ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズについて
現在PLテーブルで6位。5位のマンUとはポインツで並んでおり、CLスポットが射程圏内に入っている。シーズン終了まで残り試合に向ける本気度は高い。
前述したように、現在のウォルヴズは、PLの20クラブのなかでどこよりも勢いがあり安定した結果を残しているチームである。リスタート後は相手にも恵まれたが、3戦で3勝。
今年に入ってからの12試合で敗けはたったふたつしかない(W6 D4 L2)。ワトフォード(A)とリヴァプール(H)のみ。
今シーズンのビッグ6との対戦では、シティ(H)とToT(A)で勝っている。
PLのなかでどこよりも作務衣の似合うマネージャーがいるチームという認識はあったが、ここまで強くなっているとは……。
省エネ? ウォルヴズのユニークなチームスタイル分析
さて今回は『Sky Sports』が彼らの特集記事をアップしていたので、そちらを元ネタにいつもよりややツッコんだ分析を。なかなかおもしろい記事である。
Wolves’ success since restart under Nuno Espirito Santo is down to style
ヌーノ・エスピリート・サントは、モダンゲイムの常識に逆行するようなスタイルでチームをプレイさせている。
<走らないチーム>
ウォルヴズは全然走らないチーム。チームとしての走行距離もスプリントも少ない。
ちょっと図が見にくいが以下を見ていただきたい。※以下すべてのデータは19/20シーズンここまでのもの
試合ごとの走行距離はほとんどのチームより少なく(強いチームが相手のときだけ相手より少し多いのは興味深い)、リスタート後の3試合では相手より合わせて14kmも少ないのだとか。それと、スプリンツでも似たような傾向が見られる。スプリンツの多いチームとの比較ではその数は-30本にも達する試合すらある。
彼らはとにかく走らない。無駄走りをしないといったほうが正しいか。
記事によれば、彼らは小さなスクワッドでELの試合もあり、省エネを強いられているという側面もあるようだが、これで現在の結果を出しているということは大変にプレイ効率がよく、また走行距離・スプリンツというスタッツがいかにミスリーディングかという説を裏付けてもいる。
<ボールを持たないアプローチ>
とにかく守備が組織だっていることが数字に如実にあらわれている。xGAはリーグで4位。マンシティやレスターよりも相手にチャンスをつくらせていないという固さ。
xGAに関しては、アーセナルは並以下のゴミクズである。ここまでの総失点ではアーセナルはウォルヴズよりも7点も多く失点している。ここを改善しないことには、チームとしての進歩はない。
ボールを持たず(相手に持たせて)、固く守り、決定的なチャンスをつくらせない。
Willy Boly、Conor Coady、Romain Saissのバック3が鉄壁で、2月にボリーがケガから復帰してからは、8試合で7つのクリンシート。どんだけ。
今回の試合に向けてウィリー・ボリーのコメント。「アーセナルはとてもいいチームだ。それはみんながわかること。しかし理論上ではぼくらがアーセナルを恐れる理由はない。彼らは土曜に来るが、彼らがとても簡単に勝てるとは思えないね」
<プレッシングでボールを奪わないチーム>
プレッシングは20チーム中で19位。ターンノーヴァーも同じく。彼らが相手ゴールの40m以内でボールを奪い返すことはめったにない。トップハーフのチームのなかではボールを奪い返すまでにもっとも時間がかかるチームという。
ボールがないときはとにかくオウンハーフに引いて守る。中途半端なプレッシングで無駄なエナジーを使わない。ここぞというときにそれを貯めておける。
こういったデータから浮かび上がるのは、彼らの割り切ったスタイルだろう。彼らはスプリントだとかハイプレッシングだとか、PLクラブ(とくにトップサイド)でも主流派であろういわゆるモダンフットボールの常識的なアプローチなど意に介さない。
ヌーノのひどく現実主義なアプローチは彼のコメントにもよくあらわれている。
ヌーノ:もしここが理想的な世界だったら、何でもに対応できるようチームをシェイプしなければならない。われわれがやりたいのは、試合のどの局面でも対応可能なものを築くことだ。ボールを持ったとき、ボールを持っていないとき。結果を求めなければならないとき、守らねばならないとき。
自分たちができること以外はやらないと。達観している。
上記のスタッツをよく見ると、じつはアーセナルはウォルヴズとそう遠くないポジションにいたりするが(たとえばプレスとターンノーヴァーはそれぞれ18位と16位)、彼らとの決定的な差は、おそらく彼らがそれを意図的にやっているのに対し、アーセナルは彼らのアプローチとはまったく正反対のプレイスタイルを志向しているにも関わらず、アウトプットはウォルヴズと大して違わないものになってしまっているということ。そこに大きな問題があるのだろう。
今シーズンの総得点はアーセナルが47、ウォルヴズが45ということで、攻撃に対する積極性などこれほどのプレイスタイルの差がありながら、たった2点しか違わない。つまり彼らはとんでもなくプレイの効率がいいのだ。
お互いがどんな性格のチームであれ、その完成度には現時点でかなり大きな開きがあることは、認めなければならないだろうと思う。
えらい長くなってしまった。別のエントリにすればよかった。
ジャカとルイスのコンディションが心配。
ルイスは足首を痛がる素振りを見せてたし、ジャカは足首のケガからの復帰をかなり繰り上げて活躍したが、前節の後半はかなりパフォーマンスが落ちた。
意外と守備の勝負になりそうな気もする。
どっちも少ないチャンスをモノにする切り札は持ってるが、たぶんアーセナルは試合を支配する力(主力のコンディションも含め)がない。
とはいえ33試合目に至ってまだこんなビッグゲームが残ってることを、サッカーの神様に感謝しないと。
今季はまだ終わってない。ありがてぇぜ!COYG!
毎試合、対戦相手がラスボスじゃないかと思うくらい、強そうですね。
ベギラマ覚えたてくらいのアーセナルじゃあ、ちょっとしんどそう。
こういう試合で勝てるなら、それこそスーパーな個の力(オーバ、エジル、ぺぺ、ジャカ砲)じゃなかろうかと思うんですがが。
ジューラブシアンのwikiを読んでたら、彼は子供の頃からグーナーで、デイン時代かたアーセナルとは深い関係にあるのだとか…。
興味深いです。