試合の雑感
アーセナルのタイトルレイスは終わった。メディアもほとんどそういう論調ですな。
PLは残り12試合で、アーセナルは仮にこのあとのすべての試合に勝ったとしてもプラスできるポインツは12*3で36。現状の53と足して89。それが上限だ。
89ポインツでPLタイトルを取ったチームは、この10年でも4回あるが、近年はシティとリヴァプールのハイレベルのタイトル争いで、タイトルを勝つために必要なポインツは上昇傾向にある。
リヴァプールは現時点で11試合を残して64ポインツ。彼らが仮にこのあとすべてのポインツを取ったなら、最終ポインツは97まで達する。
ホームでWHUに敗け、アウェイでMCIに勝ちというこの週の結果からしても、今後のアーセナルの全勝より、リヴァプールの全勝のほうがはるかに信じられるというものだ。
もちろん今後のことはわからない。これから急にリヴァプールが敗けつづけるかもしれないし、アーセナルが勝ちつづけるかもしれない。この試合の前だって、アーセナルが13試合すべてで勝つ予想はさすがにされていなくても、タイトルの可能性が論じられていたということは、ここでひとつ敗けたからといってまだあきらめる必要はないというひとだっている。
いや、だがほんとうにそうだろうか。
問題は、ウェストハムのようなチームに、ホームで、ああいう敗けかたをしたということに尽きるんじゃないか。今後自分たちが勝てるという自信を失った。試合前は記者会見でチームの慢心について問われるほどには、この試合には楽観的だった。それがアレ。まさに冷水をぶっかけられるとはこのことだ。
だが、終わってあらためて考えると、あの結果も想像できたことかもしれないと思う。
メリーノは28才にして初めてCFポジションを任される選手で、結局わたしたちが観て高評価したのは、その前のレスターでのたった20分間に過ぎない。あれは今後に期待するに十分なパフォーマンスに見えたが、今回は結果が出なかったことで、その期待感はかなりしぼんだだろう。そんな都合よくいくはずもなかった。いやフェアにいえば、彼の空中戦は期待に違わず強かったので、ストライカー不在の現状では今後も9のオプションではありつづけるとは思うけれど。
なによりキツかったのは、相手のバック5の強固なディープブロックに対し、実際ほとんど手も足も出なかったことだろう。ブロックの外側を延々とパスを回し、シンプルなクロスボールを入れるだけで相手の意識の裏をかくようなクリエイションがまるでない。相変わらずこのチームは、攻撃での予測可能性については大きな問題を抱えている。
そこは、もうずっと低パフォーマンスがつづいているキャプテンのオーデガードの責任も大きい。彼はもうしばらく結果も出ていないし、チームプレイへの影響力は陰りが見える。彼は、少し前に赤ん坊がいる生活の素晴らしさを語っていたところで、それでよく寝れてないんじゃないか疑惑もある。赤さんのいる家は、昼も夜もないからね。彼はスランプがつづいている。
それと、ストレイトレッドカードのMLS。彼を非難する声がライバルチームのファンだけでなく、アーセナルファンのあいだにもかなりあるらしい。彼は得意のターンをやろうとして失敗してしまってこっぴどく罰せられてしまったかたちである。たしかに、あそこでリスキーなプレイは選択すべきではなかった。だが、若く未熟な選手を使うというのはああいうことなんじゃないの?
この試合は、珍しくワニエリも右サイドの単独突破にはやや苦しんでいたが、彼らのような選手が期待どおりじゃなかったからといって、そこまで責められる気持ちがおれにはわからない。ライバルのファンならともかく(例のHaalandのパフォーマンスでもともと怒りを買っていた)、アーセナルファンまで彼を批判しているというのだから。28才の選手ならともかく、18才のエラーは黙って受け入れるよりないだろう。ましてや、だいじなだいじなマイルズですぞ?
