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批判への対処にみるデクラン・ライスの人間性【EURO2024】

こんにちは。

いま開催中のEURO2024では、グループトップでR16へ進出したにも関わらず、期待以下のパフォーマンスに終わったイングランドNTに批判や議論が収まらないといったところ。イアン・ライトの「サカをLBに」発言による軽い炎上なんてものもあった。

まあたしかに、ぼくもイングランドは3試合とも観てしまったが、あんまり褒められたパフォーマンスではなかった。

あの豪華な選手をずらりと揃えたチームであの内容と結果なら、マネジャーや選手が批判にさらされるのも無理のないところではある。各クラブでの選手のクオリティが、あのチームには十分に反映されていない。£100m超えの選手がいったい何人いるのか。そういう意味では、マネジャーがもっとも責任重大だと思う。

そして、このチームではNo.6としてプレイ、チームの中心選手のひとりでもあるデクラン・ライスも批判を免れていない。

が、そんな彼の批判への冷静な対処や、各所での話しぶりなどを観ていて、たいしたもんだと感心してしまった。まがうことなきリーダーの器であるなと思った次第である。ひとは困難なときに人間性が試されるなと。

アーセナルのファンとしては非常に誇らしいかぎり。

今回は、EUROのイングランドNTにまつわるさまざまな批判や、それに対する彼のコメントを紹介したい。



「過大評価、ワールドクラスではない」に冷静に対応するライス

もちろん、チームでもっとも議論になっているというわけではないものの、ライス個人への批判もある。目立ったところでは、アイルランドNTでの元チームメイトであるJames McCleanの「彼は過大評価。ワールドクラスじゃない」や、ギャリー・ネヴィルの「彼は6でプレイできないからアルテタは8で使いはじめた」などといったものがある。

まず、James McCleanの中傷じみた個人攻撃への反応について。ライスはEUROでもDMとして一応ちゃんと仕事はしているが、EUROでのイングランドの低パフォーマンスがなければ、こんなのほんとうに取るに足らないただの中傷だった。

ちなみにライスはNTはイングランドに転向するまで、2018年にアイルランドで3キャプスがある。アイルランド人に恨まられる理由はあるっちゃある。『The Independent』より。

ライス:知ってる? ぼくはJamesとはアイルランドで3試合プレイして、とてもうまくやっていたんだよ。だから、ぼくはここで彼を批判するつもりはない。彼のことはトップガイだと思っていたしね。

ぼくがアイルランドを離れてイングランドへ来たときも、彼があきらかに不満を持っていたというのは聞いていた。何年か前にもそんなコメントをしていた。

そういうものだ。ぼくはここに座って彼について何か云うつもりはない。彼にはグレイトなキャリアがあり、たぶんいまはキャリアの終盤に向かっているけど、アイルランドでは100以上のキャプスもある。

ここから何かいい返すことは簡単だけど、ぼくらのキャリアはいま逆なんだ。彼は35でぼくは25。ぼくは彼を知っているし、彼とプレイもした。彼は自分の意見を主張し、ぼくはぼくでこれまでもそういう数多の他人の意見と戦ってきた。

それは、アイルランドでプレイしなかったぼくに対するちょっとした嫌味なのかもしれない。でも、ぼくには彼を悪く云うことばはないんだよ、正直。コメントは観たけど、あんまりそこにエナジーを注ぐつもりもない。

それはそういうものとして、先へ進んでいく。それともつきあって、学んでいく。

これじゃあBeefが成立しねえ。メーン。

ライスには意外なところからの援護射撃も。ビッグサム「James McLeanて誰?」。ウケる。

前向きになろうと呼びかけるライス

デンマークと1-1ドロウをやったあとの発言。元選手からの批判に失望しているかと問われて。

ライス:べつに失望はしていない。ぼくも長いことフットボールをプレイしているし、もうそういうものだとわかっているから(苦笑)。だから、全然気にならないよ。

彼らはTVで何でも好きなことを云っているし、個人的な知り合いもいるけど、いいひとたちだよ。でも、さっきも云ったように、彼らもかつてぼくらと同じ立場だったんだよね。そういう話をする前に考えることもあるだろうし、トーナメントでうまくいかなかったことだってあった。

