもヴィデオで見返して確認すればいいのだが、まだあの試合をもう一度観たいという気にどうしてもなれず。だから、このあたりは試合後に目に止まった評価。

スクワッドデプスの未熟さであり、チームの若さゆえの経験不足がまだまだあるのだろう。これまでの相手には、未熟なところがあっても許されていたところが、今回のマンUはまったく許してくれなかった。厳しく罰せられた。

これを教訓として、今後に生かさねば。

それと、みごとにカウンターから失点していることについて。

ここをどう評価すべきか考えるに、アルテタも当然彼らの武器がカウンターだということは知っていたはずで、いつもと同じようなプレイをそれにあわせて調整するやりかたもあったと思う。おそらくマンUは、最初からもっとシットバックするようなチームのほうが、やりにくかったに違いない。だから、ポゼッション&ハイラインでプレイすることがわかっている相手は、むしろお誂え向きだった。

だが、アルテタはいつもどおりでプレイした。そしてカウンターでやられた。

でも、それでいんじゃないか。

ウナイ・エメリなら、ここで戦術の調整をすることが当然なのかもしれないが、結局そうやって相手によっていつも戦術を変えるから、あのときのアーセナルは自分たちのアイデンティティやフィロソフィを見失っていった。

その点でミケルは、どんな相手だろうと戦術は変えず、あくまで自分たちのやりたいプレイにこだわる。今回はそれで敗けてしまったので、「愚直」だと評価する向きもあるのかもしれない。が、クラブが向かうべき方向性としては、もちろんこちらが正解だろう。OTで、勝っていた可能性だってあるのだから。

たしかにディーテイルで問題はあるが(そしてそこが決め手になりえるが)、いまの自分たちのやりかたを疑う必要もない。

だからこれを継続していくことだ。そのうえで、プレイをどんどん洗練させていく。完成度を高めていく。エメリの時代に「トップコーチにプランBはない」みたいな言説があったが、ミケルにもプランBはない。

今回は、やりかたを間違えたというよりは、本来やるべきことを完遂できなかったというのが反省点であり、どんどん経験を積んで、チームとしてもっともっと成熟していくことを願ってやまない。

チームは、下を向く必要はない。

VARアゲイン&アゲイン??

アーセナルにとって、この試合の最大のフラストレイションは、もちろん11分のガビ・マルティネリの幻ゴール。

スタートからあの時間帯は、マンUがいい感じに試合をコントロールしていたので、もしあのゴールが認められていれば、相手の出鼻をくじくには絶好のタイミングだった。彼らのお株を奪うカウンターでゴールしたことも最高だったろう。いろんな意味でカウンター。サッカーパンチ。

試合後にマーカス・ラシュフォードも「この試合は互角だったと思う」と述べていたように、それほどお互いに競っていたのだから、結果は3-1と差がついたとはいえ、ほんのすこしのディーテイルが勝負の分かれ目でもあったはず。

アーセナルのファンとしては、あのVARの決定はこの試合に決定的に影響したと感じる。もしアレが決まっていたら、別の試合になっていてもおかしくない。

とくにこの週末は、この試合が始まる前にもPLでたくさんの試合でVARの議論が巻きおこっており、GW6最後のこの試合もそこから逃れられなかった。

ぼくはVARというテクノロジーを使うこと自体は基本的には賛成だ。問題はつねにそれを運用する人間にある。最終決定者である、メインレフェリー。彼にアドヴァイスをするVARレフも。

どうして、PLのレフェリーたちはこうも一貫性を保てないのか。それが難しい仕事だということは、なんとなくわかるけども。いろいろ下手すぎないか。ほかのリーグはどうなんだろう。

オーデガードはエリクセンを蹴ってもいないし、PLではふつうあの程度のチャレンジは認められているのだからファウルはおかしいと、HTでSky Sportsのパンディットも云ってた。実際レフもゲイムオンとして流した。あのソフトなチャレンジは、それが起きた時点では“clear and obvious”と認められるほどのファウルじゃなかったのだ。

ヴィラでは、ボックスでサカが後ろから羽交い締めにされて投げ飛ばされても、コーナーで守るラムズデイルが相手選手に手でおさえられていても、VARでチェックまでして“clear and obvious”じゃないという理由でおとがめなしだった。

その流れで、今回のオーデガードに対するジャッジを覆してのファウル認定では、激しい反発が起きるのも当然だろう。

誰かが云っていたが、そもそもゴールがなければ、あのオーデガードのソフトなチャレンジはそのままファウルなしとして流れていたのだ。ゴールがなければVARでのレヴューもなく、あのファウル自体が存在しなかった。ゴールのあるなしでファウルかどうか判断が変わるというのは、おかしいではないか。レフェリーがそのプレイを観ていなかったわけでもない。

ゴールのような決定的な事象のあとで、レフェリーが恣意的に結果を変えられることができる。どちらに有利になるかレフェリーが決められる。“clear and obvious”自体が、まったく“clear and obvious”じゃない。これは、もはや法治ではなく人治。

Premier League and refereeing body to review VAR

PGMOLがチェルシー v ニューカッスルでのVARを間違いだったと認めたとか。

VARは、これからどうするのだろう。毎週のようにそれが議論になっていて、メリットとデメリットが、どんどん釣り合わなくなってきているような気さえする。

ファビオ・ヴィエラがデビュー

この試合の結果は最悪だったけど、アーセナルにもポジティヴなところはいくつもあった。

マルティネリはずっと好調で、試合ごとにどんどん成長しているように見えるし(もはやLWとしてはESRはだいぶ置いていかれた)、ジェズースは今回もやばかった。彼は、あの身長でロングボールのターゲットになってしまうのだから、相手はめちゃくちゃイヤだろう。ジャカもずっとハイパフォーマンス。あのポジションで、かなり安心して観ていられる。

