アーセナルFCが2023/24年度決算を発表。£600m超のクラブ記録の収益を達成。UCLの恩恵が顕著に
アーセナルの2024の収益は、£616.6mで過去最高を記録(※2023は£466.7m)。損失は£17.7m(※2023は£52.1m)。どちらも大幅に改善した。
この財政的改善の主たる要因は、やはりCLだろう。主な要素は、このような内訳に。
『The Standard』が、今回のアーセナルの決算について、フットボールファイナンスのエキスパートKieran Maguireの解説記事をアップしていた。そちらを紹介しよう。
(アーセナルの決算について……)
Kieran Maguire:金融の世界には「収益(revenue)は虚栄であり、利益(profit)は正気である」というかなり独善的な格言がある。
アーセナルはCLに復帰してとてもうまくやっているため、主たる収入源のすべてでブーストがある。
チケット売り上げは実質的にマンUに匹敵するほどで、これはすごいことだ。CL参加による放映権料もあり、スポンサーからのボーナスも得た。これらの数字が示すのは、CLに参加することの重要性だ。それに参加していないとき、いかにクラブが苦しんだか。
(なぜいまだにアーセナルは損失を出している? 選手の給与が上がったせい?……)
わたしは、給与が問題だとは思わない。なぜなら、入ってくる£100に対して£53しか支払っていないから。それは、彼らの過去12年でも3番めに高い率に過ぎないし、UEFAの70%のクラブを下回っている。
したがって、より広範にコストが上がっているということ。
フットボールはタフな業界だ。アーセナルは選手の売却を考慮すると、日々の収支は均衡しており、選手の売却は好調だった。そして、今年は利息コストが非常に高くなった。利息コストが3倍になったため損失が出たのだ。
(コストコントロール的にアーセナルはどう見える?……)
PSR(Profit and Sustainability Rules)の観点からは、彼らはとても強い立場にある。こういった数字を見れば、憂いなく2025夏を迎えることができるだろう。
UEFAの規則では、入ってくる£100ごとに、選手の給与と移籍金に£70まで費やすことができる。彼らはすでに£53mを給与に使っている。繰り返すように、彼らには柔軟性があると思う。
(夏のスクワッド補強でもアーセナルはいい立場にいる?……)
イエス。コストコントロールの懸念はない。それがわたしの見立て。
選手給与はよく管理されているし、クラブは資金の貸し手としてスタン・クロンキを利用している。選手給与と移籍金がさらに増えるとしても、われわれがそれを判断するには、新たな関連当事者取引規則に関する判決を待つ必要がある。
しかし、たとえそれがPLに有利になったとしても、アーセナルには何の問題もないと思う。
彼らは財政的にはやりたいことができる非常に強い立場にある。彼らは昨シーズンに£256m、その前のシーズンに£251mを使った。彼らには間違いなく市場で大きく投資できるキャパシティがあるのだ。
しかし、ほかのクラブを観てもわかるように、最終的に重要なのは大金を使うことではなく、上手に使うこと。大金を上手に使うことが絶対的な正解になる。
(アーセナルの財政をほかのPLクラブとくらべると?……)
わたしが思うに、この決算はアーセナルをテーブルのトップに戻すと思う。
彼らはかつてはトップ4+2にいる危険があった。「+2」というのは、アーセナルとスパーズだ。しかしこうした数字は、あらためてアーセナルに競争力をもたらすだろう。
アーセナルの収益は£616m。マンシティは£700m超。マンUは£662m。つまり、アーセナルは彼らとそう遠くない。リヴァプールは2023は£594mだった。
つまりアーセナルは、かつては少し置いていかれそうな危険性があったにもかかわらず、現在はトップ集団の中にいるということ。
ヴェンゲルさんの時代にエミレーツを建てたときの負債のために緊縮財政を強いられた長いシーズンからは、隔世の感あり。アーセナルの収益は、もうマンチェスターの2クラブとも大差ないという。
100m超えの選手を買い、PLでタイトルを競い、CLでタイトルを競い。ようやく、アーセナルの時代が来たんじゃないかと思える。夏の補強にも期待が大きい。
Nwaneriもろもろ。彼の名前発音は「ワニエリ」じゃなく「ワネーリ」
ブカヨ・サカの不在で最近の活躍もあり、ますます注目が集まっている17才、イーサン・ワニエリ。先日は、ヴェンゲルさんもファブレガスとの比較でワニエリについて語っていた。
“When I look at his maturity, its difficult to think he is 17 years old” Wenger compares Ethan Nwaneri’s mentality Fabregas’.
