アーセナルのリクルーティングにおける長期プラン
昨日エントリにはまた書き忘れてしまったが、サンレヒが来てからの大きな人事にはユーススカウト長のスティーヴ・モロウの解雇というものもあった。
意志決定プロセスにおいて、アカデミー長のメルテザッカーと彼のふたりが競合するということでモロウは解任されたという件。以前にこのブログでもオセイ・チュチュのローンについてのエントリで少し触れたことがある。
彼もまた11年もアーセナルで働き、一時はテクニカル・ダイレクター候補でもあったのだから、間違いなくアーセナルの主要スタッフのひとりだった。
このときは、ユースシステムの改革という観点で見ていたが、昨日書いたように、ミズリンタット、ローゼンフェルト、カジガオとこのモロウの解任劇と、より長い期間とより大きな絵で見るに、やはりサンレヒは現在のメンバーを中心にしたリクルーティングストラクチャの再構築を図っていることは明白に思える。
つぎつぎとリクルーティングのキーマンがいなくなっており、サンレヒやエドゥといった現在のメンバーが動きやすくなっている。
今回の件もそれをさらに強く推し進めたものだということが見えてくる。
これがいいことか悪いことかはこれからわかる。
選手たちの疑念
しかし、そのような長期プランがありながら、ボードメンバーは社内で、あるいは選手たちにその説明をしていないようだ。
Arsenal players (well most of them) took a pay cut to stop lower paid staff having to be made redundant. As our back page says this morning, some of those players (who were told after staff had been addressed yesterday afternoon) are understandably upset. pic.twitter.com/8ErhG84nSS
— John Cross (@johncrossmirror) August 6, 2020
昨日のエントリにオーンステインのtweetを追記したように、アーセナルの選手たちが4月にクラブの要求に応じて12.5%のペイカットに応じたのは、クラブが雇用を守ることをサポートする意味合いもあったということで、その数ヶ月後、その約束を反故にされたことに彼らは怒っている。あの声明は彼らには寝耳に水だったということである。
選手たちのなかでももっとも大きな声を上げているのがグラニト・ジャカで、チームメイツもこれに同調していると『Daily Mail』が伝えている。
サンレヒがいまのポジションについてからは、毎月複数回の社内ミーティングを行っているということも以前に伝えられていて、社員たちも透明性あるクラブ運営を歓迎しているという話もあった。
なぜこういったことが起きるのか。
選手たちもよく知る既存スタッフにも影響が及ぶ、センシティヴ案件だったからだろうか。
しかし、突然のそれが選手や社内スタッフたちの反感を買わないとは、さすがに想像しなかったはずもないように思う。
しかしいずれにせよクラブは財政難で人員整理が必須で、このようなリクルーティングの長期プランもあり、このタイミングで彼らを犠牲にすることはやむを得なかった。
そんなところ?
オバメヤンの契約延長発表でうやむやを画策?
かなり笑えるのが、アーセナルはこの強引な人事が巻き起こしているファン世論をもみ消すために、オバメヤンの契約延長の発表をするのではないかという説。
オバメヤンの契約延長については、昨日『Telegraph』が契約延長間近とすっぱ抜いた。
Exclusive: Pierre-Emerick Aubameyang close to signing new three-year Arsenal deal | @Matt_Law_DT https://t.co/mAdbinfauq
— Telegraph Football (@TeleFootball) August 6, 2020
その後には、複数のメディアが口頭で合意したなど同様にオバメヤンが新契約を受け入れると伝えており、どうもほんとうにオバメヤンはクラブに残るらしい。
興味深いのはアーセナルのオフィシャルtwitterで、8/5に例の声明を出してから昨日ひとつメンバーシップに関するtweetをしただけで、ほとんど沈黙してしまっているということだ。あの饒舌なtwetterアカウントが。まさにひっそり閑。
