移籍ニュースはゴシップが楽しい。アーセナル界隈で今一番アツいのはOx。進まないアーセナルとの契約交渉にチェンボが苛ついているというゴシップから、いつの間にかリヴァプール、シティ、チェルシーに行くのがまるで既定路線かのような扱いに。ゴシップのうえにゴシップが重なるとこういうことになるといういい見本である。
Squawkaではご丁寧にこんな記事まで。コラ画像までつくってご苦労。気が早いにもほどがあんぞ。
ウイングならリヴァプール、CMならシティ、ウイングバックならチェルシーとそれぞれのクラブで使いたい場所が違うらしい。知らんがな。
それはともかくCFである。
ジルー放出の噂を聞いてジルーを手放したくないとさっそくベンさんが語っているらしい。ベンさんの弁明。そりゃそうだろう。貴重な長身CFなんだからサブで使えるなら当然キープしたい。金に困っていないなら積極的に手放そうという理由がない。
問題はまだアーセナルでプレイしたいというジルー本人が、サブを受け入れられるかということだ。
ジルー問題もさることながら、拙ブログでも何度も言及しているようにとにもかくにもCFである。アーセナルにもっとも必要なのがCF。得点を量産してくれる選手だ。これだけは異論は認めない。まともなCFを買わないことにはEPL優勝なんて話にならないのである。
アーセナルのCFには完成品が必要だ
ところで、(これもまたゴシップだが)、アーセナルは移籍するならレアル・マドリーを優先したいというエンバッペは諦めて、より現実的なオプションであるアレクサンドル・ラカゼに獲得目標を絞ったという報道がある。
エンバッペのおよそ半分程度とはいえ、リヨンに要求される移籍金は60Mポンド程度ということで、これもアーセナルにとっては天文学的数字であるはずだが、このインフレ世界の流れのなかでは、その程度の金額にほとんどニュースバリューはない。
このラカゼ獲得に関して、当のファンたちはどのように思っているのかといえばこれはほぼ歓迎ムードと思われる(おれ調べ)。もちろん18才のエンバッペにはロマンがあるし誰だってガナーズのシャツを着たエンバッペを見たいだろうが、マドリーやバルサのようなトップトップクラブがその気になればアーセナルレベルのクラブに出る幕はない。
出場機会の保証くらいが唯一勝てる要素だが、マドリーにはちょうどいいタイミングでロナウドやベイルの退団の噂がある。それが認められるならば、唯一の勝てる要素すらもない。
ということでアレクサンドル・ラカゼット。個人的にはエンバッペよりもラカゼを推したい理由がある。負け惜しみではない。
たびたび指摘されてはいるように思うが、それはアーセナルはもっと完成品(End product)を買うべきという簡単な理由である。
伸びしろとか育成とか将来のスター候補とかブリティッシュコアとかそういうのをあえて美学というならば、ほっぺたをひっぱたいてこっちを向かせながら「勝ちたいなら現実を見ろそして即戦力を買え」と諭したい。
立派なスタジアムを建てたおかげで金がない。だから低コストでチームをつくって、だましだましでなんとか4位フィニッシュを維持しお茶を濁してきた。完成されたスター選手を大金で買うなんて脂ぎった金満クラブのやることだ、若手に莫大なコストをかけるなんて健全じゃないと揶揄してきた、それが近年のアーセナルだ。
しかしそうこうしているうちに戦力アップを即戦力に求めたライバルたちはどんどんと力をつけていき、ついには「健全な」アーセナルは4位にも入れなくなってしまった。その結果によっていまでは有望な若手も惹きつけられないという悪循環。インヴィンシブルの時代にアーセナルよりもチェルシーやマンシティに入団したいというヤングタレントが現れようとは誰が想像しただろうか?
