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ベルント・レノをアップグレイドする? アーセナルはなぜアーロン・ラムズデイルを狙うのか

やあどうも。

昨日のエントリでは、アーセナルがバックからのプレイやボールプログレッションを改善するためにCBのベン・ホワイトに巨額を投じるなら、同時にGKをアップグレイドしようとしていなければおかしいと書いた。

アルテタがバックから始まるビルドアッププレイを志向していることは明らかで、であれば、その要求に完全にマッチしているとは思えないベルント・レノこそ、アップグレイドしなければならないはずだと。

では、もしレノをアップグレイドするなら、どんなGKがふさわしいのか。

今回は、データ(スタッツ)を使ってざっくり調べてみたので、それをシェアしたい。

いまアーセナルが交渉中と話題になっている、シェフUのGKアーロン・ラムズデイルについても少しチェックしてみた。



GKを評価するために使うスタッツについて

本題に入る前に。

今回利用するGK用のスタッツについて説明しておこう。

ひとつはショットセイヴ。

今回は「PostShot xGD(被xGと失点の差)」を使う。失点の確からしさ(被xG)に対して、GKが実際の失点をどれほど防いだか。ショットストップというGKにとって本質的なスキルを評価するには、非常に有用なスタットだと思う。xGでチャンスの質も含まれるため、単純な「ショットセイヴ%」などよりももっと精度の高い比較ができる。本質的なGKのスキルという意味では、クロスボールのストップも確認しよう。

もうひとつは「ロングパス成功率%」。アルテタのチームにとって、バックの選手のパス、とくに長いレンジのパスの正確性は非常に重要で、レノに不満な点もずばりそれだった。GKの性能を比べるのにロングパスを優先するのは少しイレギュラーだろうが、今回のテーマはレノのアップグレイドなので、GKにとって最重要スキルであるショットセイヴとともに、これを重視しなければならない。

それとスウィーパーのスタッツも。今回利用するFBrefではそれも用意されているので利用しない手はない。GKがゴールからどれほど離れてディフェンシヴアクションを行ったかというスタッツを使う。ハイラインでプレイするチームなら、当然DFのうしろの広大なスペイスをカヴァせねばならず、アーセナルのようなボールを持って攻めたいチームにとって非常に重要な指標になる。ちなみにレノはアーセナルに来る前の評判では、いわゆる「スウィーパーキーパー」タイプだと云われていた。

今回はこれらのデータを中心に検討する。

※追記(7/1)

PostShotxGについてもう少し説明。通称PSxGと単なるxGとの違いはなにか。ここにFBrefのスタット定義がある。それによれば、xGがシューターがショットを放った瞬間でカウントされ、どんなボールも計測の対象になるのに対し、PSxGは、シューターがショットを放ったあとカウントされ、SoT(枠内ショット)のみで計測される。つまり枠外ショットはゼロカウント。基本的にGKのショットストップ能力をより精密に測るために利用される。通常のPSxGはSoTのみがカウントされるので、xGよりも高い値になる。

ディスクレイマー

レノのアップグレイドと書いたが、ぼく個人は、いまのベルント・レノにそこまで不満はない。

先日もこのブログのエントリで書いたように、彼はこの夏に残り契約2年になるので、本来は契約延長か売却かを決めなければならないタイミングだが、もしもっといいGKが見つからなかったり、ほかに優先しなければならないことがあるのならば、判断保留でNo.1としてこのままキープし、来夏まで待つのもアリだと思っている。※本人が移籍希望なら話は別。そして移籍希望とも云われている。

来年に残り契約1年になれば、いま売るよりも価値は下がるかもしれないが、あせって中途半端なリプレイスをするくらいならそのほうがまだマシ、というのが私見である。アップグレイドどころかダウングレイドするようなことがあれば、目も当てられないが、そういうことが絶対ないとは云えない。

思えば、20-21シーズンもレノに救われた試合は何度もあった。「レノFC」と試合レヴューエントリで冗談めかして書いたりしてきたが、実際彼のおかげで救われた試合もいくつもあったろう。

ただ、CBがロブホやサリバではダメというレヴェルで補強をするのであれば、当然レノの配球に満足していてはおかしいはずで、今年か来年かはともかく、確実にアップグレイドをすることになるはず。したがって契約延長もないだろうと思う。

 

では本題へ。Here we go.

