プレミアリーグも6試合を消化して、2敗につづき4連勝ながら、いまだアーセナルのメインマン、メスト・エジルの調子が上がらない。
エメリがアーセナルのマネージャーに就任して以来、シーズン前のさまざまな予想ではエジルはあらためて大好きなNo.10でプレイできる、新システムに適応する苦労もあるにせよ、どちらかといえば4-2-3-1というエメリが好むシステムのなかで恩恵を受ける選手のひとりだという見方もあった。
ところがふたを開けてみれば、ラムジーがサブにまわったPL2戦目のチェルシーでセンターに配置されたとき以外では、出場したすべての試合でセンターにラムジー、右にエジルという配置に。
近ごろはファンのあいだでもあらためて「ラムジーとエジルの共存」が注目され始めており、一部のファンには疑問を抱かれてすらいる。
そして、エジルのワイド起用は、おそらくNo.10プレイヤーを自認するエジル自身にとっても期待外れなものとなっているはず。
エジルはヴェンゲル時代の最終シーズンでもCFの後ろのふたりのインサイドFWのひとりとして右に置かれていたが、エメリには(サイドで)ハードワークを要求をされており、自由を謳歌したいタイプのエジルにはより厳しい状況だ。
エジルのフォームは落ちている
Arseblogでエヴァートン戦前半のエジルについて、彼のチームへの関与の少なさを物語るデータを紹介していた。
エジルの影響力の欠如
- 21 – エジルの前半のタッチ数。チームでワースト3
- 5 – エジルの前半の縦パス成功数
- 0 – エジルの前半のボックス内へのパス成功数(アテンプト1)
- 0.03 – エジルの前半のパス・ヴァリュー
- -0.01 – エジルの前半の攻撃ヴァリュー。フィールドプレイヤーでワースト2
- 0 – エジルの前半のチャンス・クリエイト
- 0 – エジルの前半のxGチェイン
アーセナルよりタレントの少ないチームとの対戦では、攻撃をされるようなときでも、従来ホームではメスト・エジルは試合を支配するようなプレイをしてきた。しかしこの試合で彼は間延びした状態にとても苦しんで、前半はほとんど何もできず、かなり試合から消えていた。
後半にアーセナルが試合をコントロールできるようになると、彼もよくはなったが、データ的には今シーズンの彼のワーストマッチだったといえる。
アーセナルの攻撃のどこが悪かったのか明らかにすることは非常に難しいが、攻撃の選手たちは基本どおりでないポジションに入ろうと苦労していた。ウナイ・エメリは攻撃のタレントたちがどのように動くのが最適なのか見極める必要があり、それがシーズンを成功させるカギになるはずである。
試合を観ていて感じたイメージだけじゃなく、やっぱりうまくいってないよねっていう。エヴァートン戦のデータにもてきめんにそれは表れていると。
ラムジーやほかの選手たちのスタッツを確認しないといい加減なことはいえないが、もしかしたらエジルが効果的でないことがアーセナルの前半の不調の理由だったかもしれない。
この試合だけでなく、エジルがなかなか復調の兆しを見せられず、エメリのシステムへの適応にいまだに苦しんでいるのは以下のツイートでも指摘されている。
昨シーズンと今シーズンこれまでのエジルのスタッツを比較している。
Obviously you have to take the sample sizes into consideration, here, but the drop in numbers from Mesut this season are hugely concerning.
And I don’t think that’s a mark on him more than it is on Emery and how he’s tried to use him. pic.twitter.com/muOpmDYvHf
— PM (@ThatGooner) 24 September 2018
この数字を見ると昨シーズンに比べて、90分ごとのパス本数、パス成功数、キーパスの落ち込みは顕著で、いかにエメリの下で期待されたパフォーマンスを発揮できていないかがスタッツに如実に表れている。
ただ、アーセナルにとってチームで彼の影響力(依存度)が減っていることは、決して悪いことばかりではない。その分チーム全体でパフォーマンスが上がっていればいいのだから。エジルのパスが落ち込んでいても、仮にキーパスやxA(期待アシスト)などのチャンス創造が増えていれば、そのようにいうこともできるはずだ。しかし実際は彼のスタッツの全体が落ちているということは、彼がチームの攻撃への貢献自体が減っているということになる。
攻撃で貢献できないエジルとはいったいなんなんだ?
