試合の論点
ジローナ vs アーセナルのトーキングポインツ。
リーグフェイズを3位フィニッシュ。CLで好調を維持するアーセナル
この試合の勝利は、決して余裕だった感じはしないのだが、それでも全体的な内容を見ればアーセナルの勝利がふさわしかったと云っていいと思う。より多くボールを持ち、より多くのチャンスをつくるチームが勝つものだ。
理想を云えば、あのクオリティの相手ならアーセナルにはもっと圧倒的なパフォーマンスを期待したいところではあったが、レギュラーを休ませるためにチームも大幅に変更があったし、アウェイで、ほとんど一期一会のような慣れない相手で、そういう難しさはあった。最終的には望む結果が得られたことでよしとしよう。
それに、フィニッシュ、チャンスクリエイション、守備、その他。この試合でアーセナルにこの後も課題として認識されるような深刻な問題は観られなかった。それもまた、週末のビッグゲイムに向けて収穫だと思う。
この試合に勝ったことで、アーセナルはリーグフェイズで最終的に3位フィニッシュ。
最低限の目標だったトップ8でプレイオフ回避も達成したし、ラスト16のドロウも見据えたトップ4フィニッシュも達成できた。
8試合でW6 D1 L1という結果は、予想に反して多くのビッグクラブが伸び悩むなかでは、間違いなくかなりよかったほうだ。今シーズンのアーセナルをベスト3に含めた下馬評どおり。実力が反映されたともいえる。
とくに、アーセナルは今シーズンここまではスクワッド危機にひんしており、そういう意味でもこの結果は大きかった。PLや国内カップでは苦しみながらも、CLでは毎試合できっちり結果を出して、逆境を跳ね返すレジリエンスがあった。
ところで、これはぼくの個人的感想だが、ここまでCLでほかの外国のビッグクラブの試合を観ていても、正直いまのアーセナルに匹敵するクオリティでプレイしているチームはあまりないように思う。むしろヨーロピアンジャイアンツと云われる彼らよりも、最近のフォレストやボーンマスのほうがクオリティが高いと思えるほど。
CLリーグフェイズでもダントツのトップだったリヴァプールにもそれほど差を感じていないのだから、当然かもしれない。
だから、アルテタが云うように、このあともアーセナルはCLでは自信をもって試合にのぞむべきだろう。それでこれからのノックアウトステイジでも多くの試合で主導権を握れるはず。いまのアーセナルのチームとしてのクオリティに、みなぎる自信が合わされば、間違いなくヨーロッパでも最強の一角になれると思う。それが、ここまでのCLのリーグフェイズで感じたこと。
もっとも、クオリティが高い(オーガナイズされている)からといって、試合に勝つかどうかは必ずしもわからないのがフットボールなんだけども。チームがそれなりでも、圧倒的にトップな個人が決め手になるなんてことはこの世界の日常であり。
逆に、アーセナルはサカのような決定的な個人を欠いているのが現状だ。サカが帰ってくるまで、なんとか勝ち残りたいものです。
イーサン・ワニエリの躍進がつづく
この試合で1ゴール。ワニエリは、今シーズンこれでゴールが6つめ(PL2、CL1、リーグカップ3)。なんと、まだ17才である。
17 – Ethan Nwaneri (17y 314d) tonight became the second youngest Englishman to score a UEFA Champions League goal, after Jude Bellingham (17y 289d v Manchester City in April 2021). Special. pic.twitter.com/gH7FVIe1fz
— OptaJoe (@OptaJoe) January 29, 2025
これがあとほんの一ヶ月くらい早ければ、Jude Bellinghamを抜いてCL最年少ゴールの英国記録だった。惜しい。
あのゴールはすごかった。声出た。サカの魂が乗り移ったかのような、ボックス際に並ぶ相手DFの前をボールを持って横切りながらの左足ゴール。GKの手が届かないファーポストのぎりぎりのところにズドン。
