いやあアヤックスには驚かされましたなあ。
まあレアル・マドリッドは去年にCLを取って今年はモチヴェイションを失ってる説もあるけど、それにしても。アウェイで。あんなことになるとは。短いハイライトしか観てないけどフルマッチをあとで観るとしよう。
そんな劇的なタイミングで、アーセナルへの転職も噂されるアヤックスのスポーティング・ディレクターであるマルク・オーフェルマルスのインタヴューがスペイン誌の『AS』に掲載されていた。
オーフェルマルスといえば、アヤックスOBでバルサOBで、もちろんアーセナルOB、オランダを代表する往年の名ウインガーであり、現在は古巣のアヤックスで数々のヤングプロスペクトを獲得・育成して大変に評価されているディレクターである。
マドリッド戦でも活躍したフレンキー・デ・ヨン(今夏バルセロナへ移籍することが内定)、マタイス・デ・リフト。奇しくもモンチのローマに移籍したジャスティン・クライフェルト、ToTに高額で売却されたダヴィンソン・サンチェスといった選手たち。
この世界きっての目利きのひとりであり、もちろん今回クラブ運営の予算でも雲泥の差があるであろう世界最強のレアル・マドリッドを破ったことで、さらなる名声を得るはずである。
今回は、アーセナルだけでなくバルセロナも引き抜きを検討しているという、いま一番ホットなスポーティング・ディレクター、マルク・オーフェルマルスのインタヴューを紹介しよう。
なおこのインタヴューはRM戦の直前に公開されたものだ。
“El sueldo de Bale, casi la mitad de lo que gana nuestra plantilla”
「ベイルのサラリー? うちのスタッフの半分は雇えるよ」マルク・オーフェルマルスのインタヴュー
(アヤックスではかなり忙しそうですね……)
オーフェルマルス:そうだね。いつも何かしらやることがあって、休んでる暇がないよ。。
(オフィスにはクライフのバルサシャツを飾ってます。あなたはフィーゴをマドリッドに売ったお金でカンプノウにやってきました。しかしケガでカルヴァリーで過ごすことに……)
ヒザをやってしまったんだ。ニーキャップをね。骨にいくつか穴が空いてしまって、そこからリカヴァーするために8ヶ月もかかってしまった。まったく最初からまた始めなきゃならなかったよ。ひどかった。
(そして残りの契約を諦めることになったと……)
バルサとデ・ヨンの件で話していたとき、彼らにはあんなふうになったのはわたしを含めてバルサの歴史上でもふたりしかいないと云われたよ。プヨルとわたしで、せっかくわたしを買ったのに難しいことになってしまった。わたしはわたしで、何もせずにお金をもらうことはできなかったので……、そう諦めたんだ。
(アヤックスについて話しましょう。チャンピオンズリーグでマドリッドに勝つなら2度目になりますね。あれは1995でした)
あれはスペシャルだった。彼らとはプリシーズンでもやっていて(ベルナベウ・トロフィ、マドリッドが1-0勝利)、そのときのMOTMのトロフィはまだ持ってるよ。
あの日のマドリッドは寒くてね。わたしたちはジャージで、彼らはいい服を着ていた(笑い)。ベルナベウへ行くことはまるでスクールトリップみたいだった。わたしの得点もあった。あれは90年代のアヤックスの特別な期間だったね。まるで70年代のアヤックスのような。いまわたしたちは未来のアヤックスを築こうとしているんだ。
(ここ数年、クラブは114Mユーロの利益を出しました。そのほとんどは選手の売却によるものです。アヤックスのフィロソフィは売ることなんでしょうか?)
われわれが望んでそうしているわけではないよ。でも選択肢がないんだ。わたしのジョブはトップチームをつくること、しかしマドリッドやバルセロナのように選手たちをキープしておくことはできない。どんなクラブがシレッセンを4年もベンチに置いておけるかということさ。もしここにいる選手たちがベンチでたくさんのときを過ごすことになったら……(ふくれっ面のジェスチャ)。彼らはプレイするためにアヤックスに来るんだ。
2年前わたしたちはチームを再構築してELのファイナルまで行ったが、それからまた選手たちを失った。この2年でわたしたちはまた再構築してきた。そこへたどり着くまでに資金もなかったので、自分たちで生み出さねばならなかった。
(マドリッドはいまブラジルに向かっています。45Mユーロも使ってヴィニシウスやロドリゴといった若い選手が加入しました。彼らと戦えますか?)