ハードワークの代償?
エヴァートン戦では、しっかりフルバックの後ろに入ったり味方のカヴァーをやっていたという指摘もあった(ぼくはちっとも気づかなかった)が、それによって攻撃が停滞するようならやはりそれは本末転倒かもしれない。
このブログでも何度も言及しているように、彼が守備で忙殺されたおかげでスペシャルなタレントを発揮できないというのならば彼を使う意味はほとんどない。攻守のトータルで考えれば、よりハードワークするミキタリアンやイウォビのほうがよほど効果的である。
これまでエメリの要求する「ハードワーク」にエジルがどれだけ適応できるかが注目されてきたが、もし彼がエメリがいうところのハードワークに応えようとして、本来の持ち味が発揮できなくなるというのなら、それをもってシステムに適応したといえるだろうか。
EPLも6試合を消化して、いまだエジルが本来のパフォーマンスを発揮できずにいるところを見るに、彼の将来がほんとうに心配になる。もしこの傾向がこれからも続くようであれば、どこかの時点でエメリは決断を強いられるだろう。
結局彼のような選手はエメリがやりたがっているようなフットボールには合わなかったのだ。そんな結論に着地しそうで怖い。悪い予感はある。
「ミルナーは子どもたちのお手本。エジルも見とけ」ポール・マーソン
エジルの理想像はいったい誰なのか?
ぼくもよく考える。ある意味、彼は一時代前にはプレイメイカーとして理想を極めた選手だったはずなんだけど、急速に変化するフットボール世界ではすっかり時代遅れな存在になってしまった。
シルヴァなのか、コウチーニョなのか、エリクセンなのか。
OBにしてSKYパンディットでおなじみのポール・マーソンは、エジルはリヴァプールのジェイムズ・ミルナーこそを見習うべき存在だという。お、おう。
Arsenal news: Mesut Ozil must watch and learn from this Liverpool star – Paul Merson
マーソン:(イングランドNTで)もし誰かを候補から外すとしてもミルナーではないね。絶対に彼じゃない。もしわたしがサウスゲイトなら、迷わず彼に電話するね。彼は呼び出しに値すると思うよ。「やる?」って訊くよ。
この漢は一週間に7日でも8日でも動ける。なにをすべきか伝えるだけで、あとは彼が出ていって実行してくれる。彼はいつも正しいパスを出す。彼がやることなすこと、完全に信用できる。思うに、子どもたちはみんな彼を見習うべきだね。お手本みたいな選手だ。
彼は毎週のようにきっちり仕事をする。毎週だよ。彼は「いやあ、今日はぼくの日じゃなかった」なんて絶対いわない。
わたしは子どもたちには彼を見ることを勧める。まあエジルも彼を見るべきだね。
要するに、安定性とか継続性みたいなことをいいたいんだろう。
たしかにアーセナルに来てからのエジルはいい試合もあれば悪い試合もあるというように一貫性にずっと疑問を持たれていて、エヴァートン戦の前後半のように試合のなかですら浮き沈みがある。いまだにその傾向が強いと思われているわけだ。気まぐれさんだなあ。
エジルは変われるか
エジルがエメリのシステムや戦術に適応できるかどうかというのは、彼が変わることができるかというなんというかフットボールを越えた、もっと深い話しにもつながるような気がする。
29才にしてこの世界ですでに数々の名声を得ている彼が、いまさらフットボールを始めたての若手のような気持ちでものごとに取り組むことができるかどうか。
ミルナーって選手のことはぼくはあまり詳しくは知らないのだけど、彼はクロップのユニークなシステムに適応するためにだいぶ苦労したんだろうか。シティでペレグリーニのシステムに適応したんだろうか。そういうことなら、ぼくはマーソン氏のいうことに100%アグリーである。
エジルは自由が約束されたヴェンゲル時代に比べれば、エメリの下で明らかに苦労している。
エジルが学ぶべきだというのなら、継続性も重要だけど、もっと年齢やキャリアにとらわれず新しいことを受け入れて、それを咀嚼できる柔軟性を体現した選手かもしれないね。
これはフットボーラーとしての才能とかテクニックとかそういう小さい話しじゃなくて、もっとメンタリティとかアティチュードといった人間性の根幹にあるもののが問われているのだと思う。
そんな選手って誰かいる?
