試合の論点
は、おやすみします。
最近のアーセナルはなぜ勝てない?
今回のパフォーマンスにもあったこの既視感。その正体はいったいなんなんだ。最近起きているのはこのようなことだ。
- 完璧なコントロールからの崩壊
- リードを保てない
- 試合終盤の失点
- 単純なミス/エラー
- ワンダーゴールで失点
- ビッグチャンスを逃す
- キープレイヤーが苦しむ
エトセトラ。これらを繰り返している。この「自滅を」というべきか。相手理由ではなく、おもに自分たち理由だから。
こうしたことが起きるのは、いろいろな理由が複雑に絡まり合ってるとは思うのだけど、シンプルなことがいくつかある。
まず、タイトル争いのプレッシャー。つぎに、レギュラー選手の疲労。そして、アタッカーの不振。この三本柱で多くを説明できるんじゃないかね。
まず、プレッシャー。
これは間違いなくあるだろう。3年もつづけてタイトル争いをやっていて、今年は予想外にライバルたちも苦しんでいて、自分たちにあまりにもいいチャンスがある。それが逆にプレッシャーになっている側面。
今回の試合後も、ソーシャルメディアや一般メディアでも、ここぞとばかりに“bottled”の文字がいたるところで踊っていたが、選手たちがそれに神経質になっていてもおかしくない。多くのPLクラブのファンが団結してアンチアーセナルになっているいま、オンラインにおけるアーセナルの失敗を願う声はすごいから。
そして、これは年々増しているだろうPLのリーグの競争力もあり、毎試合で楽に勝てず、ただでさえギリギリの結果を強いられていて、つねに追われるものとしての綱渡りは、心理的にはかなりタフであることは想像に難くない。きっと、体力だけでなくこころもすり減るような期間だろう。
毎試合で絶対にポインツを落とせないと思っているから、今回のガブリエルとラヤのようにパニックから致命的エラーをやる。彼らのようなエリート選手が平常心のときなら、やらないミス。
先日アルテタは外野のノイズをシャットアウトすべきだと述べていたが、こういう世の中だから、選手たちも世間で自分たちがどう云われているかも知っているだろう。そういうことに煩わされていることも否めないと思う。若い選手たちだもの。
それと、レギュラー選手の疲労。
ある戦術インフルエンサーは、アルテタについて「ほかのもろもろについては支持しているが、選手選びだけは我慢ならない」のように述べていた。疲れているレギュラー選手を使いつづけることや、あるいは試合の状況に合っていないセレクション。
今回だと、スタートしたフロント3はみんなトランジションで活きるタイプだが、むしろエゼやトロサール、ジェズースのほうが狭いスペイスしかない前半に合ってたはずという。むしろ後半のオープンな展開で生きたスターターだった。たしかに。
レギュラー酷使について、この試合でとくに疲労が目立ったのはティンバーだ。
前半の終わり間際には、ぼくには彼はもうかなり疲れていたように見えた。相手にボールを奪われて追いかけるときに、下を向いたのだよね。あれはフットボーラーのよくないbody languagesのひとつだと思うが、超優秀な選手でもたまにやることがある。それは疲れているときだ。後半も彼はふだんならやらないようなミスを繰り返していた。
ズビメンディとライス、ティンバーの3人は今シーズンとくにプレイ時間が多く(※アウトフィールド選手ではトップ3)、アルテタからの信頼をうかがわせる。実際に、彼らはトップフォームを保てれば、PLのTOTSに入ってもおかしくないほどいいパフォーマンスをしていると思う。だが、今回の試合をみればわかるように間違いなく彼らの疲労はたまっているだろう。
今回の後半はかなり試合がオープンになってしまった印象があるが、相手がボールを持ったときにアーセナルのミドフィールドが素通りみたいになってしまっていて、彼らの運動量が落ちたことも原因と思われる。くしくも3人ともMFでプレイしている。彼らが走れなくなれば、相手はスペイスを使うことができるようになる。
アーセナルのチームのインテンシティや運動量が落ち、その分フレッシュな相手チームが勢いを出してくる。今回も繰り返された、まったくよくある展開である。4つのコンペティションを同時に追っている現在、アーセナルの試合数はほとんどマックスだ。
