試合の論点
アーセナル vs ウォルヴズのトーキングポインツ。
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— Arsenal (@Arsenal) December 14, 2025
アーセナルのバッドパフォーマンスはなぜ起きた?
全体的にアーセナルのパフォーマンスはとても悪かった。
アーセナルの2ゴールはどちらもオウンゴールの記録なので、実質ゴールができなかったのと同じ。ホームで。ちなみに今シーズン、アーセナルがエミレーツでゴールを決められなかった試合はここまでひとつもない(※すべてのコンペティション)。
まさか、ここまでPL15試合のうち13試合に敗けていたボトムチームを相手にあんな苦しむとは思わなかった。5-0くらいで勝つと思ってたのに。なんという体たらく。
チームのSoTゼロが示すように、とくに前半が期待を大きく裏切った。アーセナルは、いくらボールを持ってもプレイが遅いし、テンポもない。
70%以上のボールを持ってプレイしたのだから、もちろんまったくチャンスがなかったわけではないし、最低最悪とまでは云わないが、試合後のアルテタが云うようにラストパス・決定的なチャンスがつくれない。前半SoTゼロがショッキングだが、そもそもショッツが6である。宝くじは買わなきゃ当たらない。もっと打ってくれえ。
アーセナルの試合では典型的な、ロウブロックに攻めあぐねる展開。おなじみすぎる。チームは、いまだにそれに明確な解決策を持っていない。
それでも後半は多少マシになったのはある。とくにトロサールが入ったことで左サイドが活性化し、攻撃における右サイドの偏りも解消され、よりプッシュするようになった。
そして70分にサカのコーナーキックからオウンゴール。この日のブカちゃんはすごかった。あのコーナーもあんなにボールが曲がって、そのまま入ればよかったのに。
しかし、試合の終盤、ウォルヴズが1ゴールを目指して攻撃に人数をかけてプッシュするようになると、なぜかアーセナルは突然弱気が出て守備マインド一辺倒に。あの時間帯の守備はかなりまずいように見えた。開けちゃいけないスペイスを開け、相手に付け入るスキを許した。最近のアーセナルでは観たことがないような、目を覆いたくなるような集中力を欠いた守備。それでも、まさかあそこでほんとにゴールを奪われるとは思わなかった。
90分にウォルヴズのゴール。目で観ていたものが信じられないようなゴールだったが、あの流れなら十分ありえた。
そしてその後、94分に相手のオウンゴール(あれはきれいなゴールだった笑)という劇的な展開で、アーセナルが最後には順当に3ポインツを得て試合は終わったのだが、とても結果だけで満足できるような試合ではなかった。
試合後のライスが、憮然とした態度でピッチを去っていった姿が話題になっていた。その気持ちはわかる。とても喜べない。仮にここで2ポインツを失っていたら、ほんとうに大惨事だっただろう。そこにわれらはほとんど片足を突っ込んでいたのだ。問題ありまくり。
この試合のアーセナルのパフォーマンスについては、試合後もファンのあいだで議論がとても盛り上がっていた。
今回の悪いパフォーマンスについて、理由のひとつには当然ケガがあるだろう。やっとフロントの選手たちは帰ってきたと思ったら、今度はバックがボロボロ。今回も初めての組み合わせになるバック4である。さらにベンジャミンがケガするおまけつき。これは呪いかなにかか?
