試合の論点
2分の公式ハイライト動画。何度でも観れる。
Finishing pre-season on a high 💪
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— Arsenal (@Arsenal) August 9, 2025
新シーズン直前。ギョクレスへの期待感が高まる好パフォーマンス
このひとはもう一年以上ヘッダーでゴールを決めていなかったとかで、「頭でゴールできない」というレッテルを貼られていたそうで、試合後のソーシャルメディアでは、多くのアーセナルファンのm9(^Д^)プギャーがあった。
あの34分のファインゴールだけでなく、61分には左サイドのクロスからポスト直撃のヘッダーも。おれのなかでは頭で実質2ゴール。それが苦手な選手にはまったく観えなかった。
香港のNLDと先日のヴィヤレアル、ここまでの試合、いざデビューはしたものの、一抹の不安がよぎる彼のパフォーマンスがあったのは確かで、この日はそういった不安を払拭する内容だったと思う。
スタッツ的には、71分のプレイでショッツは3、そのうちふたつがオンターゲット。ひとつがゴール。27タッチは、まったく悪くないんじゃないだろうか。パスは15/18。彼のようなスタイルだとパスの成功率はかなり犠牲になりそうだが、83%もつながっていれば十分だろう。
彼は左サイドに寄ってプレイしていた印象が強いが、タッチマップではそこまで偏りはない。
この試合で彼はいくつも彼の強みを示して見せた。
試合開始しょっぱなの相手DFを背負ったホールドアッププレイ(フィジカリティ)。裏抜けのラン(左サイドが好き)。カットバック(チャンスメイキング)。サカのゴールにつながったリンクアップ(レイオフ)。ロングボールのターゲット(DFを引き付けてつぶれ役)。
それとスポルティングでは免除されてたであろうプレッシングは今回もがんばってた。後半の彼はややインテンシティが落ちたという指摘もあり、フィットネスレベルはまだ完全ではないのかもしれない。
そして、もちろんあの美しいゴール。記念すべきファーストゴールにふさわしい。完璧なワンタッチのクロスからの、完璧なジャンプのヘッダー。息が合うとはあのこと。タイミングが神がかっていた。おれのなかの松木安太郎がズビとギョに0.5点づつあげたいと云っているが、いややはりフィニッシュしたギョクレスのゴールだな。あれが彼の本能なのか。
Striker’s instinct 💥 pic.twitter.com/nWyLBIbhnM
— Arsenal (@Arsenal) August 10, 2025
彼がこの試合でこうしたパフォーマンスを見せることができたのは、チームも選手も、お互いの理解度がこれまでより高まったこともあるように思える。
このあと書くように、アーセナルのチームがより速い攻撃を意識するようになったことも、彼に恩恵があったはず。歯車が噛み合い始めた。あのチームのなかで、やりやすそうにプレイしていた。
今後に向けて、本人もチームもかなり手応えは得たと思う。
まあ、とはいえ今回はもちろんフレンドリーで本気度はお察しであり、ビルバオのチームがロウブロックのチームでもなかったので、やりやすかった面はある。先にリードしたことも大きかった。
つねにわれわれが抱える問題は、相手が攻撃への意欲よりも守備を優先した状況で、いかに深く守ったブロックを崩すか。ほっておいても相手が攻撃をしてきてくれるときはあまり問題ではなく、守備に専念して攻撃をしてきてくれないときが問題。
PLでもすでにトップチーム以外ほとんどの相手はアーセナルに0-0でも1ポイントを持ち帰れば上等なのだから、なんならそういう場面のほうが多い。こちらが1ゴールでもリードされようものなら、確実にそうなる。
そういう状況でチームがいかにゴールをもぎ取れるかがつねに問われている。そうした状況はこの試合ではまったくなかったため、テストにはならなかった。今後も、ギョクレスがボックスに埋もれて苦しむ可能性はある。
それと、今回の70分プレイしたギョクレスを観ていて、技術的な面では、やはりチームのスタンダードからは劣るという感じがした。彼のこれまでのキャリアについて書かれた記事を読んでも「テクニカルじゃない」というのは年代を通しての彼の共通の評価だった。
しかし、そう考えてみれば、いまのチームは上から下までテクニックが上等の選手ばかりなのだよね。
今回ハヴァーツもゴールを決めたことで、このふたりは今後も比較される機会も多くなりそうだが、ハヴァーツのテクニカルな部分はギョクレスにはあまり期待できそうもない。
たとえば単独でボールを持ってゴール前まで行ったはいいが、そこでシュートができなさそうなときにターンして、ボールをキープしながら仲間を待つみたいなことは苦手かもしれない。
だが、それでもスペシャリストの価値がプライスレス。レギュラーチームのなかで、テクニックが平均より劣ると思うのはガブリエルも同じだが、ビッグガビが唯一無二なように、ギョクレスもゴールを決め続ければそうした存在になれるし、そのときはテクニックのことなど誰も気にしない。ストライカーの仕事はボールをネットに入れることだから。
なにはともあれ、ギョクレスがここでゴールを決めてくれたことはよかった。彼自身にも大いに自信になっただろうし、チームからの信頼度も上がって、ファンも安心した。今後に期待できると思った。
彼の初ゴールで、新シーズンのスタートに必要なポジティヴエナジーが循環している。
攻撃に手数をかけず。速攻にシフト?
