ボーンマスのレヴュー前半につづいて、試合内容について振り返っていこう。
3-4-3やエジルの不在など、今回もまた語るべきポイントは多い。
3-4-3(3-4-2-1)へのフォーメイション変更
やはり一番の論点はここだろうか。ELのカラバグ戦以来のバック3、今季PLでは初めて使ったという。
策士というのか、ここで絶対に負けたくない(負けたい試合はないんだけど)という非常に大事なアウェイマッチで大胆なフォーメイションの変更を試みたエメリ。これを事前に予想したひとはいなかったかもしれない。対エディ・ハウという戦術家同士の水面下のバトルだったとしたらそれもまた興味深いところだ。
エメリの試合後のコメントによれば、有効なオプションを試したかったとあるので、この試合の自己評価によってバック3は今後も使っていくことになるのだろう。
このブログでも試合の前には、ソクラティスが復帰して、ホールディングとのCBでコンビを組むのはムスタフィ、ソクラティスのどちらになるかが注目だと書いたが、結局バック3で3人とも使うことになった。
久しぶりの出場になったソクラティスは若干錆びついたところも見せていたので、3人のCBというのはじつはソクラティスを久しぶりに使ううえでの安全策だったかもしれない。この試合で彼がPLのスピードとインテンシティを思い出してくれればいいのだけど。
コラシナツとベレリンはウイングバックが最適か?
それと以前に、ぼくがフォローしているアーセナル系インフルエンサーのひとりが、コラシナツとベレリンをもっとも有効に使おうとするなら彼らをウイングバックで使うこと(つまりバック3が最適)だと指摘しているひとがいて、なるほどと思ったものだ。
そして今回のバック3では、まさにそのようなかたちになった。
3CBがふたりを前に押し上げ、インサイド気味にプレイすることになったイウォビ、ミキタリアンとのコンビネイションで、まさにウイングバックとして攻撃に非常に貢献することになったわけだ。
とくに左のコラシナツは2アシスト(?)の活躍で、Sky SportsではMOTMに選ばれていた(BBCはオバメヤン、PL公式はトレイラと珍しくMOTMが割れた)。
賛否両論コラシナツのディフェンス
もっとも、コラシナツは攻撃はともかく守備をおろそかにしがちなところはこれまでと同じで、今回もまたボーンマスに左のスペースを使われカヴァーリングの意識の低さを露呈することになった。
ホールディングがたびたび左でウイングバックの位置にいたのは、コラシナツがかなり高い位置を取ったためそのスペースをカヴァーしようとした結果だろう。それによってアーセナルはまたしてもドタバタ守備を繰り返すことに。
前半終了間際の失点シーンはボーンマスのカウンターで、アーセナルの右サイドに走り込まれたあと、深い場所で左にサイドチェンジされて数的不利を突かれた格好だが、アーセナルの左サイドのフォローに駆け戻ったのはコラシナツではなく、恐ろしいことにRWBのベレリンだった。ゴールのシーンではコラシナツは中継の画面に映ってもいない。
バック3がコラシナツに攻撃センスを発揮させること(守備のフォロー)が目的のひとつだったにせよ、ウイングバックとしてはバランスに欠けていたといわざるを得ない。攻撃とのトレイドオフとはいえ、コラシナツを使うことのリスクは依然残ったままだ。
なお、コラシナツは攻撃では脅威になっていたしアシストという結果も残しているが、パス成功率は63%しかなかったようだ。
ベレリンの貢献
逆にベレリンは右サイドでかなり印象的な数字を残している(Arseblogより)。
- 93.7% – パス成功率 (45 of 48)
- 80% – ボックス内へのパス成功率 (4 of 5)
- 90.5% – ファイナルサードでのパス成功率 (19 of 21)
- 0.52 – オフェンシヴ・ヴァリューを追加したパスでチーム1位 (コラシナツが2位で 0.24)
- 4 – ボールリカヴァリー
- 1 – タックル成功 (1/1)
彼のすべてのパスの40%はファイナルサードでのものだったとのこと。
3-4-3ではエジルのポジションがない問題
今回のバック3でもっとも注目されたのは、おそらくエジルを使わなかったことだ。このフォーメイションでエジルのポジションがないということ。
試合後の会見でエメリはそのことについて問われ、エジルをベンチに置いたのは「フィジカルでインテンシティの高い試合」が理由だと答えた。
パスに苦労したアーセナル
