こんにちは。雨。
さて、サンパウロの19才ウィンガー、マルキーニョス(Marquinhos)の件。ざわついていますな。
エドゥが主導したというマルキーニョスのアーセナル移籍は、信頼できるニュースとしてもうしばらく前から報じられていて(移籍金は€3-3.5M)、アーセナルにとっては、それが夏の最初のサインになりそうだともっぱらの評判だった。
PL最終戦のエヴァトンの試合前会見でも、彼の獲得について訊かれたアルテタは「(取引について)まだやることがある」と述べ、報道は否定しなかった。
ここ数日では、すでにクラブのメディカルも済んでいるという話もあったので、そろそろ発表されるものかと思っていたら。
ブラジルでの報道によれば、じつはマルキーニョスは事前にウォルヴズとプリコントラクトを結んでいたということで、これについてウォルヴズは非常に腹を立てていて、ブラジルで法的に訴える準備をしているのだという。なんと。
くわしく観てゆこう。
「マルキーニョスのアーセナル移籍について、法的手段を取る」by ウォルヴズ
この話の発端は、ブラジルのジャーナリストJorge NicolaのYouTube動画。アップロードは5月26日づけ。こちらのサイトにあるトランスクリプトを拝借ありがとう。
Jorge Nicola:ウォルヴズがマルキーニョスとプリコントラクトがあったとクレイムをつけている。アーセナルへ移籍すれば、彼はウォルヴァーハンプトンとの合意を破棄することになる。
実際にブラジルの弁護士ファームがすでに苦情をまとめていて、サンパウロのストライカーに対し正式な手続きに入っている。なお、サンパウロはこのプロセスには関与しておらず、彼らに対してはなんの制裁も罰もない可能性がある。
わたしはサンパウロのマネジャーに、その合意が破棄される可能性があるのかどうか尋ねたが、彼はわたしになにも問題はないから安心しろと云っていた。アーセナルはまだ支払いも済んでいないが、この合意が成立することは法的にも保証されているのだ……と。
マルキーニョスはすでにメディカル検査に進んでいて、あと数日でロンドンクラブで観られるはず。
ウォルヴズは、このためにブラジルであらたに弁護士を雇ったのだとか。
じつはマルキーニョスとサンパウロの契約は2022夏までだった?
このストーリーにはややこしい話がくっついている。
というのは、マルキーニョスは2019年、彼がまだ16才だったころに、サンパウロと5年契約を結んでいるが(2024年までの契約)、じつはFIFAのルールでは未成年との契約の上限は「3年」と決まっていて、そうなれば2022年、つまり彼はこの夏にフリーエイジェントになるはずだったという。
ウォルヴズはこの夏にマルキーニョスをフリーエイジェントで獲得する約束を選手サイドとしていた。
アーセナルは残り契約2年になるマルキーニョスを€3Mのカットプライスでサンパウロから獲得した。
どういうことなのですか?
憶測
エンケティアの契約延長ニュースをブレイキングして名を上げたサミ・モクベル(Daily Mail)によると、マルキーニョスのアーセナル行きは、そもそもサンパウロからのオファーだったと思われているようだ。
つまり、マルキーニョスをフリーエイジェントで手放すことになる前に(クラブ在籍中に)、彼らは買い手を探していて、懇意のエドゥに相談。サンパウロとの契約中に移籍合意となった。みたいなことかな?
ちなみにサンパウロとマルキーニョスの契約が終わるのは、7月12日だったという。
サンパウロが、選手サイドとウォルヴズのプリコントラクトを把握していたかどうかは定かではないが、まあ当然把握はしていただろう。状況からしてもそう思われる。
だからこそ急いで、安価であっても、アーセナル移籍に急いだ。
当初のアーセナルへの移籍報道では、マルキーニョスのサンパウロとの契約は2024年までであり、アーセナルとしてはまだ複数年契約があるヤングプロスペクトを安価に買ったという論調だったが、こうなると、やはりアーセナルもこの夏で選手がフリーエイジェントになることはわかっていたんじゃないだろうか。
ファンのなかに、アーセナルはあと少しでフリーエイジェントになるとわかっている選手に€3Mでも払うわけがない(だからFIFAのルール云々も知らなかった)、と云っているひとも見かけたが、むしろエドゥはサンパウロの状況も理解したうえでの今回の動きだと感じる。
これから獲得しようという選手の契約状況について、AFCの優秀なリーガルチームが気づかないはずもないだろうし、そもそもサンパウロは実情をぶっちゃけて相談したかもしれない。「助けてエドゥ」と。
そのかわりアーセナルは割安で選手が手に入るし、サンパウロとしては選手をフリーで失わずに済む。Win-win。
割りを食ったのは、ウォルヴズ。アーセナルが動く前から選手サイドとプリコントラクトを結んでいたというのだから、選手には土壇場で裏切られた思いだろう。
マルキーニョス本人もウォルヴズより、アーセナル移籍を望んでいるのだとか。。逆の立場なら怒り狂ってるな(笑い)。
ウォルヴズのブラジルでの訴訟は、果たしてうまくいくだろうか。選手サイドとどのような内容の取り決めだったのかが問題になるだろうが、こうして全体を観るに、ウォルヴズには不利な状況に思われる。サンパウロは契約期間内に選手を売ったのだし、アーセナルはもちろん買っただけ。ウォルヴズとのプリコントラクトが、選手のフリーエイジェント化(契約切れ)がトリガーなら、その前にことは起きてしまった。
それにアーセナルは選手サイドとも合意するうえでは、そのライヴァルクラブとかわしたプリコントラクトが障害になるかどうか、しっかり調査もしているはず。問題がないと判断したうえで進めている案件に違いなく。
まあ、どうなるか観てみよう。
その結果、アーセナルは最悪、マルキーニョスを獲得できないかもしれないが、いま彼を逃したところで大打撃というわけでもない。
ここではくわしくは紹介しないが、この移籍が最初に話題になったとき、YouTubeにアップされている彼のハイライト動画を観たアーセナルのファンの多くは盛り下がった(笑い)。興味があるひとは探してみよう。ハイライト動画で選手を判断しちゃいけないのはわかってんだけども、ハイライトなのに……という。もちろん、じつはマルキーニョスがかなり優秀だったら、それはそれでよいことだ。金の卵。
だから、この案件は、どちらかといえば、エドゥとサンパウロの関係ありきの契約という気がしないでもない。エドゥは今回サンパウロに恩を売ったかたちに見える。
それにしても南米選手の取引は非常にめんどうなことが多いですな。肖像権とか、第三者がもってる権利とか。今回のことも。
それと、エドゥやラウル・サンレヒのような、ああいういわゆる「コネ主導」のリクルートメントは、取引にいつもどこか秘密が隠れているような印象がある。明快な取引に観えて、そのうしろでは、関係者で利益を分け合うみたいな、密室政治。
結果オーライならいんだけど。
おわる