これについて、多くのファンが感じているフラストレイションは、選手のオプションがあること。なぜノーガードをCMでもっと使わない? なぜホワイト/モスケラをRBでもっと使わない? 彼らはベンチから疲弊したピッチのレギュラー選手を観ながらウズウズしているという。
とくにノーガード。ここまでPLでの彼のプレイ時間は4試合32分のみ。スタートした試合はゼロ。彼よりすくないのは16才のダウマンしかいない。皮肉なことは、彼がカップ戦ではなかなかのパフォーマンスを観せていること。べつにレギュラーで使ってほしいわけじゃない。だが、彼はレギュラー選手とそこまで差をつけなきゃならない選手だろうか。とは思う。今回のような試合でも、アルテタはサブをひとつ残して試合を終えた。
あとは、アタッカーの不振。
今回は試合後に、ヨクレスのアウトプット(ここまで彼がプレイした60%の試合でSoTなしだっけ?)が話題になっていた。
それと、やり玉に上げられてしまっているのは、やはりマルティネリ。毎回、ポインツに直結するような大きなチャンスを逃し、あいかわらず悪目立ちしている漢。彼は、PLでここまで21試合プレイしてG1 A2という圧倒的ゴール貢献のなさ。
彼だけじゃない。アーセナルではアタッカー全員がアウトプットに苦しんでいると云えるだろう。とくにPLで。ここまでGAの最多はサカとトロサールのG5 A5。その他全員がそれ以下。最多ゴールはヨクレスの8。シーズン2/3以上を消化して、いまだ二桁ゴールの選手がゼロ。
ここもプレッシャーの影響を受けているエリアかもしれない。先日のFAカップ、続けざまに4ゴールを決めたウィガンのような試合を思い返すに、あのような冷静なフィニッシュがPLでできるかどうか。もちろん相手クオリティもあるが、あのフィニッシュはいかにもゴール前で肩の力の抜けたものだったろう。マドゥエケ、マルティネリ、ジェズース。
マルティネリは今シーズンはCL(7試合)とFAカップ(2試合)だけでG10。PLの彼とは別人のような生産性である。その理由は、対戦相手の強さだけだろうか。
アルテタもしばしば自賛するように、スクワッド全員でゴールをシェアするのは悪くない。特定の誰かに頼らなければ、いざ彼が不調になったときもチーム全体としてその影響を受けにくいから。
だが、いっぽうでPLタイトルを取るようなチームで、GAを量産するようなファインフォームの選手がひとりとしていないというのは、やはりとても不自然だ。持続可能性に疑いがある。そしていま、毎試合のようにポインツを落とすようになり、その疑いある持続性にほころびが見えてしまっている。
どんな試合でも、失点はある程度はしょうがない。いくら小さいチャンスでゴラッソをぶちこまれようが、問題はそこではなく、それ以上に自分たちがゴールできないことだろう。それを解決するために、プロパーのNo.9が熱望されていて、ようやくやってきたストライカーをゴール以外の部分で擁護しなければならない状況。これではジェズース+ハヴァーツのときと同じ。あまりにも健全じゃない。
アルテタの責任
最近のチームの不振で、アルテタの今後を考えずにいられない。
今年は間違いなくアーセナルはベストスクワッドを持っている。ケガもあったが、まあほかのチームより特別に悪いということもないだろう。ケガ人が特定のエリアに集中する時期はあったが、チーム全体でヴァーサタイルな選手が多いおかげでどのときも致命傷にはなっていない。また、これまでだいぶ悩まされてきたレフリーによる不可解判定の影響も突出しているというほど受けていない。
道具はすべて揃っている。タイトル争いの経験もある。しかし、それで勝てないなら、それはもうマネジャーの問題としかいえなくなってしまう。今シーズンは、クラブにもアルテタにも、もうほんとうに弁解の余地がない。
いまこの瞬間、ファンとしてものすごく悲観的な気分になっているのは、今シーズンここまで、うまくいっているときにアルテタが云っていた「過去シーズンに学んだ」と述べたことばが空虚に聴こえるほど、いま同じあやまちを繰り返しているように見えることだ。
現在チームにかかっているプレッシャーは、最近のパフォーマンスを観ていると、とりわけ重大な問題に感じるが、それとて今シーズンが初めてではない。バックアップ選手を信頼せず、レギュラー選手が疲弊するのだって初めてじゃない。いや、フェアにいえば今年はかなり負荷管理を意識しているけども。
