FAカップのサウサンプトン戦の爆勝の興奮から以下のようなエントリを書いてしまったあとに、衝撃の事実が。ある意味ワトフォード戦の敗戦よりも。
アレックス・オックスレイド=チェンバレンにアーセナルの中盤を任せていいのか
Sky Sportsのこの記事「チェルシー戦を前にAWに疑問符がたくさん」によると、
コクランがスターティングに含まれたときのアーセナルの勝率が、1/2を切っていたというまさかのスタティスティクス。寝耳に水とはこのことだ。
コクランがいると勝てないアーセナル
コクランは怪我もあったので出ていない試合も多く、弁解の余地はある。それにしても出場した試合の圧倒的ネガティブデータ。45%しか勝っていない。今季5敗のすべての試合にスタートしているということ。これはもうアンラッキーチャーム。逆タリスマン。もしくは呪い。全然気がつかなかった。
このうち守備専と呼べるのはコクランのみで、真ん中のコンビでコクランを外すオプションはほとんどないことから、アーセナルのCM問題の大方はコクランの隣に誰を置くか問題ということになる。
OxのCMエントリでこんなふうに書いてしまって、それはそれで現状のCMのペッキングオーダー的には間違えていないと思うのだけど、むしろコクランを外したほうがよい結果が出ることをデータが示してしまっている。
少し前には、アーセナルのCMでコクランが最もいらないプレイヤー、過当競争のCMで真っ先にベンチから外れる選手だっていうパンディットのコクラン批判記事があって、そのときは何を見当外れなことをいってるんだと思って見出しだけでスルーしていたが、このデータを見てしまったあとでは見当ハズレどころか至極まっとうな意見だったということになる。
『デイリー・メイル』紙にもコクラン問題について指摘する記事が来ていた。昨日の記事「アーセナルはコクランなしの10ゲームをすべて勝利している」
勝率はもちろん、コクランがいないときのほうがゴールも多く、被ゴールも圧倒的に少ない。ここまでデータが揃うと泣くしかない。うえーん(泣)。
ボスはなぜコクランを選ぶのか
このデイリー・メイルの記事でも指摘されているように、ヴェンゲルはコクランがフィットしていれば優先してコクランを選ぶ。コクランはほとんど自動的に選ばれるので、問題はいつもコクランの相棒に誰を選ぶかになる。ではなぜ、ヴェンゲルはいつもコクランを選ぶのだろうか。
ひとつには、今季のアーセナルのCMに人員が多いとはいえ、生粋のDMと呼べるのはコクランしかいないことが挙げられる。ウィルシャーとラムジーといった攻撃的なミッドフィルダーを並べて中盤がズタズタになったことは、AWにとってある種のトラウマになっているのかもしれない。
もうひとつは、やはりEPLでの実績だろうか。エルネニーやジャカは今季から登場ということで、このルーキーたちに対しては、とくに序盤はボスからの信頼が薄いことが感じられた。
もうひとつぼくが感じていることは、ボスは性分として、一度定着した選手に対しての信頼が厚いというのがある。メディアからはときに「信頼しすぎ」と批判されることもある通り、調子を落とした選手を使い続けたり、スターティングの選手やフォーメーションを固定したがるのもそういった傾向の現れだろう。グアルディオラがマンティで選手を入れ替えまくっているのとは好対照である。
そんなわけで、おそらくコクランはもっとも輝いていたとき(昨季)のパフォーマンスを基準にボスからは捉えられていて、結果がでない今季のような状況にあっても、いつまでもそのことにこだわってしまっているようにも見える。それを別のいい方では「信頼」と呼ぶのだろう。
データ(=現実)を覆すことはできない。ボスが何かを勝ち取ったときにはデータに頼らないその頑固さが賞賛されるかもしれないが、また何も勝ち取れずにシーズンを終えれば、”Same Old Arsenal”という文句がメディアに踊るであろうことは目に見えている。まったくストレスが貯まる話しである。
コクランが輝ける条件
このブログでも何度か指摘している通り、コクランがもっとも輝いていたのはカソルラとコンビを組んでいたときだということは異論はないだろうと思う。14/15シーズン中にチームに戻されて以来、獅子奮迅の活躍で瞬間的には「ヨーロッパNo.1DM」と呼ばれすらした。
まあ実際にはそれは少々言い過ぎであったのだけど、それでもそのときは名だたる選手たちと比べられるほどのパフォーマンスを見せたトップランクのDMであったことは変わりがない。
コクランの復帰以降、過去3シーズンのスタッツを比較してみると(14/15 vs 15/16 vs 16/17)、今シーズンの成績はやはり落ちてきていることがわかる。トータルスコア、ディフェンススコアともにこの3シーズンのなかでは最低だ。
ただ、一方では、このエントリにも書いたように、
今季EPLトップ6のCM/DMとの比較では、ディフェンスアクションを中心に比較的高いスコアを出している。つまり、今季のコクラン自身のパフォーマンスは落ちてきているとはいえ、ライバルチームのライバル選手と比べたときにはとくに劣っていないということになる。
ぼくはコクラン問題はやっぱりコクランの相棒問題だと思う。コクランのプレイスタイルは明らかだ。敵ボールを刈り取って、近くにいるパッサーにボールを託す。そしてまた次の急所に急行し、スペースを監視する。決して攻撃に色気を出さず。ピッチ上のポリスとして。ボスが期待しているのも当然そういった役割だろう。
コクランを活かすには、コクランがこの役割に集中できる相棒が必要なのだ。カソルラとのコンビがうまくいったのは、カソルラが類まれな才能でコクラン個人の分まで攻撃やポゼッションの役割を負担できたからだろう。
そもそもコクランにパスやボールキープを期待することは間違っているのだ。
しばしば無謀なラストパスを出してスタジアムからため息を誘うが、チームはむしろ積極的にそのようなプレイを彼にやらせないようにしなければならない。
課題はコクランを守備に専念させるためのフォローをどうするか。一見、相方のフォローはコクランの役割のように思えてしまうので、相方にコクランのフォローをさせるとは奇妙な話しであるが。彼の類まれな守備能力を活かすには、カソルラのようなタイプでないとうまくいかないということだ。
次節、今季の存亡がかかったチェルシー戦のタイミングでまさかのCM不足という事態で、Oxとコクランの急造CMコンビが濃厚と思われるが、上記のような理由でまったくうまくいくような気がしていない。もちろん勝つ予想しかしていないが、勝つとしたらいったいどんな試合になるのか見当もつかない。
果たしてコクランの未来はどうなるのか。