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【マッチレビュー】17/18EPL チェルシーvsアーセナル(17/09/2017) サンチェス・エジルの不在で成功のきざし

イングリッシュ・プレミアリーグ序盤の見どころであったチェルシー対アーセナルの一戦。好調を維持するチェルシーと不調のアーセナルの対戦ということで、ほとんどのメディアや識者が順当にチェルシー勝利を予想するなか、結局0-0のスコアレスドローに終わりアーセナルがアウェイでポイントをもぎ取るかたちとなった。※アーセナルがスタンフォード・ブリッジでポイントを取るのはじつに6年ぶりとのこと。

引き分けという結果だけ見れば強豪クラブに勝てないいつものアーセナルだったが、今回はその試合内容ゆえに戦前にアーセナルを酷評した多くのメディアやパンディットも手のひらを返したように賞賛している。我々もこんなに褒められるアーセナルを見るのは久しぶりじゃないだろうか。引き分けでここまで賞賛されるというのも複雑だが……。それだけアーセナルが絶望的な状況だったということだろう。

Chelsea 0-0 Arsenal: David Luiz sent off late in goalless draw



アーセナルのスターティングイレブン

急病だというエジルに変わってイウォビを起用。サンチェスエジルという飛車角を欠いたアーセナルの布陣。フォーメーションは3-4-2-1とチェルシーとがっぷり四ツ。個々のデュエルはもちろん、3バックシステムの動きの完成度が問われる一戦でもあった。

すでにいろいろなところでいわれているように、このウェルベックイウォビというハードワーカーのふたりが「スター選手」不在の穴を埋める以上の働きをし、アーセナルに強豪相手にも負けない新しい戦い方があることを示した。要するにあいつらふたりがいなくてもチェルシーという強者相手にうまくいっちゃったんである。むしろいなくてよかったといってもいいくらいだ。

チェルシーVSアーセナルの論点

チェルシー(コンテ)の記録をいくつか破る。対戦成績も改善中

アーセナルはこの試合でチェルシーの記録をいくつか破っている。ひとつは、アントニオ・コンテのチェルシーがホームで無得点試合をするのは27試合ぶりというもの。やつらはホームで鬼のように強い。そんな彼らからクリンシート(アーセナルがスタンフォード・ブリッジで無失点で終えたのは12試合ぶり)。おれたちはつよい。

そして、コンテ就任以来チェルシーは初めてホームで引き分けたらしい。どんだけ。アーセナルがチェルシーにめっぽう弱いのは知られているが、アーセナルだけじゃなく、ほかのクラブもとくに彼らのホーム、スタンフォード・ブリッジでポイントを取ることは非常に難しいのだ。

アーセナルがスタンフォード・ブリッジでポイントを取るのは2011年以来、6年ぶり。引き分けで浮かれてもしょうがないかもしれない。

アブラモビッチ前後でアーセナルの対チェルシー戦の勝率はだいぶ変わったようだが(Arseblogのby Numbersエントリによると、対チェルシーは1997-2003で勝率60%、2003-2017で勝率28%)、昨シーズンのリーグ戦ホーム&アウェイ、カップ戦(FAカップ、コミュニティ・シールド)含むここ直近5試合で3勝1分1敗と成績は決して悪くない。苦手意識を克服していくということは非常に重要だ。※カップ戦のPK勝ちは厳密には引き分けか。

サンチェスとエジルがいないほうがアーセナルは強い?

「あれ?なんかアーセナル結構つよくね?」この試合を観戦していた人ならそう思ったかもしれない。ぼくもそう思った。

とくにこのカードでは、先制されて挽回しようと押し込んだところをカウンターでさらに失点を重ねるというのがお約束だが、この試合でアーセナルは終始集中した守備を見せ、なかなか先制もされないし、それよりもカウンターを食らうこと自体がほとんどなかったんじゃないだろうか?