楽々勝てると思っていた試合で、あのように苦しみ、そしてその苦しみかたがこのチームに根強く残っている課題そのものを浮き彫りにしていたこと。結果はもちろん、内容にもたいへんにショックを受けた。このチームのなかに今後を楽観できる材料をいま見出すのは非常に難しいと思う。
とりわけ心配なのは、選手たちだ。もっともショックを受けているのは彼らのはずで、それをどこまで引きずるか。
正直、水曜のPLフォレスト(A)は、勝てないんじゃないかと心配している。ただでさえタフな試合だろうが、勝利への渇望や希求なしに結果を持ち帰れるとは思えない。3位の彼らは、われわれの直接的なライバルだ。まだ6ポインツ差あるとはいえ、もしも敗けるようなことがあれば立ち直れないほどの精神的打撃になりうる。最悪トップ争いはおろか、これからの3ヶ月はトップ4争いに巻き込まれる可能性だってある。
アーセナルの選手たちは、ここまでの苦しい状況でも、タイトルを勝ち取れると信じていたからここまでギリギリでやってこれたと思う。何度くじけそうになっても、目標達成の可能性があればこそしがみつけた。それが絶望的となれば心が折れてしまう。そのようなチームが競争力ある試合、野心ある相手に勝つのは簡単ではない。
こうなると、どうしたって冬ウィンドウに補強のチャンスを逃したことが悔やまれる。不幸にも?さまざまな苦しい状況にあいながらも、1月にはそれをカヴァできる機会が与えられていたにも関わらず、アーセナルはそれを利用しなかった。既存のチームで残り4ヶ月を乗り切れると判断した。そしてその後はマルチネリやハヴァーツといったレギュラーが離脱。乗り切れてないどころか、ますます窮地に陥っている。この試合では、またひとりレッドカードで3試合バンである。あれはボールを奪う際のMLSへのファウル疑惑もあるものの、クラブとしてレッドカードのアピールはしないように思う。アーセナルの今シーズン5枚めのレッドカードのなかでは、もっとも受け入れられるものだった。
PLのここまで振り返れば、シティが盛大にコケたおかげで、今シーズンは近年にないオープンなタイトル争いになっていただろう。リヴァプールはたしかに強いし結果も出しているが、2位のアーセナルがここまでタイトルをあきらめなかったくらいには、完璧ではなかった。
こういうシーズンは多くないのだから、アーセナルは今年こそはそのチャンスを活かすべきだった。
この試合のあと、イアン・ライトがサリバの移籍が心配だと云っていた。いやなことを云うなあ。もちろん、彼はスペインではレアル・マドリッドの夏のトップターゲットだと噂され、若くしてあれだけの活躍をしていれば、実際オファーがあってもおかしくないと思う。彼は、現在アーセナルが契約更新したいひとりながら、こういうシーズンがつづけば選手もクラブを疑いはじめるだろうし、そうなればトッププレイヤーをとどめておくのが難しくなっていく。
ほかの選手も同じだ。アーセナルと特別な絆でもないかぎり、彼らはより魅力的なオファーに耳を傾けることになる。
ぼくは、サリバやその他の選手たちについて、アーセナルで目標達成するまではクラブに残ってくれるものだと信じているが、こうした試合やシーズンが繰り返されると、ほんとうに大丈夫か心配になってくる。
この試合は、じつにショッキングだった。いろいろな意味で。
PLが実質終わったいま、アーセナルファンとしてこのあとの楽しみはなんだろう。やはりCLか。先日のドロウでは、ファイナルまでにレアル、リヴァプールと対戦する可能性が高く、こちらもそうとうにタフだ。
でも、ちょっとだけ楽観できるのは、アーセナルは守ろうとするチームが相手でなければ、いまだに強いのだよね。ビッグ6にしばらく敗けていないのがその証拠だ。黙っていても攻撃してくれる相手なら、また違う試合になる。
そういう意味ではPSV。彼らは、ラスト16でアーセナルと対戦する自分たちがアンダードッグだとわかっているだろうし、いまのアーセナルに結果を出しているニューカッスル(アーセナルに3連勝中)や今回のWHU(エミレーツで2連勝中)の戦いかたをしっかりと研究するはずだ。バック5のディープブロックと、ペネトレイション。それらの試合にはそうしたアーセナルが苦手とする要素がつまっている。
彼らにホーム/アウェイで勝ち抜けるのは、思っている以上に簡単じゃないかもしれない。
まだシーズンは終わっていない。当面の課題は、このハートブレイキングから立ち直ること。水曜のフォレストがわりと正念場になりそうな予感。