うんざりするほど毎年この時期に獲得が噂される、ウィリアム・カルバーリョ(William Carvalho/ウィリアン・カルバーリョ)。今年もその季節がやってきたようだ。
なぜ彼の移籍話が風物詩のように毎年繰り返されるのかといえば、ビッグクラブに移籍して当然のクオリティでありながら、いまだ5大リーグに属さないポルトガルリーグでプレイしているからだろう。
一般的にはポルトガル代表でロナウドらとともに優勝した直近のEURO2016のメンバーとしての印象が強いと思われるが、そんな彼について基本的な情報をここでおさらをしておきたいと思う。「ウィリアム・カルバーリョって誰だよ」エントリである。
ウィリアム・カルバーリョのプロファイル
1992年ルアンダ生まれ(25才)。ポルトガル代表MF。身長187cm。CM、DMのほか、ときにCBもこなす模様。
U16以降各年代の代表に選出されており、もちろん現在もポルトガル代表。昨年、下馬評を覆してEURO2016を獲ったのは記憶に新しい。
ユース時代(14才)からスポルティング・リスボン(スポルティング)でプレイする生え抜きである。フィーゴ、クリスティアーノ・ロナウドらの後輩にあたる。
※おもに国外で使われている通称「スポルティング・リスボン」は正しくは「スポルティングCP」だという。クラブはこの間違った呼称を正したいとのこと(Wikipedia情報。初耳)
ウィリアム・カルバーリョの評価、実績
William Carvalho -5things you need to know より
- U21EUROで敗れたイングランドの監督、マーク・ローレンソン「(カルバーリョとイングランドの選手は)大人と子どもくらいの違いがあった」
- 2013年フル代表デビュー。2014年にたった4試合の代表経験でワールドカップメンバーに選出
- 優勝したEURO2016でもっとも多くのパス本数を記録
- スポルティングの大ファンで2005年にはライバルクラブ、ベンフィカへの移籍を断る
- 元ポルトガル代表のチームメイト、チアゴ「(カルバーリョは)ファンタスティックなパス能力をもったアメイジングなプレイヤー」
- 14/15シーズンにはスポルティングでポルトガルカップ優勝。2016年にポルトガル・スーパー・カップ優勝
ウィリアム・カルバーリョのプレイスタイル
昨シーズンのハイライト。もちろんいいところしかないのでこれで何かを判断できるわけでもないが、やはり身体が強いことはよくわかる。中盤でフィジカルでボールを奪える/奪われないという能力は、いまのアーセナルにはいささか欠けている要素ではある。
WhoScored.comによると、彼の強みとして、パスがベリーストロング、スルーボール、ドリブル、守備のコンセントレイションがストロングとなっている。187cmと高身長ゆえに空中戦にも強いはずだ。ディフェンシブ・コントリビューションの評価が気になるがここにはない。一方、弱みのほうはとくにないようだ。
イエローカードを受けやすい?
アーセナルに来るとなればコンビを組むだろう誰かのようにディシプリンに問題がなくてよかった……と思って、マッチ・ヒストリーを見たら結構もらってるな。カップ戦含めてシーズンで15枚もらっていた。そのうち一回は2枚で退場になっている。2試合に1枚くらいは警告を受けている計算である。これWeaknessesにディシプリンを入れるべきじゃないか?
ウィリアム・カルバーリョとアーセナルとのリンク
William Carvalho wants to join Arsenal: Gunners in talks to sign Sporting Lisbon star
最新のゴシップによると、ニューキャッスルやウェストブロムともリンクされているが本人はガナーズへの移籍を希望しているという。
14/15シーズンにはアーセナルのおよそ20Mポンドでのオファーが断られている。2020年に切れるリリースクロースの金額が40Mポンドだが、スポルティングのプレジデントは27Mポンドに値下げしてもいいと考えているらしい。(なぜ?)
現在アーセナルとスポルティングが交渉中だというが果たして。
アーセナルとポルトガル人プレイヤー
ちなみにアーセナルに所属したポルトガル人と聞いて全然思い浮かばなかったので調べてみたところ、1997-1999に在籍したルイス・ボア・モルテ(Luís Boa Morte)まで遡らねばならなかった。ルイス・ボア・モルテってフラムやウェストハムの選手という印象が強いけど、アーセナルにもいたんだな。
アーセナルとポルトガル人の結びつきは弱い。
ウィリアム・カルバーリョの代理人(エージェント)について
長い間アーセナルとリンクされていながら、彼の獲得の噂があまりファンの間で本気に取られなかったのは、彼のエージェントが悪名高いジョルジュ・メンデスだったためである。ヴェンゲル監督がジョルジュ・メンデスやミノ・ライオラといったメガクラブ相手に丁々発止のビジネスをする「スーパー・エージェント」のことを嫌っているのは有名で、ヴェンゲル時代のアーセナルで彼らが代理人を務める選手を獲得したことはほぼない。
ちなみにredditの2016年のスレッド「Have Arsenal ever signed a player with someone like Jorge Mendes or Mino Raiola as their agent?」(アーセナルってジョルジュ・メンデスやミノ・ライオラみたいなエージェントのとこにいる選手を獲ったことある?)では、アーセナルがスーパーエージェントから獲得したのは、ライオラのクライアントであるユースのDonyell Malenくらいであるとのこと。それと、デニス・ベルカンプがやはりライオラのクライアントだったらしい。ただし彼がアーセナルに来たのはヴェンゲル就任の前である。つまりヴェンゲルは彼らの顧客は獲らないのだ。理由はまあ割高だからであろう。
City target William has a new agent: Guardiola’s brother
理由は定かではないが、カルバーリョがエージェントを変えたのは今年2017年の2月のこと。新たに彼のマネージメントを始めたのは「MEDIA BASE SPORTS」というエージェンシーで、これがペップ・グアルディオラの兄弟である、Pere Guardiolaの会社である。MEDIA BASE SPORTSの顧客は、有名選手ではルイス・スアレスやカルバーリョ、我々が親しいところではジョン・トラルなど。またペップ・グアルディオラのマネージメントも行っている。
カルバーリョが改めてアーセナルのターゲットになることは、彼がスーパーエージェントから離れた今ではこれまでよりいくらか現実味を帯びたものと認識されるが、一方で客観的にみれば、グアルディオラのコネクションでマンシティに行くほうがよほどリアリティのある状況となっているともいえる。
今夏、マンシティとカルバーリョのリンクはほとんど聞かれないが、水面下で交渉しているというようなことはあるんだろうか。
まとめ
個人的な感想としては、とくにインフレが激しい今夏の市場において、このレベルのプレイヤーをその金額で買えるならば格安といえるのではないだろうか。
もしジャカとカルバーリョを中盤に並べるとなると、アーセナルにしては若干消極的な構成になるようにみえるが、3バックで左右のウイングバックがより積極的に攻撃参加していくようなスタイルであれば、ピッチのまん真ん中にポジションを取るふたりを置くことは決して悪いことではないだろう。少なくともラムジーが行方不明になるよりは成績は安定しそうに思う。
このふたりからファイナルサードへパスがバンバン通されるなんて、なかなか夢があるじゃないか。