こんにちは。
いまから10日ほど前にアップされた、ガブリエル・マルティネリについてのとあるブログ記事がずっと気になっていた。ぼくは、この記事をArseblog経由で知った。
Don’t you forget about M(artinell)i
期待されているほどの活躍ができず、多くのアーセナルファンが少なからずフラストレイションをためているであろうここ数シーズンのマルティネリ。この夏は、トップウィンガー(LW)待望論も根強く、実際アーセナルも今回の移籍ウィンドウではNo.9と同様にファーストチョイスのLWをプライオリティにしていると云われている。
現在のアーセナルのチームにおけるマルティネリをめぐる状況は、必ずしも順風満帆とは云えない。
しかしながらこの筆者は、そんな状況がありながらも、24/25シーズン終盤の彼のパフォーマンスをポジティヴにとらえ、ひきつづきの選手への信頼と再生への取り組みを訴えている。
今回はこれを紹介しつつ、マルティネリのクラブでの今後について考えたい。
「マルティネリを忘れるな」by Lewis Ambrose
Lewis Ambroseさんはファン/ブロガーのようだ。リスペクト。以下に記事を要約。くわしくはオリジナル記事をご参照ください。※小見出しは訳者による
つねに隣の芝生は青い
- シーズンが終わり、アーセナルは新しい戦力を探している。新しい選手とはまぶしいものだ。成功の可能性に満ちている。まだがっかりもさせていない
- しかし、チームに来てから時間がたてば粗が見えてくる
- そしてアーセナルファンは、毎週PLでほかの試合を観て自分たちのチームにいない選手をうらやましがっている。それはわたしを含め、わたしたち全員の罪だ
- わたしも夏のEuroではNico Williamsを熱心に観たし、いまもアーセナルが彼とサインしたらと思う
- しかし、彼のラ・リーガでのゴール記録は24/25が「5ゴール」、23/24も同じ「5ゴール」。大金でアーセナルに来てこれでは誰も納得しない
- よりプレイを頻繁に観るようになると欠点も見過ごせなくなるものだ
マルティネリは24/25シーズン終盤にベストに戻っていた
- 25/26シーズンのアーセナルは、何人かの補強はあるにせよ、ほとんどひきつづき24/25シーズンのチームでプレイする。したがって、アルテタの重要な仕事はいかに既存の選手たちのベストを引き出すか
- そこでガブリエル・マルティネリのことを考える
- アーセナルは新しいウィンガーが必要だし、これまでも長らくずっと必要としていた。しかしそれはマルティネリの代替ではない。「さらにもうひとり」必要なのだ
- だから、わたしは少し前の『The Athletic』(※訳注:ジェイムズ・マクニコラスの書いた「マルティネリのクラブの評価額は£50m↑」とあった記事)には驚かされた。これは安すぎる
- とくに、彼はシーズン終盤にはスーパーブなパフォーマンスに見えたから。彼は2月にケガをするまではたしかにプアだったが、3月に復帰してからはよりシャープでダイレクトで危険でアグレッシヴになった
- 実際に調べてみると、その印象は数字で裏付けられた。その時期の彼はヨーロッパのほかのトップウィンガーに遜色ないレベル
- 今シーズンのマルティネリは、前年よりもボールにさわる機会がかなり減っており、ケガの前はシュートに苦労し、自分自身やほかの選手にシュートチャンスを与えるのに苦労し、あまりにもゴールから遠く離れた場所にいた
- それがケガからの復帰後は、アーセナルに来てから見せたことがないほど脅威に見えた。ファイナルサードでボールにさわる割合が増加し、ショッツも増え、ボックスへの侵入でも彼のベストの状態に戻った
- たった2ヶ月ほどのフォームに過ぎないかもしれない。だが、それはアーセナルが比較的調子悪かった時期に起こったことであり、彼が背後にようやく安定した基盤を持った時期ともいえる。それはおそらく偶然ではない
- アーセナルはジンチェンコとジャカ以降、LBとLCMを頻繁に変更していて、そこがMLSとライスのふたりで定着するまで安定しなかった
マルティネリと新ウィンガー候補たちとの比較
- このシーズン終盤のマルティネリのフォーム、それとこの夏にアーセナルが狙っているウィンガーたちを観たとき、ほんとうに新ウィンガーは彼のアップグレイドになるのか? そして彼は£50mの価値しかないのか?
