続々と復帰する選手たち。マドゥエケとマルティネリにゴール
長らくケガで離脱していた6人のアタッカーたち。彼らの不在をなんとか耐えているあいだにときは過ぎ、だんだんと彼らが戻ってきた。ほんとうにこの間うまく耐えたものだ。
今年のアーセナルは、夏ウィンドウの積極補強でスクワッドデプスをはっきり改善し、そしてPLでもベストと云われるに至るスクワッド全体のクオリティを確保。そこがこれまでのシーズンとの明確な違いになっている。キープレイヤーのケガでチームのクオリティががっくり下がるようなことがなくなった。教訓が活かされている。
そして、彼らがじょじょに戻りつつあるということは、ファインフォームのチームがさらに安定するということ。なんということか。もうしばらくアーセナルファンをやっているものとしては、夢でも見ているのかと思う。
NLDですでにプレイに復帰していたマドゥエケ。彼は、今回トロサールのケガによって前半からプレイすることに。
後半にゴールを決めた彼は(アーセナルではああいうシンプルなゴールがあまりないから気持ちよかった)、そこまで目立って活躍をしていたようには思っていなかったが、The Telegraphのサム・ディーンによると彼はバイエルンのDFにかなり問題を起こしていたらしい。
TVカメラの見えないところで、裏抜けのランをしかけたりDFとの駆け引きがあったのだろうと思われる。思えば、カラフィオーリのクロスにドンピシャだったあのゴールも、相手DFと競り合いながらうまく身体を前に入れてゴールしたように見える。DFの立場ならかなり悔しいやつ。
トロサールがケガの不安のあるなか、彼のフィットネスが向上してきていることは、チームにとりかなり心強い。
それとマルティネリは、マドゥエケの7分後にゴール。
ちょうどあのときは、Oliseにドリブルでボックス周辺まで侵入されて、アーセナルのディフェンシヴサードは選手がひどく密集している状態だった。そこでボールを奪うと、殺到するバイエルンの選手をいなし、細かくパスをつなぎボールはエゼへ。メリーノの単純なクリアに逃げない冷静さもこのゴールに大きく貢献しただろう。
そこでエゼは、ランを始めていたマルティネリにミドルレンジのパス。これがネリにダイレクトに届いたことが決め手だった。あのNeuerをかわすことになったタッチは、試合中はまぐれだと思っていたけど(すまん)、リプレイを見返したら彼にはGKが見えていたはずなので、意図したタッチだったかもしれない。すごいぞネリ! そして、そのままGK不在のゴールまで一直線。無人のゴールネットにボールを入れたのだった。
彼はああいうタイプの単独ランによるゴールをアーセナルでこれまで何度も決めてきた。チームメイツの誰もがうらやましがる類まれなるペイス。それもまた稀有な才能。
マドゥエケもネリも気持ちのよいゴールだった。彼らが戻ってきたことは、チームの攻撃オプションにさらなる厚みが戻る。ポジティヴしかない。
他方、試合終盤にはオーデガードもひさしぶりにピッチに現れた。ただ、こちらはやや残念なのは、あまりチームプレイに関与できなかったこと。10分プレイして彼のタッチはなんとたったの4。いつものポジションでボールをよこせとチームメイツに一所懸命にアピールしていた場面もあったものの、実際まったく試合に入れていなかっただろう。
最近チームにおけるエゼの存在感アップで、オーデガードが戻ったときにチームがどうなるのかは気になっていた。キャプテンとはいえ、彼がすんなり戻るにしてはエゼが良すぎるし、エゼの10とオーデガード8/10では、チームプレイもだいぶ変わってくる。タイミングとしては、ちょうどいま選手たちがエゼに慣れ始めたところだっただろうし。
今後どうなるか観てみよう。しかし、こんな贅沢なオプションで悩むことができるとは。
自信喪失?のMLS
こんな試合に似つかわしくないトピックながら。
今回、ひさしぶりに試合でスタートの機会を与えられたマイルズ・ルイス・スケリー。
