試合の論点
アーセナル vs ToTのトーキングポインツ。
Ready to watch it all over again? Thought so 👀
Enjoy that instant north London derby classic right here 📺 pic.twitter.com/VZn5yOmWbt
— Arsenal (@Arsenal) November 23, 2025
やる気とエナジーに満ちたアーセナル。消極的で受け身に終始したToT。両者のコントラストが鮮明で、らしくないNLD
Tifo。プレビューで書くべきだったことをまた書き忘れてしまった。
試合の数日前からアーセナルの新しいTifoのことは話題になっていた。あのベッドシーツみたいとか云われていた(笑い)前回のシンプルすぎるアレの反省から、今回はファン主導のデザインでどんなビッグマッチに出しても恥ずかしくない立派なものを掲げるのだと。そして、出てきたのがあれ。ソル・キャンベルがもっとも大きくフィーチャーされているのは、NLDのためにつくったものだからか。
‘These streets are our own’
Arsenal winning on and off the pitch #Together pic.twitter.com/Taz3qQC7Wz
— AST (@AST_arsenal) November 23, 2025
これが予想以上に素晴らしいもので、アーセナルは選手もファンもやっぱりだいぶ気持ちも盛り上がったんじゃないだろうか。ミケルは「鳥肌がたった」と述べていた。
そんなふうに試合に入っていき、最初からスタンドのノイズはすごいものがあった。アウェイチームには極めて敵対的な空気。
とはいえ、試合のスタートは正直お互いに出方をうかがうようなナーヴァスなところは観られた。最初からアーセナルがボールを持ってプレイするが、決してリスクをかけて決定的な場所にボールを出したりはせず。まずは安全第一で行く。試合開始直後のライスのビッグチャンス以降、しばらくはそういった試合展開だった。
そんななかで次第に気づいたのは、ToTのあまりにも消極的なやりかた。ロングボールの多用やリスタートにやけに時間をかけたり。
もっとも驚かされたのは、彼らのオウンハーフからのフリーキックをすべてGKがロングボールを放り込むという戦法。彼らが、あそこまであからさまに弱者戦術?をやるとは思っていなかった。ぼくのメモでは前半だけでそれが6回もあった。まるで前回われわれが苦しんだサンダランドのような。あのやりかたに触発された部分はあるかもしれない。あるいはブレントフォード流。セットピースやダイレクトプレイが見直されている昨今のPLでも、まさかビッグ6と呼ばれるクラブがあれをやるとは。
しかし、GKからの放り込みはほとんど成功せず、彼らのロングボールはことごとくアーセナルに跳ね返され、奪われていただろう。
そもそもこの試合のアプローチとして、ToTはふだんとはかなり違うやりかただったという。
まずバック3(バック5)の採用。今シーズンの彼らはThomas Frankの下で4-3-3か4-2-3-1とおもにバック4でプレイしてきたチームながら、ここでバック3/バック5に変更してきた。守備を厚くする気マンマン。
それと、これは誰かが云っていた受け売りだが、右にPedro PorroではなくDjed Spenceをスタートさせるなど、チームセレクションでもいつもよりフィジカルな選手を選んだらしい。7人の守備的な選手に、3人の足の速いアタッカー。彼らがどのようなアプローチで試合にのぞもうとしたのか、システムやセレクションからも明白だった。
そんなはなから受け身の相手に対し、ホームサポーターの熱烈なプッシュを受けてプレイするアーセナル。
36分に最初のゴールが決まる。
トロサールのボックスでのランを見逃さなかったメリーノの絶妙スルーボール。狭小エリアでDF裏へ抜け出したトロサールがなんとかボールを足元に収めると、身体を器用にターンさせて振り向きざまのショット。ボールが相手DFが投げ出した足に当たる幸運はあったものの、みごとにゴール。爆発的な歓声につつまれるエミレーツ。
トロサールが試合後のインタビューで述べているように、あのゴールで一気にチームがプレッシャーから解放された感じはある。俄然勢いの増すチームでパスがきれいに回り始め、その直後にはかなりいいパスの連携からカラフィオーリのワロスや、ノッているときにしか出ないだろうバックヒールなどを挟みつつ、相手への攻撃の圧力を強めていく。
そして最初のゴールから5分後。41分にエゼがゴール。
