試合の論点
アーセナル vs ノッティンガム・フォレストのトーキングポインツ。
消えない公式ハイライト動画。
Three goals and three points at home 💪
Catch the highlights from our win over Nottingham Forest 📺 pic.twitter.com/pfDKUJC2Oz
— Arsenal (@Arsenal) September 13, 2025
しかし、この日のアーセナルのパフォーマンスを堪能するのに、たった2分間のハイライトでは全然もの足りんなあ。
こちらの10分弱のハイライトは、非公式なのですぐに消えてしまうかもしれないが、この日のアーセナルのチームプレイがよくわかる。これをおかずにご飯が食えるよ。
Some of our football vs Forest pic.twitter.com/6NqdSd2iYN
— 👨🏽🦯➡️ (@user84848384) September 13, 2025
新生アーセナルの推進力。マドゥエケとエゼ輝く。25/26シーズンはスクワッドデプスとクオリティが別次元に
いやあ、アーセナルは強くなったね! ここ数年は、毎年のように強くなったと感じてきたが、今年はそのレベルが違う。
なぜなら、これまでのレギュラーがケガでごっそりいないのに、これほどのクオリティあるチームプレイを見せてくれているのだから。今回アーセナルはチームの半分が新しい選手だった。
昨シーズンのフロント3が、ネリ、ハヴァーツ、サカだとしたら、それが、エゼ、ヨクレス、マドゥエケと3人とも刷新されている。それでちっともクオリティが下がった気がしない。これはマジすごいことだ。なんなら、前へ行く推進力やプレイのスピードのように、むしろさらなる魅力が出てきたと感じるほどである。
MFだってそうだ。この試合ではオーデガードが前半途中に交代を余儀なくされてしまったことで、メリーノ、ズビメンディ、ワネーリという3人になったが、昨シーズンの3MFは、オーデガード、パーティ、ライスだったのだから、こちらも3人とも刷新された状態。それでちっとも(以下同文)である。
このこれまでの6人は、いちおうトーマス・パーティ以外は全員まだチームにいるので、このうえにさらに新加入の選手と非レギュラーの選手たちが、以前のレギュラーと同等かそれ以上のクオリティを持って、新たにこのチームでプレイしているということになる。なんという大幅な強化。いと信じがたし。
そうそうモスケラも忘れちゃならねえ。この日も前回のリヴァプールにひきつづき、このチームのキープレイヤーであるサリバの不在を感じさせないパフォーマンス。
先日アーセナルでも25人のPL登録スクワッドが発表されたとき、そのなかにひとりも無駄な選手がいないと話題になっていたが、それをこうして実戦で目の当たりにするとインパクトがすごい。
去年のCLセミファイナルのPSGでは、アーセナルのベンチにはまともなバックアップがおらず、スクワッドデプスで彼我の大きな差を見せつけられたのが、なんだかもうだいぶ昔のことのようだ。この試合で、終盤にベンチからマルティネリとトロサールが出てきたときに、そんなことを考えてしまった。あのときのわれわれには、彼ら「しか」いなかった。
いまならPSGにも勝てるんじゃねーの?
おっと、思わず小声になってしまった。調子に乗ると足元をすくわれるからね。気をつけないと。
そんなアーセナルの新戦力がクオリティを示すいい機会となった今回。
この試合で輝いた選手といえば、なかなか甲乙つけがたいところではあるが、個人的には一番はマドゥエケだと思っている。試合後のファン投票では61.5%の支持を得たズビメンディがMOTMながら(PL公式でも)、マドゥエケも30%の支持を得た。
彼のRWはかなりすごかった。ボールを持って1 v 1を仕掛けるとき、もう手が付けられないみたいな。サカだって、あそこまで好き放題できる試合はそれほどないだろう。
彼と対峙するフォレストのLBは、CBのケガによる選手交代もあったりで途中から選手が時間で替わっていたが、それが誰であってもマドゥエケを止めることはほとんどできなかった。
Noni Madueke for Arsenal vs. Nottingham Forest:
◉ Most crosses (14)
◉ Most touches in opp. box (12)
◉ Most duels won (9)
◉ Most chances created (5)
◉ Most successful take-ons (4)
◉ Most tackles (3)
◉= Most fouls won (2)Showing exactly why Mikel Arteta signed him.… pic.twitter.com/zwXLoTo8re
— Squawka (@Squawka) September 13, 2025
これはチェルシーファンは、ぐぬぬしか云えんだろうなあ。
まあ、とはいえゴールやアシストなど直接的な結果を出したわけでもないし、100%完璧なパフォーマンスだったというわけでもない。たとえばクロスは4/14と、成功率はそこまで高くはない。成功率は5/8と高かったが、判断を間違ったドリブル失敗も何度かはあった。
でも、ファンが納得するには十分なパフォーマンスだっただろう。今後に期待が持てる。それをつづけてくれれば、いずれ結果になる。
アルテタにしても、試合後コメントでもわかるように彼にかなり満足していた。おそらくはあれが彼のシステムのなかでWGに求めるタスクそのものだと思える。ワイドエリアから1 v 1に勝って、ボックスに侵入し、最深部からカットバック。それで相手DFはパニックになる。
アーセナルで初スタート、エミレーツデビューのエゼもかなりよかった。