とくにビッグガビの抜けた穴が大きすぎる。最近のアーセナルの悪いパフォーマンスは、ガブリエルの不在とリンクしている部分は間違いなくかなりある。彼がケガで離脱してからの7試合で、アーセナルは5試合で失点している。その直前には、8試合連続クリンシーツをやった時期もあるのに。セットピース脅威もすっかり鳴りを潜めてしまった。このチームにとって、彼が攻守にどれだけ大きな存在だったか。
それと連戦の疲労も。これはヨーロッパでプレイしていないチームとは大きな差がある。われらはもうずっと週3でプレイしていて肉体的にはかなり疲労がたまっている。ケガ人が出ると、ほかの選手にその分の負荷がかかり、結果ケガのリスクが高まる。そういう悪循環もある。
また見逃せないのが、精神的な疲労。アーセナルはトップをキープしつづけるために毎試合がカップファイナルのようになっていて、メジャートロフィを勝ったことがないいまのチームは、この重圧にも慣れていない。さすがに、全シーズン、全試合で集中力100%を維持するのは無理。シティはうまいこと後ろにぴったり張り付いてプレッシャーをかけているのもとても不快。
だから、ケガ人の復帰が必要であり、肉体的・精神的なリセットが必要なのだ。ドゥバイキャンプに行ってきてはどうか。
むしろ、そういった状況でも、なんとかトップにいつづけていることのほうを称賛すべきという声もある。それはそう。
ケガ人の復帰はなるようにしかならないが、リセットはこの一週間でかなり期待できるだろう。IBを除くと、かなりひさしぶりのミッドウィーク試合なし。ちなみにこのあとはまた1月のなかばまで、あと一ヶ月ほど週3試合がつづく。
ここでリセットして、今週末から見違えたチームになっていてほしい。
ヨクレスが苦しむ。アーセナルで早いタイミングのパスが出にくい理由
この試合の大きな論点のひとつはヨクレスだろう。
彼の前半のタッチは5で、ピッチの全選手中ワーストだったという。この日の彼はゴール・アシストはゼロ。ショッツ1。タッチ15。パス3/6。数字だけ観ると、今回も低調なパフォーマンスだったと云わざるを得ない。
彼がケガで離脱する前は、ようやくチームとも波長が合ってきたと思えるようなパフォーマンスを見せ始めていたのが、ケガでそれこそリセットされてしまったようだ。チームが彼の使い方を忘れてしまった?
ヨクレスの問題は、周囲なのか彼自身なのかいまになってもまだ議論されているが、フェアに云って両方だろう。
彼に関して、興味深いアルテタの試合後コメントがある。
アルテタ:(ヨクレスはもっとチームに貢献する必要がある?)これは二者間のコラボレイションだ。彼は、何度もとてもいいポジションに入っていたが、ボールがすぐにそのエリアに入らない。あるいはシャープじゃないとか、No.9がゴールを決めるために必要な正確さがない。
彼のワークレイトや意図はある。われわれは今後も主張しつづける必要がある。
ここでは、チームメイトからの彼への配球についての問題が指摘されている。チームは彼に適応する必要があると、これはもうしばらく云われていることだが、いまだにそれはうまくいっていない。やるべきことはわかっているはずなのに、やれていない。
ただ、いっぽうで彼にまったくボールが供給されていないわけでもない。ゴール前でのストライカーの本能や嗅覚のことを云うなら、彼のようなタイプにこそ決めてもらいたかったシーンは、この試合でも何度かあった。
しかし、チームメイトから彼への早いタイミングでのパスについて、ぼくがこの試合を観ながらあらためて考えていたのは、それはなんだかアルテタのやりかたと矛盾しているところがあるということ。それは、ヨクレスへのパスだけでなく、リスクを嫌うチームプレイ全般に云えるのだが。
とにかく中央の狭いスペイスにボールを入れないなど、チームはボールを奪われるリスクあるプレイをとても嫌う。エゼのプレイ関与がかなり少ない理由でもある。だから、攻撃はワイドプレイヤー頼みになって、相手にはかなり予測可能な攻撃になる。もっとも、サカのいる右サイドは、そのうえで強引にでもチャンスをつくってしまうのだから、やっぱりアーセナルは強いチームなのだけど。
アルテタは、チームに支配(dominance)やコントロールを要求するコーチ。だが、ボールを奪われる可能性のほうが高いチャレンジングなパスを頻繁に出すようでは、支配もコントロールもできない。すぐに相手のターンになってしまう。先日のヴィラのような攻守が目まぐるしく入れ替わるような極端にオープンな試合にしたくない。だから、そういったチームのコンセプトとヨクレスへの早いタイミングでのパスというのは、ちょっとした矛盾を感じるのだよね。