もちろん、アルテタの責任じゃないこともある。
選手のケガはとくにそう。オーデガードやメリーノみたいな事故的なやつは、不運でしかない。ワネーリのローンだって、いまとなれば楽観的すぎたと振り返ることもできるが、あの状況ならそのことで彼を手放した判断も責められない。もしチームに残して毎週ベンチかベンチにも入れなければ、彼の成長に重要な半年を無駄にしたかもしれないのだし。
では、アルテタの責任があるとすれば、それはどこにあるか。
やっぱりもっとも大きな責任は、彼がチームにインストールしているメンタリティなんじゃないかね。
pragmatic(現実主義)でconservative(保守的)。chaos(混沌)よりorder(秩序)を好むコントロール志向。それが、非常に根本的な部分にある。アルテタは、ボールを奪われることも、ゴールを奪われることも大嫌いなのだ。
もちろん攻撃も守備もすべてはバランスのなかにあるが、アルテタはその比重があきらかにリスクをかけないほうに傾いている。ときにそれが攻撃より優先されているように見えるほど。アーセナルのファンなら誰もがずっと感じていたことだと思う。
とくに最近問題が顕著になってきているのが、ゴールを決めてリードしたあとに攻撃のギアを落としてしまうこと。それは、このチームに高頻度で観られる光景だ。まるで自分たちのゴールをきっかけにして、試合への熱意が変わってしまうみたいに。失点を恐れるようになるみたいに。いくらリードしても攻撃の手を緩めないチームもあるが、そういうチームの姿勢とはかなり違うと思う。
リードを追いつかれることを恐れるメンタリティは、長らくトップにいてつねに追われている、いまのリーグテーブルでの状況と似ていなくもない。
それをPLでもたった1-0や2-0という試合状況でやってしまい、追いつかれ、タフな状況に追い込まれるので、試合が終わるまで楽に感じることがほとんどない。これは、アーセナルのようなハイクオリティなスクワッドを持つ強者にあっていいことだろうか。
アルテタは、たぶんそんなチームにはしていないというだろう。でも、実際そうなっている。
誰かが云いました。チームは、ヘッドコーチ/マネジャーの鏡。かならず考え方が反映される。よくコーチされているチームならとくにそう。だから、アルテタは鏡で自分の顔を観る必要なんてないのだ。チームを観れば自分がわかる。毎度、同じ過ちを繰り返す自分を最前線で観ているじゃないか。
アルテタとコーチたちは、この状況をどう考えているだろうか。チームが同じことが何度も繰り返されてしまうのは、なぜだと分析しているだろうか。その理由が根本的であればあるほどわからないかもしれない。そしてそれが繰り返される。原因がわからなければ、対策のしようもない。「プレッシャーなんか忘れて楽しめ」とかいまさら云ってもなあ。
どんなプラグマティックなやりかたでも、ファンがそれを支持できたのはそれで勝てていたからだ。
今シーズン、これでPLもCLも勝てなければ、アルテタはどうなるだろう。アルテタ自身はもちろん優秀なコーチで、人間性でもずっと付き合いたいタイプのマネジャーだと思うが、このほとんど完璧なお膳立てがありながら肝心のトロフィを勝ち取ってくれないなら、クラブとしてはひきつづきマネジャーの仕事はまかせられないんじゃないだろうか。
アーセナルがPLタイトルを競ってきたこの3シーズン、結果的に望みがかなわなかったことについては、いろいろないい訳はあった。翌年はもっとよくなるという希望もあった。だが、今年はそれは通用しない。不運でもない。この調子でシーズンを終えたら、来年ならかならず勝てると信じることも難しいだろう。変化が必要だとクラブは考える。
いまはどうしてこうなった、としか思えないね。
さて、つぎの試合は日曜のPLトトナム(A)。NLD。
PL恒例の激アツダービーのはずが、今回ばかりはお互いに顔に悲壮感を漂わせた試合になりそう。かたや降格、かたやトップ陥落の危機が迫っている。
ではまたプレビューで。
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