これはあまり云いたくはないが、まだチームにもそこまで慣れていないはずのエゼなのに、めっきりフォームを落としているマルティネリとの差が歴然すぎる。もちろん、このふたりはタイプがまったく違うので単純な比較はフェアではないだろうが、チームの攻撃への貢献度にははっきりとした差が見えた。
ぼくがこのふたりを大きく分けるものとして感じたのは、やっぱり意思決定。ボールを持ったときに、つぎになにをやるかの判断。1 v 1のドリブル勝負なんかにそれが如実に出る。それはネリを観ていてもっともフラストレイションをおぼえる部分でもある。今回のエゼの右タッチラインで相手を抜き去ったあのドリブル。あれはスタンドも湧くよ。あれこそWGとしての華のあるプレイ。
それと、46分ヨクレスのゴールのアシストになったあのラストパス。彼の弱足である左足でドンピシャのクロスをヨクレスに届けた。あのシンプルかつ正確な瞬時の判断。あのプレイ(意思決定)が、いまのネリにできただろうかとつい考えてしまう。
興味深かったのが、マドゥエケの試合後コメントで、彼は自分とエゼが「あまり考えすぎない」という点で似ているというのだ。アタッカーのスランプでこの「考えすぎ」はしばしば指摘されることで、最近のネリや去年のオーデガードの不振のときにも、ファンのあいだにそういう議論がたくさんあった。そういうとき、アルテタの「オーヴァーコーチング」がそれにつながるという危惧もある。
アタッキングサードの狭いエリアで瞬時に最良の判断を迫られるアタッカーやクリエイターは、やはり本能的な部分が必要なのだ。
マルティネリは、今回ベンチから大いに刺激を受けたんじゃないか。この試合では、残り10分でRWとして出てきてから、たいした仕事はできなかったが、彼の機会だって今後なくなるわけじゃない。エゼやマドゥエケのWGを大いに参考にしてほしいと思わずにいられない。アルテタだってきっとそう思っているに違いない。
それにしても、これからサカが戻ってきたとき、マドゥエケがベンチになるのがもったいないと思えてしまうほどのパフォーマンスだった。
さて、あとはワネーリ、メリーノ、ズビメンディのMFについても書こうと思ったが、この調子で書いていくとどんどん長くなるな(笑い)。
ワネーリとオーデガードのプレイスタイルの対比も興味深いテーマだが、それはまたいずれ。今年のアルテタはもうワニーを完全にMFとして観ているようだし。
MFについては、ちょっとおもしろい指摘を見かけたのでそれだけ。試合を観ていて、カラフィオーリのポジションがどえらい自由だなと気づいて。いつの間にか彼がRBにいたり。あのときティンバーはLBにいたのか?
このポジションの流動性は、どうもチームとして戦術的に意図的にやっているのかもしれない。3MF+カラフィオーリのボックスMF。
Arsenal’s positional rotations + dynamism is utterly insane.
Nwaneri left #6, Calafiori right #6, Zubimendi left #8, Merino right #8.
Luis Enrique’s PSG fluidity made them impossible to press – Arsenal are now equal to that with Zubimendi rotating in the #6.
Arteta is special. pic.twitter.com/RXbD88KADt
— EBL (@EBL2017) September 13, 2025
このアーセナルと去年のPSGとの比較はなるほどと思った。彼らはポジションを流動的にすることで、アーセナルのプレスを回避していて、アルテタもそういう効果を狙っているのかもしれない。
こうなると、お互いを知り尽くしている来週のPLシティががぜん楽しみになってくる。
エゼはレフトウィングでいいのか?
ここでネガティヴなことを書くつもりはまったくないのだが、この試合を観ていてエゼのポジションはLWでほんとにいいのか、少し考えてしまった。
もちろんこの試合の彼はとてもよかったし、左ワイドで単独突破するなどウィンガーとしても優秀で、チームの攻撃プレイでかなり効果的ではあった。
しかし、とくに前半。アーセナルの攻撃はマドゥエケのいる右サイドにかなり偏っていて(前半だけだと縦に三分割したライトサードからの攻撃が50%)。マルティネリよりはだいぶマシだったとはいえ、左ワイドにいたエゼが攻撃に関与する機会はそこまで多くなかったし、彼が左タッチラインからプレイを始めていくのは、彼のいいところが限定されているようで、なんだかもったいない気がしたのだ。
ボールを持ったときに中央に入っていきがちではあったが、彼のタッチマップを観ると、思ったよりもLWとしてプレイしていたことがわかる。

やはり、彼のプレイを観れば観るほど、彼は誰かに使われるタイプではなく、誰かを使うタイプのように思える。あるいは、両方。つまり、中央にいるべきクリエイター。
ウィンガーだとどうしてもある程度はボールが来るまで待つことになるし、動きも直線的というか平面的になるので、このチームのなかなら彼はオーデガードの役割(10)で中心的にプレイするべきのように思えてならなかった。彼がもっともっとボールに触れて、チームプレイにより影響力を発揮するようになれば、チームにもっといい変化がありそう。
まあ、だったらどうすればいいかといえば、その解決はいまのチームではなかなか簡単ではないわけだが。もしこのあとオーデガード不在なら、4-2-3-1にして、No.10としてエゼを中央で使うのがもっとも単純な解決策か。
アルテタにはどう見えただろうか。
今後彼をLWとして起用していくなら、いずれそういう議論も出てくるように思われる。