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【マッチレビュー】22/23EPL アーセナル vs リヴァプール(9/Oct/2022)最強チーム相手に観せたクオリティ

試合の論点

アーセナル vs リヴァプールのトーキングポインツ。

リヴァプールにクオリティと勢いを示したアーセナル。リーグトップに返り咲く

お互いをめぐる現在の状況にはかなり違いがあるものの、結局試合は、3-2という、もっともゴールが入るというこのフィクスチャらしいスコアで試合は終わった。

アーセナルは、2度のリードをしぶとく追いつかれても、結局とどめをさした。これもまたレジリエンス。勝ちぐせがついてきた。

この結果、アーセナルは、シティに暫定的にトップを奪われていたリーグテーブルで、またしてもトップを奪い返した。ジェズースのボールへの執着みたいに粘りがある。これまでのあっさりした淡麗辛口とは大違い。

試合の内容はどうだったか。まあ、おもしろかったね。

基本的に、お互いにハイライン&ハイプレス志向で、ボールを持っていないときの守備もかなりコンパクト。アーセナルはショートパス中心で、リヴァプールはロングボール中心で、お互いの時間をつくろうとし、まったく気の抜けないレヴェルの高い試合だったように思える。とにかく天地がコンパクトだから、なにかミスをやると、どちらもすぐにカウンターになってしまうという。

が、本質的な内容ではアーセナルが優勢だっただろう。とくに攻撃。

アーセナルの相手ボックスでのタッチは46。この直近5回のリヴァプール戦の合計よりも多いという。それだけ危険な場所でプレイをした。またリヴァプールが、相手にボックス内タッチをそこまで許したのは2019のシティ戦(48)以来。彼らの視点からしても、今回はかなりやられたわけだ。

もちろん、前述したように、チャンスの質を示すxGにもその差が顕著にあらわれている。

BBC Sportsでクリス・サットンはこの試合を4-1と大胆予想していて、実際そのスコアでもおかしくなかった。リヴァプールに2点以上のチャンスがあったとは思えないが、アーセナルには3点以上のチャンスは確実にあったと感じる。

リヴァプールはボールを持つ時間こそ長かったが、おもにCBとFBとでバックラインで回すことが多かった。アーセナルはホワイトがいやらしい位置を取ってシミカス個人を狙うなど、クレヴァーなハイプレスを行い彼らの着実なビルドアップを阻止。相手のやりたいことはなかなかやらせなかった。得意のダイレクトプレイも、そこまで効果的だったようには思えない。サラーのサイドは鉄壁のトミヤスがボールを跳ね返しつづけた。

また今回は、リヴァプールがあまりラインを高く上げられずに苦しんだのとは対照的に、アーセナルはオフサイドトラップを何度も成功させている。

リヴァプール全体でオフサイドは6で(※アーセナルは3)、そのうちの5つはCFのDarwin Núñezによるものだった。リヴァプールの選手ひとりのオフサイドの数としては、クロップがリヴァプールに来てから最多という。TVカメラでは、よくわからなかったが、アーセナルは、つねに複数の選手が裏抜けを狙うようなリヴァプールを恐れず、かなり勇敢にディフェンシヴラインを上げていたようだ。

もうひとつ、この試合で特筆すべきは、アーセナルがアグレッシヴさでリヴァプールに負けなかったこと。

試合のなかで、ケガ人が複数出てしまったことからもわかるように、この試合のフィジカリティはなかなか激しかった。クロップも「アーセナルはアグレッシヴだった」と振り返っていたほど。だが、リヴァプールだってアグレッシヴだった。シミカスのジェズースへのひどい肘打ちはレッドカードでもおかしくない。ジェズースが大したことなかったようで、助かった。彼が崩れ落ちて、チームメイツが助けを呼んだあの場面は冷や汗が出てしまった。

近年のアーセナルは、なんなら弱腰認定されていたチームであり、アグレッシヴにプレイする相手にはつねに悩まされてきた。だから、スキルフルな選手が多いなか、さらにアグレッシヴさを身に着けたことは、このチームがつぎのレヴェルに上がっていきつつあることを印象付ける。変化し、進化している。

アーセナルのふたつの失点については、今回もなんでもないところからやられたという感じが非常にする。そういう意味ではマンUでの失点に似ていた。直前までガブリエルとサリバもいて大丈夫だと思っていただろう、1点めはとくに。