エジルのサイド起用は謎ですね
ラムジーをトップ下で使う意味も
攻守両面を考えると尚更
エメリになって前半攻撃が全く機能しない試合ありますが、それはトップ下のラムジーが居て欲しいポジションに居ない事が多いからだと思います
コレもはや古典的な442ですやんってシーンが多々有り
カウンターも真ん中で受けて欲しい時にラムジーがいないので単純にオーバメヤンにロングパスが多いですよね
エメリには考えがあって段階を踏んでからエジルをトップ下に戻そうとしてるのかなと勝手に思ってますが、どうなんでしょう
> エメリになって前半攻撃が全く機能しない試合ありますが、それはトップ下のラムジーが居て欲しいポジションに居ない事が多いからだと思います
ラムジーとエジルってエメリからどんなポジショニングの指示を受けてんすかね。それは気になる。
エメリは非ポゼッション時とかビルドアップ時は厳格だけど、ファイナルサードではヴェンゲルみたいに自由にやらせようとしているという分析もあるみたいですよ。ここまであんまりうまくいってるように見えませんけど。
> カウンターも真ん中で受けて欲しい時にラムジーがいないので単純にオーバメヤンにロングパスが多いですよね
FWやサイドのスペースめがけてロングボール(中盤を経由しない)のほうはわりと意図的かなと思ってました。ジャカとかトレイラみたいなパスのうまい選手がいるとはかどりますし。どうなのかな。
> エメリには考えがあって段階を踏んでからエジルをトップ下に戻そうとしてるのかなと勝手に思ってますが、どうなんでしょう
それはないっしょ~。。。ワイドであまりに使えないんでやむを得ず戻すということはあるかもしれないけど。
エメリは4231が好きなくせにあんまりトップ下(前のゲームメイカー)の重要性を信じてないような。そんな気がします。
エジルはトップ下より少し下がり目でDMと中盤真ん中辺で組んで試合をコントロールする方が生きるのかな。そうするとジャカはどうするって話にもなるか。
マテウス、セスク、カソルラ、みんな少しずつ後ろ目になっても才能を活かしてる、エジルもそういう時期かも
たとえば4-3-3の3CMで、ジャカとトレイラの前にエジルがいるというのは、彼をパッサーとして見るとひとつの理想ですよね。
でもエジルって決定的なパスはそれこそ天才的なんだけども、ポゼッションのためのパスはそれほど得意じゃないというか。そのポジションだとおそらくジャカのほうがハマるのでは。マテウスはわかんないですけど、カソルラやファブレガスなんかと決定的に違うのはそのへんかなと。
エジルの下がり目のゲームメイカーというポジション適正については、検証の余地があるという感じでしょうか。この前アップしたエントリで書きましたが、ドイツNTでクロースと2CMをやったときはかなりよかったらしいですね。まあアーセナルでも見てみたいオプションではある。
>でもエジルって決定的なパスはそれこそ天才的なんだけども、ポゼッションのためのパスはそれほど得意じゃないというか。そのポジションだとおそらくジャカのほうがハマるのでは。
確かにその通り。一人かわして前線へパス供給ってよりバックパスばっかしてそうなイメージですね。
こんな記事がありました。
長谷部だけじゃない!年齢を重ねるごとにポジションを下げていった5人
https://qoly.jp/2016/11/15/5-players-whose-position-has-been-changed-kwm-1
エジルにはこの人たちみたいなユーティリティ性があるのか。組む人次第ですかね。
このサイトまだあったんだ。。
ぼくの大嫌いな細かくページネイションを切る系サイト。
厳しいですね、エジルさん。
高給取りの性でいえば、サンチェスも今季調子が芳しくなく売却の話が挙がっているようです。
そういえば、エヴァトン戦でCKはほとんどジャカが蹴ってましたね。
エジルもアシストが増えれば調子上がるのかなあ。難しいなあ。
厳しいですよエジルさん。
