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アルテタが周辺につくる空気【23-24プリシーズンUSツアーより】

ドイツキャンプが終わったあと、今週からはアーセナルのUSキャンプが始まっている。

ロンドンを発った日曜から、スクワッドの移動の様子やトレイニングピッチでの楽しげな雰囲気が連日伝えられていて、いま選手たちにはとても充実感があるように見える。チームの周辺には、いつもナイスなヴァイブスがある。

ところで、現在はもちろんオフシーズンであり、同時に移籍ウィンドウのオープン真っ最中ということで、デクラン・ライスのような超ビッグネイムもやってきて、最近メディアでもクラブの移籍活動におけるアルテタの功績について言及されることが、ますます増えてきたと感じる。

チームパフォーマンスもあきらかに上昇傾向にあり、将来性の評判も上々。すこし前に伝えられたキリエンバッペのように、しばらくぶりにアーセナルがスター選手にも魅力的なクラブになってきたのだと。その大きな部分がミケル・アルテタのおかげだと思われている。

今回は、アルテタについて思ったことをすこし書きたい。



アルテタのインタヴュー@ワシントンDC(23-24USツアー)「ライスは灯台である」

まずは、彼の最新のコメントから。昨日のインタヴュー。AFCオフィシャルサイトより。

アルテタ:(ライスがアーセナルにもたらすもの?)彼のリーダーシップ、オーラ、もちろんこのリーグですでにある経験も。彼はチームに違う次元をもたらすはず。

彼にはフィジカルクオリティもある。それはわれわれがしばらく失っていたものだ。それが、われわれがすべきことをしなければならなかった理由。彼はチームにとり非常に重要だからだ。

しばらく前に、われわれはお互いに補完できる選手たちについて話していた。チームによりフレキシビリティをもたらすもの。よりデプスとクオリティをもたらすもの。そして、勝利への渇望をもたらすもの。自分たち自身を違うレヴェルにプッシュしようと切実に願う選手たち。

わたしは、彼のことを灯台(a lighthouse)のように観ているのだ。彼は他者を照らし、他者を進歩させ、チームをもっとよくする。彼の話し方や野心、ゲイムへの情熱は、それこそわれわれが必要としているものだ。

(大きな投資でプレッシャーや大きな期待がかかる)それはわれわれもわかっている。しかし、結局それは選手にいいプレイをさせるということであり、毎試合で自分たちのプレイをして勝つ権利を得るということ。そのために、われわれにも進歩しなければならない部分があり、プリシーズンで取り組んでいく。それがいまわれわれが行っていること。

間違いないのは、われわれが去年やったことから、多くのひとにつぎはどうなるんだと訊かれること。われわれは、いくつかの重要な契約を行った。それはほかのチームも同じ。われわれはアーセナルであり、それに対処せねばならない。そこは間違いない。

(3人の契約がプリシーズンの序盤に済んだことに満足)それが、われわれがターゲッツについて議論を始めたときの目標だった。もちろん、それを達成するのは難しいこと。だから、クラブはとてつもなくよくやってくれたのだ。それがグレイトなのは、つまりそれはわれわれに正しいやりかたで準備する時間を与えるということ。

毎回の移籍ウィンドウでわれわれはそれをやろうとしている。毎シーズン、選手たちのレヴェルを上げようとしている。そしてそのレヴェルに達することができないときには、リクルートせねばならない。われわれがこの夏にやったことは、スクワッドを劇的によくすることだ。

オフィシャルサイトの書き起こしにない今後の補強に関する発言。

(ハヴァーツ、ティンバー、ライスからさらに補強は期待してもいい? それとも今後はチームの整理に集中?)どうなるか観てみよう。マーケットにはまだ時間も可能性もある。そのあとの数週間で事態がどうなっていくか観ていく必要がある。われわれも警戒はしていくし、その時間もある。退団のほうもまだ時間がある。

もちろん、わたしはまだことが動くと思っているよ。

このアツい夏はまだ終わらない。

そして、このUSツアーでもとくに注目のフロ・バロガンについても。

なにがベストかを考えねばならない。この数試合で、われわれは彼を観たいし、彼を経験したい。彼はこのまえのニュルンベルクでもプレイしたし、このあとの数試合もプレイするだろう。そのあとに、ベストな決断をする。

以上

 

ライスについては、アルテタのフィジカリティへの言及が興味深い。アーセナルがしばらく失っていたもの。PLで戦うには、非常に重要なもの。サイズや強度で負けない。

アーセナルは今回のウィンドウも傾向として、選手のケガをしにくい安定したフィットネスや、高身長のようなフィジカリティを重視しているようなところが観られている。とくに長身のハヴァーツも来て、スクワッドの平均身長も高くなってきたんじゃないだろうか。

r/Gunnersでは、トミヤス、ライス、サリバの長身3人がトレイニンググラウンドで楽しげに並んで収められている写真について、「われわれは、もう(フィジカリーに)いじめられるようなチームではなくなった」との声も。たしかに。

われらは、美しいだけでなく、屈強なチームに進化しようとしている。

アルテタが周辺につくる<空気>

ところで、今回のUSキャンプのトレイニンググラウンドの雰囲気を伝える興味深いコメントがあって、それを紹介したい。

USツアーでアーセナルのチームに帯同しているというカメラマンのMatt Dingle氏のコメント。スレッド以下も。

彼のサイト「Arsenal.Jpg」には、gettyimagesなどの公式で提供されているのとは違うアーセナル写真がたくさんあった。観たことない写真がいっぱい。ぼくが知らなかっただけで、もしかして有名人?

