試合の論点
ニューカッスル vs アーセナルのトーキングポインツ。
You’ll want to see this one again 😍
Enjoy the highlights from a thrilling win in Newcastle 👇 pic.twitter.com/edQak4xzb9
— Arsenal (@Arsenal) September 28, 2025
最後の最後まであきらめず劇的大逆転。PLタイトル候補として宣言となる大きな勝利
前日の試合結果によって、それまで2位だったアーセナルは暫定的に6位まで転落、トップに食いついていくためには絶対に勝たねばならない試合だった。そのためにはドロウでも十分じゃない。とくにリヴァプールがポインツを落としていたため、差を縮めるビッグチャンスにもなっていた。
しかし、近年のアーセナルのSJPでの結果を考えれば、それはかなりタフなタスクだっただろう。なにせそこでは3連敗していたのだから。相手のフィジカルなプレイスタイルも苦手だし、なにより彼らはふつうに強い。とくに左サイドでボールを持ったときのGordonはいやらしかった。アルテタが欲しがる選手だけある。
したがって、試合前アーセナルのチームには、3ポインツへのプレッシャーはかなりあったはず。
そんななか興味深かったのは、アルテタが今回より攻撃に積極的と思えるチームを選んだこと。これまでのようにメリーノを3MFに含めなかった。そのかわりにエゼを10に起用。こういう試合こそアルテタは慎重なアプローチでチームを選ぶと思っていたので、正直これは意外だった。仮にエゼをLWに選んだとしても、MFの安定を優先してメリーノのスタートは維持するものかと。
それは、選手たちに向けてのメッセージのようにも思えたものだ。メリーノよりもエゼのほうがあきらかに攻撃マインドのある選手なのだから。このチームは攻撃的だった。
そして、それはちゃんとチームプレイに反映された。アーセナルはスタートから小気味よくボールをまわし、ワンタッチパスを多用するなど全体的にシャープだった。
そうして前半は、14分、なぜ覆ったのかいまだに理解できないヨクレスが倒されたペナルティ、トロサールのポストにヒットするショット、レフリーにタオルを奪われるカラフィオーリ(これは関係ないか笑)、相手GKに阻まれたエゼの決定的なショットなど、充実したチームプレイの雰囲気があった。
ところが、34分にあっさり失点する。
モスケラがクリアをしくじってコーナーキックになったところから。なんでもないようなショートコーナーに見えたが、ガブリエルがあんなふうにイージーにマークを外され、巨人のヘッダーが楽々と決まる。これはがっかりすぎる。ガブリエルはファウルを訴えていたものの、あれはさすがにソフトすぎてファウル判定は難しそうだった。
だが、今回の試合でアーセナルをもっとも称賛したいのが、このあと見せたレジリエンス。
後半、HTにモスケラのかわりにサリバが入ったこともあり、DFラインが安定し、アーセナルのチームはもうagain and again and againという感じで、プッシュした。ファンがもうだめかと思っても、チームはあきらめていなかったというか。信念のレベル。
相手のリードを追いかける時間では、やっぱりエゼの存在は効いていただろう。
70分という時間にサカを下げるというアルテタらしくない決断だったが、これまでならサカがいなくなると途端にチームからクリエイティヴ成分がなくなってしまうのが、エゼがいるおかげでそこまで彼の不在を感じさせない。
ニューカッスルのディープブロックの外側でボールをまわすだけでなく、彼が内側を侵食しようと虎視眈々と狙っている。
そして極めつけは82分にズビメンディと代わって入ったオーデガード。もうあの時間帯は、アルテタもスクランブルでリスクをかけるよりなかった。彼が入ることで、チームのクリエイティヴ濃度がさらに増す。あれは、さすがチーフクリエイター。無から有をつくれるひと。make things happenするひと。
84分にはオーデガードのパスからライスのワンタッチクロスで、メリーノが頭でゴールを決めて同点。劇的なゴールを決めるも、チームは喜びを表すよりもまずリスタートに向かった。こうなれば、この勢いで逆転する気満々。
そして、メリーノのイコライザーと8分という追加タイムに勇気づけられたチームは奇跡の逆転を信じて攻撃をつづけ、ついに96分のアレ。
オーデガードの抜け目ないチャネルへのスルーボール™に、MLSがオフサイドラインをうまくかわして追いつくと、クロスはできなかったもののコーナーを獲得。オーデガード自身のインチパーフェクトのコーナーキックにビッグガビが頭に合わせてとどめ。あんな密集地帯で、よくひとりだけフリーみたいになれたものだと感心してしまう。相手にしてみればもっとも危険な選手である。
あの劇的ゴールで、この日バカの一つ覚えみたいに最初から最後まで“same old Arsenal”のチャントを歌いつづけたホームスタンドの息の根を止めた。なんというカタルシスか。
この写真はルーブルに飾ろう。ていうかサリバ(笑)。
— Arsenal (@Arsenal) September 28, 2025
ところで、アーセナルのこのレジリエンスは素晴らしいのだけど、この逆転劇を信じて最後までプッシュしつづけることができたのは、やっぱり前日の結果があったからかなと思う。あるいは最近の。このレイトウィナーは最近のPLでもちょっとしたトレンドになっている。
とくにこの試合の前日は、一日のPL試合で90分以降のゴールが8つという新記録をつくったそうで、もうリヴァプールだけでなく、多くのチームが土壇場でゴールを決めているという。アーセナルだってそれを信じない理由はなかった。
8 – There were eight goals scored in the 90th minute (or later) in the Premier League today – the most ever in a single day in the competition’s entire history. Re-write. pic.twitter.com/SajFjt05ip
— OptaJoe (@OptaJoe) September 27, 2025
そして、その結果報われた。なんというか、信じることで生まれる力ってすごいですね!
ということで、SJPで貴重な勝利。連敗を止めることにも成功した。めでたし。
アーセナルはこれでタフな序盤フィクスチャをなんとか乗り切ったと云えるのではないか。ここまでの6試合が、とくにタフだった。

OT、アンフィールド、SJP。エミレーツのシティも。もちろん、内容からしてリヴァプールとシティにポインツを落としているのは残念ではあるが、いっぽうで初戦のマンUや今回の試合はもっと悪い結果だってありえた。一年間の38試合を考えれば、完璧は無理なので、十分許容範囲だろう。
この期間、予想外にたくさんのケガ人も出しながら、なんとかもぎ取ったこの結果。トップに2ポインツ差のリーグテーブル単独2位。GDでは+9のトップ。ここ数年のわれわれからは、あきらかに進歩がある。
試合後のアルテタは「今後に希望が持てる」と述べた。まったく同感である。