試合の論点
レヴァークーゼン vs アーセナルのトーキングポインツ。
シーズン本番が始まったはずがまさかのワーストパフォーマンス。アーセナルに何が起きている?
試合前日、ミケル・アルテタは云った。「シーズンの重要なパートは明日からはじまる」。
それで、このパフォーマンス? 目が点になってしまったわ。
試合の始まりは悪くなかったかもしれない。VGがシャープで、いい感じにファウルをもらってフリーキックを得たり。彼をマークしていた相手のなんとかというDFには、短時間で2枚めカードの危機すらあった。
そして19分のマルティネリのビッグチャンス。いつぞやも観たJTのここぞというボックスへのアーリークロスから、エゼのスルー、ヨクレス、ネリと美しくつないで、左足でズドンのはずがクロスバーに跳ね返される。
まあそれもいいとしようか。相手にもそれなりにチャンスを許したとはいえ、この時間くらいまではこのあとへの期待感はあった。
しかし、その後アーセナルは目立ったチャンスもつくれない。レヴァークーゼンの組織だったブロック守備を前にして、とくにサカとネリの両WGが冴えず、チーム全体もいかにもクリックしないという感じで、アウェイでも支配的にプレイするつもりが、何度も相手に簡単にボールを渡してしまい、ほとんどイーヴンな争いに。「お互いとても戦術的にプレイした前半」といえば聴こえはいいえが、アーセナルにとってはかなり悪い流れだっただろう。
レヴァークーゼンは、今年のCLにおけるアーセナルの対戦相手でもっともうまくロウブロックをやったチームという声も。彼らの守備ブロックはそこまで低くはなかったと思うが、たしかに、アーセナルがいくらボールをキープしても、ブロック守備の外側を延々とU字にパスを回すしかないさまは、まるでPLのミッドテーブルチームとの試合を観ているようだった。
Very 2020 coded pic.twitter.com/sZCFYbItzt
— James Benge (@jamesbenge) March 11, 2026
ところでぼくは、HTに観かけたBBQ氏(Billy Carpenter)のTWで知ったのだが、レヴァークーゼンというチームは、「ボールを持ってクリーンに落ち着いてプレイするチーム。ミスコントロールは極まれで、横方向のパスが多く、MFのラインブレイキングに秀でていて、ブンデスリーガでももっとも非ダイレクトなチーム」ということらしい。前半だけ観て、超納得してしまった。
そして、後半のあのキックオフルーティーン。
多くのチームはキックオフで、一度いちばんうしろにボールを戻してから、GKがファイナルサードめがけてロングボールを蹴ることが多いが、レヴァークーゼンは意表をついていきなり前方にボールを運び、もっとも使われたくないピッチ中央ど真ん中をパス&ムーヴで切り裂き、なんとボックスまでボールを届けてしまうという。
あんなのふつうは成功しないんだが、この超大舞台で成功させた。あれは成功させたほうもびっくりじゃない? なんか『スラムダンク』でこんなの観たような。まじで驚いた。というか、われらのあまりのイージーさに唖然とした。アーセナルは、あんなプレイを簡単にやらせちゃダメでしょうに。
しかも、アルテタの試合後コメントによれば、チームはビデオまで観てもともとそれに備えていたというのですな。だったら、なおさらダメでしょう。。集中力がなくなっている。
そこはラヤのセイヴでなんとかゴールは防いだのはよかったが、そのコーナーからなんと失点。彼らのボスが云うところの「アーセナル得意のオフェンシヴブロック」で守備マーカーをどかし、バックポストにフリーの選手をつくりだし、あっさりゴール。あれはなんならアーセナルがいつもやってるやつ。ぐうの音も出ない。
これがなんとほとんど後半最初のプレイである。ゴール記録は46分。後半開始から1分たってない。
そして、そのあとの時間帯がほんとうにひどかった。目を覆いたくなるほど。
彼らはリードして精神的余裕が出来たこともあり、ボールをキープしはじめ、アーセナルは彼らの賢いボールまわしに、なかなかボールを奪えなくなっていく。この時間帯は、彼らのチームプレイのうまさを実感させらることになった。
アーセナルがボールをもっても、彼らの整ったブロック守備を前にしてなかなか前進できないのに対し、彼らがボールをもったときはおもしろいように、ボールとチームが前進する。パスが上手で、狭いエリアで展開でき、うしろの選手でもDFをひとり剥がしてからパスを出す余裕がある。小気味よいテンポ。
