試合の論点
バーンリー vs アーセナルのトーキングポインツ。
Mission complete in Burnley 🫡
Highlights from our win at Turf Moor have landed 📺 pic.twitter.com/lu6ozyVuVn
— Arsenal (@Arsenal) November 1, 2025
Unstoppableなアーセナル。成熟したパフォーマンスで手堅く3ポインツ
バーンリーのボスが云うように、試合の始まりはけっこう彼らはよかっただろう。そこまでドン引きもしなかったし、少なくともアーセナルの好き放題にはさせなかった。中央をかたく守る彼らに対し、われらはビルドアップでも慎重にならざるを得ず。
しかし、14分というわりと早い時間にゴールを決めてしまったことがアーセナルにはとても大きかった。
またしてもコーナーキックから。ライスのおなじみの正確なインスウィンガーをバックポストでガブリエルが中央に戻して、ヨクレスが頭で押し込んだ。
アーセナルはセットピースFCなどと云われながら、その機会ではなかなか彼のところにボールが届かないのがもどかしかったが、今回はドンピシャ。やはりファインフォームが幸運を呼び込むのか。
こうなってしまうと、もう試合は決まってしまったようなもの。アーセナルは現時点で世界一守備がかたいチームだから、ひとつのゴールで勝つには十分になってしまう。その心理的余裕がさらにアーセナルのチームに勢いをもたらした。
その後の時間帯でアーセナルは質の高いチャンスをいくつもつくる。
サカのふたつのビッグチャンスは両方ともGKにセイヴされる不運もありながら、35分にはカウンターからライスのゴール。なんとセットピースじゃない。しかもカウンター。
この前半の2ゴールは、つくったチャンスの量からすれば、われらには物足りなさもあったけれど、試合はほとんどそれで決まってしまっただろう。
後半アーセナルのパフォーマンスレベルが落ちたのは、さすがにしょうがないという気がする。
たしかに2-0は危険なスコアではあるものの、いまのアーセナルの守備の盤石ぶりからすると、それでももう試合を殺したようなものだったから。選手たちには疲れもあったろうし、集中力を保つのが難しそうだった。Turf Moorもアーセナルサポーターの声援ばかりが聞こえてきて、あまり敵対的な空気がなかったこともあるかも。
またバーンリーは先日のブライトンと違って、遠くからゴールを狙うようなことが全然ないので、あまり彼らの攻撃脅威も感じず、なんだかTVを観ているほうでさえ集中力を失いそうになった。
あとの試合の興味は、SoTゼロだけでなく、ショッツゼロがあるかどうか。完全試合。残念ながら71分に彼らにシュートを打たれてしまい、それは達成できなかったのだが。
最後の最後、われらがコーナーで時間稼ぎをしなかったことでカウンターをくらってしまい、あやうく失点しそうになったのはいい教訓になったかもしれない。時間が時間だっただけに、試合には敗けなかっただろうが、あそこでもし失点していたらアーセナルファンにとって試合の後味は最悪になっていた。
そういえば、試合終盤バーンリーの28を着けていたHannibal Mejbriという選手はけっこう目立っていたな。チュニジア人の22才。名前をおぼえておこう。元マンUということで、ぜひこのあとブレイクしてほしい。
ということで、アーセナルにとってはいい試合だった。
彼らが全然敗けていなかったというタフなTurf Moor、ヨクレスのゴール、オープンプレイでチャンスをたくさんつくりそのひとつを決め、自分たちのパフォーマンスレベルが落ちても試合にはちゃんと勝った。これぞ成熟した大人のパフォーマンスと云えよう。
ちまたでは「いまのアーセナルはunstoppable(止められない)」などと云われていても、ずっと観ているファンとしては、まだ100%確信はできていないというか、自然にうぬぼれを戒める心理が働いてしまうのだが(笑い)、今回の勝利はたしかにunstoppable感はあったと思った。強すぎ。
Tony Pulisがかつて自分が率いたストークといまのアーセナルを重ねているが、彼らと決定的に違うのはわれらはいろいろなやりかたで勝てるということ。セットピースはそのなかのひとつに過ぎない。たしかに、現状ではその依存度は高くなっていることは認めねばならないが、今回のようなパフォーマンスを見ればストーク呼ばわりがいかに間違っているかわかるはず。バカチンどもが。
