先日のFAカップ、サウサンプトン戦で見せたアレックス・オックスレイド=チェンバレン(以下Ox)のセントラル・ミッドフィールドでの活躍が話題である。ざわざわ。
昨日のプレスカンファレンスでボスはこう語った。
彼(Ox)はいいウインガーであり、いいCMだと思うよ。彼の将来はワイドよりは中盤にあるだろうね。
若いときはワイドがいいんだよ。CMてのはもっと経験が必要で、もっとやるべきことが多くて、もっと戦術的なんだ。ワイドは頭空っぽでも本能的に動けるっていうのかな。アッハッハ。
とはいえ本来は彼はもっとゲームに絡んでいきたいタイプの男だよ。そういえば、彼は中盤でプレイしたときにはいつもよくやっているよね。
セインツ戦での活躍に、かつてCLのミラン戦での輝きを想起した人がけっこういたようで、そのようなツイートをいくつか見かけた。ぼくもその一人である。そうOxは中盤に置かれたときは結構やるんである。
アーセナルのCMFという激戦区にあえて名乗りを上げる漢
現在、たまたま偶然にCM不足の事態に陥ってチェンバレンが起用されたが、本来であれば今シーズンのアーセナルには十分な数のCMがいた。シーズン始めにはかつてない中盤の層の厚さに全グーナーが涙を拭ったものだ。
ファーストチームにはCMの本職が4-5名。基本フォーメーションである4-2-3-1、CB前の2枚を常時だいたい4人で争っている。怪我明けのジャック・ウィルシャーがローンに出されるほどの激戦区である。
- カソルラ(マジシャン)※怪我により離脱中、シーズン終盤に復帰か
- ラムジー(ダイナモ)
- コクラン(ポリスオフィサー)
- エルネニー(パスマスター)※アフリカに出張中、今月復帰か
- ジャカ(ルードボーイ)※レッドでバン中、再来週くらい復帰か
このうち守備専と呼べるのはコクランのみで、ヴェンゲル監督に真ん中のコンビでコクランを外すオプションはほとんどないことから、アーセナルのCM問題の大方はコクランの隣に誰を置くか問題ということになる。
つまりチェンボをラムジーに置き換える価値があるかどうか、そういうことになるが、まあふつうに考えてあり得ないだろうとは思う。
ラムジー、コクランとの比較
一応、プレイヤーの比較をしてみても、Oxのスタッツは当然現在の彼の主戦場であるワイドでの成績ということになるので、あまり参考にはならない。
ラムジーとコクランのスタッツに目をやれば、ディフェンスはコクラン、ポゼッションはラムジーとはっきりとした役割分担がわかる。てかディフェンススコア低いなラムさんよ……。
では、もうしばらくすると帰ってくるジャカやエルネニーとはどうか。
ジャカ、エルネニーとの比較
ジャカも守備力が低い。エルネニーもジャカもポゼッションスコアはさすがに高い。ホールディング・ミッドフィールダーである。
現状のアーセナルでOxを中盤で使うとどうなるか予想
これらのデータを踏まえてOxをCMに起用したときに起きることを予想すると。
攻撃力が上がりそう
中盤を一人で打開できるドリブルというオプションがあるのは大きいし、ジャカにも匹敵するロングレンジのパスセンスは攻撃に威力を発揮しそう。全盛期のシャビ・アロンソを彷彿とさせたセインツ戦のパスにはマジしびれた。わくわく。
守備力は……予想できない
戦略にもよるだろうが、もしかしたらエルネニーやジャカ以上に貢献する可能性はあるのかもしれない。ただ、守備のために彼の攻撃力を生かさないのであればCMのOxは魅力半減である。ワイドでのサボり守備やアリバイ守備の印象が強いので守備の信頼度はもともと低い。
ポゼッションはちょっと期待できない
コクランの相棒にラムジーを外せない一番の理由はこれだろう。Oxが中盤でラムジーよりもボールキープができるという印象はない。だがアーセナルが中盤でボールを持たないという戦略はなくはない。たとえばシメオネのような監督が来たらそういう劇的な方向転換も十分に考えられる。つまりそれはチームの戦略・戦術そのものの変化を意味するが、エジルいないほうが攻撃が活性化するじゃん問題などと合わせて、興味深くはある。
明らかなネガティブ要素
Oxをこのポジションであまり使いたくない理由のひとつは、ときにプレイが「軽い」ことだ。割りと簡単にパスミスをやらかすし、あっさりとボールを奪われることがある。それがファイナルサードならまだしも、うしろにDFしかいないエリアでやらかすと高確率でピンチに陥る。Oxはこのポジションでやっていきたいなら「CMしぐさ」をもっと身につけなければならないだろう。
チェンバレンの可能性は無限大∞
チェンボはまだ23才。若すぎる。これまでアーセナルで将来を嘱望されながらいつまでもブレイクできないでいた若手の一人だ。ボスはこれまでにも何度かOxのCM適性を指摘しているけれど、今回のCMでの活躍はポジションのコンバートという選択肢に現実味を与えてくれたと思う。
ますます充実するアーセナルのセントラル・ミッドフィールド。これからも楽しくなりそうである。ジャック・ウィルシャーの居場所が……