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ハワード・ウェブがPLアーセナル vs マンシティの誤審をほのめかす「彼に2枚めのカードが出なかったのは非常に幸運だった」

先日のPL、アーセナルの勝利に終わった#ARSMCI。

アーセナルは試合には勝ったので、例のMateo Kovačićのカード疑惑の話題もすぐ沈静化するかと思ったら、意外にその後も各所で議論がつづいている。

事案を振り返ると、まずKovačićのオーデガードへのタックルはイエローではなくレッドの疑いがあったし、そのすぐあと6分後のライスへのタックルもイエローカードが出てもおかしくないファウルだった。とくに2回めのファウルは2枚めカードでなければそれが出ていた可能性が高い典型的な例だったろう。だから、本来はそこで彼は退場になっているべきだった。連続した彼のふたつのプアなファウルは、マイケル・オリヴァーによってどちらも軽く扱われたのだった。

もし、アーセナルがあの試合で敗けていたら、またしても忘れられないトラウマ案件になっていたに違いない。

まあ、つい先日も#TOTLIVでの明らかな誤審のようなメジャーな問題も起きたし、PLのレフェリングやVARに注目が集まっているなかでのできごとではあったので、この問題にしばらく焦点が当たるのもおかしくないのかもしれない。

そして、昨日。Sky Sportsの『Match Officials: Mic’d Up』という番組での、ハワード・ウェブのこの件についての発言がまた物議を醸している。

2枚めのカードで退場にならなかったMateo Kovačićは”extremely fortunate”。PGMOLのチーフが誤審を認めたみたいなものだ。またしてもと云うべきか。



ハワード・ウェブ「Kovačićに2枚めのカードが出なかったのはかなり幸運」

ウェブはもちろんかつての名レフェリーであり、一線を退いたいまでは英国フットボールのレフェリー団体であるPGMOLのトップ。その彼が、番組に登場して直近のPLで起きている疑惑の判定について、疑問に答えていた。番組の司会は、マイケル・オーウェン。このひとは最近よく観るようになったような。おっさん大人になったなあ。

以下『Sky Sports』より。『The Athletic』も参照した。

(Kovačićのオーデガードへのタックル……)

ウェブ:これは明らかにプアなタックルで、もしマイケル・オリヴァーからレッドカードが出されたとしても、「チェック完了」まですぐに済んだだろう。

しかし、彼はイエローカードを出すことに逡巡しなかった。(チェルシーのGustoのレッドカードと比較して)そこにはいくつかの違いがあると思う。選手、Kovacic、あとは右足でのタックルだったということ。

彼が突進したとき左足にいくらか体重がかかり、右かかとが地面に当たったあと、直立した足への接触はやや横方面だった。Gustoのときの横からの足とは違う。

このわずかな違いが、フィールド上でのイエローカードの決断ははっきり明白といえるほどの間違いではないと、VARに考えさせたのではないか。もし彼がそれを覆したのなら、フィールド上のレフェリーによる判定を、さらに再判定することになると感じて、チェック完了とされたのかもしれない。

(2枚めのカードが出なかった彼は幸運だった?……)

そう思う。もちろんVARはそこには関与できない(VARは2枚めのイエローには関与できないルール)が、わたしは、彼がフィールドに残ってプレイをつづけられたのは、極めて幸運だと思う。

マイケル・オリヴァーはベストレフェリーのひとりであり、世界でもベストのひとり。彼は間違いなくそれを自ら振り返るはずだ。

彼は、なにかに過剰反応することで試合へ悪い影響を与えたくなかった。そして、選手がイエローカードを受けたときには、2枚めを出せとプレッシャーがかかることもある。

プレッシャーはフィールド上の選手たちからかけられる。しかし、もし過少反応なら、それもまた試合に悪いインパクトになることも事実であり。

だから、彼があれを顧みるなら、彼はふたつめのファウルはイエローカードになるべきだったと考えるだろうし、それでKovacicは2枚のイエローカードで退場になっていた。

ハワード・ウェブは、この件でしばしばメディアに登場しているが、釈明しようとするたびに物議を醸しているように見える(笑い)。それでもこうして説明をしようと一所懸命なところは好感が持てるという気はする。こうして毎週のように議論な事案を起こしている当事者としての仕事ぶりはともかく、責任者として逃げず、ちゃんと矢面に立とうとはしている。

レフェリーは自分たちの仕事をすべき

さて。ウェブのコメントのなかには興味深いポインツがいくつかあると思う。

まず、「VARレフがオンフィールドレフの判定を再判定(re-refereeing)」というくだり。VARレフはそれを気にして、チェックコンプリートにしてしまったのではないかと。つまり、VARレフが主審の当初の判定を覆したくないからイエローを支持したということ?

