試合の論点
アーセナル vs ノッティンガム・フォレストのトーキングポインツ。
The perfect day in N5 ⭐️
Watch the highlights from our emphatic 3-0 victory against Nottingham Forest 📺 pic.twitter.com/cLFlWRTgTl
— Arsenal (@Arsenal) November 23, 2024
強敵フォレストに快勝。オーデガードとサカが輝きついにアーセナルらしさを取り戻す
アーセナルは、PLで4試合ぶりの勝利。ついに勝ちに戻れた。ポインツで並ぶフォレストに6ポインターをかました。PLタイトルをまだあきらめずに済んだ。
そして、今後に向けてなにより重要なのはやはり内容だろう。相手にゴールを許さず、3つゴールをぶっこんだ。チャンスを量産し、なんならもっとぶっこめた。
こんなに観ていて痛快でおもしろかった試合はひさしぶりに思える。個人が輝き、チームプレイが冴え、ボックス付近ではときにティキタカみたいですらあった。25分のチャンスはもしジェズースが決めていたら、いつぞやのノリッチのジャックのゴールみたいな曲芸ちっくなゴールとして記憶されていたかもしれない。ああいう以心伝心なプレイが出てしまうのは、チームにまとまりがある証拠である。
もちろん、相手の反撃を許し、ちょっとオープンになりすぎと思えるような時間もあるにはあったが、概ね多くの時間をアーセナルが支配しただろう。最近のアーセナルは90分のなかで、いい時間がずっとつづかず、必ず悪い時間があるみたいな傾向も今回ばかりはほとんどなかった。ほぼ、われらの一方的なターン。
試合前にこのブログで、リードされる時間がもっとも短いフォレストというスタットを紹介したが、今回アーセナルの最初のゴールは15分で彼らはそれ以降ずっと追いかけつづけたので、あのスタットは2位だったわれらが今度はベストになったはず。それもまた痛快。
この試合のアーセナルの好パフォーマンスの大きな理由は、やはりキャプテン・オーデガードの存在だろう。サカのゴールではアシストも記録した。
MOTMはゴールやアシストなど実行者に選ばれがちで、今回は各所でサカがそれに選出されているが、実質オーデガードが影のMOTMで異論はないだろうと思う。間違いなく、チームのパフォーマンスにとっては彼がもっとも重要だった。
本格的な復帰戦となったチェルシーでも強く感じたように、彼個人がつくる違いの大きさがこのチームにいかに決定的か。これが、アーセナルがずっと失っていたもの。この試合、彼ひとりでフォレスト全体より多くのチャンスをつくった。
そして、もっとも重要なのが彼がいることで周囲も活性化すること。彼の周囲でプレイする選手みんながその恩恵を受ける。多くは右サイド。サカはもちろん、今回RBでプレイしたティンバーも印象的な活躍だったが、オーデガードの存在なしに彼のプレイのひとつひとつがあれほど効果的だったとは思えない。
彼がいるといないでは、チームプレイのクオリティがほんとうにまったく違う。これまでの彼不在のアーセナルのチームプレイとは雲泥の差がある。ファイナルサードでボールを持ちしつこく攻める時間が長くなるのもちろん、ビルドアップのフェイズでも、彼が主体的にチームプレイをリードする。まるで、違う生物になったみたいである。
期待したメリーノとの連携については彼は左寄りでプレイしているため、ふたりのリンクアップはさほど多くはなく、そこだけは若干期待はずれであったが、それはまあしょうがない。いずれよき連携も観られるだろう。
この試合で違いをつくったのはオーデガードだけではない。サカもそうとう印象的だった。G1 A1。結果を出してくれる漢。アシスト8は現時点でリーグベスト。あのゴールはすごかった。声が出た。
Scored one ✔️
Set up one ✔️
Top of the Premier League assists charts ✔️Bukayo Saka is magic 🪄 pic.twitter.com/SavTd0yZVZ
— BBC Sport (@BBCSport) November 23, 2024
試合後は、アルテタの会見にもやりとりがあるように、このふたりのケミストリについてが話題になっているが、じつはこのふたりのリンクアップ(オーデガードのアシストでサカのゴール)は、今年の2月ぶりだったという。
ふたりがフィットしてプレイをつづければ、今後もこのようなケミストリは期待できるはず。ティンバーもベンジャミンに劣らず、右サイドの攻守に貢献しているし、サカ・オーデガード・ティンバーのトリオによる右サイドは、これからアーセナルの新しい武器になりそうな予感がかなりある。
オーデガード復帰でシーズンをリスタート。PLタイトルに向け、ここからの逆襲がかなり期待できる試合になった。
予想外なミケルの大胆なチーム変更。なにがあった?