なにより、アーセナルはボールを持っているときも持たされているだけみたいだった。本来ならロウブロックを相手にしたとき、相手ハーフ/ファイナルサードに押し込んで、何度も何度も我慢づよくプッシュするのがいつものやりかただが、そこで彼らのターンになったときも高い位置でボールを奪い返せず。カウンタープレスがことごとく破られる。そこでトランジション。アーセナルは長い背走を余儀なくされる。
あんなふうにつづけば、アーセナルの選手たちはみんな徒労感がたまっていくに違いない。そして、プレスのインテンシティが減退し、対応が後手後手になり、どんどん相手のやりたい放題になっていく。足もどんどん重くなる。このときのアーセナルは、とても一週間ブランクがあった選手たちには観えなかった。
これはほんとに去年のエミレーツでのPSGを思い出した。ホームだというのにアウェイチームのクオリティに圧倒された、あの無力感にさいなまれたファーストレグ。トラウマ。
試合はその後、マドゥエケのドリブルからペナルティを得てなんとかドロウ。残り数分というギリギリの時間だった。
※あれをペナルティじゃないという主張もあるが守備側がボールに触れず攻撃側に足を引っ掛けているので間違いなくペナルティだろう。そもそもあんなリスキーな場所でチャレンジするほうが愚かすぎる
CLのノックアウトラウンドでファーストレグのアウェイをドロウという結果は、冷静になればまったく悪くはないのだが、それにしてもアーセナルのこのパフォーマンスはさすがにひどすぎたと思う。チームと選手のスタンダードからすれば、それを大幅に下回ってしまった。この超重要な試合で。
最近つづいているこの不調の理由はよくわからないね。直近6試合でクリンシートがひとつだけなんて、さすがにアーセナルらしくない。
わからないけど、最近これはいわゆるバイオリズムみたいなことなのかと思ったりもする。周期的に変化する心と身体のサイクル。チーム全体で、そういう雰囲気がある。個人差も当然あるが、いまはチーム全体がそれに引きずられている感がある。個人がお互いにバッドフォームの影響を受けている。4つのコンペティションで残っていて、選手たちもかつてない試合数を体験しているということもある。
この試合ではサカの不調が顕著だったが、ズビメンディやトロサールはもうしばらく苦しんでいるように見えるし、ほかの多くのレギュラー選手もそう。逆にいま絶好調といえるのは誰だろうと考えると、誰もいないような?
で、問題は、タイトルを勝ち取るには、好調/不調の波をシーズンを通してできるだけ一定に、高いレベルで保つ必要があること。それなりの浮き沈みはしかたないとして、沈むときに致命傷になるほど深いと、死んでしまう。
そういう意味で、アーセナルはいまかなりまずい周期に入ってしまっているように思える。いまがシーズンのもっとも重要な時期に差し掛かっているときだと考えると、これや由々しき事態である。
これのもっとも自然な解決策としては、やはり選手を入れ替えることだろう。ハヴァーツが今回時間が限られていたのは残念だったが、彼の時間は今後増えていくに違いなく。
それと、サカが本来の彼を取り戻せないようであれば、彼がいまのキャプテンだとしても、ここはアルテタには無慈悲になってもらいたい。幸いマドゥエケは、気力も体力もマンマンだろう。サカの不調もハムストリングのケガの影響説もあるので、休むことは彼のパフォーマンスにプラスになるはず。
そしてもちろんオーデガードが戻ってくることも、チームに大きな影響を及ぼす。よくも悪くも彼がいるいないでこのチームはだいぶ変わるから。
来週のエミレーツでのセカンドレグは、こんなファーストレグでも正直あまり心配はしていないが(これほど悪いパフォーマンスをつづけるなら潔くタイトルはあきらめるしかない)、なんとかそこまでに流れを変えたい。
週末のPLエヴァトン(H)が、違う重要性をもつことになりそうだ。
For the first time this season, Arsenal have not had a corner in the first half of a Champions League game.
The sign is working. 😀 https://t.co/hgLjTSqSL2
— Squawka (@Squawka) March 11, 2026
アーセナルがCLの前半でコーナーをひとつも得られなかったのは初めて。苦しいときいつも助けてくれたコーナー先輩が来てくれないんじゃあ、どうにもならん。
この試合については以上