これは、もちろんアーセナルがここまで散々批判されていたCM(ラムジージャカ)の守備戦術にたいそう気を使ったということもあるだろうし、試合後の分析ではインサイド寄りにポジションを取ったフォワードのウェルベックとイウォビがとにかくハードワークしてプレッシング、ラムジーをサポートしたということも指摘されているように、上から下まで全体がいつになくコレクティブに動いた証拠でもある。ラムジーはこの試合のMOMで攻守に貢献、まさにBox to boxと呼ぶにふさわしい動きを見せたが、彼の活躍もまた周りのサポートに支えられたものだった。それこそがチームプレイと呼ぶべきものだろう。

※写真はSKY SPORTSより。アーセナルのコンパクトで規律あるポジショニング。イウォビがんばった。

エジルやサンチェスは、ファイナルサードでボールが持てる選手だが、彼らがボールを持つ展開は遅攻になりがちでもある。そして遅攻のときは全体で相手陣内に押し込み攻撃偏重になり、その結果、ボールを失った途端にスペースを使われ大ピンチに陥る。遅攻するアーセナルはカウンターの格好の餌食というわけだ。それが今回はふたりの不在により、ポゼッションもチェルシーとほぼ互角と、無駄にボールを保持する時間ばかりが長くてカウンターで失点という悪いときのアーセナルが最後まで姿を見せることはなかった。

0-0で終了した試合後には、これはサンチェスとエジルいらねえってすごいいわれそうだなあと思っていたら案の定、さまざまなメディアでそのことが指摘された。これには苦笑い。

Arsenal find blueprint to away success without Alexis Sanchez, Mesut Ozil

「アーセナルはサンチェス、エジル抜きでもアウェイで勝てるやり方を見つける」by ESPN

What will Arsenal do without Sanchez and Ozil? Perhaps it won’t be so bad after all

「サンチェスとエジル不在でアーセナルはどう戦うか? 結局いなくてもそんなに悪くないかも」by Independent

Gunners duo Sanchez and Ozil aren’t necessities for Gunners to succeed

「サンチェスとエジルはガナーズの成功に必要なし」by Mail

Carragher insists Arsenal played better because Sanchez and Ozil didn’t start

「キャラガーいわく、サンチェスとエジルがスタートしなかったからアーセナルはうまくいった」by Mirror

スター選手を使いこなすことができていないのが問題だとぼくは思う

でもね。

彼らがこの試合にいなくてうまくいったという事実はあるにせよ、エジルもサンチェスもいい選手だということは間違いがないのだ。当然ながら決して選手に問題があるんじゃない。

問題は彼らを適材適所で使えないとか(強豪相手にあえてエジルを外すなんて采配をかつてボスがしたことがあったろうか?)、プレイの自由を与えすぎだとかそういった思考停止の放任マネージメントのほうだ。たぶんシメオネのような監督なら、必要があればエジルだってサンチェスだって外すし(サンチェスは外さないか)彼らにもほかの選手と同じコレクティブなプレイを求めるだろうさ。ときにサッカーチームを軍隊に例えたりするが、規律を重んじない軍隊など存在しないのだ。規律がなければ戦争に勝てないからだ。フットボールも同様である。

エジルやサンチェスが試合のなかで時折見せる不貞腐れたようなふるまいを見ていると、いかに彼らが普段から傲慢な態度を取ることが許されているかがわかるし、彼らとの人間関係でボスが主導権を握っているように見えないのだ。

あと、この試合で気になったのは最初にラカゼットを交代させたこと。別に調子が悪いようにも見えなかったラカは明らかに交代に不満げだったし、交代はまずイウォビからと思っていたファンもちょっと驚いたはず。さすがに気になる采配だったからか試合後のプレス会見でもそのことについて記者から質問されていたが、ボスは「ストライカーに交代を理解してくれなんて頼んだことはない。どんな選手も交代は受け入れるのは当たり前だ」なんて答えていた。でもさ、それ同じことサンチェスにもいえんの? サンチェスは交代が大嫌いでなかなか交代させられないけど、ぼくは彼と同じようなリスペクトをボスがラカにしているとは思えなかった。

※追記 ぼくがラカゼットの扱いに関して考えていたのとまったく同じような指摘がされていた記事があった。ヴェンゲルのラカゼットの扱いは彼の自信に深刻なダメージを与えるという内容。同意すぎる。ご一読あれ。Tony Cascarino: Arsenal are mistreating Alexandre Lacazette

この試合で得た教訓は、スター選手だってほかの選手と同じようにチームで協力してサポートしあっていつだってチームプレイをするべきということなんじゃないかな。とくにエジルはチームをサポートしない/できない選手というレッテルを貼られているわけだが、もし彼がそれができないというのなら、彼にチームプレイを教えてあげるというのも監督の仕事なんじゃないんですかね!

