Hi.
ライスのアレの余波がいまだに収まらないアーセナル界隈。おれもいまだに憤懣やる方ない気持ちを抱き続けている。
でも、サカやライスといった選手たちの試合後のコメントを読み返すと、けっこうポジティヴなんだよね。もちろん失望はしてるけど、あのタフな状況から1ポイント確保したことをもっと前向きに捉えてる。いちばん取り乱してるのはファンかも。自分もそこに含まれてる。
だから、チームは悪い流れを引きずらず、来週末の重要な試合までにはきっともろもろリセットされているに違いない。大丈夫、われらはまだまだ先へ行ける。
そして、夏の移籍ウィンドウが先日終わった。
アーセナルにおいては、全ファンに望まれていたアタッカーの補強が最後まで決まらないことでもだいぶイライラさせられたが、スターリングのアレで終わってみてもやはりどこか物足りなさは残ったように感じる。去年の夏はライスだったから、ついあの興奮と比較したくなってしまうのだよね。
もっとも、今回のPLの移籍ウィンドウは、トップクラブ含めて全体的に動きが鈍かったそうな。リーグ全体の選手への投資額では、去年より£400mほども減っている。云われてみれば、この夏はシティなんか全然ニュース観なかったし、リヴァプールもそれほど。この夏のPLでは、ブライトンがもっとも金を使ったクラブ(ネットでおよそ£195m ※売却益と相殺しないならチェルシーの£219mがトップ)ということが、どういうウィンドウだったかを物語っている。
BBC Sportのまとめ記事によると、今シーズンPLに昇格した3チームのうち、イプスウィッチとサウサンプトンの2チームが、選手補強に£100m以上もの大金を投じているという。リーグのトップ3よりも多い。すごいリーグだよ。
では、アーセナルの2024夏ウィンドウをまとめてゆこう。
アーセナルが2024夏に獲得した選手
TMによると、アーセナルがこの夏に獲得した選手の総額は、€108.90m(現在のレイトでおよそ£92m)。リーグで10番めの金額。ちなみにシティの£21m、リヴァプールの£35mがリーグのワースト2。この場合「ワースト」といっていいのかわからんけど。
以下、金額順。※移籍金はすべてTMより
Riccardo Calafiori(22)DF
リカルド・カラフィオーリ。セリエAのボローニャから。移籍金€45m。これにアドオンが5mと云わていれる。
この夏のアーセナルの優先エリアだった左サイドのDFをうめる選手。CBとLBでプレイ可能な左足DF。これは7月末には決まった案件だったので、クラブが早くから動き、決めたかったターゲットだったのだろう。そして、本人もアーセナルに移籍希望だったことで、比較的すんなり交渉が進んだように見える。
彼は、レアルやバイエルンといったメガクラブも狙っていたという逸材であり、今回の夏ウィンドウではアーセナル視点だけでなく、リーグ視点からももっとも注目のひとりだった。
こちらはBBC Sportの移籍記事のグラフィック。
新シーズンが始まってから、彼にまだまとまったプレイ時間は与えられていないものの、優秀なDFの片鱗は見せている。間違いなく、アーセナルファンがこれからかなり活躍を期待するひとり。
ところで、カラフィオーリについてはその後いろいろな分析記事などを読んで、彼はもともとフルバックで台頭してきた選手ながら、ボローニャに移籍してセンターバック(3CB)にコンヴァートされてから大ブレイク、みたいなこれまでのキャリアらしいと知った。そう考えると、彼の将来はLBにあるのか、あるいはLCBにあるのか、ちょっと気になっている。
先日のブライトンでも、10人になってからの逆襲で、彼が絶好のタイミングでスペイスに走り込むシーンもあった(惜しくもパスは出なかったが、もしあれが出ていたらGKと1 v 1だった?)。アルテタが彼の攻撃的な個性をどう活かしていくか、見ものである。
「左サイドのベン・ホワイト」が早くみたい。
【Welcome】アーセナルがリカルド・カラフィオーリの獲得を発表【to The Arsenal】 | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
Mikel Merino(28)MF
ミケル・メリーノ。チームにやってきたもうひとりのミケル。
そういえば、このブログでこれまでなんの疑いもなく「メリーノ」と表記してきたけど、もしかして日本語だとメリノ? ありそうで怖い。日本のメディアはなぜかアクセントの音引きを省略したがる。
スペインのレアル・ソシエダから。デュエルがヨーロッパでいちばん強いデュエルモンスター。オーデガード、KTの元チームメイト。移籍金は、€32mにアドオンが€5mと云われている。28才で残り契約1年の選手に大金を支払うことになったが、その分活躍してくれれば誰も文句は云えない。
