昨シーズン、アーセナルからのローンでリーグアンでプレイしていたフォラリン・バロガン。毎週のように活躍するニュースを観て、彼がチームに戻ってきたときのことを想像して目を細めていたアーセナルファンも多かったと思う。チームでプレイするにせよ、売却するにせよ、いずれにせよ貴重なアセットを得たと。
だが、彼がローンから戻ってきたこの夏、ファンにとっては、いまのところどちらの方面でもフラストレイションの貯まる状況になっているだろう。
せっかくのUSツアーだったのに、ケガ?によって満足なプリシーズンを送ることもできず、ジェズース不在でCFの競争さえあるアルテタのチーム内での存在感は、現状ほとんどないと云っていいほど。本人も「もうローンを受け入れるつもりはない」と宣言しており、このまま彼がアーセナルにとどまる可能性が残っているようには見えない。
そのいっぽうで、多くのクラブから興味を持たれていると云われながらも、ここまでアーセナルが納得できるようなオファーはいまだ来ず。それがフランスであれ、彼ほど優秀な成績を残した選手に、なかなかまともなオファーがないことにはアーセナルのファンがいちばんイライラしているかもしれない。
一説によれば、アーセナルのバロガンの評価額は£50m(€58m)。そのような金額で、この夏ほんとうにアーセナルは彼を売却することができるだろうか。
今回はアーセナルが、そのような大きな金額でバロガンを売却することの難しさについて書いてみたい。
バロガン移籍ニュース最新情報(2023年8月8日)
ここしばらくは、昨シーズンかぎりでDzekoとLukakuを失ったインテルがかなりプッシュしていて、本人もイタリア行きには前向きになっている様子。
先日は、バロガンもあまりにインテルに行きたくて行きたくて震えが止まらず、ついにはInstagramでMudrykっちゃった。チェルシーが£50m出す前触れかも?
ただ、問題はインテルがイタリアンクラブらしく金欠なことで、ただでさえ借金があるとも云われ、アーセナルの評価額の半分程度のオファーしかできず話にならないという残念な状況。
ほかにはウェスト・ハム(ライスの一件があるので彼らが本気なら非常に興味深い)などのPLクラブや、いくつかのフランスのクラブが彼に興味を持っているというなかで、先日アーセナルともプリシーズンマッチを戦ったASモナコが、いまバロガンに本気のアプローチをしているようだ。
🚨 EXCL: Arsenal reject written bid from Monaco for Folarin Balogun. Follows verbal offer turned down by #AFC after friendly. #ASMonaco pursuit ongoing – sporting directors have good relationship. #Inter keen but unclear if can afford @TheAthleticFC #USMNT https://t.co/xp0yVUcL8c
— David Ornstein (@David_Ornstein) August 7, 2023
昨日のデイヴィッド・オーンステインによれば、モナコの最初のオファー(※金額不明。L’Equipeなどによると€30m)はアーセナルに断られたが、彼らはあきらめる様子はないという。また、なんでも彼らのスポーティングディレクターThiago Scuroが、エドゥとマブダチという関係もあるらしい。
アーセナルはバロガンの売却を免れないにせよ、残り一ヶ月弱で金額はどの程度まで評価額に近づいていくだろうか。
アーセナルがバロガンを高値で売ることの難しさ
ところで、このエントリを書こうと思ったきっかけが、r/Gunnersのとあるサブだった。
「こんなスタッツなのに、どうしてHøjlundが72mでバロガンが50mにもならないのか、誰か説明してくれ」
Can someone please explain how Højlund is worth 72m with those stats yet Balogun is valued just below 50m?