さて、これでアーセナルは直近14試合で1試合しか勝っていなかったリヴァプールに勝った。この勝利は象徴的だ。

今シーズン、アーセナルが勝っているのはもちろんリヴァプールだけではないし、ほかの試合と同様、粛々と結果を出しただけ。しかし、リヴァプールがこの数年、イングランドだけでなくヨーロッパも席巻していたワールズベストのチームだったことを考えるに、この若すぎるチームが、彼らのような老練のチームにクオリティで勝ったということは、あたらしい時代の到来を感じずにはいられない。

盛者必衰・栄枯盛衰・諸行無常はこの世のことわり。そして、そのあとにはかならずつぎの強者があらわれる。それがアーセナルだったらいいなとずっと願っていたわけだが、これは思ったよりちょっと早くその時期が訪れそうに思えてきた。

そんな次世代アーセナルにとって、とても意味の深い、大きな勝利だった。

ガビ・マルティネリ超躍動

あの衝撃の1分ゴール。そして前半終了間際のカウンターからヘンダーソンとTAAを翻弄して、サカのゴールをアシスト。G1 A1。

BBC、Sky、PL公式、AFC公式(投票)すべてでMOTM。当然でしょう。

今回の彼は、まさにクロップ本人の前で「世紀のタレント」発言を証明してしまった。

4FWに4CBの奇策。トミヤスがサラーをポケットに

アーセナルのLBエリアに守備で脆弱なところがあるのは、試合前にはファンのあいだでも懸念が共有されていたし、当然チームのなかでもそれはあっただろう。

しかし、だとしても、ピッチ全体が完璧にカヴァされているなんてことは不可能なのだから、そこはこのチームのやりかたとして承知したうえで、アルテタはあえてかけるべきリスクをかけているのだと、ぼくはずっと思っていた。そのリスクをかけているおかげで、左サイドの攻撃はかなり脅威になっている。

なので、今回のトミヤスの起用には驚いた。

白状すると、トミヤスのスタートが発表されたときは、KTにくらべると、攻撃ではやや後ろ向きなアティチュードに思えて、ぼくはちょっと不安があった。受け身になれば、やられる相手だから。

しかし、それでもアルテタは今回トミヤスのような守備に定評ある選手をそこに入れてきた。このかたちは今シーズンどころか、これまで一回もやったことがないのでは。しかもこのようなビッグマッチで。

そして結果はどうだったか。ここで云うまでもない。トミー大活躍。

TAAは、マルティネリの対応であまり高い位置でプレイすることはできず、そこはうまくやれていた。だから、あとはモー・サラーをどうするかだった。

控えめに云って、トミヤスの完勝という感じである。ぼくは、毎回ふたりが対峙するときはメモっていたが、サラーがトミヤスをはっきり出し抜いたというシーンはなく、一度カットインサイドを許したくらい。あのエリアでトミヤスは、何度も何度もボールを跳ね返し、奪い、サラーに仕事をさせなかった。

DFが相手のFWに仕事をさせないとき、英語だと「ポケットに入れる」みたいに表現するのだが、まさにサラーはトミヤスのポッケに入っていた。入っちゃって出られなかった。サラーを相手にトミヤスは、またしても1 v 1での圧倒的強さを見せつけてしまった。Mr. 1 v 1。

サラーが69分に退くときのスタンドの盛り上がりようったらなかった。だってあそこがトミヤス勝利を決定づけた瞬間だったのだから。サラーという選手は、今シーズンはやや不調とはいえ、もちろんこの世界ではトップオブトップのアタッカーのひとりと思われているわけで。そんな相手にあのパフォーマンス。トミーもうれしかったろうなあ。

ロックソリッドな守備だけでなく、攻撃(ポゼッション)でも大いに貢献しただろう。これは、彼がナチュラルLBでないことを考えても、すごいことだ。

AFCオフィシャルのMOTM投票でも、G2のサカよりもすこし多い支持を集めて、マルティネリにつぐ2位。それだけ、ファンは彼のパフォーマンスを評価した。

今回興味深かったのは、トミヤスをLBに配置したことで、リヴァプールが4人のストライカーをスタートさせたのに対し、アーセナルは4人のCBでそれに対応したこと。ホワイトもトミヤスもフルバックとして十分以上の働きができるので、4CBといってもネガティヴなことはなにもない。ヴァーサティリティばんざい。