今回のスターティング11には驚かされた。
メリーノがスタートに選ばれたと思ったら、6はライスでもパーティでもなくジョルジ。そして、9には驚きのガビー・ジェイズース。彼が今シーズンのPLでスタートするのは、10月のセインツにつづき2回め。そして、ハヴァーツがPLでスターティングから外れるのは1月以来という。もう11月終わるのに。
トロサールもケガ疑惑さえあったのだから、彼がフルでプレイしたのは驚いた。
結局、ハヴァーツ、ライス、マルティネリのレギュラー3人が、最後までベンチに座りつづけた。CLに温存?
これまでなら、どちらかといえば多少無理をしてでも毎度おなじみのレギュラー選手を使うのがミケル流だったのだから、このやりかたはかなり意外だった。しかも、テーブル上ではポインツで並ぶフォレストのような重要な試合で、ここまで変更するとはさすがに予想できない。
このように、スタートの11人は前回試合から5人を入れ替えるという大幅な変更で、さらにアルテタが試合後に自画自賛したように、サブもアルテタがこれまであまり使わなかったほうの選手がずらり。チームセレクションはこの試合の重要な論点になったのだった。
またアルテタとしてうれしかったのは、サブが当たったことだろう。前半カードをもらっていたジョルジを下げて入れたパーティがすぐに1ゴール。ファインゴールだった。そして、残り10分で入ったワニエリがゴール。彼といっしょにピッチに入ったスターリングがアシスト。じつに、サブの3/5が直接ゴールに貢献したことに。
この大胆な変更について、アルテタは試合後に「チームに必要なことだった」と述べたが、必要性というならそれはこれまでも同じだったはず。
これまで、アルテタはレギュラーを固定し結果を出してきたのは事実であり、いっぽうでいざケガなどの問題が起きたときの脆弱性は明白だった。たまに使われるだけの選手には、試合勘、それに自信の欠如などがありありと観られたことは、レギュラーを固定化したときの弊害の一面だろう。
アルテタの会見コメントからすると、今回のスターティング11のセレクションやサブには、これまで使ってこなかった多くの選手に機会を与え、いつもと違うことをやっていることに自覚的だった。
なぜここでアルテタは考えを変えたのだろうか。よくわからない。
これが今後どうなるのかはわからないが、チームにとっては非常にポジティヴな傾向だと思える。手前味噌ながらこのブログでも何度も書いてきたように、アルテタはスクワッド全体で戦うといいながらレギュラーを固定し、その点ではあきらかに言動が一致していなかったから。ある程度のレギュラー固定は仕方ないとはいえ、ふだんからバックアップの選手たちにもそれなりのプレイ機会を与えておかなければ、いざというときに痛い目をみるのは自分たちなのだ。最近でもキヴィオールやジンチェンコにパフォーマンス低下の傾向はあったし、ジェズースだってボスからの信頼度が下がっていることによるパフォーマンスへの悪影響は確実にあるはず。
今回アルテタにとっては、あきらかにレギュラー扱いされていない彼らがこうして期待にこたえたことは、印象的な成功体験になったはず。
非レギュラーの選手たちのクラブでの将来は不透明にせよ、今後もいざというときにパフォームしてもらえるよう、今回のだけでなくコンスタントにプレイ機会を与えるようにしてもらいたいと願う。
ワニエリの起用はあせらないでいい?
