おとといのPLボーンマスの試合後、ESRが二度も絶好のチャンスを逃した悔しさのあまりピッチで涙していたというのが、ぼくのTLにも流れてきた。そんなの観たら、こっちも泣けてくるわ。
あの試合はもっぱらハヴァーツに焦点が当たっていたが、いま苦しんでいる選手という意味ではESRも同じ。せっかくケガを克服しチャンスもすこしづつ与えられるようになったきたいま、なんとかみんなで彼のことも助けていただきたいものだ。
ところで、昨日r/Gunnersでとても興味深いサブがたっていて、今回はそれをちょっと紹介したい。
Czech manager Radoslav Kováč who was on a internship at Arsenal on work of Mikel Arteta
Radoslav Kováčという、43才のチェコのコーチ(現在はFK Pardubiceのマネジャー。選手時代はWHUでもプレイ)が、インターンシップとしてアーセナルに滞在、アルテタの印象を語ったというもの。※彼はトマス・ロシツキのコネでAFCでのそれが実現したそうな
最近、アルテタをもっと理解しようという機運が個人的にも高まっていたので、これがなかなかおもしろかった。
それと、ハヴァーツとESRというふたりのMFの戦術的適応についてもすこし。
インターンのコーチが語ったアルテタ「非常に要求が多い」
元ネタはチェコのメディア?
これをreddit有志(h1637727)が英語に翻訳してくれていた。そいつをありがたく拝借させていただき、さらに日本語に訳してみよう。
Radoslav Kováč:彼は非常に多くを求めるひとだ。
わたしがBaselでいっしょにプレイしたこともあるグラニト・ジャカと話していたら、彼はアルテタのフットボールを理解するには一年は必要だと云っていたよ。かなり細かいことに専念しなきゃならなくて、彼もそれに一年はかかったと。すごいことだ!
ジャック・グリーリッシュもペップ・グアルディオラについて同じことを云っていた。たぶん、アルテタとグアルディオラはいっしょにトレインしてきたから考え方が似ているんだね。
だが、わたしに云わせれば、アルテタはすべてをコーチしたがるひとだと云うよりない。
彼には5人くらいアシスタントがいて、トレイニングの最中に彼らを正したりするほど。彼はそれを選手たちの前でもやるんだ。そこはわたしは好きじゃなかった。わたしなら、トレイニングの前にもっといいコーディネイトがほしい。
なかなかおもしろい。
アルテタの「コントロールフリーク」を裏付ける証言
インターンシップのコーチということは、実際ロンドンコルニーのトレイニングピッチでチームミケルの活動を間近で目撃したわけで、これは貴重なコメントに思える。
ミケル・アルテタといえば、アーセナルのヘッドコーチに就任して以来、批判的にも肯定的にもいろいろな評価をされてきたひと。
そのうちのひとつは、いわゆるover coaching(コーチしすぎ)。control freak(なんでも自分の思い通りにしたい)とも。このコメントでも、選手が彼のやりたいことを習得するまでに一年もかかるほど、細かいコーチングと驚かれている。ふつうの環境だとそんなに待てない。
そのようなアルテタの傾向については、このブログでも、アルテタのAFC初年度をレヴューしたエントリで触れている。
ミケル・アルテタのいいところと悪いところ【20-21シーズンレヴュー】 | ARSENAL CHANGE EVERYTHING – Part 3
このなかでは、当初なかなかうまくいかなかったアルテタのやりかたの悪いほうの部分として、それについて書いた。そのおかげで選手たちの自由が奪われて、攻撃面で弊害があるのではないかとか。
だが、あれから3年がたってトップを競っているいまでは、そこはむしろアーセナル成功のカギだとも思われているだろう。アルテタが細かい部分まで恐ろしくこだわることで、コーチのフィロソフィが体現され、チームが強化されてきた。
彼のAFCコーチ就任からここまで、このプロセスのなかでなにが起きていたのか、それだけで一冊本が書けそうである。ぼくもそういうことを俯瞰的にまとめてみたい気もする。もしかしたら、最近リリースされたチャールズ・ワッツのアルテタ本はそのあたりもテーマになっているのかも。わたし未読。
たとえばほしい選手をクラブに買ってもらえなかったとかで、結局うまくいかない未来だってありえたので、その是非はともかくとして、やはりアルテタは度を越したコントロールフリークだったという。これは、彼のやりかたを近くで直接観察していた人物による貴重な証言。
アルテタの超細かいコーチングに対するESRとハヴァーツの適応の差
