ここからが本題。今回も「Edu’s BBQシリーズ」をネタ元に。「アーセナルのハイライン解説。ユナイテッドのカウンターではどこを間違えたのか。アルテタはそれをどう解決できるか」。これが投稿されたのはPLマンUの数日後。
オーサーにナフリスペクト。
Edu’s BBQ: An exploration of Arsenal’s high line, what went wrong against United on the counter, and how Arteta might fix it
https://www.reddit.com/r/Gunners/comments/x8yweq/edus_bbq_an_exploration_of_arsenals_high_line/
アーセナルのハイライン
アーセナルはどれほどハイラインか
昨シーズンのデータを再掲。アーセナルは21%。
アーセナルはリーグ6位。昨シーズンのアーセナルは、PLのなかでも特別ハイラインのチームというわけでもなかった。
シティとチェルシーがそれぞれ突出している。そしてリヴァプールとブライトン(ブライトンすげえ)。トッナムからやや離れてアーセナル。ん? トッナム?
強いチームはだいたいハイライン。
今シーズンの数字が観たかったが、それはないようだ。
アーセナルのハイプレスの進歩
ハイプレッシングの強度を示すPPDA(Pass Per Defensive Actions)で、アーセナルは今シーズンここまで7試合、昨シーズンよりだいぶハイプレッシングを向上させている。
PPDA 8.48という値は、昨シーズンのトップであるリヴァプールよりもすこしいい数字ですらある。
※アーセナルはそれでもリーグ4位で、上位3チームスはさらに優秀。これは、もしかしたらシーズン序盤で選手の疲労がないからインテンスな守備ができているのかと思ったが、上にあるリーグ平均の数字を観ると全体としては昨シーズンとほとんど変わっていない。なので、単純に今シーズンは、よりインテンスなハイプレスを志向するチームが増えたという理解でよいのかもしれない。
マンUでのアーセナルのあやまち
6連勝を阻止された9月OTでのマンU戦。あの試合こそ、ハイラインのチームがカウンターアタックのチームにやられたという印象が強い。
まず、マンUの2点めのシーン。
パスを受けたエリクセンがワンタッチでブルーノ・フェルナンデスへ。このとき、ジンチェンコ、ロコンガ、ジャカは高い位置にいる。
ブルーノ・フェルナンデスは、ブーツのアウトでラシュフォードへスルーボール。ラシュフォードには、ホワイトとサリバがついていた、ガブリエルも追いかける。
ラシュフォードが抜け出し、ラムズデイルと1 v 1からゴール。
※スルーボールが出た時点で並んでいたはずのサリバがラシュフォードにかなり遅れているのは、背後にスルーボールを出された彼が半身の体勢を逆にされたからだった。
このときのアーセナルは、なにが悪かったか。
- ポゼッションを悪いかたちで失った:試合のなかではかなりよく観られる光景。ロコンガがジェズースに出したパスのタイミングとアングルがすこしまずかった。ユナイテッドはボールを奪うとすぐに展開できた
- カウンタープレッシングがはまらず:ジンチェンコとオーデガードがすぐにボールを奪い返そうとするが、ならず
- ふたつのワールドクラスのパスが決まった:エリクセンとブルーノ・フェルナンデス
- ホワイトとサリーバがラシュフォードにオフサイドトラップをしかけなかった:ラシュフォードと並走することを選んだ
- ホワイトがラシュフォードをつぶせなかった:ホワイトは遅くないが、ラシュフォードが速かった
- ラムズデイルが1 v 1を止められず:これは単純な話
※この6つのポインツに関しては、アーセナルがどれかひとつでも成功すれば防げた失点だったというのはたしかだと、オーサーもコメントしている。ワールドクラスのパスが2本連続で決まるみたいなことは稀であり、アーセナルは実際はそこまで崩されたわけでもない。
オフサイドトラップをやるVVDの例
なかでもハイラインにとって重要なのは、オフサイドトラップ。
チェルシー戦のVVDの例。
VVDは、この場面でプリシッチを観て、すでにパスを予測している。
すると、VVDは身体を反転。できるだけ身体を小さく折りたたんで……
ハヴァーツはオフサイドに。
マンUの3点めのシーンでは、2点めより問題がはっきりしている。エリクセンが簡単にDFラインを突破。
アーセナルのDFラインはほとんどハーフウェイライン。全体が高い。
ハイラインを成功させるディーテイルズ:アーセナルがハイライン戦術を成功させるには