エジルがいなかった効果(それとミキタリアンのマイナス効果?)もあってか、アーセナルはとくに序盤、前にボールを運ぶことがなかなかできず、ビルドアップに大いに苦しんだ。あんなに相手にボールを奪われまくっていたらそりゃ何もできない。
- 9 – ミキタリアンがボールを失った数(4回ポゼッションを失い5回バッドタッチ)
- 25 – アーセナルがボールを失った数(10回ポゼッションを失い15回バッドタッチ)
- 43 – ミキタリアン、ジャカ、コラシナツ、イウォビのショートパスのミス合計
- 17.3% – 上記4人によるショートパスのミス割合。ふだんならだいたい10%程度
- 81% – アーセナルのパス成功率。イウォビ76.2%、ホールディング74.7%、オバメヤン61.9%、レノ42.9%
(Arseblogより)
アーセナルはボールを持ち試合をコントロールすることを好むチームなのでパスが生命線といえる。つまりこの試合のパス成功率はそれだけ試合を支配することに苦労したということを示している。
それでもエメリはエジルを外した。
最近のミキタリアンは目立ってパフォーマンスが落ちている印象で、今回は彼を使うなら同じポジションでラムジーを使ったほうがまだよかったという意見にはぼくは賛成だ。
しかし、試合を見ながらイウォビかミキタリアンのかわりにエジルを使えばいいという意見があっても、それには賛成できないなと思った。
この試合、中盤でボールを失うことが多かったため何度も前の選手が後ろに戻らねばならなかったが、イウォビもミキタリアンもかなり一所懸命に戻っていた。
ミッキーのあのボールを追いかける必死のランを観ていたら、とてもじゃないがエジルにマネはできないと思った。
エメリが要求するのは要するにそういうことだろう。
エメリはエジルにとても高く要求していると、何度もおおやけにそのようなコメントもしている。
そしてエジル自身も彼にしてはエメリの要求に応えようとかなりがんばっているところだ。しかし今回は使わなかった。
エジルがどんなにがんばっても「エジルにしては」という前提がつく。インテンシティとハードワークでは、エジルはイウォビとミキタリアンに勝てないのだ。
エジルを外す決断ができること
たとえ戦術的にそれが必要なことであったとしても、チーム一のビッグプレイヤーでもあり、最近はゲームキャプテンも任されるほど重要な選手であるエジルを外すことは、エメリでなくとも簡単な決断ではない。エジルはこの選択に不満だったに違いないのだからなおさらだ。
ヴェンゲルさんのアーセナルではエジルもサンチェスもほとんどアンタッチャブルな存在で、彼らは途中交代ですら不満を隠さなかったのだから、戦術に合う合わない以前にプライオリティの高い試合でベンチに置くことなど考えられなかった。
それがどうだろう。
エジルはNTをリタイヤしていてこの2週間は試合もなく、ほかのレギュラー選手たちに比べてむしろフィットネスは良好だったはずだ。
これは、エメリには、少なくともヴェンゲルさんにはできなかった芸当ができるということを示している。
ラカゼットとPEAのどちらかひとりを選びひとりを選ばないよりも、より影響力のあるエジルを外すことはボスにとってはもっとプレッシャーが強い。
これはいまエメリが、ひとりの選手にとらわれずにチームのマネジメントができている証拠だろう。
アーセナルにとってエジルはベンチに置いただけでメディアがざわついてしまうような選手だが、そんなの関係ねえ。
エジルのいないフォーメイションが選択できる
もうひとつ、今回のエジルを外すという決断で興味深い点があるとすれば、フォーメイションの自由度が高まるということではないだろうか。
よく考えるとナンセンスな話しかもしれないが、アーセナルにおいてはエジルの存在がチームプレイの自由度を奪ってきたという事実がある。
彼がいることで攻撃の威力は増すが、守備の安定が崩れてしまう。天才的な才能ながら、トータルでの能力バランスが悪い選手ゆえのジレンマ。
エメリはNo.10ポジションがある4-2-3-1を好むので大きな問題にはなっていないが、そのほかのオプションがあることにはエメリにとってまた別の意味があるだろう。
たとえば、3-4-3以上にエジルがいることで採用が制限されるフラット4-4-2もNo.10のいないシステムで、エジルがいると採用しにくいオプションだと思われてきた。今回のようにエジルを使わないという選択ができるのなら、きっとより多くのフォーメイションを試せることだろう。
もし、今後エメリの望む選手補強ができたとすると、エジルを使わないレギュラーフォーメイションができるかもしれない。