彼はあのゴールの直前にも似たようなかたちからショットがあって、そのつぎは同じところから打たずに、さらに内側に入っていくというワンアクションを入れていったのだよね。アルテタもそこに言及していた。そして美しいゴールが決まる。
彼の2回つづけて似たようなショッツから、2回めにゴールが決まるというのは、なんだか以前にも観た気がする。ひとつは練習で、つぎが本番みたいな。
彼は、ボックス外からのあのショットは、サカを除いては、チームでいちばんうまいのかもしれない。このチームはそもそもボックス外ショッツに課題があるので、たいへんに貴重な能力だ。
それと、この試合ではあらためて彼の狭いエリアでの落ち着きが称賛されているだろう。彼のプレイエリアは基本的に相手DFで混雑した場所で、そこでボールを受けて前を向いてプレイすることは簡単ではないが、彼はそれをいとも簡単にやってしまう。そして、時間も空間もないなかで瞬時の判断を間違えないので、彼を経由するとつねにつぎにつながるプレイになる。われわれファンは、とにかくいいところでプレイが途切れるのがフラストレイションなので、彼が愛されるはずである。
この試合の彼のパス成功率は88%で、メリーノ88%、ジョルジーニョ89%に匹敵する正確さ(オーデガードは93%)。あの攻撃的なポジションとスタイルでは、かなり正確と云えるだろう。
「NEXTファブレガス」のあだなが、ますます名前負けではなくなってきているイーサンである。
スターリングはLWのほうがいいのでは?
以前に、右足のスターリングはRWではなくLWで使うべきと主張しているひとの意見を読んで、なるほどと思ったことがあった。
彼は年齢的にも全盛期の走力はないし、RWだと、まず1 v 1でクロスを上げるために縦に突破するのが難しい。また、右ワイドからカットインサイドしても右足ではシュートが打てない。だから、彼がRWで苦しむのは当然。
逆にLWだと、彼が得意なカットインサイドが自然にできるので、そっちのほうが絶対にいいのだと。
今回のスターリングを観ていて、この話を思い出してしまった。この試合の彼は左サイドでだいぶよかったんじゃないだろうか。少なくとも、右ワイドでのあの目を覆いたくなるような悲惨なほどの生産性のないプレイではなかった。往年の彼らしさがちょっとあった。
この試合の彼の地上デュエルは7/10、ドリブルは4/6と数字もなかなか悪くない。
今回もまたアーセナルは左サイドからの攻撃のほうが多いという、これまでと逆転現象が起きているのは、スターリング理由もあったんじゃないかと思うほど。ほとんど変わらないプレイ時間で、ワニエリのタッチ38に対しスターリングが57ある。
なんとなくスターリングは両足使いのイメージがあったので、今回注意深く観ていたのだが、重要な場面で使う足はほとんど右足だった。
アルテタは、彼のポジションはフロントラインならポジションを問わないようなことを云っているが、彼はLWとして扱ったほうがよさそうに思えてきた。「RW(LW)でもプレイできる」はあまり当てにならないな。
しかし、残念なことはいまのスクワッド危機でも、LWはそんなに困っていないこと。マルティネリとトロサールがいる。だから、スターリングは人数がいないRW専のほうがまだよかったのだが、そこはしょうがない。
彼は今回せっかく蹴らせてもらったペナルティを外してしまって、いまだ自信低下の様子はある。しかし、今後LWでプレイをつづければ彼の自信回復にもつながるのではないだろうか。そのポジティヴ効果はかなりあるはず。アルテタも同じ考えを持ってくれたらよいと思う。
ペナルティといえば、彼はあのとき罪悪感みたいなものもあったのかな。というのは、その前の時間帯で、シミュレイションでイエローカードを1枚すでにもらっている彼が微妙なファウルを何度かやっていて、レフリーに見逃してもらっていたから。マイケル・オリヴァーなら間違いなく即レッドカード出してるくらいのやつ。
疑惑の判定で得たペナルティとか、すこしでも罪悪感みたいな雑念があるとけっこう外しがち。毎度思う。
この試合については以上!