CLバイエルンのようなビッグマッチでの起用は、今シーズンはLBでレギュラーポジションを失っている彼について、決してアルテタからの信頼が失われたわけじゃないことを示していただろう。きっと彼も張り切っていたはず。
ところがどっこい……。正直、彼はアーセナルのチームだけでなく、両チームあわせてもピッチ上のワーストプレイヤーという感じだった(※SofaScoreで彼の6.0より低いレイティングはUpamecanoの5.9だけ)。
左ワイドでMLSと対峙していたのは、Michael Olise。控えめにいっても、彼はワールドクラスなので相手が悪かったといえばそれまでだが。この試合のMLSはとても自信レベルが低下しているように感じたものだ。彼が去年ブレイクしたときの、ふてぶてしさのようなものが感じられない。
彼は、ボールを持ったOliseに何度もクロスを上げられたし、ほかの選手にも遅れを取るシーンもあった。65分、Oliseにドリブルで完全に抜け出されボックスに侵入されたときは目も当てられなかった。あれは相手ウィンガーと1 v 1で対峙するフルバックが絶対にやってはいけないプレイだ。あのように個人がイージーに出し抜かれては、守備ストラクチャもなにもなくなる。よりによって1 v 1スペシャリストのMLSが。ショッキング。
それと、あのバイエルンの唯一のゴールシーン。グナブリに裏を取られた彼をギルティ認定していいのかどうか個人的には迷うところだが、あれがバイエルンの得意のパターンで、LBのMLSにも事前のインプットがあったと思うと、やはり彼の過失もあったのかもしれない。集中力の欠如。リプレイを見ると、彼はグナブリのランに気づいているのに、一瞬対応が遅れてしまっていた。
あのゴールはまさしくバイエルンの完璧な連携による完璧なゴールだったと思うし、それを防ぐのは当然難しい。しかし、それを防いでこそのトップチームでありトップDFなのだよね。このレベルでは、あのように一瞬の油断が命取りになるので、DFの集中力もトップオブトップでなければならない。守備が化け物じみて優秀なアルテタのチームなら、DFの選手たちはふだんから口を酸っぱくして云われていることだろう。
気の毒なのは、彼と交代したカラフィオーリがああしてすぐに目に見えるかたちでインパクトをもたらしたことで、よけいに彼のパフォーマンスが目立ってしまったこと。
スタンドにはせっかくThomas Tuchelの姿もあったのに、いいところを見せるどころか。今回の試合だけで彼を判断するとは思えないが、すくなくともボスによい印象は残さなかったはず。彼のワールドカップの夢は遠のいたかもしれない。
カラフィオーリがOliseと何度かの1 v 1で見せた自信マンマンな守備を観て、やはりMLSの自信低下をとても感じた。
そして思うのは、アルテタのチームではこういうことがけっこうよくあるということ。たまにしか起用してもらえない、あるいは突然のように起用されなくなった選手は、やっぱり自信を失ってパフォーマンスが低下する。ボスに信頼されていないというネガティヴ感情がパフォーマンスの足を引っ張る。
われらはそれをラヤにポジションを奪われたラムズデイルに観たし、ほぼ戦力外になったあとのジンチェンコにもそういう傾向が見えた。たまにしかプレイしない選手は、本来のパフォーマンスが発揮できない。一時のキヴィオールにもそういうところがあった。そしていまMLSにそれを観ているような気がする。
18才ならまだまだこの先があるし、そこまで悲観するようなことでもないのだろうが、今回のような覇気のないパフォーマンスを見るに、本人にはなにかしらの精神的影響がありそうである。
アルテタとコーチたちはなんとかうまいこと彼を使ってほしいものだ。それは、結局チームの損になるのだから。
マイルズにも今後のバウンスバックを期待したい。
この試合については以上