だからほら…… なぜそれがそんなにネガティヴなことだと感じるのかわからない。まるでトーナメントから脱落したみたいに話をしているけど、ぼくらはいまグループのトップにいる。ポジティヴでいるべきだし、もっと楽観的でいるべき。

試合にはポジティヴに入っていきたい。選手たちには、この世でいちばんの自信を与えようよ。Phil Fodenやサカ、Jude Bellinghamのような選手には、キミたちが世界のベスト選手なんだと伝えよう。そういうのを彼らに読ませて、全力を出せるしパフォームできると思わせるんだ。

自分はうまくプレイできないと思ってしまうようなネガティヴなコメントを読ませるよりずっといい。それがぼくの考え方だ。ぼくらには間違いなく十分優秀な選手がいるんだから。

いまどんどん若くなっているこの世界で、25才はもう若いグループの一員ではないが、それにしても若いやつらに自信を持たせようなんて、まるで大人のようなことを云う。

チームでやや苦しむTAAを擁護するライス

同じく批判が集まっていた、MFでライスとパートナーとしてプレイしているTAAについても擁護。

ライス:おかしいのは、この国の半分ものひとたちが、Trentをミドフィールドでプレイさせようと云っているなかで、彼が実際そうしたら、彼をけなそうとする。わけがわからないよ。まったくわけがわからない。

ぼくは、イングランドのシャツを脱ぐ日が来るまで選手たち全員を守るつもり。Trentは、ぼくが観てきた選手のなかでもベストのひとり。

ここで云っておこう、Trentはイングランドでもリヴァプールでもミドフィールドでプレイできる。彼は信じられない。それが、そういう類のものを観たときにぼくが云うことだ。

このチームのTAAはなんだか自信なさげに見えるから、仲間にこんなふうにいってもらえたらうれしいだろうね。

心の病を克服した選手をリスペクトするライス

ライスについては、これは批判とは無関係だが、EUROでもうひとつ心温まるエピソードがある。

Josip Ilicic(36)は、今回のEUROではスロヴェニアNTのひとりとしてプレイしているベテラン選手で、2年前にはメンタルヘルスの問題(鬱)で所属クラブのアタランタでもプレイできず、リタイヤの危機があったという。代表でのプレイも今回が955日ぶりだったとか。

そんな彼が、イングランドとドローで終えた試合後に語ったこと。

Josip Ilicic:(あなたのストーリーはわたしたち全員に勇気を与えるものになっていますね)そんなふうに云ってくれてうれしいよ。

今日もピッチに入ると、ぼくにあいさつしてくれたイングランドのジョカトーレがいたんだ。彼は、ぼくのことをすごく尊敬していると云った。うれしかったよ。ぼくの話は世界中で知られているから。

(そのジョカトーレは誰なんですか?)アーセナルのMFだよ。キミも知ってるはずさ。(デクラン・ライス?)そう。

クラス。ミケルが求めるパーソナリティがここにある。

 

ライスはまさにキャプテンの鑑だな。

ぼくはアーセナルの歴代キャプテンには、ケガがちで試合に出ていないとか、そもそもファーストチョイスじゃないとか、そういう選手が少なくないことにかつて不満だったが、ライスは完璧にチームのベスト選手のひとりで、不可欠なひとり。その点でも文句なし。そして、この人間性よ。器がでかい。誰からも尊敬される漢……

現在のキャプテンのオーデガードにはもちろんなんの不満もないが、いまのアーセナルの選手を全員一列にならべてひとりキャプテンを選べと云われれば、やはりこの漢かもしれない。

 

イングランドチームはドロウに恵まれたこともあり(※ドイツ、スペイン、フランス、ポルトガル、ベルギーとはファイナルまで当たらない)、ひきつづき国民の期待は高いだろうし、その分大きなプレッシャーもある。

そんななかで、いかにチームを盛り上げてパフォームさせていくか。ピッチの中央でプレイするライスの役割・責任は小さくない。

今回のEUROはきっと彼にとってもとても大きな経験になりそうで、それをアーセナルで活かしてくれることを願ってやまない。

 

おわり



※コメントくださるかたにお願い
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