だからこの期に及んでエンバッペとかいってる場合じゃないのだ(負け惜しみではない)。レヴァンドフスキに行けよといいたいが、まあラカゼでいい。なぜならラカゼはいい選手だからである。
じつはすでに去年も正式なオファーをリヨンに断られているというので、今年また移籍金が上がってしまって、今ごろ本気になるとかバカじゃないのという感じだがそれでもいい。なぜなら今季もラカゼは得点という結果(30試合28得点)を示してエンド・プロダクトであることをきっちり証明したからである。
バイエンに行ったレナト・サンチェスが苦しんでいるという記事がSKYに来ていた。あれだけ将来を嘱望されていたレナト・サンチェスという逸材が厚いバイエンの選手層(シャビ・アロンソ、ヴィダル、チアゴ・アルカンタラとの競争)に阻まれ出場機会を失っているらしい。すでにトップクオリティの選手を揃えるビッグクラブの弊害ともいえるが、いずれにせよサンチェスがそこに割って入るだけの活躍を見せられなかったともいえる。
もちろんエンバッペとレナト・サンチェスを同列で語るべきではないのかもしれない。が、若さというのはすなわち安定感のなさであるのもまた事実だ。120Mポンドという史上最大級の移籍金で購入した18才のエンバッペが明日突然活躍できなくなるというリスクは想定しておくべきである。
ラカゼとサンチェスのプレイスタイル比較
ラカゼを獲る獲らないに関わらずサンチェスは来季アーセナルにはいないと思っている。従ってラカゼが来るなら多かれ少なかれサンチェスの後釜という見られ方をすることになるだろう。
じつはラカゼとサンチェスは決定力やドリブル、ボールキープなどプレイスタイルがだいぶかぶっている。
(※追記2017.10.16:すまん、ラカとサンチェスのプレイスタイルは全然似ていなかった。ハイライト動画だけでプレイスタイルを判定してはいけないといまでは反省している)
ラカゼット
2017年版のハイライトでもドリブルしまくりのゴール決めまくり。
いつものWhoScoredより拝借。
決定力抜群。ドリブル好き。175cm。CFとしては小さい。小さくて素早い系のFWである。
そしてサンチェス。
サンチェス
決定力ヤバイ。ドリブルも大好き。ポジションこそCF専のラカゼと攻撃ならどこでものサンチェスでは違いがあるが、このキャラ分析を見るとふたりのキャラクターは非常に似ているといえる。
15/16、16/17シーズン両者のスタッツ比較
Squawkaより。15/16シーズン(右)、16/17シーズン(左)。
非常に似ている。サンチェスのスタッツと似ているということは、けっこう驚異的なことである。当然ながら攻撃面でサンチェスと比較できる選手というのは数えるほどしかいない。比較はおろか、今季は得点、ドリブル成功率、シュート精度でラカゼが勝っている。
ちなみにこのスタッツに「ボールロスト」という項目があれば見てみたかった(ないのだ)。今季サンチェスのボールロストは目に余るものがあった。もしラカゼのボールロストが少なければ、それは大いなるポジティブ要素となる。
この数字から見られるラカゼとサンチェスの決定的な違いは、アシストやチャンスクリエイテッドといった、利他的なプレイだろう。アーセナルとリヨンではプレイスタイルも違うし、ポジションも違うので一概にはいえないが、ラカゼはサンチェスよりも直接ゴールを目指すプレイをするといえる。
もちろん、CFがゴール前でシュートよりパスを優先するのは間違えている。自己中心的、独善的、自分勝手、エゴイスト、ひとりよがり、お山の大将。得点さえ決めればどれもCFの美点である。
ジルーやエジルとの共存
左右のウイングもこなすがラカゼはFWだ。サンチェスのように中盤の選手として守備にも貢献するというようなことはないと思ったほうがよい。だからサンチェスがアーセナルで担っていた役割をそっくりそのまま彼に期待することはできない。
今後起こるだろう一番ありえそうなシナリオ、サンチェスOUT、ジルーSTAY、エジルSTAYで考える。
4-4-2
フランスっぽいがマトゥイディがエジルかと思うと左が心もとなさすぎる。Ox左で右にウォルコットのほうがマシかもしれない。ジルーとラカゼットで2トップにしたとき442にエジルの居場所はない。
4-4-1-1
エジルを使いたいなら守備タスクから解放する必要がある。
ジルーを外してラカゼとエジルの2トップ(エジルがセカンドストライカー)のほうが現実的か。チェンボが分身していた。この場合、左にはより攻撃的な選手を置きたい。
4-2-3-1(※追記)
大事なのを忘れてた。まあふつうに考えて来季は3バックをメインにして4バックを併用していくんだろう。
アーセナルの4バックは実質2バック。突撃モードだ。
3-4-2-1
フォーメーションだけで考えると、来季もっとも濃厚なのが今季終盤に成功のきざしを見せた3バック。
ワントップの後ろのふたり、エジルの相棒のウェルベックのポジションがサンチェスの後釜ということになる。ここにサンチェスがいたらそれなりに強そうであるが、残念ながらウェルベックだとちょっと物足りない(なんという贅沢)。いま噂になっている選手だったら、やはりマレズあたりがしっくりきそうだ。攻守の安定感は一番ありそうなフォーメーションである。
4-3-3(※追記)
もういっちょ追記。奇跡的にサンチェスが週給350kで契約更新したときの433。マレズも右にいる。
攻撃は強い。けど、左右にサンチェスとマレズがいてチャンスを作りまくるなら真ん中はジルーのほうがいいかもしれなくてラカゼが控えというジレンマ。
そしてマレズがいるならMFにはエジルよりラムジーを使いたくなりエジルが控えというジレンマ。