To see whether Ethan made it into “Andy Gray’s Team of The Week”, follow the youtube link below:https://t.co/TJQDUHXS5s#arsenewenger #ethannwaneri pic.twitter.com/jcl3yeach6
— beIN SPORTS (@beINSPORTS_EN) February 17, 2025
AW:ワニエリはむしろクリエイターだね。彼のドリブル、クオリティあるパスからのファイナルボール……(精神面ではファブレガス並み?)そうだね、ファブレガスにはとても強いメンタルがあったが、この少年も彼みたいだ。
わたしが彼を観たとき、彼の成熟ぶりはとても17才のものとは思えなかった。(そしてファブレガスはあんなに特別な選手になった)もちろん。早くから準備ができている彼らには、特別な才能のきざしがある。
アーセンも太鼓判。
ワニエリといえば、昨日はPL公式サイトが彼の特集記事をアップしていて、それも興味深く読んだ。AFC公式コンテンツでおなじみのエイドリアン・クラーク氏の記事。
Analysis: Nwaneri a superstar in the making at Arsenal
サカとの比較や、これまでの際立つ数字などが紹介されていている。このなかで、興味深かったのは「サカが戻ったらどうなる?」の部分。サカ(とネリ)の復帰は4月初旬とも云われ、それまでにはまだ時間はあるが、それでも刻一刻とそのときが迫っており、いま絶好調のワニエリがどうなるかはすごく気になるところだ。
クラーク氏の考えるオプション1は、R8。オーデガードがL8に移動。ライスが6。つまりB2Bの役割を彼が担うという。
もうひとつのオプション2は、LW。彼は両足づかいであり、左でも右と変わらないパフォーマンスが期待できると考えられる。その場合、ネリやトロサールは彼にポジションを譲ることになる。
つまり、世界最高のRWであるサカがチームに戻れば、ワニエリのRWはノーチャンスで、ほかのポジションに移動するなら誰かがポジションを失うことになる。だから、もちろんオプション3はベンチ。これはアルテタにはだいぶ悩ましいだろう。17才がベンチはふつうだが(本来トップチームでベンチに入るだけでもとんでもないこと)、あのレベルでプレイできる彼をベンチにおいておくのは、さすがにもったいない。
メリーノの9が今後もつづくかどうかは彼次第であり、そういう意味ではストライカーの検討もしてもよかったかもしれない。
あとは、この記事にはないが、サカのポジションを変えるオプションはまったくないのだろうか。ワニエリのRWもサカくらいよい。
以前このブログでも冗談めかしてサカは9でプレイするとか書いたけど。まあ、難しいか。世界的ストライカーが元ウィンガーというケイスはこの世界にいくらでもあるが、基本的には足が速いタイプ。昨日シティにハットトリックをやったエンバッペなど典型的な例。アンリやクリスチャーノとか。その点、ブカちゃんは残念ながらスピードは武器ではない。
サカが戻るまであと一ヶ月くらいあるとして、その間、ワニエリがポジションを完全に確保するかどうか。
さて、あとワニエリ関連の話題で、すこし前にr/Gunnersで興味深いサブがあったのでそれを紹介したい。
「わたしたちのボーイをNwan-eriではなく、Nwan-yeriと呼ぶことを止めるよう、多くのコメンテイター、パンディット、それにファンに要請す」。
「みんなその“Y”をどっからもって来たんだよ?」
正直、このサブには笑ってしまった。みんな彼のことを「ワニエリ」と呼んでいるが、ほんとは「ワネーリ」なんだぜという。彼本人の発音を確認してみろと。
この映像は以前にもシェアしたかも。80分もの尺があって、すべてのPLチームの選手とコーチの名前の本人発音が確認できる。アーセナルから始まるので、ド頭から観てもおもしろい。本人の発音だから名前発音リファレンスとしては間違いなく決定版。