この試合でもゴールを決めてしまった新しい「スター☆ボーイ」こと、イーサン・ワニエリ(17)。これがPL初ゴールで、彼には記念すべき試合にもなった。
17才247日のPL初ゴールは、アーセナルではセスク・ファブレガスに次ぐ記録。彼のような選手にとって、あの時代のヤングセスクと比べられるのは最高の名誉に違いなく。もちろんセスクの記録は20年前で本人が生まれる前だが、キミが知らなくてもおれは知っている。すごいぞイーサン。
17 – At 17 years and 247 days, Ethan Nwaneri is now Arsenal’s second youngest Premier League goalscorer, behind only Cesc Fàbregas against Blackburn in August 2004 (17y 113d). Prodigy. pic.twitter.com/VQPzJhoKhi
— OptaJoe (@OptaJoe) November 23, 2024
この日のワニエリは、およそ15分間のプレイ時間で、個人的にはこれまで以上に積極性があったように感じた。これまでファーストチームでの短い時間のなかでも、やや借りてきた猫みたいにおとなしかった控えめな印象が、今回はプレイが堂々としていて、師匠のオーデガードの雰囲気を感じさせるようなボールの要求もあったり、じょじょにファーストチームの一員としての自覚が出てきたようにも感じた。
こういう急速な成長の様子を目の当たりにできるのも、チームに若い選手がいることの醍醐味のように思える。
これまで彼の起用は、とくにオーデガードが不在のあいだ、メディアやファンのあいだでもとくに注目されていて、彼を期待したほど使ってくれないアルテタには批判や疑問の声はけっこうあった。ぼくも毎回試合エントリではワニーワニーとしつこく書いたが、それはこのブログだけじゃない。
しかし、今回の試合後会見でアルテタは、この試合でもゴールを決めた彼の才能をこれまでどおり称賛しつつ、“brick by brick”という表現でヤングワニエリへの忍耐の必要性をとなえた。
アルテタ:わたしは、彼のことは自分に責任があるとわかっているし、レンガはひとつづつ積み上げていかねばならない。今日彼はさらなるレンガを積み、今度はわれわれがそこにセメントを流し、乾かないようしなければならない。そうすることで、彼はもう一個、さらにもう一個を積んでいくことができ、それがやがて固まっていく。
そのあと、われわれはさらに層を厚くし、5つ連続でやりたくなる。だが、信じてほしい。それはうまくいかないんだ。われわれはそれをマネジする必要がある。彼への期待や負荷も。そこが非常に重要なのだ。
それでももっと使ってほしかったし、使うべきだったと思うぼくのようなバカチンに、この例え話の説得力があると思えるのは、ウィリアム・サリバのことを思い出すから。
サリバは2019年に18才でアーセナルに移籍して以降、アルテタからは奇妙なくらい冷遇された。いや正確には、冷遇されていたように観えた。結局彼がASSE、ニース、マルセイユのローンを経てアーセナルに戻ったのは2022年。すでに移籍してから3年もたっていた。この間のサリバについてファンからの見方は、典型的な、若く評判の高い選手の時間を無駄に浪費しているというもので、現在のワニエリにも通じるところがあるっちゃある。自分もそうだが、フランスからの高い評判が聞こえつつ、アルテタがサリバをなかなか信頼しないように見えたことにたいそう苛立ちをおぼえた。
しかし、サリバが本格的にアーセナルでプレイを始めた22/23シーズン、ミケルアーセナルの飛躍のシーズンとなり、サリバは確実にその重要なメンバーになったのだった。最終的にタイトルに届かなかった理由は、シーズン終盤での彼のケガだと誰もが思った。ローンで過ごしたフランスでの3シーズンの経験が、彼の類まれな才能のさらなる礎になったようにも思えるし、実際そうなんだろう。若すぎる彼がアーセナルで得られたかわからないプレイタイムやさらなる経験は、まったく無駄ではなかった。
結局、サリバはいまPLでもほとんどリーグを代表するようなDFになった。そのことを考えるに、アルテタのやりかたはうまくいったのだ。十代後半の重要な成長期を、アーセナルのファーストチームのようなタフな場所でさらさないというアプローチで。
翻ってワニエリについて思うに、アルテタのやりかたを信じてもいいような気がしてきた。なぜなら、現時点でワニエリはたいへんにうまくやっているから。今シーズン彼のファーストチームでのゴールはすでに4つになった(※9試合)。この試合でも成長を感じた。すこぶる順調。
彼のプレイを見るたびに、ファンとしてはついもっともっとと焦るような気持ちになってしまうが、このままほっておいてもいずれ彼はファーストチームの重要なひとりになるに違いない。
アルテタのこういう考え方は、自分のキャリアがあるからかもしれない。彼が初めて海外でプレイしたのはPSGで19才のとき。自分が体験したことから、才能ある若い選手がどう扱われるべきかもわかっている。
今回のワニエリを観て、ひとまず、彼のことはミケルを信じてみようと思ったのだった。
もちろん、これからもプレイ時間が増えなければ不満は云うんだけど。
この試合については以上