PLのなかのベルント・レノ。ロングパスに難あり

データを使ってひろくGKを検討するにあたり、まずは基準になるわがファーストGKの現在位置について知っておきたい。彼のPLでのポジションを確認していこう。

今回もまたデータは、FBref.comのお世話になる。こういう記事を書くときはほんとうに助かる。

以下データは、2020-2021 Premier League Advanced Goalkeeper Statsより。20-21シーズンのPLでプレイした42人のGKたちを比較できる(※以下データはプレイタイムの多い21人に限定してある)。詳しく確認したいひとはリンク先でいろいろ比較できるのでご利用あれ。

そして以下が、PLのGK21人中のレノの成績である。※40ヤーズ以上のパスというのは、ピッチを横に3分割したときのミドルサードより遠くへのパス。

  • ショットストップ=PostShot xGD(p90)  +0.12 10位(アレオラ・エミマル・アリソン)
  • ロングパス成功率(40ヤーズ以上のパス) 32.5% 20位(メンディ・アリソン・エデルソン)
  • クロスボールストップ成功率 8.4% 9位(ポープ・メリエ・アリソン)
  • スウィーパー(ディフェンシヴアクションのゴールからの平均距離) 9位(アリソン・ポープ・エデルソン)

なお、ランクのうしろの()内は各スタットのベスト3の名前。アリソンとエデルソンばかりである。

レノはPLのなかでは概ね平均的。よくもなく、悪くもなく。

ショットストップは正直もっといいと思っていたが、PLのGKのなかではとても優れているということもない(レノの名誉のために云えば、いちおうプラスである)。

それと、やはりロングパスの成功率が32.5%(成功は3回に1回未満)とこのなかでほぼワーストという結果に。アーセナルの試合を観ていても、レノからのロングボールがなかなか味方に通らないことにフラストレイションを貯めることは多かったが、そのとおりの数字になっていた。

アルテタが志向するフットボールを思えば、ショットストップなど基本的なスキルはもちろん、ロングボールの精度が高く、ハイラインの背後をカヴァできるスウィーパーキーパーであるのが理想像のはず。データ的にもレノはアルテタの理想のチームにとてもジャストフィットしているようには見えず。むしろアルテタがなぜレノのリプレイスにこだわらないか、謎に思えてくる。

ヨーロピアン5メジャーリーグスのトップGKたち(20-21シーズン)

ここからは、5メジャーリーグスのGKたちを20-21シーズンのデータでまとめてランキングしてみた。トップクオリティのGKたちを見れば、アーセナル(アルテタ)がほしいと思うようなGKが見えてくるかもしれない。

データはここから。2020-2021 Big 5 European Leagues Advanced Goalkeeper Stats

イングランド、フランス、ドイツ、イタリー、スペインの各トップリーグの計109人のGKを比較する。

テーマごとにいこう。すべてトップ25まで。

ショットストップ PostShot xGD(p90)

