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Deloitte Football Money League 2025でアーセナルはさらに躍進。冬ウィンドウで金は使える?

冬の移籍ウィンドウまっただなか、昨日Deloitteが毎年恒例のフットボールクラブのビジネス長者番付“Deloitte Football Money League 2025”を公開していた(2024まで)。各所でニュースになっているので、もう内容を観たひともいるはず。

Deloitte Football Money League 2025

フットボールビジネス(マッチデイ、放映権、コマーシャル)は、トップ20の合計が初めて€10ビリオンを越えた昨年度(2023)からさらに成長。フットボール世界全体としてもビジネスはいまだ堅調の様子である。

そして、われらがアーセナルFCも、うれしいことに去年の10位から3ポインツアップの7位と、これまた業界全体の成長に歩調を合わせている。

今年こそはとトロフィを狙うアーセナルは、現在複数のキープレイヤーにケガ人が出ているおかげで、1月の補強にプレッシャーが高まっているところで、この冬に大金を使うのかどうかにまさにいま注目が集まっている。

ビジネスでは間違いなく成功しているわれわれは、今月大きな金は使えるのか、使えないのか、どっちなのか。



Deloitte Football Money Leagueの見方

これは、マッチデイ収入、放映権収入、コマーシャル収入の3本柱の合計でのランキングで、国内リーグやヨーロッパなど、各コンペティションで順位によって得られる賞金などは含まれていない。クラブのスポーツ面というよりは、純粋にビジネスの観点からのクラブ評価になる。※移籍市場での選手取引による収入も含まれない

とはいえ、強いチームは金も稼ぐため、上位にはトップリーグの上位常連が並ぶ、いわゆるパワーランキング的なものともそう遠くない。

その収入について、まずマッチデイ収入は試合で得られる入場料収入。基本的に、ホームでの試合数(参加しているコンペティションの数)、スタジアムのキャパシティ、チケット料金の掛け算になる。

ビッグクラブのマッチデイ収入が多いのは、CLなどヨーロッパ含めてあらゆるコンペティションに参加し、先のラウンドまで進出するので試合数も多く、大きなスタジアムを持っていて収容人数も多く、チケット料金も高く設定されるから。

とくに、大きなスタジアムを持つビッグクラブには、キャパシティが決定的に重要になる。多くのビッグクラブが毎回のホーム試合で満員御礼になるということは、さらにそれ以上集客できる見込みがあるということ。エミレーツの観客席をあと2万人増やすことが検討されているというアーセナルも含めて、少なくないクラブが観客増による増収を求めてスタジアムの改修を考えているのも理解できる。

逆に、このマッチデイ収入は、Covid期間は多くが無観客試合になったことで大打撃を受けることになった。

TVの放映権収入は、マッチデイ収入と違って、パンデミックで無観客でも安定してクラブの収入になった。こちらも、試合数が多いほど、参加コンペティションの人気度が高いほどいい。トップチームの試合しか放映しないTV局もあるので、もちろん強さもカギになる。

コマーシャル収入は、スポンサーシップやマーチャンダイズ(グッズ)など。クラブのブランドがお金になる。スタジアムで行われるコンサートなどの収入もここに入るという。

この3つの収入に共通してカギになるのは、やはりUCLだろう。現時点におけるワールドフットボールにおけるもっともプレミアムなコンペティション。

試合数が増えることはもちろん、放映権も高いし、チケットも高い。CLは人気も高いため、参加クラブのブランドイメージにも寄与するし、コマーシャル収入も増える。したがって、当然のようにCLからの収入をあてにしたクラブ運営をしているビッグクラブにとって、その出場権を得られるかどうかは彼らのビジネスにとってはほとんど死活問題である。

ビジネスを支えるクラブのブランド価値を高めるには、スポーツ面の成功が必要で、そのためには優秀な選手とコーチが必要で、お金が必要。そのためには…… このサイクルをうまく回すことができたクラブが成功できるということですな。