ポジションはCM。攻撃的(8)でも守備的(6)でもプレイ可能ということながら、基本的にこれまでも守備的なポジションのときは、となりにパートナーがいたようなので、いわゆるBox to box MFであり、アルテタがMFの組み合わせなど彼をチームでどう使うか、非常に興味深く思っていた。ついに、22/23式グラニト・ジャカが代替される期待も。
ところが、ご存知のように先日、彼はトレイニング中に肩を骨折するという大怪我を負ってしまった。去年のティンバーの悪夢が蘇るようなできごと。ブライトンでは腕を釣った状態でスタンド観戦する姿も映された。
昨日のニュースだと、彼は復帰まで6週間とか2ヶ月弱とか云われている。まあ、まだしばらくのあいだ、われらが彼のプレイを見ることはなさそうだ。
彼が復帰したあかつきには「まるで新しいサインだ」と云わねばなるまい。
【Welcome】アーセナルがミケル・メリーノの獲得を発表【to The Arsenal】 | ARSENAL CHANGE EVERYTHING – Part 2
David Raya(28)GK
ダヴィド・ラヤ。去年はブレントフォードから£3mで1年ローン。そして今年は、ローンについていた買い取りオプションを行使して、£27m(€31.9m)でパーマネント契約。アーセナルとの契約年数は不明。
ラヤに関しては、とくに云うことはない。GKとしてとても安定しているだけでなく、今シーズンが始まってからは重要なセイヴも。ちゃんとタイトルにチャレンジできるチームのGK。
ただ、ふと考えるのは、No.1の座がしばらく安泰に思われたラムズデイルがああなった以上、ラヤだって同じ立場にならないとは限らない。アルテタはつねに進化を望んでいる。シーズン中、なにか不安定さを見せるようなことがあれば、アルテタは躊躇しない。
David Raya joins us on a permanent deal
Neto(35)GK
ネト。チームにまた新たなブラジリアン。ボーンマスからの1年ローン。ラムズデイルの代替GK。条件の詳細は不明。TMにローンフィの記載はないので、ローンフィなしのサラリー全額負担とか?
ネトは、この夏アーセナルがセカンドGKとして狙っていた、そして獲得に失敗したエスパニョールのJoan GarcíaのプランBだった。が、アーセナルファンからはクラブがセカンドGKに€20-30mを支払うことは非常に不評だったため、結果的にネトのローン契約は歓迎されているだろう。いちおう、最低限のコストで今シーズンはしのげる。
だが、ラヤが来てからのラムズデイルの扱われ方を思い出すに、今シーズンのネトにどれだけ試合でプレイするチャンスがあるのかはわからない。アルテタには「カップ戦は必ずセカンドGKを使う」みたいな発想はあまりないようだから。
ちなみに、ネトは今年ボーンマスですでにカラバオカップをプレイしているため、そうなると、つまり、いわゆる「カップタイドルール(cup-tied)」で彼はカラバオカップでプレイできない可能性があるようだ。
カラバオカップですらプレイしないとなれば、ラヤになにか問題が起きないかぎり、彼にまともなプレイ機会はあるんだろうか……
Tommy Setford(18)GK
トミー・セットフォード。オランダ生まれのイングランドユース代表。身長185cm? ラヤより小さいのか。
彼はこの7月に、そもそもユースチームのためにアヤックスから獲得されたようだが(TMではArsenal U-21とある。移籍金€0.9m)、アーセナルがサードGKを獲得できなかったため、やはりひとまず彼がファーストチームのサードGKを務めるようだ。ちなみに、どういうわけかAFC公式サイトのアカデミーの選手リストにも彼の姿はない。
ネトがカラバオカップでプレイできないとなると、もしかしたら、そのときはこのセットフォードがファーストチームでプレイするかもしれない。まあ、アルテタならふつうにラヤを使うか。
Raheem Sterling(29)FW
ラヒーム・スターリング。選手時代のアルテタとも対戦していたり、彼のPLでの長いキャリアを思うと、むしろそれでまだ29かと思う。チェルシーから1年ローン。
彼についてはアーセナルファンには賛否両論あるだろうが、SeskoやWilliamsのようなトップターゲットを逃してウィンドウ最終日を迎えることになったチームの状況を鑑みると、彼の加入は非常に理にかなっていると云わざるを得ない。契約は好条件でもあり、むしろかなりありがたかった。
