アーセナルで好調を続けていたジャック・ウィルシャーが、練習中にまた怪我をしてしまった。
彼は今回イングランドスクワッドに入っていたにも関わらず、アムステルダム行きの飛行機には乗らなかったし(試合は0-1でアウェイのイングランドが勝利)、サウスゲイトはジャックは軽症だとしつつ、このあとのイタリア戦にも出場させない見込みだという。軽症とはいえ、これはジャックのワールドカップ出場に黄色信号が灯っただけでなく、アーセナルでの将来にも不安を残す重大な怪我となってしまったのかもしれない。
そんなわけでジャック・ウィルシャーの将来を案ずるブログエントリを何本か読んだ。そのなかで、ジャックとカソルラのドリブルスキルについて言及しているエントリがおもしろかった。
ジャックは32才の身体を持つ26才
Wilshere should take the offer from Arsenal (if it is still on the table)
「ウィルシャーはアーセナルのオファーを受け入れるべき(まだ決めてないなら)」
最近、7amkickoffにインスパイヤされたエントリばかりですまない。しかしこのブログ、ぼくの関心事と非常にマッチしていてとてもおもしろいのだ。
このエントリの論旨はタイトルどおりである。ジャックがほんとうに輝いたのは10/11シーズンのバルセロナ戦だけで、その後はずっと怪我して短時間フィットしてまた怪我しての繰り返し。アーセナルのCMは攻撃に偏った性質のCMが多くバランスが悪い。ジャックのキャリアを考えれば、彼には満足する契約を提示すべきだという意見もわかるが、アーセナルのスタンス(給与カット+出場インセンティブという提示条件)は十分リアリティのあるものであると。
このエントリのなかに出てくる「26 year old man with the body of a 32 year old man」ということばが印象的だった。ジャックは怪我を繰り返していくうちに並の26才よりもフィジカルが消耗してしまっているという指摘はするどいと思う。たしかにわれわれが昔から見ている彼がまだ26才だという事実は驚くべきものだし、いまの彼に26才のフットボーラーの絶頂感はない。年齢的には彼のプライムタイムなのだけれど。
とまあ、こんな調子でジャックにはしょぼいオファーだけど、状況を考えれば条件は決して無礼なものではなくむしろ受け入れるべきオファーではないかと。そういう内容である。
ウィルシャーとカソルラのドリブルの違い
このなかで、同じドリブルをするCMの選手として、カソルラとジャックを比較しているのが興味深かった。じつは同じドリブルといっても、このふたりのドリブルはかなり違うものだ。
ウィルシャーのドリブル
ジャックはよりオープンなスペースでドリブルする。彼が好きなのは、3ヤード(2.7メートル)ボールをプッシュしてそれに素早く追いつくというもの。このエントリではそれを「カウ・ドリブル(牛ドリブル)」と呼んでいる。スペースがあって、ダッシュのスピードがあれば非常に有効であると。
ちなみにこれ、以前にヴェンゲル監督がジャックについて「小さなバースト」とコメントしたのと同じものだと思う。狭い局面でもボールをスッと前に出してひとりで抜け出してしまう。ジャックは決して足の速い選手ではないが、ビデオを見ているとちょっとしたフェイントで相手が虚を突かれる様子がわかる。
7amkickoff氏は、YouTubeにアップされているような彼のドリブルコンピレーションビデオで、ほとんど90%以上がこの「カウ・ドリブル」だという。つまり、ジャックのドリブルというのはわれわれが想像している以上にワンパターンなのである。
仮に守備戦術が進歩しているイタリアのようなリーグだと、こういったプレイを続ければすぐに対策されてしまうのではないかとも述べている。
カソルラのドリブル
一方、サンティのドリブルはもっと足元でコントロールするドリブルだ。両足を器用に使って密集を切り抜ける。左足しか使えないジャックではできない芸当である。このビデオには例の「何人抜くんだ」のマンシティ戦も入っている。
なんという隔世の感。ついこないだまでこんな選手がアーセナルにもいたんだよなあ。それなのにおれたちときたら、カソルラじゃ守備力が……なんて文句をいっていたんだから贅沢な時代だった。
ジャックの生きる道
もちろんCMのメインの仕事は単独突破ではない。だから、ジャックが誰よりもうまくドリブルをする選手である必要はない。
またそう遠くない未来のポストAWの時代には、チームが大改革され新しい選手も獲得、中途半端な選手は生き残れない可能性が高い。だから、彼はアーセナルが起用するようなアタッカーロールではなく、イングランドで要求されているようなCDM方面に活路を見出すべきかもしれない。
サウスゲイトは、かつてジャックについてはNo.10だとはまったく思っていないとコメントしているし、彼のディフェンス面での貢献については以前にこのブログでも触れたとおり。あまりクリエイティブとは思われていない守備スキルやポジショニングに磨きをかけることは、アーセナルでの将来を考えるうえでもジャックにとって決して悪い話しではない。
Jack is Back. ジャック・ウィルシャーの復活【ボーンマス戦を前に】
もしジャックが今後DM寄りでアーセナルでプレイできるようになれば、アーセナルにとってはこんなにありがたいことはない。
ジャックは3列目の選手ではないですね。
あの位置でのドリブル多用は怖いし、実際ジャックはよほど好調でもない限りロストしてます。相手が強豪になれば殊更です。
ディフェンスも頑張るかもしれませんが、それほど上手くもなければフィジカルが強いわけでもないので、怪我のリスクを考えても3列目に適性があるとは思えない。