byu/gladiatorbossman inGunners
Rasmus Højlundという名前は、ぼくみたいなアーセナル馬鹿でも名前くらいは観ていた。twであれだけ毎日騒がれてちゃあね。マンUがアタランタから€75m(TM調べ)で買ったという20才のデンマーク人。ハーランド二世だとか。ホイラント。名前もそれっぽい。
単純なゴール関与のスタッツだけ観ると、彼の22/23シーズンはG9 A2で、G21 A2のバロガンのほうが全然いいのに、なんでバロガンは彼より高く売れないんじゃい!という心の叫び。その気持ちは正直わかる。
で、このサブでその理由についてさまざまなやりとりがあるんだが、それが興味深く思えるものが多かった。
いくつか理由が提示されていたので、それをまとめてみよう。
なぜHøjlundはバロガンより高いのか?:理由1 メガクラブのターゲット
単純に、彼がマンUのターゲットだったから。
あるいはPSGのようなほかのビッグクラブの。高く買うクラブがあるから高く売れるというだけというシンプルな原理。
いっぽうでバロガンに£50m出そうというクラブはない。いまのところ。イタリアンクラブが売却先なら、金額はお察し。
買うひとがいれば、それがどんなに理解不能でも、いくらでも高くなるという現代美術と同じ市場原理(これは冗談)。
結局、ビッグクラブ/メガクラブのターゲットにならない限り、選手はそこまで高値にならないという身もふたもない話。なぜなら、そのような高額はビッグクラブにしか出せないから。
ライスの場合も、基本的には同じことが起きたと。
アーセナルのようなクラブのファンをやっていると世界の常識を忘れそうになるが、ひとつのウィンドウで£200mもの大金を使えるのは、ほんとうにほんの一握りのクラブしかない。
ぼくもこの件であらためてTMの移籍金記録のページを確認してみたところ、過去のフットボール選手移籍金記録ベスト50(€220-69.5m)でも、いわゆるビッグクラブと呼ばれる以外のクラブの移籍案件はほとんど見当たらない(ナポリくらい)。
そのほかは、すべてイングランドのビッグ6か(※ベスト50にToT案件なし)、スペインのビッグ2+1、PSG、バイエルン、イタリアのユーヴェとインテルのような各リーグのトップクラブだけで占められている。
ちなみに、バロガンの評価額といわれる£50m(€58m)という金額。この移籍記録からすると、上記クラブ以外のクラブでこの金額以上の選手取り引きをしたことがあるクラブは、過去にたったの3件しかないようだ。チャイナクラブ(オスカル)とサウジクラブ(マルコム)とニューカッスル(イサク)だけ。なんというバブリーなトリオ(笑)。それだけ、この部分のビジネスはビッグクラブの寡占状態になっている。
その£50mという評価額が真実かどうか、適正かどうかはさておき、いまの現状を観るにそれをそのまま満たすオファーがこれから来るとはちょっと考えにくい。
財政難のインテルには望むべくもなく、モナコがどこまで近づけるか。WHUについては、彼らもこの夏はスクワッドを大改造していてライスで得た£105mも使い道がたくさんあるようで、もしバロガンに行くにせよ、あまり期待はできないとか。
エンバッペの去就が不透明で、昨日はネイマールも退団希望をクラブに伝えたというゴシップニュースがあったPSGが、この夏にストライカーに本気になれば、多少可能性あるかも?
なぜHøjlundはバロガンより高いのか?:理由2 所属クラブでの状況
もうひとつのわかりやすい説明は、選手の現在のクラブでの立場。
アタランタがHøjlundの残留を強く望んでいたのに対し、アーセナルはバロガンを売りたがっている。これはまったく正反対の状況である。
ふつうに考えて、前者は移籍金が釣り上がるし(カイセドなあ)、後者は控えめな金額に着地する傾向があるだろう。われらも、レアル・マドリッドにはマーティン・オーデガードをあんなに良心的な金額で譲ってもらった。
バロガンはアーセナルにとって現時点ではCFのサードチョイスに過ぎず、エンケティアだけでなく、ハヴァーツやトロサールのようなオプションもあるなかでは、ほとんど余剰な戦力になってしまっている。そんななかで本人が、もうこれ以上ローンに出たくないと宣言しているため、アーセナルは彼をチームに残すか売却するかの二択を迫られている。というか、残り契約2年で新契約に応じる兆しもないとなれば、選択肢はほぼ売却の一択。したがって、彼を狙うクラブはそれだけアーセナルの弱みにつけこむができるとも云える。
つまりアーセナルはバロガンの売却交渉において、とても強い立場でいられないという。これは、時間がかかればかかるだけプレッシャーがかかって、弱い立場になっていくだろう。
この先、バロガンを望む各クラブで入札競争でも起きないかぎり、アーセナルはいずれ希望金額を妥協せざるを得なくなるというほうがありえそう。彼を欲しがっているクラブはそれがわかっているから、なかなか金額が釣り上がらない。いや知りませんけどね。
なぜHøjlundはバロガンより高いのか?:理由3 バロガンは過大評価?
