試合の論点
アーセナル vs マンチェスター・ユナイテッドのトーキングポインツ。
PL3試合勝ちなしで失速。ホームのビッグマッチに競り負けアーセナルのタイトル資格に疑義。問題は??
まずなにより、マヌUの皆々様を称えねばならんでしょうな。下唇に血をにじませながら書くけれど。
彼らはよかったよ。マンチェダービーで観た彼らよりずっとよかった。
前半30分は、アーセナルに完全に支配されて苦しい時間だったが、それを乗り切ったあとは相手が勝手に自滅して、どんどんやりたいことができるように。やることなすことうまくいって、リーグトップとのアウェイ試合であの勝ちかた。なんなら今シーズンのエミレーツはどのチームにも最難関なわけで。最後は相手が奇跡の逆転を信じたその瞬間、鼻っ面にカウンターパンチでKOしたのだから、痛快このうえないだろう。マンサポは天国のような気分と思う。アーセナルがOTであんなふうに勝ったと想像してみほしい。
彼らがすごいのは、シティとアーセナルと2試合つづけて結果を得たこと。180分間。いくら勢いがあるといってもそんなに続くものじゃない。まあ今回は、アーセナルがそれをアシストした面も否めないが、それとて彼らがわれらにミスを強いた面もある。
ほんとうにフットボールで<勢い>というものはバカにできないね。どんなにズンドコでも、やれる気になればやれるようになる。ふつう実力の100%を出すことだって簡単じゃないが、120%が出る。
今後彼らは、ヴィラ(H)も残しているということで、ぜひ勝っていただきたい。ボトムチームにもあっさり敗けそうな匂いもするチームだが、きっとあなたたちならやれるはずです。このたびはおめでとうございました。
で、アーセナル。
これはちょっと深刻ですなあ。PLで3試合つづけて似たようなパフォーマンスを繰りかえしている。ノリノリでプレイしている時間から、急に不安定になり始める。
この試合の直接的な敗因も、ズビメンディのありえないようなエラーから。あれがなければ、違う結果もありえた。
このミームはマジで繰り返し使えて助かる。
ただ、今回はズビがアレをやらかす前から怪しい雰囲気はぷんぷんしていた。
29分にLisandroのOGによってアーセナルがリードしてから、37分に失点するまで。それまでポゼッション70%以上かつファイナルサードでのタッチがゼロというくらい、マンUにほぼ何もさせていなかったのが、突然にチャンスをつくられるようになった。
それもほんとうになんでもないミス。失点する直前の34分にはサリバもやらかしている。なんとか自分でシュートをブロックして難を逃れたものの、あれはまったくのケアレスミスだった。最近だけでも、ズビ、サリバ、ビッグガビがそれぞれ致命的なエラーをやらかしている。
試合のなかで、それまで自分たちのやりたいようにプレイしていたチームが、理由もなく(?)突然に不安定になる。なんという既視感だろう。
理由は、やっぱり精神的なものだろうか。でも1ゴールリードした程度で、追いつかれるか不安に陥るって、さすがに気持ちが弱すぎないか。それとも、ずっとトップを維持して追われるもののプレッシャーを日々感じている?
まあ、でも今回はそれにプラスして相手の勢いに飲まれたところもある。パスミスで簡単に相手にボールを渡してしまうだけでなく、50/50のはずのセカンドボールがことごとくマンUのもとに転がるみたいな、勢いのもたらす不思議なちからが働いていたかのようだった。後半のマンUがやることなすこと全部うまくいくのに対し、アーセナルはやることなすこと全部うまくいかない。そんなふうにも見えた。
全シーズンでアーセナルを支えてきたホームサポーターながら、今回ばかりはスタンドの反応も選手たちの後押しにならなかったようにも思う。HTのブーはともかく、選手がミスをするたびにスタンドが落胆の反応を示し、それで選手が落ち込んで自信が低下する悪循環。
まあ、あんなパフォーマンスを観させられた現場の観客の気持ちは察してあまりあるので、そこにあまり文句は云えないだろうけれど。そもそも、サポーターにいい反応を示させるのもチームの仕事だ。いいプレイをすれば、自ずといい反応が返ってくるもの。
試合後は、ファンのあいだでさまざまな議論がある。そのなかで大きな話題のひとつは、アーセナルのアタッカーたちの最近のアウトプット。
サカは試合前にも最近ゴールがないのは話題になっていたし、ヨクレスは云わずもがな。だがこれは、さすがにちょっとひどい。こんなにひどいとは思わなかった。逆に最近の試合では誰がゴールを決めていたんだっけと思う。
そして、これと同じくらいとくに深刻なのが、オープンプレイでのチャンスクリエイションとゴール。
今回のわれらの2ゴールもオウンゴールとセットピースで、オープンプレイからのゴールはPL直近3試合でゼロということになる。もともと、アーセナルはセットピースFCと揶揄されるほどで、オープンプレイからの攻撃は課題であったが、この勝てなかったPL3試合では、その弊害が如実に出てしまっているかたちである。
アーセナルは、MD23現在、xGこそ41.22でリーグトップだが、それをオープンプレイxGに限ると、なんとリーグ7位(20.81)。パレスやボーンマスより悪い。いかにチャンスをセットピースに頼っているかの証拠。