それにアルテタは、トランジションではアタッカーを含めた全員に守備ポジションへのトラックバックを求めるから、当然選手はトランジションが多ければ多いほど疲弊する。できるだけ自分たちがボールを持ちたい。よって、ボールを奪われる確率の高そうなリスキーなパスを避けるようになり、それが攻撃での消極的マインドになる。相手の分厚いブロック守備を前に停滞する。いつまでたっても、ことが起きない。
それがアーセナルが、つねにロウブロックに苦労する理由なのかなと。もちろん、ロウブロックにはどんなチームだって苦労はするのだが、この試合のようにアーセナルがとくにそれに苦労する理由があるとすれば、そういうアルテタの厳格なコンセプトと無縁のようには思えない。
だからヨクレスのランにも、パスが出ない。狭小のライン間で待っているエゼにも、パスが出ない。どっちも成功すればその場にケイオス状況をつくれるのに、ボールを奪われたくないばかりに躊躇する。
そんなことは百も承知で、それでもヨクレスを使うならできるだけこのチームのプレイのやりかたを彼に合わせましょうというシンプルな話だったはずなのだが、どうもその約束事を彼が不在のあいだにチームは忘れてしまったようだ。
アルテタは、超多忙な試合スケジュールで、満足にトレイニングもできていないから劣化しはじめている部分があると云っていた。これもそのうちのひとつかもしれない。
この一週間のプチブレイクのあと、そのへんも見違えるようになっていてほしいものです。
No more long throw-ins
ロングスローが脅威になるのは、スローにしては速くて強いボールがボックスに放り込まれるから。アーセナルの全然成功しないロングスローを観るたびに、いつもそう思ってしまう。
カラフィオーリもライスもモスケラも、正直そこまで威力あるボールをボックスに放り込める腕力はない。だから、毎度無駄になるのでは?
それどころか、アーセナルでは毎度のようにそれが相手のカウンターにつながっている気さえする。むしろ相手に有利。ヴェンゲルさんもかつてスローインについて云っていたこと。
今回、ベンジャミンが全力スプリントでハムストリングをケガしてしまった27分の一連のプレイ。そのきっかけも、ライスのロングスローを相手に奪われるところから始まったカウンターアタックだった。
あそこはあまりにも軽率な守備のハイラインもあり、ひとりに完全に出し抜かれて、結局ラヤがセイヴしたものの、あわや失点の危機ですらあった。
ロングスローに限らず、アーセナルのあのいかにも考えすぎなスローインのルーティーンは、ぼくはもう長らく気に入っていないが、今年は多少改善の兆しがあった。近くにいるフリーな選手にすぐ出すなど、もっとシンプルにやることが増えた。
せっかくだから、われわれはロングスローについても考え直したほうがいいように思う。ショートコーナーもご検討お願いします。
トロサールはゲイムチェンジャー
ヴィラでも短時間で仕事をした漢。
彼はこの試合でも、あのロウブロック相手に狭いスペイスを見つけるヴィジョンと、そこにパスを出せるスキルを見せつけたなと。
左サイドの同じポジションでは、とかく周囲が見えていないと云われるネリとの比較になるので、チームに与える効果の違いが鮮明すぎた。彼はあまりにもゲイムチェンジャーだった。
たぶん、ネリやマドゥエケみたいなタイプ(あるいはヨクレスも)は極端なロウブロックのチームには効果が薄くなってしまうのだね。だから今回マドゥエケに出番がなかったのも納得できる気がする。
いっぽうトロサールは、タイトな場所でもああいうプレイができる。彼が入ることで、あの時間は左サイドが目に見えて活性化した。彼がボールを持ったとき、周囲の選手が動き回り相手を撹乱し、スペイスが生まれ、彼はそれを的確に見つける。
自分でニアサイドを狙ったショットもよかったし、ヨクレスにドンピシャのラストパスも最高だった。彼はずっとあれを待ってたはず。彼のこの日の唯一のシュートになった。
今回はフィットネスの問題もあったのかもしれないが、今後ロウブロックが予想される相手との試合ではぜひトロサールをスタートさせてもらいたいものである。
それを云ったら、ハヴァーツが戻ったらこういう試合ではとくにヨクレスは使われなくなってしまうかもしれんなあ。
この試合については以上