ボックス際にいたエゼがライスのワンタッチのラストパスを受け、単独で密集したボックスに突っ込んでいったとき、一瞬「あ、これはダメかも」と思ったよね。しかし、彼はそれを超速モーションで華麗にフィニッシュ。OMG. 信じられないものを観た。

そんな感じで前半が終わり。ハーフタイムのToTチームは、おそらく2-0スコアライン以上のショックを受けていたんじゃないだろうか。アーセナルにはどう観ても2ゴール以上のチャンスがあり、終始優勢に試合を進め、自分たちはシュートはおろか相手のゴールに近づくことすらできない。あまりにもチームの勢いが違いすぎる。
それに彼らの選手たちとて、あのやりかたで納得していたかどうかあやしいように思える。それが効果的だったならまだしも。試合後の彼らはコーチも選手も「ファイトがなかった」と口を揃えているが、まずNLDらしい闘争心が観られなかった。
なにしろ、こんな前半である。アウェイチームのショッツゼロ、もちろんxGもゼロ。ポゼッション33%。ほぼ完全なワンサイドゲイム。
そして、後半が始まると1分もたたないうちに、またアーセナルのゴール。ジュリティンの左足からボールをエゼが左足でさばき、そのまま左足でショット&ゴール。両足使いの人たち。これで3-0。ToTはHTで変えたことがあるというが、それが反映される前に差が拡がってしまった。
あの試合展開ならもう試合は死んだようなものだろう。
そのあと、ズビメンディの不用意なプレイからピッチ中央の危険なエリアでボールを奪われて、そのままラヤ不在のゴールにゴラッソを叩き込まれるというハプニングが起き、その後はややToTがボールを持つ時間も増えたものの、そこまでの脅威はなく。
逆に76分にエゼの3点めが決まる。これでハットトリック。The end.
今度は左サイドからトロサールのラストパスを右足で受けて、右足でショット&ゴール。ここでオーデガードを出すのはフェアじゃないかもだが、左右どちらの足も遜色使えるのは単足の選手にはないメリットである。どこからボールが来ても即座に対応できる。
このあともエゼにビッグチャンスが訪れたり(試合後は本人もあれは決めなきゃダメだったと悔しがっていた)、危なげなく試合終了。
アーセナルがホームのノースロンドンダービーで4-1快勝したのだった。アーセナルファンとしてはたいへんに愉快な試合で満足満足。
ただ、(失点以外で)若干残念な部分があるとすると、あのToTはさすがにひどかったんじゃないかと。あんなチームに勝っても……というところはあるっちゃある。今回彼らの0.07xGというチャンス量は、計算では1ゴール決めるのに14試合プレイしなきゃならないほどのものであり。パフォーマンス全体もひどかったと思う。なによりあの戦いかたでは、彼らのファンのプライドはたいそう傷つけられたんじゃないかね。
彼らとて近年はCLファイナルまで進出したことがあるようなクラブで、現在PLのビッグ6の一員だと認識されているチームなわけで、それがあのような情けないというか恥ずかしいというか、そんな試合をしなきゃならなかった。
こんな試合だったので、ぼくも試合後にToT方面がどんなお通夜状態になっているかr/COYSを観に行ったら、想像どおりどんよりしていた。過去最低のNLDという評価が多数。
自分たちの不甲斐なさを嘆き、KaneやSonの時代を懐かしみ。「Angeが恋しい」というポストはさすがに多くのファンにひんしゅくを買っていたけど(笑い)。素直にいまのアーセナルの強さを認める声も少なくなかったりして、逆にちょっと気の毒になってしまった。アーセナルの暗黒時代を思い出すよ。この試合で、ToTサポのあいだでThomas Frankの株はだいぶ下がったろう。
ということで、アーセナルのファインフォームと、ToTの迷走状態で試合はこのような結果になった。アーセナルにとっては、このタフな3連戦の初戦ということもあり、かなり助かった。
しかし、相手のクオリティはともかく、この勝利は宣言になったと思う。とくにバイエルンとチェルシーには。かなりキープレイヤーを欠きながら、これだけの内容と結果を出せるチームに恐れを抱かないはずもない。そもそも、ミケル・メリーノが9でプレイしてるチームがこんなに強かったらふつう意味がわからない。
こうなると、アウェイのNLDも俄然楽しみになる。予定では2月。アウェイでギッタンギッタンにするほうがもっと気持ちいいはず。
エゼが夢のNLDハットトリック。ボックス周辺の脅威
これはまさしく夢物語。まさか、この試合でほんとに彼がゴールを決めるとも思わなかったし、ましてやハットトリックなど。ほとんどフィクションである。
PLのNLDでのハットトリックはエゼが初。※ちなみにこれ若干ミスリーディングなのは「PL時代」なので、それ以前の時代にはいくつかの記録が残されている
Let it all work out.