ところで、ちょうどぼくは最近の試合を観ながら、カイ・ハヴァーツとエミール・スミス・ロウについてのアルテタからの評価ということについて考えていた。
冒頭で同じように苦しんでいるふたりと書いたが、彼らはチームのなかで左8候補という点でも同じ。役割が攻守全般にわたり、もっとも複雑でもっとも要求の多いポジションとも云われ、実際そんなふうに見える。世間的にも、ゴール+アシストというわかりやすい結果で評価される厳しさもある。ハヴァーツはその点で大きなプレッシャーを感じていた。
そんなふたりのアルテタからの評価にはコントラストがあるなと。
まずハヴァーツはアルテタの数々のコメントからして、左8として、すでにかなり高い評価を得ている。彼はかなりいろいろな要求に応えてくれているとつねづね称賛されているし、実際に現時点では彼が左8のファーストチョイスになっている。試合中の彼の動きには、アルテタの要求がそのまま反映されているのではないか。彼はまじめそうだから、素直に指示通りに動いていそうである。そこもアルテタには重要。
いっぽうでESRは、いまだ8への適応は道半ばのように思える。ちまたでよく云われているのが守備面の課題。先日のボーンマスでも話題になっていたボールがないときの動きや対応。ポゼッションしていないときの要求は、おそらく彼がアルテタのチームのなかでNo.10やLWでプレイしていたよりも、8でプレイするときのほうがもっと高いし多いはず。今シーズン彼がプレイした時間はわずかながら、その短い時間でも、プレスにとても積極的という雰囲気はなかったし、そもそもあまり自信マンマンでプレイしているようには観えず。
もっとも彼の場合は、まだ今シーズンもようやくチャンスが与えられはじめたばかりであり、ここまでに500日近いブランクもあったので、フィットネス的に要求に応えられていない部分はある。だから、いまこうして評価するのはフェアではないかもしれない。
だが、これまでにアルテタがハヴァーツを称賛するようにESRを称賛しているのは、ぼくはほとんど観たことがない気がして、それがなんだか気にかかっている。
ESRがフィットネス100%の状態になったときに、ハヴァーツのようにアルテタからの称賛を得られるかどうか。彼の下でレギュラーでプレイしたいなら、当然認めてもらう必要があるし、そのためにはどうすればよいか。
まず彼に必要なのは、アルテタの戦術の完璧な理解。いつなにをどんなふうにどうするか。たしか、彼が8に取り組んでいると云っていたのは去年だったと思うので、ケガで苦しんでほとんどプレイできずにいた彼には実戦経験が圧倒的に不足している。ジャカのように、ただでさえそれを理解するまでに長い時間がかかるというのだから、そのハードルは非常に高い。だが、やるしかない。
あとは忘れてはいけないのは姿勢だろう。メンタリティ。チームのためにプレイできる献身的で前向きな姿勢。才能に恵まれているとか優秀なだけではアルテタは満足しないのは、彼のこれまでを観ていてもはっきりしている。
サカのプレイを観るたびに感心するのはそこだ。いま世界最高のRWと云われるほど攻撃で脅威になれるアタッカーが、相手にボールを持たれているときは最後尾まで戻って泥臭くプレイすることを厭わない。相手GKのロングボールでTVカメラがパンしたとき、なんでそんなところにいるのかと驚くときもある。もちろん、マルティネリにも似たヴァイブがある。
アタッカーの献身性という点では、サカやマルティネリはESRにはかなりいい見本になるはず。
あるいはオーデガードやエディのハイプレスも。彼らのプレスこそ、戦術理解と献身性のたまもの。アーセナルの選手としては、それを両立させる必要がある。
今後、ESRがアルテタの要求に応えてMFとしてさらに進化できるかは、今後彼のフィットネスが整っていくにしたがって問われていく。
チームのなかにお手本はたくさんある。エミールにはどうかこれからも折れず、謙虚に、健やかに成長をつづけてほしいと思わずにいられない。まずは、8を完璧に自分のものにしないと。
おわり
守備(意識)が、まだそこまで対応できていないESRがゴールという結果を出し始めた時、over coarching なアルテタがどう反応するのか見てみたいです。それでも自分のポリシーに合わない人間を評価しないのか、理解が足りないながらもそれ(ゴールという結果)を評価して、自分のシステムに組み込むよう調整をするのか。
そういった面では、ボーンマス戦でのゴールチャンスは決めて、結果を残してほしかった。ちなみに、自分はESR推しですw
インターンの方がどういったパーソナリティなのか、どういった比較のもとコントロールフリークと感じたのか全く分からないまま、それを信じるのは確証バイアスの典型かなと感じました。固定的な見方は思考停止に陥りますので、我々は気を付けねばなりませんね。