オバメヤンの契約延長が発表されたら、マルチネリやサカの比ではなく盛り上がるのは間違いない。これは嵐の前の静けさに思える。
そしてみんなきっと55人解雇のことは忘れるのである(笑い)。ラウルの思い通りである。
まとめ
昨日はだいぶサンレヒに否定的に書いてしまった部分もあったが、一般従業員を解雇するのとスペシャリストを解雇するのではちょっと印象が違うかもしれない。アーセナルで働いていた敏腕スカウトたちなら、たとえAFCを辞めても引く手あまただろうとも思う。少なくともただのオフィスワーカーよりは、つぎの仕事は見つけやすいのでは。
選手たちも怒っているというが、彼らが守りたい雇用というのはおそらく一般従業員の生活であって、今回はそういう意味で「雇用が脅かされた」というのとはまたちょっとニュアンスが違うようにも思える。もちろん全員がスペシャリストなわけではないだろうし、なかには転職市場でもっと無力な人材も含まれるだろうから、そのひとたちについては全力で守らねばならないが。
ということで、まとめとしては、スカウトメンをばっさり切るというアーセナル(サンレヒ)のやり方が吉と出るか凶と出るか、あらためて注視していかねばならなくなった。
そしてこれは思いつきでも場当たり的でもなく、おそらくは長期プランのなかに含まれたプロセスでもあるということ。一連の人事を観察するに、そのように見える。
アーセナルはリクルーティングにおいて、今後サンレヒやエドゥのコネクション(エイジェントネットワーク)を最大限に活用し、一方でグローバルの選手スカウティングは最低限の労力(マンパワー)で行う。ジューラブシアンがそこに食い込みすぎているのは懸案だが、まあ今後を見ていくしかない。
今回のアーセナルのスカウトメンを軒並みファイヤするという決断には、ヨーロッパのほかのクラブも驚いているというので、それだけ大胆な決断だったということなんだろう。
そして、いまは賛否両論あるに違いないが、もしかしたらこれがビッグクラブのトレンドになる可能性だってないとは云えない。人間が機械にとって替わられるみたいな話で夢はないが、これもまたNEWノーマルと云われればそうかと思う。NEWノーマルとは受け入れたくはないがやむを得ないことだろう。小さなクラブはもうずっと前からやっていることでもあるだろうし
これからどうなるか見てみよう。
オバメヤンの契約延長の発表が今日明日あたりほんとに来たら笑っちゃうね。
おわる
更新おつかれさまです。
とても分かりやすい内容でした。
ありがとうございます。
アーセナルのスタッフはそんなに多かったんですね。
毎回示唆に富んだ記事楽しみにしています。
サンレヒとエドゥが意思決定をし易くなるコネクション優先型はかなり懸念ありますが、どうなるか見てみるしかないですね。
それよりも、社内で困惑の声が上がっていたりする事実もあり、加えて選手、アルテタ(選手のペイカットを説得したので結果顔に泥を塗られた形)が納得して、一枚岩で前に進んでくれるのか、そこが最大の懸念です…
いずれにせよフロントは今回の件について説明責任があると思います
chanさんの解説だけでもだいぶスッキリするものを、何でクラブがちゃんと説明しないのか。
筋が通った話ならそう言えば良いものを、何で隠そうとするのか。
結局撤回したトッテナムやリバプールの解雇の件とは、違う種類の不明朗さを感じますな。
現場はちゃんとやってるんだから、よけいに後ろがしっかりしてもらわないと困りますがなあ。
情報を載せて頂きありがとうございます。
ただソースも何の値かもはっきりしていないと信ぴょう性がないのと
クラブごとの人数の比較にそこまで意味があるのか疑問に思いました。
でもこういう情報でいろいろ妄想するのは楽しいですよね。
シティはシティ本体とシティ・グループで機能わけてるからスタッフの人数を比べるのは難しいかな。
スカウトを整理するのは賛成だけど、取捨選択している感が少ない。。
今の体制だって長続きする確証ないし、、 その後焼け野原でしたは困るのにな。。。
55人解雇にリクルート部門のスカウトは含まれてないみたいで、55人は一般従業員みたいですよ。なので、55人解雇とスカウト解雇は、コスト削減と組織再編で別問題だと思われます。
構造や体制が変わるのは必然的だけどそれがちゃんと時代にあったものだと信じたいですね。どの組織でも同じ体制が続くと非科学的で非効率な暗黙の了解のような謎ルールが存在したりするものですが、それを解消する為の人員整理だと信じたいなと