そして、今回は満を持してファビオ・ヴィエラがデビューした記念すべき試合だった。

20分程度のプレイだが、なかなかのものだった。終盤にはけっこう惜しいスルーボールも。

試合後に各所でシェアされていた彼のプレイまとめは、観てもイヤな気分にならないので(笑)、探してみるとよいですよ。

ミドウィークのELでは、スタートからプレイするかもしれない。期待大。彼がトップチームで戦力になることが見えれば、デプスは増す。まるであたらしいサインみたいである。

 

試合については以上

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

8 Comments on “【マッチレビュー】22/23EPL マンチェスター・ユナイテッド vs アーセナル(4/Sep/2022)6連勝ならず。悔しすぎる敗け

  1. 負けると、その日一日は頭の中から試合が消えないですね。
    買った試合のときは、スッキリ次の仕事や遊びに行けるのだけれど。
    その上、ゲームを翻ってブログを書くなど、私にはとてもとても。
    感謝です。

  2. いつもいつでもこのブログに救われてます。
    ありがとうございます。
    あのサカのゴールが決まったとき、その後の攻撃を見たとき、あぁ、この試合は勝つんだ、と思って見てました。なんか、ここ何年も感じたことがないような、確信的な強さを見たとゆう感覚。
    それがこの結果。確かに相手は抜かりなかったのかもしれませんが、あれがビッグクラブのフットボールなのかと、ユナイテッドとはこんなゲームで満足できるのかと、かなりがっかりしました。
    あとマクトミネイ。あいつ、完全に裏投げしてたのに、なんでレッドじゃないのでしょう。あれダメでしょ。
    試合を決めたのは経験値の差だったのですかね。
    アーセナルはアーセナルらしくこのスタイルで戦い続けてほしい。この敗戦が、きっとこのボーイズたちをもっと成長させてくれるはず。
    さぁ、そろそろワオワオ契約しましょうかね。
    COYG

  3. 83分冒頭あたり、マグワイアがエンケティアをホールドした場面がありました。進行妨害とホールドでファウルでは!と夜中に声を上げました

    あまり取り上げられてないので共有したくて投稿しました。
    あれもソフトファウル?

  4. アーセナル贔屓で観ているからか、毎年判定に泣かされると思ってしまいます。
    フラットに観てる方からして、ここ2試合の判定はどうなのでしょう。
    ミングスの羽交い締め、ラムズデールが身動き取れない程のホールド(あんな真正面に飛んできたCKあんなことされてなきゃ誰でも弾けるでしょ)、そして今回の非常にソフトなウーデゴーのタックル。
    本人も言ってます。
    この激しさがPLの醍醐味なんじゃないのかよ!?と。
    その後ゴールになったからって遡って
    これはファールですねぇ、って。
    なんじゃそれ。

    でも今シーズンはチェルシーもハマーズもマグパイズも判定に泣かされてますので、いつかうちにも有利な判定が来ると信じて。
    はぁ、愚痴ばっかりで申し訳ありません。
    でも同じモヤモヤ、憤りを抱えてる人は多い筈。

  5. 失点の場面でジンチェンコはしょうがないというか、あの場面なら外捨てて中絞るかなあ~と。
    確かに被カウンターの場面などで守備で潰しきれないのはフラストレーションですが、相変わらずのビルドアップでの貢献がヤバすぎて。ビタ止めのトラップ、少ないタッチでシンプルにはたく。。う~ん技術高すぎますな。
    失点場面も含めて正直サンビの守備でのあやふやさが気になりました。ジャカも得意な方ではないので、、エリクセン、ブルーノを捕まえきれてなかった。。以前までなら前プレの迫力で誤魔化せていたとこもあったんですが、少し前線の面子もお疲れ気味に見えましたし。。
    (ジェズス以外)

    正直な感想としてはETHがアルテタ上回った感あります。
    2点目とか戦術パターンとしてロングカウンター1発。年配のエゴお地蔵さん入れてどうするのか?思ったらラッシュフォードがダイアゴナルでトップスピードのって、、ナイスデコイだったし。。
    アルテタの2トップは準備不足感が半端なかったし。。正直みんな疲労感見えてたし。。。

    まあ強がるこというと、リサンドロマルティネス買わなくてホント良かった!全然いい選手に思えない。
    マグワイア、交代でてきてファールして、エンケティアを掴んで(いやあれファールでしょ)、あの人サッカーの選手か?アメフトかなんか競技間違えてるわ。こりゃベンジャミン、カタール行きそうですね。

    と悔しさを吐き出して、EL楽しみに待ちます! 
    ESRが心配ですが、ターンオオーバー組の活躍期待大です!富安も勿論!

  6. 本国でも多くの人が指摘していますが、サンビの非保持時の位置取りの怪しさと被カウンター時のインテンシティの低さは、6番としては相当足りないところだと(ずっと)思っています。
    後ろから引き出すときに前を向く気がなく、相手のプレスを最終ラインに連れてきてしまう点やバイタルの空け方含めて、彼は6番の選手じゃないと思います(アルテタも流石に分かっているはずだとは思いますが、代わりがいない…BWもあの場所でターンできるかは怪しい?)。

  7. 振り返り有難うございました・・・ラシュフォードのデビュー戦でやられたこと、思い出していました。相手のいいところを引き出してしまいましたね。消さなきゃいけないのに。やっぱりパーティとモーならブルーノにもっと張り付いていたのか、とか、色々考えましたが、ともかく流れて言えば、キャプテンのVAR判定、これにつきますね。あれは審判がスタジアムの雰囲気にのまれた、としか思えない。エリクセンめ・・・。さあまた連勝街道つくりましょう。COYG

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