Deloitte Football Money League 2025 トップ20

さて、2025最新版ランキング(※2024)。以下図表はBBC Sportより。

トップ3に変動なし。

トップのレアル・マドリッドはフットボールクラブとして、初めて単年度の収入(※選手取引を含まず)が€1bnを突破したクラブになったという。名実ともにナンバーワンフットボールクラブ。

彼らの収入の内訳をみるに、マッチデイ収入がほかのクラブにくらべてもダントツの数字で、これは一節によるとサンチャゴ・ベルナベウの増築で、VIPのためのボックスシートを大量に増やしたおかげで、つまり富裕層向けの施策が成功しているということらしい。おそらく、これは近年はどのビッグクラブも目論んでいることだろう。収益に直結する。

トップ10のなかに、PLクラブは6つ。去年と同じく半分以上を占めた。そのなかのトップは今年もシティ。2位はマンU。そして3位にアーセナルが浮上した。アーセナルは、10位から7位でトップ10のなかではもっとも順位を上げたクラブとなった。

ちなみに、アーセナルがこのマネーリーグでトトナムを上回ったのは、2019年以来のことらしい。

トップ20としては全体的にはおなじみの顔ぶれながら、目を引くのが18位のアストン・ヴィラ。圏外からのランクイン。やはりCL効果か。ウーナイがきっちり仕事している。

それと、今年は初めて30位までランキングが公開されていて、ちょうど30位にブラジルのフラメンゴが入っていた。南米クラブがこのランキングに入るのは初めてだそうで。景気よくてジョルジも買いたくなっちゃったか。

そうそう、マンUはナイスなタイミングで、クラブ自らがPSR違反を犯すかもしれないと認めたとニュースになっていた。このまま破産しねえかな?

Manchester United at risk of PSR breach, club tell fans

アーセナルFCの23/24収入

アーセナルFCは全体で7位。ビジネス総収入は€716.5m(£605m)。これはもちろんクラブ記録。前年度より35%増えた。Covidシーズンから3年間、毎年かなりの勢いで成長をつづけている。これもCLのおかげ。

それと、このAFCのビジネス的成功の舞台裏には、スタッフ再編の影響もあるらしい。2023年8月にはACミランにいたGiulia Mazziaというコマーシャル部長が来て、今度はAndrew Sheridanというリヴァプールのコマーシャルチームにいたシニアスタッフが来るということ。クラブとして力を入れている成果がちゃんと出ている。

このリポートによるとAFCのこの収入には、女子チームの収入(€17.9m)も含まれているようだ。それはほかのクラブも同じ。男子と女子で規模の違いがすごい。参考までに女子フットボールに限定したマネーリーグ2024では、AFC Womenは全体で2位ということ。こちらも優秀。

2025冬ウィンドウでアーセナルは大金を使えるか?

クラブ記録となるほどの大きな収入があったほどだから、当然財政的にはこれまででもっとも余裕がありそうなものだが、ことはそう単純ではないのは、クラブの複雑な会計処理にくわえて、FFPがらみのルールによる制限があるから。

PLのPSR(Profit and Sustainability Rules)、それにUEFAが2022年から導入したFSR(Financial Sustainability Regulations)。これらのルールによって、各クラブはどれだけ損失が許されるかが決まっている。収入を大きく超える金は使うことはできない。

シティとか今月すでに€100m以上使っているのは大丈夫なんだろうか?

さっき、ざっとネットで調べてみたのだが、アーセナルがこの冬に具体的にいくらまで使えるのような情報は見当たらず(それはそうか)。

ただ、毎度おなじみフットボールファイナンスのエキスパートSwiss Rambleによれば、アーセナルは今シーズンも来シーズンもFFPに関しては、ほとんど心配がないということらしい。※Swiss Rambleのリポートは、Substackでペイウォールコンテンツになってしまったため読めない

『football.london』からSRの見解を孫引きすると。

Swiss Rambleの見積もりによれば、アーセナルは今シーズン税引前で£13mの損失が見込まれ、これは22/23の損失£52m、21/22の損失£45mから減っている。そしてこれはCLフットボールへの復帰によるところがすくなくない。

