試合の論点
イプスウィッチ・タウン vs アーセナルのトーキングポインツ。
Big win on the road 🛣️
Check out the highlights from our 4-0 triumph over Ipswich Town 📺 pic.twitter.com/0fKlkCtuxu
— Arsenal (@Arsenal) April 20, 2025
PSGファーストレグのためのパーティ不在テストは大成功。成熟したチームパフォーマンス
いやあ、快勝というか楽勝? イプスウィッチの皆さんには申し訳ないけども。
試合が始まったときから、イプスウィッチはだいぶ積極的で、プレスの位置も高かったし、だいぶ前掛かりになっているように見えた。しかし、それが仇になったという気がとてもする。
最初から試合のテンポが速いことで、アーセナルには逆にやりやすくなってしまった。彼らのやりかたは、PLで多くのミッドテーブルチームが成功させているアーセナル対策の定石ではなかったことは、この試合の彼らの大きな敗因のひとつに思える。
いまのアーセナルにはあんなふうに前から積極的に向かっては逆効果で、プレス耐性あるバックからのプレイでかわされ、むしろオウンハーフのスペイスを使われてしまう。アーセナルが相手なら、全体をもっと低く構えて、タックルはダーティかつアグレッシヴ、ボールを持ったらダイレクトにプレイし、頻繁にプレイをスタート・ストップさせてリズムをつくらせないようにしないと。そういう意味でイプスウィッチにずる賢さはなかった。彼らは、レッドカード以前にもすでに2失点していたので、それはおもな敗因ではない。
が、いっぽうでアーセナルのパフォーマンスが際立っていたのも事実だろう。スタートの11人は、おそらく初めての組み合わせじゃないかと思われるが、まるでもう何年もいっしょにプレイしているような成熟したチームプレイに見えた。試合後のイプスウィッチのボスが「今年対戦したチームのなかで最強」と云うほどである。チームプレイに精度と速度と強度があり、連携があり、なにより自信が見えた。
それは、やはりCLレアル・マドリッドでの成功がかなり大きかったんじゃないかと思う。文字通り世界中が注目するトップオブトップの舞台でチームがつんだ成功体験。
車の運転免許を取り立てでまだおっかなびっくりで運転していたころ、初めて高速道路をしばらく走ったあと、一般道に戻るとやけに自信がついているみたいな。CLQFのレアルは高速道路だし、PL降格候補のイプスウィッチは一般道。この例え話で伝わるかだろうか(笑い)。
今回は、アーセナルのそういうパフォーマンスだったと思う。アルテタが云ったシーズンベストの最初の35分、それはレッドカードで試合が終わるまでという意味だと思うが、ホーム試合で勇敢に挑んできたイプスウィッチを、われらははるかに上回っていた。余裕をもって対処できた。あれは、もっと以前の一般道でしか走ったことがないアーセナルだったら、間違いなくもっとあたふたしていた。
もちろん、来週のCL PSGファーストレグに向けて、パーティ不在テストで行ったチーム変更が功を奏した部分もある。
ひとつは、メリーノのMF。ライスが6に入り、メリーノは9からLCMへ。この日の彼のパフォーマンスは際立っていただろう。「彼はMFでもプレイできるのか!」と目を見張るアーセナルファン続出。ちょっとウケる。
それと、RBでスタートしたベンジャミン。彼はしばらくフィットネス不良に悩まされたものの、この日はフルでプレイし、あまりブランクも感じさせなかった。
彼が復帰した恩恵をもっとも受けたのは、やはりオーデガードか。アシスト1。非常に惜しいポストを叩くショットもあった。あれが決まっていればなあ。
ここしばらくの(というか今シーズンずっと?)彼の不調について、ちまたではベン・ホワイト不在の影響が指摘されることも少なくないが、今回のオーデガードのプレイっぷりを見るに、それもあながち的外れでもないようにも思える。この試合のキャプテンはかなり躍動していたから。彼のタッチ116は、DFを含めてもチーム最多。ひさしぶりに彼がピッチ上で存在感を取り戻した試合になった。
Midfielders to make 70+ accurate passes ending in the final third in a PL game since 2016/17:
◎ 75 – Mesut Özil vs. WBA
◎ 72 – Mesut Özil vs. Swansea
◎ 72 – Jorginho vs. Newcastle
◎ 70 – Cesc Fabregas vs. Huddersfield
◉ 70 – Martin Ødegaard vs. IpswichThere seems to… pic.twitter.com/OMXChnW27a
— Squawka (@Squawka) April 20, 2025
Martin Ødegaard has completed more through balls than any other player in the Premier League this season.
He’s also completed more final third passes than any other midfielder (543). 🪄#IPSARS | @bet365 | #Ad pic.twitter.com/KSbBO8zPvs
— Squawka (@Squawka) April 20, 2025
このひとが3ヶ月ばかり離脱していたことを忘れてはいけない。
キャプテンが復活すれば、もちろんサカも助かる。3人で右サイドのユニット再結成。まあ、相手がひとり減ったこともあるので、毎試合でこれができるとは限らないけども。相手にもよるが、ティンバーが戻ったときに、またオーデガードのパフォーマンスに陰りが観えるようなら、ベンジャミン効果は確定かもしれない。なんだろ。相性?
もちろん、今年からのティンバーの評価は非常に高い。が、「右サイドユニット」としてのベンジャミン効果も捨てがたい。PSGだけでなく、今後に向けてはRBのセレクションが悩ましくなりそうだ。
パーティ不在では、メリーノがMFに移動して9も課題になる。順当にトロサール。今回もふたつのゴールでゴール前での有能ぶりを証明した。今シーズンの彼くらいのプレイ時間で、G7 A5(※PLだけ)してくれてチームはかなり助かっている。
ところで、アルテタの試合後会見でも質問があったし、ぼくも観ていて思ったのは、トロサールがけっこう右でプレイしていたこと。試合中は彼のポジションがわからず混乱してしまった。どう観ても、右サイドの狭いエリアに選手が集中していて、あれは意図的にやったのなら、とても興味深いと思う。
あとは、ひさしぶりのジンチェンコのLBもあって、それもよかった。彼があのポジションにいるとゲイムメイキングがたいへん捗る。だが、この一方的な試合では都合がよかったものの、もっと強い相手で守備にさらされるような試合では、いまも不安があるため、CLでスタートするようには思えない。彼がスタートした理由は、単純にMLSを休ませたかったからかもしれない。
ということで、パーティ不在のテストを兼ねていたであろうこの試合。アルテタは、なかなかの手応えを得たんじゃないか。もちろん、もっと強い相手とのテストが必要ではあるので、つぎのクリスタル・パレスもこのチームか、あるいは似たようなチームでスタートすることになるのだろう。
そして、なによりしばらく不調だったPLで勝ちに戻れた。CLで得た経験値でチームがレベルアップしていることも確認できたし、なにかと有意義な試合だった。自信と勢い。それがなによりだいじ。