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23-24EPL新ルールの説明。抗議に厳しく、フィジカルに甘く、時間の浪費は許さない

どうも。

先日のアーセナルとシティのコミュニティ・シールドでも、アーセナルの同点ゴールが101分だったことで注目されていた、23/24シーズンから適用されるというルール改定。「ワールドカップスタイル」の厳密な試合時間カウントで、どの試合も軒並み100分超えになりそうというやつ。

メジャーなものからそうでもないものまで、いくつかあるので、今週末のPLスタートをまえにまとめておこう。これを踏まえておくと、試合のなかで、ああなるほどアレのせいかと思えることがあるかもしれない。



2023/24からの規則変更についての説明 by FA

これがルール変更の大本(のサマリ)。これはどちらかというと事務的なお知らせなので、一般のファン向けではないがいちおう。

2023/24 law changes explained

詳細は、PDF資料をダウンロードできるのが親切。

サマリを引用しよう。

Law 3 – The Players

  • Clarification relating to extra person(s) on the field of play when a goal is scored

Law 6 – The Other Match Officials

  • Reserve assistant referee (RAR) now permitted to assist the referee in the same way as the other ‘on-field’ match officials

Law 7 – The Duration of the Match

  • ‘Goal celebrations’ to become a separate bullet point in the list of causes of time lost for which the referee makes allowance

Law 10 – Determining the Outcome of a Match

  • The term ‘kicks from the penalty mark’ to be replaced by ‘penalties (penalty shoot-out)’
  • Clarification that warnings and cautions for team officials, as well as for players, are not carried forward into penalties (penalty shoot-out)

Law 11 – Offside

  • Clarification of guidelines to distinguish between ‘deliberate play’ and ‘deflection’, as outlined in circular 26 (July 2022)

Law 12 – Fouls and Misconduct

  • Clarification that if the referee awards a penalty kick for an offence which involved a defending team player challenging an opponent for the ball
    (excluding holding, pulling, pushing, no possibility to play the ball etc.), the same sanction should be issued to the player as for an attempt to play the ball, i.e. if the offence stops or interferes with a promising attack – no caution (no yellow card); DOGSO offence – caution (yellow card)
  • Clarification that the senior team coach present in the technical area cannot be sanctioned for an offence committed by an ‘unidentified’ player

Law 14 – The Penalty Kick

  • Clarification that the goalkeeper must not behave in a manner that fails to show respect for the game and the opponent, i.e. by unfairly distracting the kicker

Video assistant referee (VAR) protocol

  • Confirmation that the VAR ‘light’ system does not involve a replay operator (RO)

うーん、ぶっちゃけよくわからないのもあるな。PDFの詳細を観てもよくわからないのもある。

ちなみに「明確化した」(Clarification)から始まる項目が多いのは、すでに実際ルールとしては適用されているが、規則としては文書に反映されていなかったためということらしい。

23/24からの新ルールのわかりやすいポイントごとの説明

各メディアがこれを記事にしているなかで、『Squawka』がわかりやすかったので、そちらを紹介しよう。

以下が新シーズンからのEPLの新しいルールである。

レフェリーに対する異議

23/24から、選手がレフェリーにアプローチすることはかなり厳しく取り締まられることになる。今後は、どんな選手でもマッチオフィシャルに駆け寄っていくことはカードの対象になる。また、ひとり以上の選手がレフェリーを囲んだときも自動的にイエローカード。

コンタクトプレイの緩和

選手同士の接触(contact)については、より高い閾値が設けられる。その結果、昨シーズンなら、過度にフィジカルであるとして罰則の対象となったタックルに与えられたフリーキックは減るはず。

ただし、「無謀」とオフィシャルにみなされるチャレンジをした選手はイエローカードを受ける。「不注意」なチャレンジも、依然としてファウルとみなされ、対戦相手の「安全を脅かす」プレイヤーは退場に。

タッチラインでの振る舞い

今シーズンはタッチラインが大幅に取り締まられるようになる。その目的は、選手、マネジャー、コーチ、オフィシャルの衝突を防ぐため。

相手のコーチやマッチオフィシャルに対するコーチからのアグレッシヴな振る舞いは、レッドカード対象になる。そして処罰を受けたクラブ関係者はピッチから観えないところに移動しなければならない。

つまりオールド・トラフォードでスタンドにいるアーセン・ヴェンゲルの姿を観るようなことはもうない。

これは、ウェンブリーでアルテタがカードを受けたのが実例になっているだろう。あの程度の抗議なら、去年までならカード対象ではなかったかもしれない。だから、アルテタも驚いた。

アルテタといえば、一時はタッチラインでの振る舞い(touchline antics)がよくフォーカスされていた。彼も試合後には「3日で自分の習慣は変えられない」と戸惑いを観せていたが、今後はどうにかする必要がある。本番でこれをやってセントオフになるようなことがあれば、目も当てられない。

ペナルティでの妨害行為(distraction)