その他

ウェルベックが怪我で4週間の離脱。軽症で済んだと思っていいんだろうか? それにしてもかわいそうすぎて泣けてくる。ルイスとウェルベックが競った怪我のシーンをハイライトで見直したが、サンチェスがスペースにもう少し長いパスを出してあげれば大チャンスだったのに。パスが少し短かっただけで天国から地獄。コクラン同様ついてない。

ファブレガスが試合前、AWを「父親」、アーセナルを「オールドガールフレンド」とコメント。知らんがな。ファブレガスといえばDAZN日本語実況の「セスク」呼びは気持ち悪いのでぜひやめていただきたい。巨人ファン以外が高橋由伸を「ヨシノブ」と呼ぶだろうか? 鳥肌が立つ。あなたたちは中立じゃないのか? それをいったら日本メディア全体そうなんだが。なんなのセスク。セクスみたいで語感がいいから?

試合後、ムスタフィとベレリンの「辞めたかったコンビ」がぼくたちはもっとやれると前向きなコメント。うむ。



評論家たちはどう評したか?

おなじみの面々がこの試合に言及していたのでまとめてみよう。

マーティン・キーオン氏(Mail

「アーセナルは組織だっていたね。規律のある動きだった。サンチェスとエジルがいないと守備が安定する。アーロン・ラムジーはここ数年でベストのプレイだった。サンチェスとエジルなしでチームが成長するチャンスだ。今後はどの選手もこのレベルのチームプレイが求められるよ。11人のチーム力は個人の力よりつよいんだ」

 

ギャリー・ネヴィル氏(SKY SPORTS

「AWはタレントよりもやる気まんまんのハードワーカーを選んだことでとても大きな違いをつくった。ポイントを取るにふさわしかったね。

イウォビとウェルベックはエジルとサンチェスがリヴァプールで決してやらなかったことをやったよ。ふたりのCMをきっちりサポートしたんだ。ジャカとラムジーは中盤をブルドーズしたと思うよ。イウォビが中盤に絞ったおかげでチェルシーはワイドを使わされたし、ウェルベックも逆サイドで同じように効いていた。

レイ・パーラーを思い出せば、彼より才能ある選手はいたけど彼ほどハードワークする選手もいなかった。正しい姿勢もね」

 

ティエリ・アンリ氏(SKY SPORTS

アウェイマッチではふつうのやり方だと思うよ。相手がチャンピオンかどうかなんて関係なくアウェイなら注意深くする。それができなかったからアーセナルはチンカスなんだよ。

よく守ったよ。ウインガーはラムジーが前へ行くのを助けたし、中盤のカバーもした。あと3CBもまあまあよかったよ。もっとも彼らの前でピンチの芽は摘まれていたけどね。

全体よかったよ。まだアウェイでの得点や勝利を探している最中だが、リヴァプールで目にしたものよりはだいぶよかった」

 

イアン・ライト氏(MOTD2

「アーセナルはやり方をシフトしてきたね。

どちらも個人が素晴らしいゲームをしたとはいえないかもしれないが、システムはどちらも効果的だった。サンチェスやエジルがいたってイウォビやウェルベックと同じインテンシティでプレイする必要がある。

シュコドラン・ムスタフィにも言及しないとね。バックの5人もみんな素晴らしかった。ジャカとラムジーも彼らが今回見せた規律ある動きはリヴァプール戦で見ることができなかったものだ。距離を保っていたしつねにCBを守っていた。ファンタスティック。AWも彼らが効いていたというだろうね」

 

ジェイミー・キャラガー氏(SKY SPORTS)

「適切で、規律のあるアウェイでのパフォーマンス。そろそろいいだろう。アーセナルについてわれわれがさんざっぱら言及してきたのは中盤、ラムジーとジャカについてだったけど、ほんとうの違いはエジルとサンチェスだったんだ。

もちろんエジルとサンチェスが前にいたほうがいいといえるかもしれない。だがイウォビとウェルベックのコンビは組織だった動きができていた。

彼らはタイトな中盤で汚れ仕事をきっちり行っていたよ。チェルシーに真ん中を使わせずにワイドに追いやった。」

アンリ氏のクールすぎるコメントがナイス。あ、チンカスのくだりはこっちで心の声を忖度したものなので原文読んでもないよ。

 

このエントリの続き。そもそもヴェンゲル監督はエジルとサンチェスのマネージメントができてないんじゃないの論。

ヴェンゲルはスター選手の扱い方がわからない

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