Scott Willisによれば、今回58分のクアドラプルサブのあとアーセナルはコーナーからメリーノがゴールしているが、それを除くと、フルタイムまでたった0.21xGしかチャンスをつくらなかったということ(※ショッツ6)。今シーズン無敗のホームで敗けそうになっている、あのクソみたいな緊急事態で、どうしてもゴールが必要なときに。
もうひとつの試合後の大きな論点は、そうした攻撃の低パフォーマンスの原因になっているかもしれないアルテタの戦術。
これはとくに目新しい議論ではないが、やっぱり、彼のやりかたはあまりに保守的なのではないかと。コントロールを重視しすぎて、選手たちが攻撃でリスクをかけようとしない。
ビルドアップでは前に出せる場面でも慎重な横パスが多く(まさに今回のズビはそこでやらかした)、相手を押し込んでもブロック守備の外側をボールを回すだけで、まったく中央を使おうとしない。ワイドの1 v 1勝負からのカットバック/クロス、みたいなワンパターンのやりかたは相手にも予測されている。
遠くからのシュートもほとんど狙うことがない。それが最初からプレイの選択肢にも入っていない。FWたちの生産性の低さも、そうした戦術の影響を受けている。今回、マンUのボックス外からのゴラッソ2発が、アーセナルに足りない完璧な例だった。等々の声。たしかに。
「アーセナルは、ファイナルサードよりディフェンシヴサードのほうがよほどリスクをかけてる」とは、いい得て妙。ビルドアップでは、バックラインはいつもギリギリの綱渡りを強いられている。だから、ああいう致命的エラーもたまに起きる。
今回はマンUが積極的な攻撃アプローチだっために、よけいにアーセナルの消極的な攻撃アプローチが際立って見えることになった。
ほんとはエゼみたいな選手がいるのだから、彼がインテルでやったような中央での仕掛けをもっとやるべきなのだろうが。今回のような試合では、仮に中央の狭いスペイスにいる彼にボールが出ても、そのまま後ろにボールを返すだけ。あそこでボールをもらったエゼなりオーデガードらのクリエイターが前を向くことがもっとも相手がいやがるはずなのに。リヴァプールもマンUも、彼らはそれをアーセナルに対しやっていた。
ぼくは今シーズンが始まってしばらくしたあと、リヴァプールが敗け始めたとき「(それまであんなにギリギリで勝っていて)馬脚をあらわした」と思ったのだが、正直、いまのアーセナルこそ馬脚をあらわしているように感じている。この戦いかたなら、いつかこういうことも起きうるという予感はうっすらあった。
ここ数シーズンから、攻撃面で進歩している様子があまりないのに、セットピースのあまりの強さから試合には勝っているという状況。最近はそこにオウンゴールまで加わって。
それと、選手の疲労を指摘する声もある。
マンUと違い、アーセナルはずっと週3でプレイしている最中で、この直前までアウェイ4連戦をやったばかり。11月以降では、アーセナルはマンUより6試合も多かったらしい。
とくにズビメンディやオーデガードには疲労がたまっているかもしれない。今回致命的にやらかしたズビメンディは、アーセナルのアウトフィールド選手のなかではチームトップのプレイ時間だそうで、ほとんど出ずっぱり。CLインテルでもほかのレギュラーが休むなか、サカとともに90分フルでプレイした。ほかにも、ティンバー、ライスあたりも連戦の影響はありそうだ。
もちろん、以前にくらべたらそこはアルテタもずっと慎重になっているけれど。最近の彼はよく「負荷管理」ということを云い始めたし、サカなどはあきらかに連続でプレイさせないようにしている。
だが、最近のエゼの冷遇や、ノーガードのチャンスのなさなどを考えると、その点ではもっとやれたのではないかと思ってしまう。
試合後のアルテタは会見で「どのコンペティションも犠牲にできない」と述べた。マネジャーとしての気持ちはわかる。だが、それでほんとうに大丈夫なのだろうか? 二兎を追うものは一兎をも得ず、にならないか、そこはちょっと心配になる。
4つのコンペティションを追いかけ、仮に4つとも逃すことになれば、ほんとうに悔やまれるだろう。シーズンを終わってみて、やっぱりPLとCLに集中すべきだったと後悔しないか。いまはリーグ最強のスクワッドデプスなどと云われているが、5-6人もケガ人が出ることはふつうにありうる。そうなれば、本命のPL/CLも一気に苦しくなるだろう。
今回、あまりエナジーを感じなかった選手たちを観て、4つのコンペティションを同時に追いかけるということはこういうことだということを、思い知らされた気がする。
タイトル争いのプレッシャーにさらされているのはしょうがない。そこはもう乗り越えるしかないのだから。それは、どんなチャンピオンも直面する試練。それに対処できないのなら、最初からタイトルの資格はない。
しかし、それ以外にチームとしてやれることもある。今回の試合を観て、アルテタとチームには、あとで後悔することのないようやってほしいと思わないでいられなかった。
とはいえ、「攻撃でリスクをかける」みたいなチームプレイの基礎をシーズン中に変えるなんてことはできるはずないのだけど。せめて、適切なローテイションくらいは望みたい。
まあひとまずは、チームで揺らいだ信念を取り戻すことかね。この試合の敗けかたにはファンも大きなショックを受けているが、それ以上に選手はショックを受けただろうから。
そのためにPLで勝ち始めること。リセットして、またやっていく。図太く生きろ。もう、敵は相手じゃない。自分たち次第。
この試合については以上