この試合で戦術的に目立っていたのは、ダイレクトプレイ。かなり意識的にそれを増やしていた印象がある。
この日のロングボールを集めたこの動画は、このあとすぐ消えてしまうかもしれないが。
Long passes vs Athletic Bilbao
We clearly played with much more urgency through the center, but did anyone notice how many direct long balls we played today, especially towards Saka? We’re tired of teams tripling up on him against low blocks. Love it.pic.twitter.com/pykvTdPHKd https://t.co/tj13BBj6jX— 🇳🇴 kimmoFC (@kimmoFC) August 9, 2025
試合後のアルテタも認めているように、この試合ではバックラインからフロントまで、ビルドアップ局面でMFを経由せずに、チャンスがあればロングレンジ・ミドルレンジのダイアゴナルパスにチャレンジしていた。ちなみにラヤのロングボールは6/10。
前半はそのほとんどがサカへのもので、序盤はおもしろいほどそこからチャンスをつくっていた。正確なロングパスと彼の絶妙なタッチによるもので、相手のFBは1 v 1で何度も突破され、わりとチンチンにやられていただろう。
それと、手数をかけない縦に速い攻撃も目立っていた。
アーセナルは34分のギョクレスのゴールの直後には、2回カウンター気味にチャンスをつくっており、そのひとつを決めた。
サカが決めたゴールは、相手GKのロングボールから、ガブリエル(ワンタッチ)、オーデガード(ワンタッチ)、ギョ(ワンタッチ)、オーデガード(ワンタッチ)、マルティネリ(ドリブル&ラストパス)、サカ(フィニッシュ)という、往年のヴェンゲルボールを観るような流れるようなチームプレイによるものだった。プレイスピードを殺さず、相手は対応できない。
それともちろん、ギョクレスのゴールをアシストしたズビメンディのクロスもワンタッチのダイレクト。ミランでサカのゴールをアシストしたキヴィオールと同じワンタッチのクロス。
あれはセットプレイからの流れで相手のDFはゴール前で揃っていたが、それでも決まった。ということはやっぱり、タッチは少なければ少ないほどケイオスがつくれるなと。瞬時に局面が変わるので、相手の対応はどうしたって遅れる。それこそ予測不可能性。
悪いときのアーセナルは、やはりゴール前でタッチが多い。それで批判される筆頭はキャプテンなんだが、この日のオーデガードもそういうタッチの少なさを心がけていたのだろうか。
このように今回はダイレクトプレイをかなり意識的にやっている印象はあったものの、この1試合だけでは、アルテタがどこまで戦術的に速攻にシフトしようとしているのかはわからない。バックからのロングボールは今回に始まったわけでもないし。
だから、つぎのマンUでもっとはっきりするかもしれない。そこは注目しよう。わたしはこれに大賛成。
ライス&ズビメンディのダブルピヴォット
アルテタはもう長らく4-3-3のシングルピヴォットを基本システムにしてきたが、今回は完全にダブルピヴォット。しかもライスがズビメンディよりも深い位置でビルドアップに関与するやりかただった。
これがちょっと意外だったのは、ズビメンディの単独6の効果として、プレス耐性や狭いエリアでのパス展開といった能力で、ライスやオーデガードがビルドアップのタスクから解放されて攻撃により集中できると、新シーズンのアーセナルの展望としてこれまでよく指摘されていたから。ビルドアップでは、このふたりに加え、オーデガードすら下がってくることも珍しくなかった。
これは、LBがカラフィオーリだったことも理由にあるかもしれない。彼はかなり高い位置を取っていて、左ワイドに寄ったガブリエルとサリバのあいだにライスが入る時間も多かったから。これがもしMLSがLBだったら、彼がインヴァートしてCMに入って中央の人数は足りる。
試合序盤はとくにビルバオはハイプレスに積極的で人数もかけてきたので、その対応としても効果的だった。試合後のアルテタも「3MFがお互いを補完しあい、相手にとり予測不可能になれる」と満足げだった。
いずれにせよ、なかなか興味深いやりかただったなと。
これはもちろん守備面でよりリスクの少ないやりかたであり、とくにシーズン序盤のビッグマッチで採用される可能性が高いように思える。今回はそのためのテスト。
しかし、ズビメンディは適応がめちゃくちゃ早いね。チームにとって完璧なCM。このプリシーズンだけでこんなにチームに馴染むとは。
カラフィオーリ再評価?