- 24/25シーズン、ヨーロッパのトップ5リーグにおいて、P90で「3以上のボックス内ボールキャリー」「3以上のショッツ」があるウィンガーのリストが以下となる
- Ademola Lookman (Atalanta)
Alfon (Celta Vigo)
Lamine Yamal (Barcelona)
Noni Madueke (Chelsea)
Mohamed Salah (Liverpool)
Bradley Barcola (PSG)
Ousmane Dembélé (PSG) (※ほとんど9でプレイしているが)
Vinícius Júnior (Real Madrid)- もしここに、ベンチマークとしてマルティネリのxG(0.37)でフィルタするならAlfonとLamine Yamalは除外される
- このなかでSalahやVini Jr、あるいはPSGの選手はアーセナルのターゲットとして論外とすると、LookmanとMaduekeしか残らない。チェルシーのMaduekeもありえない
- このリストには、Kylian Mbappé、Nico Williams、Rodrygo、Raphinha、Rafael Leao、ブンデスリーガのウィンガー全員、PSG以外のリーグアンの全員、Khvicha Kvaratskhelia(PSGだが)が含まれない。SalahとMaduekeを除くPLのウィンガー全員も。サカですらも
- なぜなら、このリストに含まれないウィンガーの多くは、ウィングの選手にとり非常に貴重なスキルであるボックス内キャリーが少ないから。また、Jamie Gittens、Savinho、Jeremy Dokuといった選手にはシーズン終盤のマルティネリのような数のショッツがなかった
マルティネリにパフォーマンスさせる機会を与える
- もちろん、注意点はある。24/25のマルティネリも悪い時期のほうがよい時期よりずっと長かった。私が云いたいのは、数カ月間このブラジル人を見るだけで十分ということではなく、彼を信頼し続け、長期間にわたってそれを再現する機会を与えること
- 彼自身もエンドプロダクトを改善させる必要はある。ケガから復帰したあとの好調だった期間も、彼は3.4 xGでわずか2ゴールだったし、2.1 xGAで1アシストだった
- しかし、その期間はファイナルサードではつねに脅威であり、それを継続できればいずれ結果にはつながるだろう
- アーセナルは今夏間違いなくウィンガーが必要。しかしそれはマルティネリを代替する必要があるからではない。彼は競争に直面するというだけ
- チームにはすでに優秀な選手たちがいる。そしてそこに新たに戦力が加わる
- ミステリーボックスはつねに魅力的だが、新しい洗濯機や新しい乾燥機ばかりに目を向けないで。素敵なSmithersがすでにそこにいるじゃないか
以上。向こうの人は、みんなシンプソンズが大好きだなあ。
マルティネリについてのわたくしの雑感
さて。
マルティネリの24/25シーズンを振り返るなら、全体的にはやはりフラストレイションがたまるシーズンだったと云えるだろう。PLではG8 A4という記録。悪くもないが、すごくよくもない。トップチームのレギュラーとしてはいささか物足りない。もっと期待してた。それがファンの本音。
しかしながら、シーズン終盤の好調っぷりはたしかに際立つものがあった。とくにアンフィールドでのリヴァプール戦のような、彼が中央にポジションを移してプレイした試合。彼が仕事をするときは、だいたいゴールのすぐ近くにいる。9適性もけっこうあるんじゃないかと思ったりしたものだ。
ただ、このブログ記事でも触れられているように、ストライカーとしては彼のエンドプロダクトには問題が多い。1 v 1のような決定的な場面でゴールを決められないことが多すぎる。それで見た目はかなり「印象」が悪化する。たしか、PL最終戦のサウサンプトンでもGKと1 v 1の機会があったような。ああいう大きなチャンスを確実に決めてくれる安心感みたいなものは、いまの彼にはない。
さて、ぼくはこのブログ記事に書いてあることには全面的に賛成なんだけど、「たった2ヶ月調子がよかった期間だけで語られても」というツッコミはありそうに思える。
しかし、そうじゃないよね。彼にはもともと素質があることはわかってる。Kloppが大絶賛するようなサムシング。それを発揮することに苦しんでる。だから、その短期間でも、彼が復活のきざしを見せ、その理由が見えたかもしれないことが重要なのだ。この世界のスターウィンガーたちがやっているように、安定してトップパフォーマンスが出せる一貫性が最重要なのは当然で、(うまくやれば)彼にもそれがつかめるんじゃないかという話である。