そもそも、OP(スレ主)が挙げている、Højlundとバロガンのゴール関与でのスタッツで比べること自体が正しくないという。
スタッツに関しては、このサブのなかでも具体的なツッコミがあるように、単純にゴール貢献の数だけで比べるべきでなく、たとえば90分ごとのNPゴール(ペナルティ以外のゴール)記録では、Højlundが0.48で、バロガンが0.45とほとんど変わらなかったりする。また、ゴールするにはフランスよりイタリアのほうが厳しい環境ということも考慮するのがフェアだろう。
またプレイスタイルでも、Højlundはビルドアップに関与したりクリエイトしたり、またフィジカルな体格もあり、FWとしてはバロガンよりもオールラウンダーで、そういったことも(スタッツだけで判断しない)スカウト上での高評価になっていると。
ぼくもアーセナルのファンとしては大変に不本意ながら、YouTubeでHøjlundのハイライトリールを観てしまったが、たしかに191cmという長身を感じさせない身のこなしで、ハーランドっぽさはあった。
それと、年齢もバロガン(22)のほうが1.5年ほど年長であり、その点でもやや若いHøjlund(20)のほうが価値が高いと云える。TMで現状の選手MVランキングを観てもわかるように、MVにおいて年齢というのは非常に重要な要素だ。
こうして見ると、FWとして似たプロファイルではあるが。
だいたい、バロガンは過大評価じゃないかという意見もあった。22/23シーズンのリーグでのゴール21といっても、そのうちペナルティが6つであり。
アーセナルバイアスと、彼がUSMNTを選択したことによるアメリカ人バイアス。
それもあるかもしれない。どうでしょう。
バロガンがチームに残るために必要なこと
ここまで書いておきながら、彼がチームに残ることも、まだ100%ないとは云えないとは思う。この世の中で、彼をもっとも高く評価しているのはアーセナルと云ってもいいくらいなのだから。
ただ、条件がある。それはもちろん、エディ・エンケティア。チーム内でキャラクターがほとんど被っている彼の先輩ストライカー。
彼はこの夏のクリスタル・パレスのターゲットになっていると云われていて、もし今後彼に現実味のあるオファー(たとえば£30m~のような)が来るようなら、バロガンの状況が変わる可能性はあるのかもしれない。レギュラーになりたいという彼だって、セカンドのエンケティアではなく、ジェズースとポジションを争える立場なら、ひとまずは悪くないだろう。
エンケティアについては、たしか以前にインタヴューで「セカンドチョイスで満足しているわけじゃない」というような野心的なコメントを残していて、現在実質的な競争があるとは云い難いジェズースとの関係があるアーセナルでの将来を悲観して、移籍に同意する可能性も、これまた絶対にないとは云えない。
もちろん今年は、アーセナルでようやくCLでプレイできる権利を勝ち取ったシーズンで、けしてアルテタからの評価も低くない。ミッドテーブルクラブがアーセナルをこよなく愛す彼を勧誘するのは、簡単ではないだろうが。
なにが起きるかわからないのもこの世界。
バロガンが(まともなオファーがなくて)不本意ながら残留するみたいな、消極的残留だけは絶対にやめてほしい。たいしてプレイする機会もないのに在籍だけしているような、そういう前時代っぽい選手マネジメントだけはいけない。結局は自分の首を締めるのだから。
最後は、セルオンなりバイバックなりをつけてでも、売るしかない。
おわり