彼の移籍が決まった舞台裏がその後にもろもろ明らかにされてきていて、それについて少し。……と、その前にこのブログでは彼の移籍を伝えたときにエドゥの重要なコメントをスルーしてしまっていたのでそれを。
(ラヒーム・スターリング獲得について……)
エドゥ:じつは、移籍ウィンドウが始まったとき、われわれには彼とサインする計画はまったくなかったんだ。これははっきりさせておきたいから云うけど、いろいろな理由で。しかし、われわれがつねに全員に伝えていることは、どんなシナリオにも準備はしておかねばならないこと。
だから、わたしにその機会が訪れたら、まずスクワッドをチェックし、彼がどんなプレイをするかチェックし、当然ミケルとも話す。わたしはヴァイスチェアマンのティム(ルイス)とも話し、これから踏む手順を全員がうまくやれそうかチェックする。そして、それは大いに理にかなっていた。
彼のような選手を取ることは、とても理にかなっていたんだ。なぜなら、彼は必ずスクワッドに多くをもたらすと思うから。彼には経験があり、誰よりもリーグを理解している。CLでも何度もプレイしている。PLも4度勝っている。だから、わたしは彼ならスクワッドに多くをもたらすことができると考えたし、彼のような選手がわれわれのスクワッドにいるのは、とてもうれしいことだと感じている。
スターリングは取るつもりなかったって、ぶっちゃけるなあ。しかし、そこにチャンスができたから取った。これこそmarket opportunity。
それと、スターリングについて、舞台裏でのチェルシーとアーセナルの交渉においては、昨日TNATによるこんな暴露があった。
デッドラインデイのチェルシーは、じつはアーセナルにはスターリングの先にMudrykをオファーしていたという。ただ、彼らは最初からMudrykを放出する意向はなく、スターリングを望むアーセナルとの「交渉の戦略として彼の名前を使った」という。つまり、もしアーセナルがMudrykに食いつけば彼に大きな条件を提示、当然難色を示したところで、その代替としてMudrykよりよほどお得な(それでいていいお値段な)スターリングを提示するみたいな? しかし、その小賢しい戦略は結局うまくいかなかったのだ。
あとは、はっきりしなかった彼のサラリーの件、それもデッドラインデイのTNATがファイナルアンサーっぽいことを云っていた。
100% true we told them £100k take it or leave it. Not sure if we stuck to that or if it was a negotiation tactic https://t.co/k4UxKjLwPq
— Team news and ticks (@Teamnewsandtix) August 31, 2024
チェルシーからスターリングのローンをオファーされたアーセナルの要求は、ローンフィなしの£100kpwのサラリー負担のみ。ビタ一文まけません。これを受け入れるか、さようなら。と、かなり強気の交渉。でも、アーセナルのほうは結局これが通った。その後アーセナルの彼のサラリー負担は「50%以下」が、真実っぽく云われているので、£325kpwからペイカットされた給与がたとえば£250kpwとかなら、残りの£150kpwがチェルシー負担。彼のサラリーなどどうでもよい、なぜならアーセナルは100kしか払わないから。
スターリングも熱烈にアーセナルに来たかったのなら、チェルシーにアーセナルの条件を受け入れてもらうために、ペイカットで説得しなければならなかったのだろうから、ここでもタフな交渉があったと想像できる。なんというデッドラインデイの舞台裏の駆け引き。
アーセナルは、もしスターリングとの取り引きが頓挫しても、最終日まで引っ張ったエディやネルソンを引き止めることができた。いっぽうチェルシーは、どうしてもすでにチームのプラン外となったスターリングの問題を解決したかった最終日。選手は移籍するならアーセナルしか眼中になく、チェルシーはアーセナルと交渉するほかに選択肢がない。
この取り引きにおいては、終始アーセナルの立場が強く、チェルシーの立場が弱かったということ。
なんという気持ちのよい話でしょう。
ところで、スターリングはNo.10シャツを与えられるという説がある。マジだろうか。ファビオ・ヴィエラもポルトで10を着るみたいだから、ローン選手が着ちゃいけないわけではないが。スターリングがそれを着るくらいなら、オーデガードにあげたらと思ってしまう。
この夏あいた10も14もアーセナルではアイコニックなナンバーで、クラブはそれをしばらく温存するという話もどこかで見たな。
後半はデパーチャーを。
チェンさんもこのエントリ内で言うとりますけど、スターリングが10番まで望まないことを祈る。切に。