クラブの控除可能額は、21/22で£41m、22/23で£40mで、23/24は£42mと予測されている。

つまり、この3年間で控除可能な金額は合計£123mとなり、損失£13mという数字が正しければ、経常損失は£111mということになる。

控除後のPSR結果は、21/22がマイナス£2m、22/23はマイナス£12mだった。そしてクラブは23/24はプラス£29mと予想している。つまり、これは3年の控除後のPSRポジションがプラス£14mになるということで、23/24のクラブの許容損失は£119mとなるため、アーセナルにはかなりの余裕があり、PSRの懸念はない。

24/25年度もこれと同じレベルの控除が適用されるものと仮定すると、5月末までの現在の報告期間におけるアーセナルの予測では、もし税引前で£164mの損失が発生しても、PSRに準拠し続けることができる可能性がある。

したがってクラブは、新しい選手の補強にともなう給与や償却費の増加はあるものの、CLでもう1シーズンを楽しんでいるため、そのような損失に近づくことはないだろう。

アーセナルは、その必要があれば1月にターゲットに動ける強い立場にある。そしてクラブはタイトルだけでなく来シーズンのCLを獲得できるトップ4フィニッシュを確実にしたいと考えている。

いつものようにぼく自身が会計的なものにまったく暗いので、訳は自信なくてすまない。

このなかで気になるところは「税引前で£164mの損失が発生しても、PSRに準拠し続けることができる」。つまり、£164mは何も考えずに使えるってことかな? さらに、選手を売却するならその利益がここに加わってみたいな。それは悪くない。

ただ、気をつけなければならないのは、これは冬だけの話じゃないこと。当然移籍ウィンドウの本番は夏であり。

最近アーセナルのこの冬ウィンドウの難しさが語られる際に、よくZubimendiのことが言及されている。彼とアーセナルはすでに移籍に合意済という例の噂は、多くのメディアでもそれなりの信憑性をもって捉えられているようだが、彼に€60mを使うことが決まっているとすると、使える残り金額が観えてくるという。

仮に、今月ウォルヴズのCunhaに£70mみたいな金額を使うようなら、それだけでZubimendiと合わせて£120mくらいになる。£164mのうちの大半だ。夏に何人か売却したとしてその分の利益があったとしても、残りでメインターゲットに足りるだろうか。

それに、おそらく夏に必要なのはアタッカーだけじゃない。KTやジンチェンコ、キヴィオール、もしかしたらトミヤスに起きるかもしれないことを考えれば、DFだって足りなくなる。潤沢だと思われているアーセナルの予算だが、大丈夫だろうか?

そういったことを考えると、やはり今月のCunhaへの投資は、躊躇されるんじゃないだろうか。ワニエリもすでに戻ったし、サカもいずれ戻るはずなので、いまレギュラークラスのアタッカーがどうしても必要な状況でもない。できれば夏まで最小限のコストでその場しのぎしたいのが本音で、なんなら、誰も取らないことだってありえると思う。

この状況でも補強なしとなれば、目標達成の期待度はがっくり下がってしまうだろうが、いっぽうで補強をしたからといって必ず目標達成できるという保証もない。現実は厳しいものだ。

今年のアーセナルが絶対に絶対にPLタイトルを取るという野心があるのかないのかと云われれば、どうだろう。ファンとしても正直わからないね。いまアーセナルがもしリヴァプールの立場にいたなら、そういう気にもなれるかもしれないが、PLタイトルについてはいまはかなりギリギリの場所にいる。

それよりも、アーセナルは安定的に毎年トップを狙えるような位置を確保するほうを重視しそうな気がする。そのためには、ローリスクなほうを選ばざるを得ない。一か八かでつぶれている場合じゃない。

冬ウィンドウが終わるまであと一週間。いまだ動きが観えないアーセナルだが、水面下ではローン案件にハードワークしていると観た。

 

おわり



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