トミヤスが完璧に仕事をこなしたあと、これを奇策と云うのは、若干はばかられるが、やりかたを多少変えても、アルテタの期待どおりになったのはやはりチームの勢いを感じさせる。問題があれば、当然その点を突っ込まれるが、アルテタは勝負に出た。トミヤスを信じた。おおいに報われた。

ホワイトも、もちろんすごかった。今回の彼は、オーヴァーラップをかなりやろうとしていて、実際にかなりいいかたちもつくっている。当初は懐疑的な目もあったものの、いまRBとして、どんどん進化している。

ジンチェンコが戻っても、今回の4CBは今後チームの重要なオプションになるだろうか。

4人がバックラインに残ってしまったおかげで、ミドフィールドに人数が足らず、ビルドアップが苦しくなる場面はけっこうあった。アルテタも述べていたように、相手はコンパクトで人数がいて中央が使えない。このかたちでも、そのあたりの進歩は必要に思える。

アーセナルのバックラインは、ヴァーサタイルな選手が多いおかげで、今後もいろいろな組み合わせが試せそうだ。これからどのように進化していくか、非常に興味深い。

※コメントくださるかたにお願い
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お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

6 Comments on “【マッチレビュー】22/23EPL アーセナル vs リヴァプール(9/Oct/2022)最強チーム相手に観せたクオリティ

  1. チェンさんの UP 、めっちゃ速い!
    しかも、6ページ!
    熱いゲームでしたね。リヴァプールも簡単にはやられないし。
    確かにガブリエウのバンドは、アウトだと思いましたよ。(^_^;) なんだかんだ、あの判定は大きかったと思いますよ。
    そろそろホントに信じても良いのかと思う最近のアーセナル。
    リヴァプールを見て思う、ケガだけはしないようにと。
    北極のゲームは上手いことこなして、楽しい道のりを続けましょう! COYG!

  2. 更新お疲れ様です!

    5年ぶり?の勝利?痺れました!!

    前半の中盤くらいから競り負けてる印象がありましてが

    後半はメンタルもフィジカル的にも負けていませんでしたね!

    パーティーが自分的にはマンオブマッチでした!

  3. リバプールはやり方かわってましたね。4トップが裏ガンガンダイアゴナルに狙ってくる。砲台としてスーパー優秀なチアゴ相まって、これは失点はするわな~と思いました。ジョタとかアーセナル相手だと3割増しぐらいでいい選手に見える。。

    攻撃面はマルティネリ最高としかいいようがない!素晴らしい!
    守備面はほんとよく耐えた。。サリバ素晴らしかったよ~ ラムズデール、、慢性的なヤツっぽいが、かなりの頻度で治療受けてる気がして、いつも心配~~ 富安は個人のミッション完遂だけど、チームとしては失点防げなかったからな~
    でももし左SBの序列2位に上がったとすると、富安って、DFライン全てで序列2位とかいう訳わからん選手だな

    ヘンダーソンの奴はジャカが最初キレたんかと思ったら、徐々に雲行きかわってきて、リプレイでも最初ガビを小突いたときになんか言ったっぽいですよね。ブラジル選手たちなんか話してたし、チアゴ(ブラジルコミュニティには属してんのかな?)がめっちゃなだめてた。
    主審が監督呼び出したの、ロスタイム関連かな?と思ったけど、どうやらヘビーなインシデントっぽいですね。
    いやな遺恨が残らないことを願います。

    いや~しかし、今季期待しちゃう!ほんと、なんでW杯あるのか、、、、まあ楽しみだけど

    散文失礼しました。とにかくめちゃくちゃナイスゲーム!!

      1. 以前試合中ガビの怪我疑われてたときに富安がアップ命じられてたの覚えていて、かつサリバのとこも怪我とかしたら現状ベンジャミン動かさずにそのまま入るんじゃね?と思ってるんですが、どうですかね?
        ホールディングはあくまでもカップ戦要員だと思っているので。。

  4. ビッグガビのハンドは、ボールが一度胸にあたった後に手に当たったという判断で”意図なし”という見解のようで。(どっかにスロー映像あり)
    チームの流れや士気が良いと、ジャッジまで味方になる説、あると思います。(今までだったら今回も理不尽にジャカにイエロー出ていてもおかしくない)

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