試合後ファンのあいだでは、カラフィオーリを称賛するひとが多かった。
攻撃では、ボールを持ったときの展開力など、彼の強みをよく見せていたと思う。
考えてみれば、もし彼がケガがなく、MLSの台頭もなければ、いまも彼がレギュラーLBとしてプレイしている可能性が高かっただろうし、それくらいのクオリティはあるだろう。
ただ、今回のアルテタの起用法を観るに、カラフィオーリはinveted FBというよりは、アタッキングFB(ほぼWG/WB)で、本番でそれをやるかどうかはちょっとよくわからない。それとLBの守備を重視するなら、残念ながらMLSのほうが信頼できる。
フルバックの大事な仕事のひとつは、相手WGとの1 v 1対処だが、MLSはドリブルで抜かれないスペシャリスト。アルテタがどちらを選ぶかは自明というか。
ただ、攻撃的にならなければならない場面でのオプションとしては有効だろう。
新シーズン、彼がケガをせずにどれだけの時間を過ごせるか。
マドゥエケがLWポジションを確保するかも問題
マッヅンも試合後にはかなりの高評価。アルテタも彼のパフォーマンスは“Great”と太鼓判。
ギョクレスがポストに当てたパスを含めて、左足クロスによるアシスト未遂がふたつあった。それと、わしはあのギョに出したダウンザラインのパスにしびれたな。
アルテタのシステムでは左足WGにとって、本来LWというのは逆のポジション。しかし、縦に突破してクロスを上げるなら、むしろ左足で自然にできるのは強い。
マルティネリは右足のLWなのに、インサイドに入ってシュートみたいなプレイよりも(彼はなぜそれをあまり狙わないんだろ?)、縦に突破して左足でカットバックのほうが多くて、そういうプレイをするんだったらマドゥエケのほうが正確にやれるというのはありそう。
ネリはせっかく自分でボールを持ち上がってゴール前まで行きながら、左足のアングルだったために盛大にシュートを外したシーンもあった。あのアングルでマドゥエケなら左足で自然にシュートが打てた。
ただ、この試合ではマドゥエケも単足ぶりも若干露呈したプレイがあった。試合終盤、MLSとメリーノとの連携で左から中央にカットインサイド、右足ならシュートを狙ってもよかったアングルで、それができず。左足に持ち替えて無理めなパスを失敗して終わるという。左ワイドから中央に入っていったときに右足を使えないのは苦しい。彼のハイライト動画だと、けっこう右足でもゴールを決めていたような気がするけども。
まあ、どんなWGも利き足はあるし、そこはしょうがないかね。サカやネリが弱足をかなり練習していたように、若い彼も進歩の余地は大いにある。
プリシーズンを観ても、シーズンスタートは順当にマルティネリがLWでスターティングポジションに入ると思われるが、それがいつかマドゥエケに変わることも現実味がありそうに思えてきた。
あとは守備か。マドゥエケもディフェンシヴWGとしてのネリにはまだ及ばないだろう。
彼もまた新シーズンが超楽しみなひとりになった。当初あれだけアーセナルファンに嫌われていた選手とは信じがたい。
この試合については以上
さて、ここから一週間あいて、つぎはPLマンU@オールド・トラフォード with Sesko。8ゴールぶっこみたいすねえ。それまでにまたなんやかんやブログは書きそうである。シーズン予想のまとめも書かないと。
あとサリバが新契約に合意したという説があるので(ガセネタ?)、そのニュースもあるかも。ジンチェンコのトルコ行きとか。
ではまた読みに来てください。
COYG!