若い選手たちでこの世界もだいぶ変わる。わたしはほかのクラブより早く動く必要がある。チェックして、説得して、サイン。それでパン!
(実際のところ、ウーデゴールに最初に目をつけていたのはアヤックス……)
われわれは彼をかなり気に入っていたよ。あの少年があのとき稼ぐべきサラリーは100kユーロといったところだった。マドリッドは2Mユーロでオファーしたよ。そして彼は去った。それがわれわれが早く動かねばならない理由だよ。
フットボールには潤沢すぎる金が巡っている。本来は公平であるためにルールがあるべきなんだ。アメリカのスポーツのようにね。選手契約に使われる金はどんどんどんどん膨れ上がっていて下がる気配がない。いつかそれは下がっていくんだろう。最近われわれが経験しているようなグローバル危機みたいになってね。
(アヤックスのような伝統的なクラブで、若い選手たちのソーシャル・ネットワークの使い方をどう考えますか?)
とても難しい。たとえばわたしはソーシャル・ネットワークを使っていない。わたしは彼らがそれに15年間分も費やすのはやりすぎだと思う。彼らはコントロールできない。危険なことだね。彼らが受け取っているインタラクションはいいものではないかもしれない。
(あなたの名刺には「スポーツ・ディレクター」とあります。マドリッドにはその役職がないのはどう思いますか?)
ないの?
(ジェネラル・ディレクターにホセ・アンヘル・サンチェスというのがいますが……)
わたしにとってはれっきとしたスポーツ・ディレクターの存在が重要だ。デ・ヨンが16だったとき、わたしは彼の家に行って家族と話したよ。彼らにはまるでビッグボスが少年を気にかけているように見えたはず。Dolbergに関しては17才のときにわざわざデンマークまで飛んだよ。。そうやって周囲のひとたちと信頼関係を築くんだ。そして組織だ。わたしのオフィスの近くにはヘッドコーチがいて、ヘッドスカウトがいる。わたしたちはみんなここDe Toemkostにいるんだ。ドアを開ければ見えるよ。
(スポーツシティがまるで大きな家のよう……)
カフェテリアでみんなが食べる。ファーストチームもセカンドチームも隣のフィールドでトレインする。下部の子どもたちも混じって共存する。家族のフィーリングがあるよ。
(アヤックスはヨーロッパの戦いに戻ってきたクラブですが、エールディヴィジでは4年勝ってません。なぜでしょう?)
ひとつの理由は、われわれがELを戦うときほかのチームよりも19試合も多く戦うことになるからだろう。間違いないと思う。わたしたちにはレギュラーの11人にあとふたりか3人があとから入ってくる。しかしプレイしない残りの選手はアヤックスにいたくないと思う。もし自分をサブスティテュートだと感じる選手が多くいれば、それは戦争になりうる。マドリッドでは違う。彼らは多くの選手がベンチだからといって何も起こらない……
(ああ、でもイスコやベイルはその意見に賛成しないのでは……)
そうだね。そうかもしれない。でもわたしたちはたくさんの試合を同じ選手たちでプレイすることによってここまで来た。それで(国内リーグで)ポインツを失うことになる。なぜならオランダではどのクラブもわれわれに勝とうとしてくるからね。しかしそれがわたしの仕事だし、どれくらいうまくやれているか観てもらえると思う。ここ数年のわれわれは問題を抱えていた。そういった理由でね。だってほら、わたしに与えられたバジェットは、ファーストチーム、セカンドチームにユース全体で28Mユーロだよ。レアル・マドリッドはどれほどなんだい?
(630Mユーロです)
どうやってそれと戦える? 2、3人ほかの選手より少しだけ多く稼ぐ選手がいるかもしれないが。予算は小さい。
(28Mユーロといえばベイルの給与くらい……)
そうだ。2倍は稼いでるかもしれないよ。なんて選手なんだ。こっちはチーム全体だ。
(しかもこのウェールズ人はレギュラーでもない……)
効果的にやることだ。わたしはみんなを落ち着かせる必要がある。
わたしたちがマドリッドを排除できる可能性は低い。金がすべてだとは云わないが。。しかしELからCLに行ったというだけでもわたしたちにとっては大きなステップだ。ときどきみんなそれを忘れてしまうときがある。自分たちが小国の一員だということにもね。
(バルセロナにデ・ヨンを売却したあと、つぎは誰がアヤックスを去ることになるでしょう。リフト?)