これはどうなのか。

当初の判断が覆ろうが、覆らなかろうが、そういう理由でVARが躊躇してはダメなんじゃないか。最終決定権は主審にあるのだから、むしろプレッシャーを感じずに自由に意見できなければならないはず。再判定というのなら、そもそもVARで覆るすべての判定は再判定だろう。それを恐れていては仕事にならない。主審に再考のきっかけを与えることも彼らの本分だろう。それをためらってどうする? なんのためのVARか。

そして、組織のトップがこのように現場にそうした意識が少しでもあることに気づいているのなら、それは改善すべきなんじゃないのか。レフェリーが奉仕すべきは、あくまで審判の公正であり、誰かの顔色をうかがうことじゃない。

リヴァプールの事案のときも、各所で誰もが誰かの顔色をうかがいながら仕事をしているという印象を受けたが、「フェアネス第一」みたいなポリシーがあれば、ああいった悲劇も防げたように思える。極論、あの認識違いが起きてプレイオンになってしまったあとであっても、VARレフは気づいた時点で試合を止めるよう働きかけるべきだった。いくら異例だろうが、主審に迷惑をかけようが、観客を戸惑わせようが、ああいう取り返しのつかない結果になるくらいなら、そのほうがまだマシだった。クロップならきっとそう云うよ(いやしらんけど)。

それと、レフェリーがプレッシャーを受けながら仕事をしているという部分。ピッチで起きるひとつひとつの件に過剰反応はしたくないし、その逆でもいけない。プレッシャーを受けながらそのバランスを取るのが難しいということを云っているのだろう。

まあ、それはそのとおりだと思う。とても難しい仕事だと想像できる。アーセナルとマンシティみたいなビッグマッチなら、大きな決断にはなおさら慎重にもなる。

だが、だからこそ周囲の反応に惑わされず、つねに正しい判断ができるレフェリーが優秀なのだ。それは、まったく彼らの仕事上のキモの部分である。どんな状況でも、一貫性を保てること。公平であることが求められる。

<追記>

この発言部分に関してチャールズ・ワッツが怒っていた。「マルティネリに10秒で2枚カード出しておいて過剰反応でネガティヴインパクト与えたくないってなんだよ!」たしかにな。

<追記ここまで>

結局、レフェリーもVARも、なんのためにいるのかということを考えさせられてしまう。

ぼくのTLに流れてきたマンUファンの意見。

ハワード・ウェブは、基本的にKovacic はレッドカードを受けているべきだったと述べているわけだが、彼らはマイケル・オリヴァーが間違いだと云えるほどには、それがはっきり明快だとは考えなかったという……

そこが問題なのだよ。PLでは、VARは一貫性あるスタンダードをもたらすためでなく、レフェリーたちを擁護するために使われている。ひどい。

本質を見失っている感はある。

 

『Match Officials: Mic’d Up』でメインのトピックは、この件ではなく、リヴァプールのDaizの取り消されたゴールのほう。やりとりの音声データが公開されたりして、もうさんざん各所で説明されているけど、興味があるかたはこちらをどうぞ。これもおもしろい。

Match Officials: Mic’d Up – VAR error for Luis Diaz’s wrongly disallowed goal discussed by PGMOL chief Howard Webb

おまけ:PGMOL謝罪案件一覧

22-23シーズンからここまで。なぜか日付でソートされてなくてちょっと気持ち悪いリスト。

アーセナルがPGMOLから正式に謝罪されたVAR事案は昨シーズンの2件。マンU(A)とブレントフォード(H)。どちらもポインツを落とした試合で、シーズンの結果にもすくなからず影響を与えた。

いっぽうマンシティが関わった謝罪案件は昨シーズンの1件で、こちらは得をしている(エヴァトンのペナルティ)。

われらがギリギリで競っていたシーズン終盤戦を思い返すと、くやしさが蘇るようですね。

 

おわり



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

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