PlayerClubPSxG+/-
1Jan OblakAtlético Madrid0.26
2Alphonse   AreolaFulham0.21
3Emiliano   MartínezAston Villa0.2
4Sergio   HerreraOsasuna0.19
5AlissonLiverpool0.18
6Robert   SánchezBrighton0.18
7Claudio   BravoBetis0.16
8Mattia   PerinGenoa0.16
9Illan   MeslierLeeds United0.15
10Nick PopeBurnley0.15
11Keylor   NavasParis S-G0.14
12Łukasz   FabiańskiWest Ham0.14
13Anthony   RacioppiDijon0.14
14Hugo LlorisTottenham0.13
15Mike   MaignanLille0.13
16Sam   JohnstoneWest Brom0.12
17Bernd LenoArsenal0.12
18Martin   DúbravkaNewcastle Utd0.11
19Alexandre   OukidjaMetz0.1
20Florian   MüllerFreiburg0.1
21Jonas OmlinMontpellier0.08
22Juan MussoUdinese0.08
23Romain   SalinRennes0.08
24Manuel   NeuerBayern Munich0.07
25David   OspinaNapoli0.07

PSxGの値はすべてプラス。

トップは納得のオブラク。わりとダントツである。名実ともに世界最高GKのひとり。そして3位はついこないだまでガナーだったエミマル。

そしてPLだけなら平均的だと思っていたレノが、トップ5リーグの109人中なんと17位。

25人中で、PLクラブの選手が10人ということは、つまり、PLにはかなりショットストップで優秀なGKが集まっているということだった。

それとレノを含めると、エミマル、ファビアンスキ、オスピナと元アーセナルが4人もいるという事実。。

クロスボールストップ成功率

PlayerClubCross Stop%
1Nick PopeBurnley12.9
2Alexandre   OukidjaMetz11.8
3Yassine   BounouSevilla11.3
4Marc-André ter StegenBarcelona10.9
5Alfred   GomisRennes10.8
6Illan   MeslierLeeds United10.6
7Łukasz   SkorupskiBologna10.3
8Lukáš   HrádeckýLeverkusen10.1
9AlissonLiverpool10.1
10Alex MeretNapoli10.1
11Jeremías   LedesmaCádiz9.9
12Alphonse   AreolaFulham9.8
13Sergio   AsenjoVillarreal9.8
14Alessio   CragnoCagliari9.7
15David SoriaGetafe9.6
16Lorenzo   MontipòBenevento9.6
17Juan MussoUdinese9.6
18Aaron   RamsdaleSheffield Utd9.5
19Robin   ZentnerMainz 059.5
20Ivan   ProvedelSpezia9.5
21Fernando   PachecoAlavés9.4
22David   OspinaNapoli9.4
23Thibaut   CourtoisReal Madrid9.4
24Karl DarlowNewcastle Utd9.2
25Alex   McCarthySouthampton9.2

ペナルティエリアにボールが放り込まれたときに、GKがどれだけストップしているか。

トップはニック・ポープ。このひともGKのスタッツ比較をするときはいつも上位の常連という印象がある。

アーセナルが狙うアーロン・ラムズデイルは18位となかなか優秀。

またオスピナ。

レノは8.4%で77位。

ロングパス成功率(40ヤーズ以上のパス)

PlayerClubPass Complete%
40yards+
1Manuel   NeuerBayern Munich61.1
2Wojciech   SzczęsnyJuventus58.1
3Marc-André ter StegenBarcelona57.3
4Keylor   NavasParis S-G55.3
5Luigi SepeParma55.1
6Alex MeretNapoli53.8
7Anthony   LopesLyon52.6
8Marwin HitzDortmund51.9
9Fernando   PachecoAlavés51.2
10Pepe ReinaLazio51.2
11Édgar BadíaElche50.6
12Jaume   DoménechValencia50.3
13Péter   GulácsiRB Leipzig49.8
14Gautier   LarsonneurBrest48.6
15Alexander   SchwolowHertha BSC48.5
16Samir   HandanovićInter48.3
17Edouard   MendyChelsea47.5
18Yassine   BounouSevilla47.5
19Eiji   KawashimaStrasbourg47.3
20David   OspinaNapoli47.1
21Stefan   OrtegaArminia47
22Antonio   MiranteRoma47
23Sergio   HerreraOsasuna46.5
24Jiří   PavlenkaWerder Bremen46.4
25Jonas OmlinMontpellier46.3