Matt Dingle(フリーランスフォトグラファー):今日はすごいものを観たという気がしているよ。アルテタがスクワッドをどんなふうにメンタリーに「準備万端」にさせているかということ。まだフィジカリーにはリラックスした時間であっても。

ウォームアップの最中、アルテタはよくみんなにアトランダムにスタッフとハグをしろと要求する。ハグするスタッフを見つけられなかった選手は、からかわれたり、腕立てをやったりする。

※訳注:これは違うか?

とはいえ、雰囲気は真剣そのものなのだ。気楽な気分も、仕事の時間だという口実も与えられ、それにライスの加入が完全に公開された初日で、この若い選手たちのグループがいかにやる気になっているかを感じさせた。

なかでも際立った選手は、ラムズデイル、ライス、それにハヴァーツ。冗談をいいあったり、ストレッチの最中でも、彼らは頻繁にコミュニケイションを取ろうとしていた。正直、彼らはグループのほかの選手たちんのこともいかに気にしていたか、とてもいいペイスでやっているのがわかった。

ライスはつねにスマイルだった。もう観ているかもしれないけど、みんな彼がよくしゃべると云っている。彼がエディといっしょに自転車に乗っているところを観たことが、わたしには大きな収穫だった。彼がいかに溶け込んでいるように観えたか。誰もそれが彼の初日だとはわからないだろう!

ティンバーもそう。彼はストレッチのときサカのとなりにいて、よく笑いあっていた。

全体的に観て、われわれはれっきとしたスクワッドを築いていると云える。一体感はオフザピッチから始まる!

このチームは、まったくもってマシーンみたいな感じ。よく油がさされていて、ちゃんと家族。正しいタイミングでさらにソリッドになるかもしれない(そう願う!)。

ジャーナリスト以外から、こうして間近で観たチームの雰囲気の感想を聞けるのはなかなか貴重な気がする。「一体感はオフザピッチから始まる」。名言きたな。

そして、この「いい雰囲気」というのは、ぼくらもAFCが提供する写真や動画でなんとなくは知っていたことだけれど、あらためてそれをこうして第三者目線で伝えられると、やっぱりうれしいものだなと思う。チームの状況によっては、これがギスギスしてるなんてこともありえたのだから。

それと、もちろん厳しさも忘れない。そこが重要だろう。

このフォトグラファー氏も述べているように、アメリカツアーのような多分にファンサーヴィスを含んだ海外遠征の気楽さもありつつも、みんな真剣なのだと。そこには仕事と遊びというか、緊張と緩和のいいミックスがある。

先日、ライスがアーセナルに来てから最初のインタヴューで、コルニーを訪れて家族的な雰囲気に感銘を受けたのと同時に、「もっと自分に厳しくなる、気楽ではいられない」と自らを律するようなコメントを述べていたことを思い出す。さすが彼は勝負の厳しさを知るキャプテンの器という気もするし、そういう空気がすでにそこにあるのを敏感に感じ取ったという気もする。コルニーの施設の壁には、いたるところにメッセージがあるというし。Train to win!

ぼくがちょっと考えていたのは、こうした周辺の空気をつくっているのも、アルテタなのだということ。彼はいまのスクワッドにあるこの絶妙なバランスの雰囲気をつくり、チームを正しい方向へ導こうとしている。

そして、そうしたその場にただよっている空気のような漠然としたものこそが、このチームを進歩させていくうえでいかに重要かということ。そんなことをつらつらと考えていた。

ぼくは、基本的にアルテタはロゴス(※ことば・論理)のひとだと思っているけど、いまはみんなが彼の影響下で、ことば以上の重要なサムシングを感じて共有していっしょに育てている、みたいな。

つまり、アルテタはものすごくじょうずにことばでも説明や説得ができるんだけど、それ以外にも、ことばや論理に頼らず、態度でほのめかしたり感情に訴えたりして、その場に<空気>をつくることができる才能があるんじゃないかという。ひとを正しく誘導できる、あるいはインスパイヤできるポジティヴな空気。そういうことを感じている。それは目には見えないけど、たしかにそこにある。今回のプリシーズンキャンプにももちろんある。

まあ、そういうものがほんとにあったとして、それはアルテタだけの功績ではないかもしれないけど。ほかにもクラブにはエドゥをはじめとしてリーダーはいるから。しかし、アルテタがその重要な一部であるということは間違いないはず。

なんか、ちょっとうまく伝えられなかったか。ロゴスが不足してる(笑)。

 

おわり



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