サンチェスとエジルの交換は悪くないけど、アーセナルにサンチェスの高給は払えないでしょうねえ。
まあそんなこといったら払える(払う)クラブはエジル以上にいくつもないですが。
アーセナルのダヴィドシルヴァになれると思ってます。
ただエメリが4-3-3やりそうにないので…
エメリがエジルに合わせるのかエジルがエメリに合わせるのか、という話になればエジルがエメリに合わせて頂くしかないですよね。
もちろん両者が歩み寄れればベストですけど。
シルヴァになれるかな?(笑い)
433はエメリのオプションにあるんだと思いますよ。自分でもそういう発言してたし、PSGでも433をやってたはず。
> エメリがエジルに合わせるのかエジルがエメリに合わせるのか、という話になればエジルがエメリに合わせて頂くしかないですよね。
これはけっこう深い問題なんすよね。
エメリは手持ちの選手に合わせられるマネージャーという評価があるみたいですけど、一方でこのまえのネヴィルとキャラガーの激論でいわれてたみたいに、マネージャーはやり方をそう簡単に変えるべきじゃない、自分のやり方を貫くべきという意見もある。
いまはエメリが貫くフェーズなんでしょうな。ということはつまりエジルの適応を見ているフェーズでもある。正念場ですわ。
新しい事を受け入れ、それを咀嚼できる柔軟性を体現しようとしている選手なら、知ってます→チェフ!(体現できるかな?)
たしかに!!!
思えばマンチーニ・ペレグリーニ時代のシルヴァも「フリーに動くことで攻撃に流動性が生まれる」「しかし守備時にはそこにいないのでそのポジションが脆弱になる」というまさに現在のエジルのような状態でしたね。シティの場合は絶対的エースアグエロとのホットラインがあったため、他の選手に2倍の守備の負担をかけさせながらも使ってきたわけですが…
ペップになって必死にボールをチェイスして守備してるシルヴァを見て、やっぱり監督なんだなと思いました。
シルヴァが劇的に変わったのではなく(もちろん意識改善はあったと思いますが)、一般人には二律背反に思えるようなシルヴァの属性を、カオス状態におけるトランジション守備ならシルヴァの創造性を担保しつつ守備にも使えると見抜いたペップの手腕だと思います。
結局のところ、ポジションに特定の人がいないことによって起きる弊害は、非カオス状態のブロック守備に顕著なので、カオス状態で一気にボールを奪い返すクロップポジェペップ流のモダンな守備なら、誰がどこを守るかよりも、何人がどの方向からボールにアプローチの方が大事なので、エジルがそこまで問題になるとは思いません。
タックル意識やボールを奪う技術、この辺りは本人の努力なんとかなりますが、エジルをエジルたらしめているフリーランを制限したら、全く意味がないでしょう。それはむしろ退化と言えるのではないでしょうか。
要するに、監督が、エジルのフリーランを尊重しつつ、それすらを守備に組み込むようなプレーモデルを提示できるかというのが最大の難点で、それに対して今度がエジルの方が監督の期待に応える、タックルやボールを奪う技術を向上できるか、というのが「彼が変われるか」で、変わる方向性がエメリによって示されていない現状では変わりようがないと思います。
長文失礼しました。
どもども。
へー勉強になりますね。シルヴァてエジルみたいだったのか。
> 変わる方向性がエメリによって示されていない
敵陣でボールを奪われたときの約束事とかは当然あると思いますけど、それがエジルの得意な動き(フリーラン)を妨げないように考えられているかどうかが疑問てことか。
そういうクリエイター選手の長所を消さずに守備でも効かせることをモダンなパイセンたちはやってるってことっすね? そいつでシルヴァも生まれ変わったと。なるほどです。そりゃすげえや。
シルヴァみたいな例があるということは、エジルを再生できるかどうかエメリも試されてるってことになるのかな。これはなかなかいいブログネタに。。
こういう内容なら長文も大歓迎なんでまたカキコ(死語)してください。