ワニエリはたしかにワネーリに聞こえる。Yはない。
以前このブログではNwaneriのカタカナ表記を最初「ワネーリ」に決めた時期があって、その後すぐに英国でおもに流通している発音のサウンドから「ワニエリ」に記載を変えた経緯がある。でも、ワニエリじゃなくてワネーリが正しいというのは、まったくそのとおりだと思う。
コメンテイターもパンディットもファンも、かなり多くがワニエリ(Nwan-yeri)のように発音しているのも実際そうだ。上の動画でヴェンゲルさんもワニエリと云っておる。
これはカタカナ表記をワネーリに戻そうか迷うところだ。
ところでこれは最近知ったのだが、日本では彼の名前をどうも「ヌワネリ」と表記する? いやちゃんと調べてはいないのでよくわからないがたぶん。
おれはフットボールに関しては日本語情報をシャットアウトしようとしているので、こういうことがたまにある。だが、これはちょっとびっくりした。「Nketiahはヌケティアです」と云われたときの顔をしている。
なぜなら、アーセナルファンのあいだで「ド頭のNは発音しない」というのは、最初に彼の名前発音が話題になったときに確認されていたから(※細かいことを云うと、彼のルーツである西アフリカではNwaneriのNは発音するらしい。しかし彼の家では発音されない)。彼の存在がコアなアーセナルファン以外にまだ知られていなかった当初は、ンワネリのようにNを発音しようとする試合コメンタリーもあったが、いまはもうほぼ絶滅した。聞いたことないでしょ?
ヨーロッパで流通している選手の名前発音は、ジュリアン/ユリアン、ジェズース/へズースなど、ひとつじゃないときもあるし、まあそういうのはいいやすいほうでいいのかもしれないが、選手をリスペクトするなら(日本ではかなりリスペクトがあると思う、ときに過剰に思えるほど……)、ワニエリじゃなくワネーリと呼ぶべきという主張はそれもまたリスペクトすべき意見なのかもしれない。
あと、これは発音じゃないが、この前の試合中継でキーオンやジョー・コールがでMLSのことを何度も「マイルズ・スケリー」と呼んでいて、それを批判する声もある。ルイス・スケリーをルイスケリーのように短縮して呼ぶことも(おれ反省)。両親の名前を引き継いだダブルバレルドの名前でどちらかを省略すると、彼らの親に失礼にあたる可能性もあるとは思う。
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発音ついでに、アーセナルのこれからの選手で名前の発音が話題になっているのが、Andre Harriman-Annous(17)。今シーズンは、ユースレベルで12スタート 13ゴール貢献という逸材。なぜ名前が話題かはぼくに聞かないでほしい(笑い)。
r/Gunnersで、彼の名前の発音が知りたいというポストに対し、正しい解説をしているっぽいのがこれ。
Ann – noose. The N is to be stressed, as there is a shaddeh (emphasis) on it when written in Arabic. It is a Lebanese name.
アン・ヌース。アラビア語で書くと「N」にshaddeh(強調)が付くため「N」にアクセントが置かれます。これはレバノンの名前です。
アンドレ・ハリマン・アンヌース。みたいな。
ぼくは永遠の(いつまでも上達しない)英語学習者なので、how to pronounce系の話題はなんでもおもしろい。
おわり
Nwaneriの本人発音、明瞭に頭のnを発音しているように自分には聞こえるんだけど、どうでしょう。
あと、アーセンのNwaneri発音も、同様にnを発音している。こっちは本人発音よりすこし控えめだけど
ワニエリ、という表記はずっと気になっていました笑
自分はイギリスにも住んでいたこともありますし、ある程度英語を捉えられる耳だと自負していますが、上の方と同じように、nは聞こえます。自分が聞く限りでは「ヌワネーリ(もしくはヌワネッリ)」が合っている気がしています。