ハイライン戦術自体が悪いわけではない。ワールズベストのチームスもそれを使っているし、高いDFラインはカウンターアタックを受けやすいわけですらない。
ハイラインが成功するかしないかその違いは、いくつかのディーテイルにある。
( )は、現状のアーセナルにとってのそれぞれの課題の度合い。
1 ポゼッションキープ(問題なし)
当然ながら、ボールを持っているあいだはカウンターは受けない。
アーセナルは、実際これを非常にうまくやっている。ポゼッションはリーグ4位(57%)。パスとパス成功率のどちらもリーグ5位以内にいる。
2 即座に効果的カウンタープレッシング(取り組み中)
クロップは云った「ラストラインが問題なのではない。フロントがどうするかだ」。
いまアーセナルでは、疲れ知らずのフロントラインがいて、プレッシングの才能もワークレイトもある。が、チームとしては進歩の余地がある。チャレンジインテンシティでは、アーセナルはリーグ9位。
3 リスクをかけるかかけないか、ラインを見極められる大胆でスマートなCB(取り組み中)
CBはスピードが要求されるだけでなく、判断力、技術スキルも必要。
現時点でアーセナルはオフサイドに関してはミッドテーブル。もうちょっとトレイニングや覚悟が必要かもしれない。協調も。
マンUでの3点めでは、ホワイトはサリバがオフサイドトラップをしかけるのかどうか、確認しようとしていた。まずはそこを進歩させること。
4 スピードとワークレイト(取り組み中)
クロップのアシスタント「ハイラインでプレイするなら、背後にはたっぷりのスペイスがある。相手をできるだけゴールから遠ざけたいのなら、ラストラインにはスピードが必要。そしてわれわれの4人にはマジのスピードがある」
現状では、リヴァプールはスピード(CBの誰かさん)もワークレイト(RBの誰かさん)も欠いているようだ。それが壊滅的な効果になっている。
その点、アーセナルのふたりのCBにはCBとしてソリッドなスピードがある。またいまのスターティングFBもいいワークレイトがある。スピードではちょっと足りないが、彼らはプライムのウォーカーでもカンセロでもない。
したがって、効果的なカウンターをやるチームとの対戦では、アルテタはティアニー、トミーをブレイクに備えさせることを検討するかもしれない。そうするとポゼッションにおけるジンチェンコの代償が高くなるが。
5 タクティカルファウル(取り組み中)
ロドリのコメント。「ぼくらにはたくさんの攻撃の選手がいて、多くのほかのチームはカウンターアタックをしかけてくる。そのおかげでぼくは孤立する時間が多い。だが、それがいい。ぼくは新しいことを学んでいる。どう行くか、いつとどまるか、いつタクティカルファウルをやるか、いつジャンプするか。そうしたことを学べるのは、ぼくにとってはいいことだ」
バックラインが薄いなら、誰かがひとりでそれをやらねばならない。サリーバはこれをずっとうまくやっている。
6 スウィーパーキーパー(問題なし)
個人的には、ラムズデイルで心配していない。わたしは、ボックス外に出るとき彼の判断力にはいつも感心していた。
アリソンはこの世界でずっとベストのひとりで、彼がいることで、リヴァプールは対戦相手のロングボールの成功率がもっとも低くなっている。
思うに、ラムズデイルにもそのポテンシャルがある。スタッツがそれを裏付けている。彼は、守備アクションのゴールからの距離で89パーセンタイル、ボックス外での守備アクションで79パーセンタイル。
7 1 v 1キーパー(問題あり)
すべての対策が失敗したとき、最後はキーパーに止めてもらうしかない。
ラムズデイルはP90のゴール防御で、21人のGKのうち18位。そこは取り組んでいく必要があるかもしれない。
8 頑固なマネジャー(問題なし)
ハイラインをやるチームでは、恥ずかしい失点をしてしまうことがよくある。
だが、多くの成功したマネジャーたちは、悪いプレスでそういう結果になったとしてもリスクをかける。われわれにはいいマネジャーがいる。
以上
最後に、今回のふたつのエントリのまとめを書こうと思ったが、それはNLDのプレヴューエントリに譲ろう。それが、ズバリこの試合のみどころになるはずだから。
土曜日が楽しみっすね。
おわる
昨年のノースロンドンダービーでの良いイメージがあるから是非今年も冨安に先発して欲しいですね。
日本人以外でもそう思っているグーナーは多いのでは?
興味深いエントリありがとうございます。
そしてNLDが近づくと現れる、気の抜けたような手書きのTOTサムネイルが大好きで、それを見に来たと言っても過言ではありません。