そう思う。わたしから見ると、デ・リフトはこの世界の6つのベストチームに簡単に入っていけるだろう。いますぐでもだ。パワーがありメンタリティがある。ハートもある(彼は「ハート」をスペイン語で表現した)。わたしがもしほかのクラブで仕事をするなら、彼とはすぐにでもサインしたいね。わたしたちに彼を売る必要はない。金も必要がない。リッチになりすぎても困るしね。。まあでも彼がつぎの大きなものになるだろうね。
(アヤックスタレントの発掘のやり方に戻りましょう。90年代にはアフリカをチェックしていたクラブのひとつでした。新しいマーケットはどこでしょう? エイジア?)
そう云われていたね。われわれがカヌーを発掘したとき、アヤックスのスカウトしかいなかった。それからもう20年も南アフリカでスクールをやっている。ケイプタウンでね。とても成功しているというわけではないが。でも若い選手たちをもっともっと探すようになった。18才の年齢でアフリカで登録されるより前、いまでは14才で連れてこられる……。それはよくない方向だろう。大して試合でプレイしてもいない16才がミリオネアみたいになるべきではない。デンジャラスな未来だね。
(どうすればいいのでしょう?)
わたしたちの武器はわたしたちのフィロソフィであり歴史だ。選手はここにプレイするために来る。彼らがもしマドリッドやバルサ、マンチェスター・ユナイテッドへ行くならたぶんそうはならない。そこがわたしの行くところだ。わたしがフィロソフィを売ってデータを示す。どれくらい多くの選手がファーストチームに入れそうか。たとえば、わたしたちでブックレットをつくり、子どもたちにそれを見せてキミとサインしたいと云う(彼は引き出しからそれを取り出した)。わたしたちはCLでもっとも平均年齢の若いチームだ。わたしたちはそう云って選手はチャンスを得る。
(アヤックスで一番有名なフィロソフィのひとつは4-3-3です。このアイディアは不変でしょうか?)
いいや。もしかしたらわたしたちは4-3-3について語りすぎていたのかもしれない。そんなに厳格なものじゃないんだ。たくさんの違ったやり方で美しいフットボールをプレイすることができる。たとえばサイドを使ったもの。わたしがアヤックスでプレイしていたとき、自分のサイドでパスを受けてボールを動かす。わたしを経由しないのなら、カヴァーをしなければならない。それが機能するとして、つぎに……いやそれはいいか(スマイル)。わたしにはこういった必要とされるすべてを行うクオリティがあったんだ。そこから時代はだいぶ変わった。
われわれにとりもっとも重要なことは何かといえば、アタッキングフットボールだ。それこそわたしたちが見たいものだ。1-0で勝つよりも5-3で勝つほうがいい……4-3-3にこだわっているわけではない。それは些末なことだ。
以上。
訳が拙くて申し訳ないがぼくも何を云ってるのかわからない箇所がある。Google翻訳でスペイン語を英語に訳してそれを日本語にしているせいもあるかもしれない。。
さて。こうしたオーフェルマルスの発言を聞いていると、アーセナルがこれから進もうとしている方向性ともだいぶ重なる部分があることに気づくことができる。
予算の制約、若い選手の発掘と育成、そしてアタッキングフットボール。。
アーセナルは夏にスポーツ・ディレクター/テクニカル・ディレクターを新たに雇うと見られていて、もっとも有力な候補がローマのモンチとこのアヤックスのオーフェルマルスだと云われている。
どちらもミズリンタット同様に選手発掘のエキスパートであり、今後クラブをより厳格に運営していく方針のアーセナルにおいて、まさに彼らが成功のカギを握っているといっても過言ではない。
サンレヒやエメリの強力な推薦のあるモンチか。あるいはクラブをよく知るOBでアーセナルのフィロソフィを深く理解するオーフェルマルスか。
現状ではモンチが有力なように思えるが、オーフェルマルスが一緒にデ・リフトを連れてくるというのなら、それはそれで。。
どうなるか見てみよう。