ナイスな9連勝。
ヴィクター・ヨクレスのベストパフォーマンス
いやあよかったね。ハーフタイムの時点で、ソーシャルメディアではいろんなひとが彼のベストの45分だったと前半を振り返っていた。
前半だけで下がるとは思っていなかったが。あまり深刻なトラブルじゃないことを祈りたい。
ハイプレスや相手DFたちとの駆け引き、裏へのランといつもの彼らしいプレイに加えて、今回素晴らしかったのはリンクアップ+ホールドアッププレイ。それにパスがシャープだったこと。これを云っては失礼ながら、彼があんなにパスがうまいとは思わなかったので、うれしい驚き。
14分に彼が最初のゴールを決めたあと(あれはこの日のアーセナルのファーストショットだった)、23分のサカのビッグチャンスでは、ズビメンディが相手のロングボールを弾き返したボールを胸で上手にコントロール。そのままダイレクトで後ろ向きに右サイドを駆け上がるサカへパスした。彼はあんなスキルも持っていたのか。相手DFのまずい守備から、結果的に絶妙なスルーボールとなった。そして、サカはGKと1 v 1になる決定的なチャンスを迎えるが、GKに防がれてしまう。
そのあと、32分のGKに片手で防がれたサカのショットも、ヨクレスのラストパス。どちらも大きなBCにカウントされる大きなチャンスであり、あれらが決まっていればヨクレスの2アシストだった。惜しい。
ただ、今回の彼のハイライトはやはり35分ライスのゴールにつながったあのパスではないか。
相手のロングスローの守備からアーセナルのカウンターアタックが発動。ビッグガビの頭でのクリアボールをヨクレスがひろうと、そのままボールを持って右サイドを上がる。中央ではエゼ、左サイドではトロサールがスプリントで並走しているが、ヨクレスの左サイドへのクロスフィールドのパスはトロサールのランにはやや強すぎに見えた。
「あちゃーやっちまったか」と一瞬チャンスを無駄にしたとおもったよね。まあドジっ子のヨクレスだししょうがないかと正直おれは思った。ほんと失礼ながら。それがなんと、左でスプリントするトロサールが走り込む位置できれいに止まったという。彼には最高の配球になった。ゴルファーかと。オーイ!とんぼかと。まるで、ボールにバックスピンをかけてグリーンの上にぴたりと止めたみたいだった。
あのシーンをあらためて動画で確認すると、ヨクレスはそういうふうにボールを蹴っているっぽいのだよね。卓球のカットみたいに(英語ではchopというそう)ボールの下をこするように蹴っているように見える。そして、彼には鳥瞰であの左サイド奥のスペイスが見えていたんだろう。そういうパスだった。場所・タイミング・強さも完璧。誰だよ、彼のフットボールIQがどうのとか云ってたやつは。
試合後は後半アーセナルのパフォーマンスが落ちた理由について、ヨクレスが下がった影響を指摘する声もあった。たしかにそれもあるかもしれない。それほど前半の彼はチームに好影響を与えていた。
これまでアルテタやチームメイトが、彼がチームをよくしてくれると称賛しているが、今回はまさにそれが誰の目にわかるようなプレイっぷりだった。
ちなみに、今回彼の45分間のスタッツではショッツが1である。タッチが17。これを2倍にすると、だいたいいつもどおりな数字だろうか。しかし、このことが示すのは、つまりそれだけ数字にあらわれない彼のチームへの貢献があるということだろう。
試合前、ヨクレスとエゼのチームへのさらなる適応を期待していると書いたが、(もちろんエゼも悪くなかったけれど)ヨクレスのチームプレイへの順応は、かなり順調に進んでいると思われる。
スポルティングの彼はあんなに利己的に見えたのに、ここでは彼はチームのためにプレイしている。彼の選手としてのキャラクタリスティクスで、献身性がまっさきに挙げられるような選手になるとは誰も思わなかったかもしれない。
彼はこれからどんどんよくなるはず。そう思わせてくれるような彼のパフォーマンスだった。
ひとまずメインストライカーとしてはシーズン20ゴールが目標になるとして、ここまでPL10試合で4ゴールなので、今後グラフの軌道が上向きになっていくと思えば、それにも十分現実味がある。
この試合については以上