✨ @EbereEze10 x @Arsenal 🔴 pic.twitter.com/8XDVb3TvNJ
— Premier League (@premierleague) November 23, 2025
そしてPLで400番めのハットトリック。ヒストリーメイカー。
400 – Eberechi Eze has scored the 400th hat-trick in Premier League history. He’s the 23rd player to score one for @Arsenal, with no side having more different hat-trick scorers in the competition. Magic. #ARSTOT pic.twitter.com/Tu4oYKV50B
— OptaJoe (@OptaJoe) November 23, 2025
あとこれ。彼の10年前のTWが発掘されて大注目を浴びていたという。17才のときの?
I swear imma make It and when I do, they’re gunna show this tweet lol
— Ebere (@EbereEze10) April 17, 2015
エゼ:ぼくは絶対やったるし。そんでぼくがそれをやったら、このtweetがさらされるんだ(笑)
こんな感じの日本語で合ってるかな。gonnaがgunnaになってるのがグーナー?
アーセナルから放出されてもアーセナルを夢見る少年が、いつかアーセナルでやったるでと冗談めかしてネットの片隅でつぶやいていたら、なんとそれが実現して実際さらされてしまったというサクセスストーリー。これは映画化キボンヌとしか。
PL公式もせっせとさらしている。
And here we are, showing this tweet pic.twitter.com/Lj4BmacHOx
— Premier League (@premierleague) November 23, 2025
これまでのエゼは、アーセナルのチームプレイのなかに完全に溶け込めていないような印象が否めなかったのが、今回は非常によくチームと連携していたように感じた。
この試合のエゼのパフォーマンスは、これまでからはっきりと改善があったんじゃないだろうか。タッチが90分で47は、とても多いというわけではないが、彼のアーセナルでのこれまでの水準からするとけっこういいほうだろう。
それと本人とアルテタが述べていたように、どうも彼はボックス周辺でのポジショニングをかなり意識していたんじゃないかと。ボックスのど正面がもっとも赤い。

これによって、ハットトリックも達成することになったし(ショッツ6、SoT4)、2分のライスのアシスト未遂などのチャンスクリエイションも含め、攻撃脅威がかなりあった。ゴールも決め、チャンスもつくる。これはCAM/No.10のみごとな仕事っぷりでしょう。
今回は、彼とティンバーやメリーノとの連携について称賛の声も多い。ぼくはこの試合を観て、エゼが今回のようにプレイするなら、とくにメリーノとの相性がいいような気がしてきた。メリーノはフォルス9(ディフェンシブ9笑)として頻繁に深く落ちてくるため、彼が開けたスペイスをほかの選手が使いやすく、エゼにとってもかなり使い勝手がいい。

試合後のティエリ・アンリが、エゼが9のポジションでプレイする時間がかなりあったと述べていて、なるほどと思った。9のメリーノが頻繁にMFに落ちてきて、そのポジションに誰もいなくなってしまうことは、最近のアーセナルの課題のひとつだったと思われるが、エゼがそこを積極的に利用していく戦略というのは、悪くなさそうである。
この試合のエゼは、ハットトリックばかりが注目されがちだが、こうしたチームのなかでの改善もこの試合の大きな収穫かもしれない。
まあ、今回はあのような相手だったので、それがバイエルンやチェルシーのようなチームに通用するかどうか。どうなるか観てみよう。
この試合については以上