彼は、19/20シーズンに18才でアーセナルに加入、当初U-21でプレイさせるつもりがプリシーズンでファーストチーム入りを認められると、そのままデビューシーズンで二桁ゴール(すべてのコンペティションでG10)を決め、クラブの大胆な決断にみごとに応えた。そして圧巻はアーセナルが突如変貌した22/23シーズン、PLだけで15ゴールを決めたこと。それは彼にとってもブレイクしたシーズンだった。
ウィンガーでシーズンに15ゴール決めてくれたらもちろん大成功。それをいまも待ってる。現在のファンの彼に対する厳しい目線を考えると、幸か不幸かそれがいまだに彼のスタンダードになっている。
そして、そのブレイク以降、あきらかに彼が伸び悩んでいるように見える理由のひとつに、周囲の環境があるんじゃないかという。具体的には、LBやL8の左サイドの人選。彼が大活躍していたとき、そのパフォーマンスに彼のうしろで支配的にプレイするジンチェンコとジャカの貢献がいかに大きかったか。当然そのことはこの記事でも触れられているが、これはファンのあいだではマルティネリの(低)パフォーマンスを語るときに、これまでも定説のように語られていることでもある。とくにジャカが去って、彼との関係性がなくなったこと。
右サイドで、サカ・オーデガード・ホワイトのトリオのケミストリがトレイドマークになっていた時期、左サイドではジャカが去ってからその代替にはずっと苦労していた。そのおかげで、アーセナルの攻撃は左右格差が顕著だった。若いネリがその犠牲になったというのはいい過ぎではないと思う。サカのパフォーマンスだって、あの周囲の選手たちとの関係性の恩恵を抜きには語れないので(彼とてMØ不在では苦労した)、ネリがワークしない理由をすべて本人のクオリティのせいにするのは不公平だろう。
ところで、彼の周囲でプレイする選手という意味で、24/25のシーズン終盤の彼の活躍には、個人的にはキヴィオールの存在もあったかなと思う。ビッグガビがケガして以降、彼はLCBのレギュラーとしてプレイしていて、彼の特長としてミドルレンジのスルーボールというか、DFの裏のスペイスにちょっと浮いたパスを出すアレ。走力でDFラインを抜け出せるネリとの相性はかなりよかった。
それもまた、彼が誰とプレイするかでパフォーマンスが変わるひとつの証拠のように思える。シーズン15ゴールをぶちこめる彼のベストを引き出すための戦術、周囲のセッティング。それがほしい。
ただ、新シーズンはライスがLCMでプレイするなら、LWとしてどれだけその影響を受けるかは注目したいポイントだ。ライスは基本的にクリエイターではないので、右サイドのサカとオーデガードのような関係性をふたりがつくるのはちょっと難しそうであり、そうなればべつの形で新しい関係をつくるほかない。彼らはすでに今シーズンも短くない時間ともにプレイしているが、関係性というほどの関係はなかったか。右サイドのように、1+1が2以上になるみたいなものはなかったと思う。
Zubimendiが来ると、ライスが左のNo.8(B2B)でプレイすることになるのはほとんど必至。ネリとライスはこれまでもあまり同時に語られることのなかったふたりかもしれないが、新シーズンはそれが増えるかもしれない。あるいは、新LWが先にライスと関係性を築くか。関係性など無視して個人の才能を爆発させるか。Zubi効果も期待したり。
シーズン終わりに、これから分析に長い時間をかけられるとアルテタは述べた。もう長らくつづいている左サイドやLWの理想的とはいえない状況は、ファンのあいだでもこれだけ語られてきたテーマであり、当然コーチたちも課題として共有しているはず。シーズン終盤のマルティネリも議論されるだろうか。ファンが懐疑的な目で見つめるなかでも、アーセナルの内部では、いまも彼はトッププレイヤーのひとりだとみなされているという話も以前あった。クラブは、彼の今後の成長に期待もしているし、分析対象として優先順位も高いはず。いま彼の現状からすれば、伸びしろしかない。
この夏に新しいトップウィンガーが来れば、レギュラーでプレイしたいマルティネリには厳しい状況だ。しかし、彼にもひきつづきチャンスは与えられるだろうし、チームとしては彼にトップフォームを取り戻してもらわねばならない。あとは彼次第。
そうそう、今回紹介したブログでテーマ的にも彼の守備についての言及はないが、彼の評価と守備意識の高さは切り離せない。稀有なワークエシック。攻撃はともかくウィンガーの守備貢献では彼は間違いなくトップクラスだろう。彼がセレソンに選ばれる理由にもなっているんじゃないか。FWのあの献身性をありがたく思わないコーチなどいないはず。
四六時中走っているのだから体力的には当然トレイドオフがあり、それが攻撃の足を引っ張っている側面もあるのかもしれないが、彼はあのキャラクターを手放すべきじゃない。攻撃と守備の両立もできると思う。
今月にやっと24才。彼にはまだまだ時間もある。リトルガビの新シーズンに期待している。
おわり
いつまでたってもヘッドアップしないで突っ込んで成長の兆しがないから辟易してるんだと思うが