エミ・マルティネスは要注意。

FAの『Law’s of the game』によれば「ゴールキーパーはゲイムと対戦相手へのリスペクトを欠いたマナーで振る舞うことは許されない」とある。アンフェアにキッカーの気を散らすこと。

これはキックを遅らせたり、ゴールポストやクロスバー、ネットに手を触れることも含まれる。

Mr. トラッシュトーカー。

時間浪費を試合時間にカウントしない

これがおそらく23/24からのルール変更では最大のもの。ワールドカップのように、英国のトップ4ディヴィジョンでストッペイジタイムの時間は増える。

今後レフェリーは、試合がリスタートされるまでにどの程度一時停止されていたかを具体的に測る義務がある。この停止した時間に含まれるのは、ゴール、セレブレイション、ケガ、フリーキック、ゴールキック。サブスティチューションも。

またレフェリーは、時間浪費について「はっきりした影響ある行動」も取り締まることを義務づけられる。ゴールキーパーがゴールキックにあまりにも長い時間をかけるなど。

時間稼ぎも、去年アーセナル周辺ではよく議論になっていた。思い出すのはニューカッスル。彼らは、エミレーツであれだけ露骨な時間稼ぎをやったあと、自分たちのホームではエディ・ハウがアーセナルの時間稼ぎを批判するという。

それにしても、試合時間が毎回100分超えになれば、競技自体への影響がかなり大きそう。そもそもなぜこういったルール改定がおきているかといえば、英国フットボールでは時間浪費(time wasting)に対する問題意識があったらしい。

Sky Sportsによれば、イングランドのプロ試合における昨シーズンの(実質的)プレイ時間の平均は、リーグ2でわずか48分、リーグ1で50分、チャンピオンシップで52分、プレミアリーグで55分弱だったという。これがどの程度、たとえば外国とくらべて少ないのかはわからないが、まあそう云われてみれば、90分という規定時間からすると少ないようにも思える。

個人的には、EPLではラフなプレイも許されていて、あまり試合が止まらない印象があるが、それでも問題があるのだろうか。外国はどうなのだろう。たまに国際試合や外国リーグを観ると、あんまりピッピキピッピキ笛がなるのでイライラしてしまう。

このルール改定に関しては、選手やコーチから拒否反応があるようで、たしかにコミュニティ・シールドの試合後、会見でその話題が出たときのアルテタやグアルディオラも大賛成という感じではなかった。

この記事でも、ラファエル・ヴァランがルール改定反対を訴えるtweetについて触れている。ちょっと長いが訳してみよう。

ヴァラン:ぼくらは先週FAとミーティングをした。彼らは、新しく決めたこととルールについて、レフェリーたちの支持を得て推薦していた。

マネジャーや選手の立場から、ぼくらはもう何年も前から試合が多すぎることについて懸念を共有してきた。スケジュールは過密すぎるし、選手のフィジカルとメンタルにとっては、もはや危険なレヴェルであると。

ぼくらの以前のフィードバックにも関わらず、彼らは来シーズンでそれを推している。より長い試合、さらなるインテンシティ、そして選手からは感情が失われる。ぼくらはただ、自分たちのクラブやファンのためにピッチで100%が出せるよう、いいコンディションでいたいだけなのだ。なぜ、ぼくらの意見は聞いてもらえないのか?

ぼくは選手としてこの仕事ができることをとても特権だと感じているし、毎日を愛している。だが、こうした変更がぼくらゲイムを傷つけているとも感じている。ぼくらは最高のレヴェルにいたい、できるかぎり最高になりたい、毎週ファンと祝えるような素晴らしいパフォーマンスをしたい。

ぼくはこれが重要なことだと信じている。ぼくら選手、マネジャーはぼくらみんなが愛すゲイムを守りたいし、ファンにベストを見せたい。そのことがこれを重要な問題にしている。

これは切実だなあ。

そしてファンとしても、試合時間が長くなって楽しみが増えてうれしいと無邪気に喜んでばかりでいられないのは、実際選手が消耗するからだよね。とくにEPLのような90分最後まで全力で走り回るようなインテンスなリーグで。毎試合で前後半合わせて10分以上時間が増えるとしたら、試合に与える影響はかなりある。

それによってサブの機会が増えればいいことだという考えも理解はできるが、5人サブのときも議論になったように、結局そこはスクワッドがリッチなビッグクラブに有利になってしまう懸念はある。

しかし、こうして選手サイドの悲痛な訴えを観ると、あらためてこの決定はいったい誰が主導したものなんだろうと思う。

ファンがこれを熱烈に求めたという感じはしないよね。まあ今回のコミュニティ・シールドでは、アーセナルとファンは完全にその恩恵を受けたのは認めるけれど、それがなきゃフットボールの価値が損なわれるなんて、全然思わない。ワールドカップのときだって、どちらかといえば違和感のほうが大きかったように思える。

これで得をするのは誰か。TV放映権料が増えるとか?

シーズン中も、これによってケガが増えるなどの問題がフォーカスされるようなら、疑問の声はもっと大きくなって、ファンがこのルールに慣れるまえに、これまでどおりに戻るかもね。

 

おわり



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

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