もちろんエジルを使わない4-2-3-1だってあるだろう。だってエメリはNo.10にハイプレスを主導させたくてラムジーをセンターで使っていたくらいなんだから。
エジルを現在のラムジーのように扱えばいいということではもちろんなくて、彼が適材なら使えばいいし、そうでなければ使わなければいい。
ビッグプレイヤーがいるチームではどこでも起きる悩みだろうが、タクティカル・ファーストが許されるならヘッドコーチ冥利に尽きるというものだろう。。
”セカンドハーフFC”から抜け出せない
今回46分に失点したのを見て笑ってしまった。
これで今季PLで「前半で先行できた試合が1試合たりとてない」の記録をまた伸ばしたということに。残り1分で。(カーディフも仲良く記録を伸ばしたようだ)
前半のパフォーマンスを改善することはエメリにとってこの試合のテーマのひとつだったはず。
これはもう呪いではないだろうか。
いっそのこと、このまま最後までいったらどうだろう。基本的に逆転劇はおもしろいしな。
試合については以上。
気づいたらなんか長文書いてた。のっけからアウェイのステディアムにトレイラのチャントがこだましたこととか、レノの活躍とかまだいろいろ書けそうだけど終わろう。いつも長くてごめんね。
ティエリ・アンリ・ニュース
Caen 0-1 Monaco: Radamel Falcao free-kick gives Thierry Henry first win as bossなんと! あの生ける伝説ことティエリ・アンリ氏率いるモナコがアンリの下で初勝利を飾った。
依然としてリーグアン19位ながらこれは大変にめでたい。
モナコの勝利は8月以来ということ。
前任のジャルディムの下で絶不調だったモナコを引き継いでアンリがマネージャーに就任してから6週間。ここまでD2 L4とまったく勝てずにいたというから、いかに苦しかったかがわかる。
評論するのと実際にチームを率いるのとではまったく違うとどこかで皮肉られていたが、これを機にうまくいくといいすな。
以上
つぎの試合はミッドウィークのELヴォルスクラ(A)。そして中2日でNLD(H)。勝ちたいね。
あと、月曜(今日か?)コシエルニがU-23の試合に出場予定。中継はなさそう。うまくいくといいなあ。COYコッシー。
監督は結果について大きな責任を負うので、エメリが思い切って自分のプランを実行しているのは良いことだと思います。
内容は良くないなりに勝てたのは非常に大きいかと。
レノとトレイラ、ホールディングがコンディションを維持している間にチームのコンディションがもっと上向くことを期待しています。
ボーンマスって見ててかなりおもしろいチームだと思いました。
若くてうまい選手もかなりいるし、あのウェールズとスコットランドの二人はかなりきれてたねぇ。ラムジーと交換もありと思うくらいに。
あと、おれたちのオーバがプレミアのトップスコアラーにおどりでてますよっ!だんごではありますが。実はかなりうれしぃ。それこそアンリ様以来なんじゃないかな。
よぉアレク、見てるか。おれたちのチームに今おまえがいたらどうだっただろうって時々思うよ。
グッドラック。
失点シーンで、誰かが守備をサボってたのは分かっていたのですが、それが誰かまでは分かっていませんでした。
コラシナツだったんですね。
あのシーン、ベジェリンが左のサポートに戻ってきたのには、私も「えぇ!? そんなアホな」と思っていました。
日本のアーセナルファンたちには、ベジェリンは評判がいまいち良くないですが、監督がエメリになってからのベジェリンは、なかなかいいと思うんですよね。
エジルを外す選択肢が出来ることで、戦術の自由度が上がるというのは賛成です。
彼は素晴らしい選手ですが、メッシのようなとんでもないクラッキでは無いので、必要に応じて外すべきです。
それが出来ているだけでも、エメリが来たことはアーセナルにとって良かったと思います。
ウルヴァーハンプトン戦では、レノと1対1シチュエーションはハイライトで見ても2回、同数or劣勢でのカウンターは複数回。
失点につながったのはジャカのミスだったけれど、複数失点で負けて当然の試合。
あのカウンターのやられようを見て2CB(4バック)は諦めたんじゃないかなあ。
ホールディングもムスタフィも屈強で速いFWにぶち抜かれるし。サイドからのクロスの対処は一向に改善されないし。
コラシナツはキツいですね。守備で競り合いになれば確かに強いけど競り合いに持っていける賢さや能力がない。アシストもコラシナツだから出来た感もなく。
ウイングやラムジーの後釜よりも左サイドバックの補強が1番必要だと感じます。