トップはノイヤー。こちらもワールズベストのひとり。おれたちのヴォイチェフが2位。そしてまたオスピナ。エイジ・カワシマもランクイン。

トップ4がすべてメガクラブのGKというのは興味深い。

こうして見るとロングパスを50%以上(2回に1回以上)成功させるGKというのは、トップリーグスのなかでも上位10%くらいしかいないレアさだということがわかる。

Squawkaによると、アンドレ・オナーナの20-21シーズンのロングパス成功率は52.57%(※Squawkaのロングパスの定義は不明)。しっかりトップ10に入るクオリティだ。

ショットストップと比べると、PLでプレイするGKは少なくなっている(トップ25でPLのGKは、17位チェルシーのメンディのみ)。PLはロングパスが通りにくいリーグなのか。

レノはなんと101位。PLでもワーストに近かったが、5メジャーリーグスのGKのなかでもほとんどワーストに近い。

ディフェンシヴアクションのゴールからの平均距離(スウィーパーキーパー)

PlayerClubAvgDist
1Péter   GulácsiRB Leipzig18.7
2Benjamin   LecomteMonaco18.1
3Romain   SalinRennes18
4AlissonLiverpool17.9
5Marc-André ter StegenBarcelona17.1
6Anthony   LopesLyon17.1
7David SoriaGetafe17
8Marco   SportielloAtalanta16.9
9Marko   DmitrovićEibar16.8
10Alexandre   OukidjaMetz16.7
11Nick PopeBurnley16.5
12Manuel   NeuerBayern Munich16.5
13Ivan   ProvedelSpezia16.3
14Pau LópezRoma16.3
15Joel RoblesBetis16.3
16Álvaro   FernándezHuesca16.3
17Pierluigi   GolliniAtalanta16.3
18Lukáš   HrádeckýLeverkusen16.2
19Sergio   HerreraOsasuna16.2
20Rui SilvaGranada16.2
21Andrea   ConsigliSassuolo15.9
22Antonio   MiranteRoma15.8
23Koen   CasteelsWolfsburg15.7
24EdersonManchester City15.7
25Álex RemiroReal Sociedad15.7

値はヤーズ。

レノは14.5で55位。

 

誰がいいか見えてきただろうか。どのスタットでも優秀というGKはなかなかいないというのも興味深い事実だと思う。

ほんとうは、5メジャーリーグスだけでなく、オランダリーグやポルトガルリーグのようなリーグとも合わせて比較したかったのだが、FBrefではそれらのリーグの、今回使ったようなGKのアドヴァンストスタッツは提供されておらず、残念ながら比較はできなかった。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

2 Comments on “ベルント・レノをアップグレイドする? アーセナルはなぜアーロン・ラムズデイルを狙うのか

  1. ユーロはハイライトしか見ない今日この頃。お疲れ様です。

    ロングパスについては、レノの能力が低いのは勿論ですが、
    受け手(ターゲット)の問題もあると思います。
    ジルーがいた頃は、彼が何とかしてくれました。
    今はラカが頑張ってはいますが、サイズの違いは如何ともしがたく・・・

    ズラタンでも獲得しますか?(笑)

  2. ラムズデイルの良さは。。。僕もあまり良く分からないですナw。
    言えば最近ビルドアップでよく使うパスはGK→FBで、プレスの頭上を越しさえすれば短くてもいい。「40ヤード以上」のくくりでデータを出すと悪いのかも。

    レノもねえ。。本来ロングレンジよりミドルレンジが得意なはずなので、あんなにDFラインがガチャガチャしなければFBへのパスはもっと通ると思うんだけども。

    そういえば僕はオナーナ推しだけど不安も1つ。
    ハイボールの処理でびっくりするような判断ミスが多い。PLは接触プレーにファウルを取らないから不確定要素が多く、ハイボールの判断が悪いのは心配だ。

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